81.作戦会議
誰かと何かをするってとってもワクワクしますよね(#^.^#)
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・・・・。やっぱりわたくしでは敵わない。とっても綺麗で素敵な人だわ。
怜彬様を初めて見た瞬間、そこだけ別世界のような感覚に囚われた。
雷覇様が好きなのもわかるわ・・・。中庭で佇まい怜彬様は
まるで太陽の女神様みたい・・・。そこだけ輝いて眩い光を放っている。
目を細めて見ないと直視できないくらいの・・・。太陽を見上げたような感覚。
それに話していてとても楽しい・・・。心が温かくなる。
どうして張り合おうとしたのかしら。
自分が酷くみじめで虚しい存在だと感じた。彼女はわたくしとはまるで正反対。
太陽の様な人。多くの人々を照らしてくれる人。
ああ・・・。こんな事なら欲を出さなければよかった。恥ずかしい・・・。
わたくしだけ特別だとどうして思ったのかしら・・・。
お見合いのあの日。雷覇様と唯一言葉を交わしたのがわたくしだった。
花を愛でる人が好きだ。と彼はそう言った。花好きな女性がタイプなのかと思ったが
全く別だった。彼はすでに特定の人を思い浮かべてそう言ったのだ。
「わたし、お花や草木が大好きなんです!見てて心が和むでしょう?」
キラキラ眩い笑顔で話す怜彬様。彼女が花を愛でる人・・・。
お花が大好きで自分の庭園を持つほど熱心にお世話されている。
そんな彼女を温かな笑顔で見守る雷覇様。穏やかな笑顔で笑ってはいるが
瞳は熱い情熱で燃えている・・・。怜彬様が恋しくて仕方ないと言っている瞳だ。
わたくしと話している時とは大違い・・・。ふふふ。それも、そうよね・・・。
そもそもわたくしの事は全く覚えていらっしゃらなかった。
わたくしだけが宝物ように過去の記憶を磨いて満足していた。
もう・・・。終わりにしよう。わたくしはそう静かに決心した。
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「全く・・・。兄さんは問題を起こさないと気が済まない質なの?」
2ヶ月ぶりに夏陽国へ戻ってきた水覇殿が会うなり
雷覇を罵った。抜群の安定感だった。さすがだわ!水覇殿!!
わたしが、夏陽国戻ってきた次の日、水覇殿も一日遅れで戻ってきた。
とても楽しい休暇だったそうで、顔色はとてもよく頬もつやつやしていた。
「俺も好き好んで問題を起こしているわけじゃない・・・。だが迷惑をかけてすまない」
そう言って雷覇は水覇殿に頭を下げた。
水覇殿はとっても驚いた表情をしていた。
「驚いた・・・。兄さんがこんなに素直に謝るなんて・・・。なんか変な物でも食べたの?」
「食べてない!それより水覇。今回の珀樹殿との交渉に立ち会ってほしい」
「いいよ。どのみち僕も知っておいた方がいいしね。兄さんと二人でなんて久しぶりだな!」
ちょっと嬉しそうな水覇殿。やっぱり、雷覇から頼りにされると
嬉しいのね!!水覇殿が協力してくれるなら、心強いわ!
あとは、珀樹殿がどんな人か?よね・・・。
珀樹殿は今日の午後3時にこちらに来る予定だ。それまではまだ時間がある。
ある程度どうするか決めておきたいところだった。
「雷覇。珀樹殿ってどんな人か調べられた?」
「ああ。報告書が来ている。これだ」
雷覇から報告書を手渡された。
目を通すと、事細かに珀樹殿の事が記載されていた。
すごい・・・。たった一日でここまで調べているなんて。
夏陽国の情報収集力の凄さを実感した。
珀樹殿は、冬羽国でも有名な貴族の5人姉弟の長女で
今年25歳。控えめな性格ではあるが真面目で細やかな気配りができる為
他の貴族からの信頼も厚い。彼女の家系は代々、武器製造に必要な技術の向上や改良
生産性アップなどに貢献しており、昔から夏陽国とのつながりが深い。
特に珀樹殿の父親は貴族の中でも発言力が強く、娘思いで
娘によりよい相手と結婚をと考えている傾向が強い。
雷覇が15歳の時に許嫁候補として名前が挙がっていたが
戦争が重なったことと、炎覇がその後すぐに引退してしまったことで
話が流れてしまっていたそうだった。
そうしている間にわたしとの婚約が決まり、今日にいたる。
なるほど・・・。かなり前から雷覇との結婚を望んでいたのね。
それをわたしが横から入って取ってしまった感じになっている。
この結婚自体を珀樹殿がどう思っているのか?そこが鍵よね・・・。
彼女が望んでいないのであれば、お父様を説得してもらって別の提案をして解決!
ってことになるのだろうけどな・・・。
珀樹殿が雷覇の事を好きで結婚したいと思っているなら
ちょっと難しそう・・・。そう簡単に諦めてはもらえなさそうだ。
「元々、雷覇の許嫁候補だったのね。全く面識がないわけでもないのね」
「そうだね。僕も一度会ったことがあるよ。大人しい人だから印象は薄いけど、彼女の父親がかなりうちとの繋がりを強化したいと言っていた事は覚えてる」
資料を机の上に置きながら水覇殿が話す。
「つながりを強化したいだけなら、別の方法を提案すれば問題なさそうだな」
「それは難しいと思いますよ~」
サイガが話の途中で入ってきた。彼にしては珍しい事だ。
「どういう事だ?サイガ」
「前に雷覇が呼び出した時に傍で見てたけど、あれは絶対に惚れてる顔だね~。婚約に凄くこだわってて一歩も引かなかったもんね」
「そうだったか?そんなに惚れている様には見えなかったが・・・」
「うーん・・・。じゃあ別の方法を提案しても難しいわね。彼女の目的が雷覇との結婚だもの」
「怜彬!俺は結婚する気はないぞ!」
凄く焦った様子で雷覇が弁明してくる。
だけど、水覇殿にバッサリ突っ込まれてしまった。
「兄さん!話を逸らさないでよ。今は珀樹殿をどう納得させるか?でしょ」
「う・・・。すまない・・・」
「雷覇にその気がなくても、向こうがその気ならどんなに説得しても無理ね」
「説得しない方が良いだろうね。頑なになって余計にこちらの言い分を聞いてもらえない可能性がある」
「そうね・・・。好きって気持ちは簡単にどうにかできるものじゃないものね~」
ふぅ。困ったな~。どうしたら諦めてもらえるかしら?
「珀樹殿が兄さんを好きなら、見せつけてやればいいんじゃない?」
「見せつける?何を?」
「そんなの決まってるじゃないか!怜彬殿と仲睦まじい姿をだよ!」
「ええっ!!」
満面の笑みで水覇殿が恐ろしい提案をしてきた。
なんてこった!まさかそんな方法を思いつくなんて・・・・。
「それはいいアイディアだな!水覇!!」
ああ・・・。銀獅子がノリノリですよ・・・。
「ちょっと待って!そんな人前でなんて恥ずかしいわ!もっと別の方法にしない?」
「どうしてさ?彼女が自分では兄さんの心は奪えないって思えば万々歳。勝手に諦めてくれるよ」
「確かにそうかもしれないけど・・・。諦めてもらうほどの仲の良さをアピールしないといけないんでしょう?」
雷覇は良くてもわたしは嫌だ!恥ずかしい!!
人前であれやこれやとされたら・・・。もう一生誰とも顔を合わせられないわ!
「そんな事、普段から兄さんとしてるでしょ?そこは問題ないとして、他の条件をどうするかだね」
そんな事って・・・。普段からやってるって・・・。ううう。だめだ。水覇殿は
全く聞く耳を持ち合わせていない。
「怜彬!俺たちの絆の深さを見せてやろう!」
「雷覇・・。お願いちょっと黙ってて」
手を握って目をキラキラ輝かせる雷覇。
ああ・・・。憂鬱だわ。甘々フェロモン攻撃を人前でやるなんて・・・。
特に最近は頻度が減ってきたから免疫力落ちてる気がするのに。
しかも・・・。仲の良さ自慢だから嫌がっちゃいけないのよね・・・。
途中で止めたり、諫めたりしたらだめなのよね。
「珀樹殿の家とは年単位で契約して、継続的な技術力の提供をしてもらうのはどうだろう?」
淡々と話を進める水覇殿。もう反論できる空気じゃなかった。
うわーん!!
「それはいいな。きちんと明確な契約があれば向こうも安心するだろう」
「じゃあそれで決まり!ムツリ契約書の準備を!」
「はい。かしこまりました」
「お姫様!頑張ってな~」
「ううう。サイガの裏切り者!」
「俺は雷覇に睨まれるのは面倒なんでね!」
「怜彬・・・。そんなに仲良くするのが嫌なのか?」
「雷覇・・・人前でするのが恥ずかしいって言ってるの・・・・」
だれもここにわたしの味方はいない!もう!泣きそうだわ!
「あっ!あと今思いついたんだけど・・・」
えっ?まだほかに何かあるの?水覇殿。
もう嫌な予感しかしない!!
「もう結婚する日にちが決まっている事にしちゃったらどうかな?」
「ええええええ!どういう事ですか?水覇殿」
何を言い出すのよ~!!待って待って!どんどん話がそれてくじゃない!!
「水覇・・・。お前は天才だな!!」
感嘆の声を出す雷覇。
もう雷覇の馬鹿!!ほんとにもう黙ってて!!
「婚約期間を延期って言っていたけど、二人で話し合った結果やっぱりすぐに結婚するとなって日にちも決まってるって言えばダメ押しになるよ!それにうるさいうちの貴族連中も黙らせる事が出来て、一石二鳥だ!」
「そうだな。貴族連中を黙らせることができればかなり楽だな。噂ならわざと広めて情報操作してもいいしな!」
「いいね!巷で流行っている小説に書いてもらおうよ!そしたら勝手に広まるよ」
「良い考えだな。サイガ!至急作者に依頼をしてくれ!」
「分かった!」
そう言ってどんどん話が進んでく・・・。あああ。小説にまで載るのか。
わたしのプライベートはないな・・・。これは。
もう・・・。いいや。この際だから思いっきりやって、早く終わらせよう!!
元々雷覇とは結婚するつもりだったし、まだ・・・。好きって言ってないけど。
水覇殿め・・・。絶対にわざと結婚のことを持ち出したんだわ!
こうして、わたしの意思を全く無視して、『珀樹殿諦めて!作戦』
が決行されることとなった。
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