寝て起きたら、悪意の真っ只中だった件。
出会いに感謝゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜
悪意の散歩 ②
*注意事項*
あまり悪意を覗き込まないように。
混じりあって染まってしまうから。
*注意事項*
「ですが…」
と、ほの暗い瞳の男が、先を続ける。
私は、この一連の流れを知っている。
彼は彼等は、善意の者を食いものにする輩だ。
「ですが、私は、あなた様に、助けて欲しいとはお願いしておりません。」
男は続ける。
「ましてや、あなた様が勝手に私にお使いになった薬は、私が私の命よりも大切にしている、とても高価なお薬なのです。」
なるほど。善意の者の罪悪感を上手く突いてくるな。
「お薬代を払っては頂けないでしょうか?」
お願いする感じを装ってはいるが、明らかに強要している。
ましてや、その顔は上手く行ったことに愉悦を感じているのか、見るに堪えない歪んだ笑顔だった。
私は、片膝をつき、男の瞳を覗き込みながら尋ねる。
「1つ、質問を良いだろうか?」
起き上がり、座ったまま私を見上げる体勢だった男が、一瞬身じろぎ、訝しげに瞳を見開く。
今まで、このような対応をされたことが無いのだろう。
やや、後ろにのけ反る形で、男は頷いた。
「あなたの命の値段は?」
「はっ?」
どうやら、全くの予想外だったようで、男の視線が彷徨い、周りの人垣の最前で陣取り、ニヤニヤしていた男に目を止めた。
男は慌てて視線を逸らす。
それをチラリと視界の角に納めながら、男の回答を待つ。
男は視線を、今度は何もない上空へと彷徨わせたあと、今度は道端の溝へと視線を落とし、
意を決したかたのように、口を開いた。
「銀貨1枚でございます。」
なるほど。再び質問をする。
「して、あなたの命よりも大事な薬の値段は?」
男は再び、ニヤリとして、私を見据えた。
そして、私の意図が解ったかのように、私を上から下まで値踏みするようにじろじろと遠慮なく見た後、
「金貨1枚でございます!」
なるほど。それは勝手に使われたら大損だろう。
私は、1つ頷くと続ける。
「では、あなたの命よりも高価だと仰る薬の出所を教えて頂けますか?」
男はハッとして、慌てて先ほどの人垣の最前列にいた男を見るが、既にそこに男は居なかった。
男の目が驚愕に見開かれる。
居なくなったのは、あの男だけでなかった。
先程まで、最前列でバリケードのように陣取っていた、ガラの悪い男どもが、
一斉に蜘蛛の子を散らすように、人混みに紛れながら、遠ざかっていたのである。
男は青くなり、下を向いた。
感謝゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜感謝