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89.失恋


怜琳れいりん殿・・・。お久しぶりです」


黒綾こくりょう殿久しぶり。怪我は大丈夫?」


黒綾こくりょう殿はちょっとやつれていた。私が怪我してから2週間。

庭園のテラスでわたしと黒綾こくりょう殿、雷覇らいはの三人で会っている。

やっと対面することが出来た。彼の左頬はもう腫れていないがまだ少し痣が残っていて

痛々しい・・・。かわいい顔が台無しだわ・・・。


「大丈夫です。怜彬れいりん殿も足の怪我は大丈夫ですか?」


「うん。まだ痛いけど、平気よ!」


「そうですか・・・。良かったです・・・すいません。僕のせいで怪我まで・・・」


黒綾こくりょう殿のせいじゃないわ!わたしが勝手に怪我したの。だから気にしないで」


「ありがとうございます・・。怜彬れいりん殿」


そう言って黒綾こくりょう殿は俯いてしまった。彼が今どんな気持ちでここにいるかは

わたしではわからない。辛いかもしれないし、悲しいかもしれない・・・。

でもわたしはまたこうして黒綾こくりょう殿に会えることが嬉しい。


黒綾こくりょう殿・・・。わたしは、雷覇らいはの婚約者だからあなたの気持ちには応えられない」


「はい・・・」


泣きそうな顔で黒綾こくりょう殿に見つめられる。


「でも・・。弟のように大切に想ってる。それは本当よ・・・」


「は・・・い・・・」


「ありがとう・・・。わたしを好きって言ってくれて」


わたしは笑顔で黒綾こくりょう殿の手を握った。黒綾こくりょう殿も握り返してくれる。


「僕も・・・ありがとうございます・・・。怜彬れいりん殿。きちんと返事をくれて・・・」


「うん。今は無理でもまた前みたいに話せたら嬉しいわ・・・」


「はい・・。ぼくもです」


明るくてかわいい黒綾こくりょう殿・・・。いつも天使の笑顔でわたしを助けてくれた。

彼の気持ちに応えることはないけど、何かあれば助けてあげたいし力になりたい。

怜秋れいしゅうと同じくらい大切な人だ・・・。


「じゃあ・・・。僕はこれで失礼します。お時間頂きありがとうございました」


そう言って黒綾こくりょう殿は頭を下げてテラスを立ち去った。

わたしと雷覇らいはだけがテラスに残った。わたしは彼の後姿を見つめた。

もう、俯いてはいなかった。上を見上げて歩いているように見えた。


「ありがとう、雷覇らいは。一緒にいてくれて・・・」


「ああ・・。怜彬れいりん、大丈夫か?」


「うん・・。大丈夫。ちょっと複雑な気持ちだけど・・・」


「そうか・・・」


それだけ言って、雷覇らいはが肩を抱きしめてくれる。

雷覇らいはが傍にいてくれることが心強かった。辛いのは黒綾こくりょう殿だけど・・・。


「でも・・・。くよくよしてても仕方ないわね!黒綾こくりょう殿の事だからまた前みたいに話してくれるわよね?」


「そうだな。黒綾こくりょう殿はしっかりしている。きっと大丈夫だ」


「うん!そうね・・・」


わたしは黒綾こくりょう殿から貰った、ブレスレットを見つめた。

身に着けることはないけど、大切に持っていたい。彼の気持ちは大事にしたかった。






*-------------------------------------*

僕は一人でテラスをでて、自分の部屋に戻った。


終わった・・・。


少しホッとしたような気もした。これで自分の気持ちに一区切りつけることができた・・・。

涙は出なかった。望む結果は得られなかったが、心なしか気持ちはスッキリしていた。

どちらかというと、怜彬れいりん殿を怪我させてしまったことの方が辛い。

僕と雷覇らいは殿を止めようとして足を挫いた。僕があんな事しなければ

彼女は怪我をせずに済んだかもしれない・・・。


思った通り怜彬れいりん殿は真っ直ぐ気持ちを受け止めて答えてくれた。

僕の目を見てちゃんと話してくれた・・・。

また前みたいに話したいとも言ってくれた。それだけでもう十分だった。


雷覇らいは殿にも感謝した。普通ならもう会えるはずがない・・・。

人の婚約者に手を出してしまったんだ、しかも国王の・・・。

本来なら、処刑されてもおかしくないし命は助かったとしても国を追放されても仕方なかった。

これからは何があっても彼に恩返しをしていこうと思った。


怜彬れいりん殿を好きになってよかった。心からそう思う。

彼女のおかげで、恋とは・・・人を好きになるという事はどういうものなのか学んだ・・・。

たくさんの自分の中にある感情を知った。後悔はないし様々な経験ができてよかったと思う。

怜彬れいりん殿と出会わなかったら味わえないことだった。



「ああ・・・。でもやっぱり失恋はきついなー・・・」


僕はベットの上に寝そべって呟いた。

胸がズキンズキンして痛い・・・。心臓がえぐれるような感覚がある。

今も目を閉じると怜彬れいりん殿の眩しい笑顔を思い出す。

思い出すたびに、きっと泣きたくなるだろう・・・。しばらくこの気持ちは癒えそうにはない。


「でも・・・。僕にしては頑張ったよね・・・殴られたけど・・・」


殴られたことに関しては仕方ないと思っている。

これも人生で初めての経験だった。兄とは歳が離れているため喧嘩はしたことない。

機織りが趣味だから、血生臭いこともしたことがない。

誰かに殴られることももちろんない・・・。凄い衝撃だったな~・・・。

今にして思えば、銀獅子ぎんししのものに手を出してよく生きていたと思う。

怜彬れいりん殿が止めてくれなければ死んでいたかもしれない・・・。


それだけ好きなんだよね。怜彬れいりん殿のことを・・・。

僕は逆の立場だったらそこまでできたかな・・・?

一途に周りも見えなくなるくらい誰かを好きになる事なんてできるんだろうか?

自分の人生を掛けてでも遂げたいと思う人はいるんだろうか・・・?


「今のところ・・・。無理だな・・・・」


はぁと息をついた。怜彬れいりん殿以上に好きになれる女性なんていない。

想像もできなかった・・・。自分の人生を掛けるほどの女性・・・。

そんな人に出会えたら最高だろうな。雷覇らいは殿が羨ましいな・・・。

今はまだこの気持ちを味わおう・・・。そう静かに思った。


そして前に進もう!せっかくこの国にいれるチャンスをもらえたんだ・・・。

しっかり役に立って恩返ししよう。

僕はそう決めて洗面台で顔を洗った。


鏡に映った自分は晴れ晴れとした顔をしていた。


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