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1.目覚め

―――――――――




”…レティ、今日はすっかり晴れたよ。綺麗な青空だ。

庭師が、今日の朝咲いたレティラシアを持ってきてくれたんだ”



”ええ、レティ、とてもいい香りよ。

サイドテーブルに生けておきましょうね”



どこからか、そんな会話が聞こえてくる。

見覚えのない男女2人がサイドテーブルに花瓶を置くのが見えた。


これは夢だろうか。

知らない人、知らない声、知らない場所。

彼らの発した言葉も聞き覚えがないはずなのに、不思議と何を言っているのかわかる。

きっと夢に違いない。


ふわふわとして回らない頭でそんなことを考えていると、2人がこちらに近寄ってくる。

そして男性が、私の頬をその大きな手で包み込んだ。


“いつか、その目を開いてくれたらなぁ…”


(今、目を開いているではないか)


そんな疑問を持つも、覚醒しきっていなかった脳はその手の温かさに再び眠りの底に落ちていった。




―――――――――


ベッドの上ではっと目を覚ます。

今のは…

今日の……夢?


寝る前の記憶が定かじゃないが、どうやら寝ていたみたい。疲れていたのか、今日は珍しく横向きでなく仰向けで寝ていた。

そのおかげで、目の前に広がるのは真っ白な天井だ。


(そんなことよりも…)


今日見た夢はとても長くて、非現実的なのにすごくリアルだった。

でもそこで見た内容も景色も、もう涙目で見た景色のように霞んでしまっている。目を閉じて、自分の意識の中にあるものをもう一度思い起こそうと努力するも、なかなか脳内レファレンスがうまくいかない。

というか、まだ昨日のこともなんだかうまく思い出せない。そっちは夢とは違い、一端も掴めないほど記憶がないのだ。おかしい…。


(ってあれ?)


さっきの視界に、何か違和感を感じる。

なんだ?なにに対してだ?

とりあえず再び目を開けてみる。


(これだ、この景色…)


一体どこに違和感が?

別にただ真っ白な天井が広がってるだけ、

…だけ?


あれ、電気がない。

私の部屋の天井には、丸くて平べったい電気が…

よく見れば部屋の雰囲気や壁紙の色も、私の見慣れたものとは微妙に違う気がする。


…えっ?

てことは一体ここどこ?

えっ、本気(まじ)で言ってます?


見覚えのない場所にいる状況にも驚いたが、その事実にすぐ気づかない自分のアホさ加減にもびっくりだ。

いや、きっと疲れてるんだ、そう、そうだよ。昨日のことも思い出せないくらいだし。

とりあえずそうしとこう。


…でここどこよ。

記憶が定かじゃないのも懸案事項だが、まず先に現状把握だ。


本気で心当たりないぞ。いや、何となく夢に出てきたような…?

もしかして誘拐?連れ去られでもしたの?

今日の夢で見た気がしたのは、意識がはっきりしないまま昨日見た光景を、夢だと勘違いしたからか。でも、今どきこんなしっかりした家(?)なのに電気がないなんて、どこに連れてこられたっていうんだ。

ちょっとこわいじゃん。


いや、こういう時こそ冷静に、大人の落ち着きを持って状況確認ですね。


(周囲の様子は…)


なんだか、誘拐されたには変な感じがする。

両脇に、背の低い謎の白い柵。その奥は いかにも御伽噺のお姫様の部屋って感じの様相。なんとなく遠い気がする天井。


————そして、たまたま視界に入った足が完全に赤ちゃんだったんだが。


謎の柵+見知らぬ部屋+遠い天井+赤子の足=…


要するに、あれだな、今私はベビーベットの上の赤ちゃんと言ったところか!!


やばい。

これは来てしまった。

私が。

異世界に。


おっしゃあぁぁぁあーーーーー!!!

ついにやってやりました!

だってそうだよね!?

今私客観的に見れば前世の記憶がある赤ちゃんだよね?!!

どうやら私は今!!

ラノベで読み漁り夢にまで見た転生andおそらく異世界を成し遂げたようです!!!


…といきたいところなんだが。

結果的に無理だった。あんまりテンションが上がらない。


だって…本気?

なんで私が異世界に。ってふざけたくなるレベルだよ。駅に貼ってあった塾のポスターなんかより、よっぽど疑問だ。

私…もう前世?の私は、東京に住む平凡な女子高校生(18)。つまり、どこにでもいるただの受験生だったわけなのよ。


ちょいコミュ障だったけど、私は周りの人と笑って過ごすことが幸せだった。空気はそこそこ読めるおかげで、世渡りはなかなかうまくいってたし、人にとても恵まれていたから。

趣味も好きな物もあったけど、それでもやっぱり人と関わるのが好きだった。周りの人が大事だった。


正直、私は死ぬのは怖くなかった。だからか、転生したかもしれないって結論に至った今もそこまで取り乱しはしていない。まあこれは、死んだであろう瞬間を思い出せないのもあるかもしれないけど。

でも私が死んだら、みんなが私のために惜しまないでいてくれた、お金はもちろん、期待も心配も愛も、全て無駄になってしまうと思っていた。

だから生きてきた。

生きてきたのに。


それなのに…

私は死んだらしい。


(恩、返せなかったなぁ)


正直まだピンと来ないし、やっぱり夢なんじゃないかって考えてる自分もいる。でも今までの感覚からして、これはきっと現実(リアル)だ。私は夢の中でも、夢だって気づける人間なのである。


まだ受け入れることも反発することもできない。それでもぼーっとした頭で自分の状況を理解しながら、この世界でどうやって適応していくかを考えていく。さすがにこの状況で、無策でいるわけにはいかない。

そんな私を尻目に、まだ少し薄暗かった空はようよう朝に近づいていった。



―――――――――



もう殆ど空が白け部屋に日が差す中、私はまだまんじりもせず思考に耽っていた。というかそもそも、赤ちゃんにできることなど何もないので考えることしかできない。


実はあの後、前世…の記憶が一部しか残っていないことが判明した。ほとんどないって程でも、ちょっとだけ欠けたって程でもなく、すごく中途半端にそこそこ残ってるんだよね。

そして不思議なことに、今も覚えてる出来事は、前世でもそんな覚えてなかったぞってくらい最初から最後まで記憶している。対して、18年の尺的に明らかに足りない出来事は、1ミリも覚えていなかった。


わかりやすく言うなら、うーん、ユー◯ューブの動画みたいな感じ?

覚えてる動画は、最初から最後まで完璧に脳内再生できるんだけど、覚えてない動画は存在すらしていない。


なんか変なカラクリでもあるのかって気になるけど、その記憶は冷静に思い返せる自信がないので一旦保留。今は、この状況を受け入れるだけで精一杯よ。深い振り返りはちょっと無理。


そうして少し混乱が落ち着いたところで確認した感じ、ここはどこかお偉い方のお屋敷のようだ。

内装の豪華さといい、ベッドの柔らかさと言いね、私の服も、フリルが付いて可愛らしいものだったし。

もちろん明らかに日本では無し。中世ヨーロッパって感じよ。もう訳分からんけどね。


もしかしたら、私はこのお屋敷のお嬢様だったりするかもしれない。めちゃ高待遇だもん、この世界(ここ)の基準知らないけど。

でもまあ、それはどうでもいい。

私的には家族仲がいいかどうかの方が問題だから。別に家族が仲良しなら、身分は気にしない。

…お金があるに越した事はないけど、ね?


よし、取り敢えずまだ何も分からないけれど、今後の目標は決めよう。

それはこの世界を、楽しく後悔なく生きていくこと。

言葉にすると、結構普通なものである。でも人生2回目の私は知っているの。それは結構難しいということを。

だから私は、この目標を全力で達成する!

お待たせしました!

ここからようやく、本編in異世界が始まります。


今後の更新に関しては、週3話以上を目指したいと思います。下のTwitterで更新情報を呟いていくので、ぜひそちらからご確認くださいm(_ _)m

↓↓

https://mobile.twitter.com/atHaruHana

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