76.夢のご対面!
仕事の引き継ぎも順調に終わり、いよいよ今日は秋唐国へ出発する日だ!
「怜彬。気を付けてな!何かあったらすぐに連絡してくれ…」
少し寂しそうにわたしを見つめて手を握る雷覇。
いつもなら、行くなと反対されるところを快く送り出してくれている。
「ええ。ありがとう。雷覇殿も体には気を付けてね!絶対に無茶しないでね!」
そう言ってわたしは雷覇をぎゅっと抱きしめた。
「ああ!分かっている。ちゃんと大人しくしているよ」
…本当かしら?とっても心配だわ!!
「ムツリ。雷覇殿のことお願いね!」
「かしこまりました!これ以上悪化させないよう、目を光らせておきます」
「そんな事しなくても、大丈夫だ!ちゃんと治療する」
「雷覇殿…。そう言って1ヶ月も怪我の完治が伸びたんでしょう?ちゃんとムツリのいう事聞いてね!」
「怜彬が…そう言うなら…わかった」
よしよし。ムツリが見ていてくれるなら安心だわ!
わたしは皆と別れの挨拶をして、馬車に乗り込んだ。
もちろん、黒綾殿やラカン、リンリンも一緒だった。
「楽しみです!ここから2週間かかるんですよね?」
「ええそうよ。結構、馬車が揺れるから酔い止め飲んでおいてね!」
そう言って馬車から手を振った。
雷覇やムツリ、サイガも手を振って見送ってくれている。
今日から秋唐国まで移動に2週間、過ごす期間が2週間。
1ヶ月近く、雷覇とは会えない時間ができる。
ちょっと寂しい。今回の滞在は2か月間とすごく長かった。
だけど泣き言を言っていても仕方ないわね!!
きちんとやるべき事をしよう!今回は黒綾殿もいるから心強い。
「今日の怜琳殿はいつもと違う香りがしますね!!」
ニコニコしながら、黒綾殿が尋ねてきた。
「ふふふ。わかる?雷覇殿の調香師を紹介してもらってね、香水を作ったの!」
「そうなんですね!とってもいい香りがします」
「ありがとう!とっても気に入ってるの」
つい先日、ザガクから香水の器を見繕ってもらったところだった。
どれも綺麗なガラス細工でコンパクトなものばかりだった。
リヨウとスバルが作ってくれた3種類のわたしの香水を持ってきている。
今回の帰国に間に合ってよかったわ!
「そういえば黒綾殿は一度も、黒秦国を出たこと無いの?」
「はい。誘拐の件がなければずっと黒秦国にいたと思います」
「そうなんだ…。外に出たいとは思わなかったの?」
「そうですね。あまり考えたことなかったです。どちらかというと兄の事で頭一杯だったので…」
「そっか~。でも…。よく考えてみればそうよね」
確かに、後継ぎ問題でお兄さんと対立していたら
外に出たいって思わないか…。
「黒爛殿とは連絡とっているの?」
「はい!定期的に手紙のやり取りをしています。あと、生地のサンプルを送ってもらったので、また秋唐国に到着したらお見せしますね!!」
「ありがとう!楽しみだわ~。やる事がたくさんあるわね!」
「はい!僕も楽しみです。怜彬殿と会ってからすごく沢山の経験をしました」
噛みしめるように黒綾殿が話し出す。
「偶然、川辺で黒綾殿を見つけたのよね~。懐かしいわ!」
「本当にそうですね!あの時に怜彬殿が来てくれなかったら僕は死んでいたと思います」
そう言って黒綾殿がぎゅっとわたしの手を握る。
「黒綾殿が元気になってよかったわ…」
わたしも握り返した。
黒綾殿は、素直でいい子よね~。
早く、怜秋に紹介したいわ!!
「本当に怜彬殿、ありがとうございます!」
ニコニコしながら話す黒綾殿。
「いいのよ。それより、怜秋に早く紹介したいわ!!」
「怜彬殿の弟さんですよね?たしか12歳になる…」
「そうよ!とってもかわいくて、賢くていい子なの~!!きっと黒綾殿とも仲良くできるわ!」
「わぁ!!ほんとですか?楽しみです!」
「秋唐国に着いたら、3人でお茶にしましょうね!」
「はい!」
ああ!今からほんとうに楽しみだわ!!
夢のダブル弟!大好きな怜秋とかわいい黒綾殿。
そんな2人に囲まれて、お茶を飲む…。なんて贅沢なの!想像しただけでワクワクするわ!!
わたし達は秋唐国へ向かう道中、リョクチャ事業の話をしたり
お互いの兄弟の話をして過ごした。
黒綾殿はいつも笑顔で話を聞いてくれてとっても会話が弾んだ。
そしてあっという間に秋唐国に到着した。
「姉さん!おかえりなさい!!」
王宮へ到着したら、怜秋が出迎えてくれた!
久しぶりの怜秋だわ!!ううう。感動で泣きそう…。
「怜秋!!ただいま!元気にしていた?」
わたしはぎゅっと怜秋を抱きしめた。
顔色もいいし、元気そうでよかった~。
「僕は元気だったよ!姉さんも元気そうだね!」
「ええ。風邪一つ引いていないわ!あ…。怜秋に紹介したい人がいるの!黒秦国の第二王子、黒綾殿よ!」
「はじめまして!黒綾と申します。よろしくお願いします!!」
「姉さんから手紙では聞いてました。はじめまして、秋唐国の国王。怜秋と申します」
あああ!!ついに夢のご対面ね!!眩しいわ!!
知的でクールな怜秋とかわいい天使の黒綾殿!!
本当にマーリンに頼んで、撮影隊を呼べばよかったわ…。
この2週間しっかりこの目に焼き付けよう!!
簡単な自己紹介をした後、四阿に移動した。
3人でお茶しながら滞在期間中のスケジュールを確認することになった。
今は3人で四阿のテーブルに座って、リョクチャを飲みながら話をしている。
「このお庭が怜琳殿の作ったお庭ですね!!」
「そうよ!わたしが5歳の時に作ってもらったものよ」
「凄い素敵ですね!!とっても落ち着きます」
「ありがとう。黒綾殿」
「姉さんは本当に、お庭いじりが好きだからね!夏陽国でも同じことをしてたの?」
「ええ!炎覇に作ってもらったお庭がそのままあるから、お世話しているわ!」
「炎覇殿ってどなたですか?」
黒綾殿に尋ねられた。
そういえば…。言ってなかったっけ?
「炎覇はわたしの最初の旦那様よ。病気でもう亡くなってるけど…」
「あ…。そうなんですね…。すいません。僕余計なことを…」
「大丈夫よ。ちなみに炎覇は雷覇殿のお父様なの」
「ええ!!そうなんですか?!」
とっても驚いた顔の黒綾殿。まぁ。びっくりするわよね普通…。
でも驚いた顔もかわいいわ!!
「その頃から雷覇殿とお知り合いなんですね…」
「そうなの!4年前からわたしの事を好きなんですって!」
そう話した途端、急に空気が暗くなって冷たくなる…。懐かしいなこの感じ。
あれー?なんか変なこと言ったかな?わたし!!
「雷覇殿の話はいいよ。姉さん…」
「ううう。ごめんなさい。怜秋…」
「じゃっ…じゃあ!リョクチャ事業の話をしましょう!!」
黒綾殿に気を使わせちゃった…。ごめんなさい!!
「そうね…。2周間しか無いし今日中に決めちゃいましょ!」
「そうだね。そうしよう」
ニコッと笑って返事をする怜秋…。
ふぅ…。なんとか怜秋の機嫌がよくなった。
本当に雷覇の事嫌いなんだな…。
ちょっと話しただけであの空気感…。
雷覇と仲良くなるにはそうとう時間がかかるわね。
うーん…。なかなか先が思いやられるわ…。
「これが、前にお伝えしていた黒秦国の機織り技術で作った生地です。怜琳殿に言われたとおり厚みを薄くしました」
そう言って、黒綾殿が生地を見せてくれる。
色とりどりの糸で丁寧に編み込まれている。
柄も幾何学模様や無地のものなど沢山用意してくれた。
「とっても綺麗だわ!それに厚みもちょうどいいわね」
「そうだね。これなら商品を包むのにもちょうどいいね!」
「ありがとうございます!気に入ってもらえてよかったです!あとこれユノミの下に敷く生地です」
黒綾殿が見せてくれたのは、正方形の小さな生地だった。
こちらも縦縞模様のものや花柄模様ものなど様々な柄が織り込まれていた。
「とっても素敵だわ!絶対に皆気に入ってくれるわ!」
「それにしても、凄い技術ですね。黒秦国の機織りは…」
「昔からの伝統技術ですから!僕も小さい頃から自分で作っていました」
「それは、すごいですね!どうやって作るんですか?」
「えっとですね…」
黒綾殿が怜秋に折り方の説明をしている。
ふふふ。ニヤニヤが止まらないわ!怜秋と黒綾殿が
仲良さそうに話をしている。やっぱり気が合うと思ったのよね~。
それにしても…。本当に素敵な生地ばかりだわ。
とても丁寧に仕事をしていることがよく分かる。生地は薄いが耐久性もありそうだった。
その後、わたし達はリョクチャ事業の話を進めた。
1週間後には、秋唐国でお世話になっている人を招待して
リョクチャの試飲会を行うことになった!!
とっても楽しみ!二人共すごく仕事ができるからサクサクと決まっていく。
うん。うん。順調ね!!なんとしてでも成功させなきゃ!!
ますます気合の入るわたしなのだった!
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