84.錯綜
「なに?!珀樹殿に技術提供してもらう?」
わたしは執務室で、雷覇に珀樹殿と話した内容を伝えた。
とってもびっくりされてしまった。まぁ・・。当然よね~。
「そうなの!秋唐国って電気がないでしょう?それにうちと取引できるなら、珀樹殿もお家で責められないかなって」
「怜彬・・・。何も君がそこまでしなくても・・・」
「あら?お互いメリットがあるからそうなったのよ?それに珀樹殿は、とっても博識で努力家だったの!」
「怜彬殿は本当に凄いね!そのうち五神国全部を支配しちゃうんじゃない?」
「えっ?そんなことしないですよ!」
真顔で水覇殿に言われてしまった!!なんかショックだぞー。
「ああ。怜彬ならできそうな気がするな・・・。出会う人みんな怜彬を好きになるからな・・・」
「そうだね。黒秦国も手中に収めているしね・・・。後は四季国くらいか・・・」
「ちょっとちょっと!変なこと言わないで!わたしにはそんなつもり全くないんだから」
「計算なしでここまでやれるのか・・・。怜彬殿は末恐ろしい人だ」
「さすが、五神国一の美女だな!!」
「何がさすがなのよ!もう!二人とも好き勝手いっちゃって」
むー。二人とも好き放題言ってくれるわね!珀樹殿の件があって
水覇殿と雷覇の関係は良好だ。
まぁ・・・。2か月間お休みをもらったから
水覇殿のストレスが軽減されたからだろうけど・・・。
「僕も何かあればいつでも怜彬殿をお手伝いしますよ!!」
「もう~。黒綾殿まで・・・。でもありがとう!」
わたしは黒綾殿の頭をなでなでした。
黒綾殿は本当に裏表がないからかわいいわ!
それにわたしが困っていたら絶対に助けてくれそうよね!!
「話を戻すけど。冬羽国の手続きが終わったら、珀樹殿がまたここに来てくれる予定なの!」
「わかった!こちらもそのつもりでいよう」
「ありがとう!雷覇。じゃあわたしはお庭を見てくるわ!」
「ああ。俺もお昼にそちらへ行くよ」
雷覇におでこに口づけされて、くすぐったくなったけど
気にしたら負けな気がするのでそのまま笑顔で部屋を出た。
仕事は引継ぎをお願いした人たちにそのまま任せてある。
黒綾殿は、勉強になるからとそのまま雷覇の手伝いをしている。
まぁ・・・。滞在させてもらっているから気を使っているかもしれないけど。
いい子よね~。黒綾殿!!そこまで仕事しなくても大丈夫なのに!
水覇殿も黒綾殿が仕事出来るって分かってからは
結構な量の仕事を振っている。体調壊さないように言わないと!無理はダメよね!
それにしても・・・雷覇は、本当におとなしくなったわよね~。
以前なら絶対にお庭についてくるって言いそうだもの!!
ちょっとは大人になったのかしら?わたしが秋唐国へ帰っている間も
勢力的に仕事をしていたそうだった。
足の怪我もきちんと治そうとしていたし、ちょっとずつ落ち着きを取り戻しているように思う。
「さて・・・と!リンリン!ちょっと相談したいことがあるんだけど」
「なんでしょう?お嬢様」
わたしはまわりに誰もいないことを確認して、リンリンを呼び出した。
さっそく、雷覇の事を相談した。
「なるほど・・・。なるべく自然に雷覇様と二人きりになりたいと・・・」
「そうなの~。告白しようとするタイミングでいつも、誰かが来たりして最後まで言えないの!」
「完全に人払いをする必要性がありますね・・・。ただそうするとムツリ様やサイガ様の協力が必要となりますが・・・」
「ううう。そうよね~。やっぱり言わないとダメよね?」
「そうですね。秋唐国ならまだしも、ここは夏陽国ですから・・・。こちらを管理されている方にお願いするのがよろしいかと」
「はぁ・・・。恥ずかしいな~。告白したいから二人きりにして欲しいって言うの」
何かいいアイディアはないかしら・・・?雷覇と普通に二人きりになれて
尚且つ誰にも邪魔されないようにする・・・。そんな落ち着ける場所とかあればな~。
う~ん。自分の国じゃないからあまり好き勝手するのもよろしくないしね・・・。
・・・・。あっ・・・・!!一つだけあるじゃない。誰も来ない場所!!
「リンリン!炎覇の残してくれた別邸はどうかな?」
「あそこですか・・・。いいかもしれませんね」
「でしょ?あそこなら、雷覇と二人きりになれるし、人払いしても不自然じゃないものね!!」
「ではそこに雷覇様と一緒に行けば大丈夫ですね!」
「うん!そうしよう!理由は何でもいいし!」
「もう一度、別邸で過ごされたいと、雷覇様にお願いしてみてはどうですか?」
「なるほど!いいアイディアね!ちょっと内装を変えたいとか言って見に行けば自然よね」
「はい。誰も何も言わないと思います」
「ありがとう!リンリン!さっそく後で雷覇に言ってみるわ」
「かしこまりました。私も準備致します」
やったー!!これなら上手くいきそう!!それにあそこなら今後、夏陽国に
滞在するときに使用してもいいし!せっかく炎覇が作ってくれたものだもの。
大事にしたいわ!!はー。スッキリした~。
わたしは上機嫌で、お庭のお花を世話していた。
「怜彬殿・・・。ちょっといいですか?」
「黒綾殿!どうしたの?」
珍しく緊張した様子の黒綾殿。何かあったのかしら?
「あの・・・。怜彬殿にどうしてもお伝えしたいことがあって・・・・」
「なあに?改まって」
「僕・・・。これを怜彬殿に渡したくて・・・」
黒綾殿から差し出されたのは、綺麗な包装紙に包まれた箱だった。
「これを・・・わたしに?」
「はい!僕の気持ちです・・・」
「ありがとう!開けてもいい?」
「どうぞ」
わたしは包みを取って箱を開けた。すると綺麗な桃色のブレスレットが入っていた。
・・・・。これってこの前一緒に見に行った時に買っていた・・・。
「・・・・。黒綾殿これって・・・あの時の?」
「そうです。怜彬殿にあげたくて僕が買ったものです」
「ローズクオーツのブレスレット・・・どうして?黒綾殿の好きな人にあげるものでしょう?」
「ええ。だから買いました。僕の好きな人は怜彬殿です」
「えっ?」
急にあの時の会話を思い出した。黒綾殿はわたしの事を考えて買ったの・・・。
うそ・・・。だって・・・わたし・・・。
「僕は初めて会った時から、ずっと怜彬殿が好きです」
真っ直ぐ私を見つめる真っ赤な瞳・・・。ルビーのような瞳・・・。
初めて会った時から?ずっと?頭の中が混乱していた。だってそんな素振り一度も・・・。
でも、黒綾殿の表情は真剣だ。ちゃんと答えないと・・・。
「黒綾殿・・・。わたし・・・」
伝えようとして言葉が詰まる・・・。一体どんな気持ちでわたしと一緒にいたのだろう?
いつも笑顔で明るくて、素直な黒綾殿。弟みたいだと思っていた。
でも、黒綾殿は違っていた。わたしの事を好きだという・・・。
「いいんです。怜彬殿の気持ちはわかってます・・・。雷覇殿の事がすきなんですよね?」
泣きそうな顔で黒綾殿に聞かれる。
「・・・・っ!!ええ・・・。わたしが好きなのは雷覇よ・・・」
どうしよう・・・。なんて言ったらいいの?何を言っても彼を傷つける。
わたしは黒綾殿の想いには応えられない・・・・。
「ごめ・・・んなさい・・・。わたし・・・ぜんぜん・・・気が付かなくて」
不意に涙が出てきた。泣きたいのは黒綾殿のはずなのに・・・。
ごめんとしか言えない自分が不甲斐なかった。
「怜彬殿・・・。泣かないで。僕はただ自分の気持ちを伝えたかったんです・・・」
「黒綾殿・・・・わたし・・・」
次の言葉を話す前に黒綾殿に抱きしめられる。
とても力強かった。そして少し震えてた・・・。
「ごめんなさい。怜彬殿・・・。少しだけ・・・このままで」
「黒綾殿・・・」
彼の気持ちが痛いほど伝わってくる。そんなにわたしの事を想っていたなんて。
それなのに、わたしは好きな人はどんな人とか・・・。
プレゼント渡せるといいねとか・・・無神経な事たくさん言ってしまった・・・。
「怜彬殿・・・泣かせてしまってごめんなさい。ただ、自分の気持ちに区切りをつけたかったんです」
わたしを抱きしめながら、黒綾殿が話してくれる。
声も震えていた・・・。好きだって伝えるのにどれだけ勇気がいっただろう。
わたしも雷覇に告白しようとして、凄く緊張した。両想いって分かっていてもだ。
でも・・・。黒綾殿は違う・・・。わたしには気持ちがないことを知っていて
今日話してくれた・・・。彼の真摯な気持ちがよくわかった。
だったらわたしは、受け止めて彼に誠意を持って伝えなきゃ!
混乱していた頭も少し落ち着いてきた。黒綾殿にきちんと断ろう。
「黒綾殿・・・。ありがとう。嬉しいわでも・・・わたしは」
「二人で何をしてるんだ?」
ひゅっと心臓が小さくなった気がした。振り向くと鋭い目つきの雷覇が立っていた。
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