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第九話  城・雅、部屋チェンジ!

初夏を迎える頃、登戸君が出ているCMがオンエアされ始めた。

さわやかな少年と少女の青春を描いた清涼飲料水のCMだ。


「CM見たよ。かわいく映ってるじゃん!」

とメールをしたら、これまたハートとお星様いっぱいで嬉しさを表すメールの返事が来た。

学業、仕事と忙しい登戸君は、時間ができると俺に連絡をよこして都合が合えば、たまに

一緒に食事をしたりしていた。

もちろん、聖には内緒だ。

親元を離れて一人で頑張っている登戸君がなんだか可哀相というか、同情してしまっている俺がいた。

俺と会っている時の登戸君は、とても嬉しそうで楽しそうに仕事やレッスンの話をしてくれる。俺はそんな彼を見て、うれしくなっていたが、決して愛ではなく、友達として兄代わりとしてのフィルターで見ている。

が、聖には言えない。

今は秋から始まる連続ドラマに出演するらしく、ほぼ毎日、学校が終わると撮影所に

通っていた。



聖、雅より、大学生の俺は一足お先に夏休みに入った。

そして夏休みに入った最初の土曜日、俺は引越しをした。

と言っても、雅の部屋と俺の部屋を交換するだけの話しだ。

俺が暇な日は、ほとんど聖のところに居て、雅は雅でほとんど俺の家にいた。


「だったら、部屋換えようよ、お兄ちゃん!私も試験の時、おばちゃんに夜食作って

 もらってるし、いちいち10階まで来てもらうのも面倒だろうしさぁ~。

 その方がお兄ちゃんと聖も…いいんじゃないのぉぉぉぉほほほほぉぉぉぉぉ」

と、茶碗をひっくり返したような形の目で言われた。


おやじとおふくろは反対をするわけでもなく、息子の俺より女の子の雅と居る方が楽しいらしく、手放しに喜んだ。

そんな両親に、息子の俺は少しばかり、悲しかった…



「よし!コレでおしまいだ!後は自分達で片付けろよ。城、聖!おまえらはこれから

 楽しい新婚生活が待っているんだなぁ。思い出すなぁ~母さんとの若い頃~」

最後のダンボールを運んでくれたおやじに言われた。

正直、俺のおやじが「あなたでよかった」と、思った瞬間だ。


新婚生活…あはっ、あはっ、あっはははは~~~

俺は心の中で高笑いだ。


照れる言葉だが、別に二人きりの生活になるわけではない。

飯の時はみんな一緒だし、学校のリズムも聖と俺とでは少しずれる。

今までと変わらない生活だよな?

利点といえば、夜遅くなってもずっと一緒にいられるくらいか…

夜中も一緒に居られるのかぁ


夜…夜中…よーーーなーーかぁぁぁぁぁぁぁ?

おもわず、自分のはしたない想像に眩暈を起こしてしまい、ダンボールの角に

足の小指をぶつけ、床に倒れた。


「痛ってぇーー!!うーーーーっ」

「城、何やってんだよ。そうだ、夜はオレの部屋で一緒に寝るか?」

フローリングの上で一人もがく俺を、上から見下ろしながら聖が言った。


「へっ?えぇーー!」

小指の痛みが消えた。

「いっ、いつしよにぃ?ねるぅ?」

またまた要らぬ妄想が頭を過ぎっていき、聖のお言葉に立ち上がってしまった。

立ち上がったのは俺の下半身ではなく、体を起したと言う意味なので、

お間違いないように…

などと、自分に説明してしまうほど、俺は動揺している。


「ぶっ!はははは~、バーカ、冗談だよ!ははは~」

聖は笑い、ダンボールから服を取り出し、クローゼットに掛けはじめた。


そうか…冗談なのか…

純粋な俺は…もてあそばれているのか…

ショック!

別に一緒に寝てもいいけど…という言葉を飲み込み、俺は参考書や辞書を本棚に並べて行った。


「なぁ、城…」

「ん?何?」

急に聖が俺の背中に抱きついてきた。


「オレたちって、しあわせだよな?」

「ん?」

「家族とかさぁ、仲間とか周りのみんな、オレたちのこと変な目で見ないで普通に接して

 くれているっていうか、応援してくれててさぁ。なんかすげー感謝してる、オレ」

「うん…。俺もみんなに感謝してる」


俺を後ろから抱きしめている聖の腕に力が入った。

「城…愛してるぜ」

「聖…俺もあいし…て…えっ?」

俺は聖と向き合おうと振り返り、ふとドアのところを見た。


「うわっ!」

俺の声に驚き、聖も振り返って俺の視線の先を見た。

「うわーー!!雅!」

ドアのところに雅が立っていた。


「あはっ!あはあはっ!愛を確かめ合っているところごめ~ん、うふん!」

雅は片手で頭をかき、片手でピースをしていた。

「……」 「……」

「おばちゃんが、サンドイッチ作ったから一休みしろって!」

「いつからそこにいたんだよっ!」

実兄としての立場を失くしつつある聖が引きつった顔で聞いた。


「ん~と、なぁ、城~~~辺りからかなぁ?」

最初からじゃねーかよ!!

「つーわけで、お二人のキリがいいところで、上に、」

「雅!!おまえーーー」

「きゃ~~」



こうして俺と聖は一緒に住み始めた。

これが良かったのか悪かったのか、お互いの独占欲は強くなっていった。


そして結局…夜は…一緒に聖のゼミダブルのベッドで一緒に寝ている。




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