68.3本のバラの花
バラの花って本数で意味がちがうんですね…。
初めて知りました!!!(^^)!
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「4年前の怜彬様は本当に、何も感じないようにされていました。まるでこの世の全てを拒絶しているように…」
苦しそうに顔を歪ませながら、ラカンが話し出す。
「それを私やリンリンは見守る事しかできませんでした。ですが、雷覇様と再会されてからは、毎日とても楽しそうな表情をしておられました。小さい頃からよく見ていた笑顔に戻ったのです…」
「そうだったのか。俺は…何も知らなかった…」
「それも当然です。怜彬様は上手に隠してしまわれますから。だから…。雷覇様!どうか怜彬様を諦めないで下さい!!」
必死に懇願するようにラカンが俺に近づいてくる。
こんなに感情的な彼を見るのは初めてだった。
「やっと…。やっと怜彬様が、立ち直ったのです!簪を手放したという事は、過去を乗り越えたという事です!」
「ラカン殿…」
「怜彬様はやっと前に進まれた…。それがどれほどの喜びか…」
きっと彼も苦しんだのだろう…。この4年間ずっと…。
怜彬を小さい頃から見てきた彼の事だ。
親父のことはものすごく心配だっただろう。
「どうかこれからも怜彬様を宜しくお願い致します!!」
そう言ってまたラカン殿にまた頭を下げられた。
俺は慌てて彼を戻した。
「ありがとう…。ラカン殿にそう言ってもらえると嬉しいよ」
そう言って俺はラカン殿と握手をした。
もう一度、怜彬と会って謝ろう!
ちゃんと反省していることを伝えよう!そう思った。
俺は早速、怜彬に手紙をしたためた。
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目が覚めると、見慣れない天井を目にした。…。
「頭痛い…」
思いっきり二日酔いだった。
昨日の夜、マーリン達とお酒の美味しい料理屋さんを見つけて入った。
どれだけ飲んだのかわからない。
黒綾殿は意外と強くて、わたしのお世話をしてくれていた。
マーリンに至っては水のようにお酒を飲んでいた。
うう…。まぁ…。昨日、一昨日よりも気分はましか…。
頭痛いけど…。
雷覇に思いっきりビンタを食らわせてから2日目。
未だに彼と会う気にはなれないが、少し怒りが落ち着いてきた。
足…。大丈夫かしら?あの時普通に立ってたわよね…。
「怪我…。ひどくなってないといいけど…」
机の上に置いてある、金色の髪飾りを見て手に取った。
これを作ろうと言った時の雷覇はとても嬉しそうな顔をしていた。
穏やかな表情でわたしを見つめる目…。
雷覇…。わたしが好きになった二人目の人…。
「どうしていつも待ってくれないのかしら…」
いつも、いつも…。わたしの事を待つと言っておきながら
自分の気持ちを抑えることが出来ない。
感情のままにわたしに触れてくる…。
それは嫌ではない。雷覇に触れられるのはわたしも嬉しい…。
でも、一昨日のアレはないわよね~。
はぁ…。本当に!ほんと~に!!恥ずかしかったんだから!
二人きりの時でさえ、心臓が止まりそうなくらい恥ずかしい。
それを他人に見られるなんて…っ!!
どんな罰ゲームよ!…。でも…。
それくらい嬉しかったのよね。わたしがこれを身に付けたことが…。
手の上でキラキラ輝く髪飾り。
光に当たるたびに細かい光が反射して輝いている。
よし!!雷覇のアレは病気だと思おう!!
もう治らない、一生付き合って行かないといけない病気!
「今度から、人前でしたら1週間、寝室別にしてもらおう!」
そう言ったたぐいの条件なら効果抜群な気がした。
今の彼なら何も言うことはできないだろう。
反論できる余地などない。今回の件は完全に雷覇が悪い。
それなら、今後を見据えて条件を出した方が良い気がする。
わたし自身も、もう雷覇とは離れられない。
やっぱり彼が好きだった。
きっと会えば許してしまうだろう…。そんな気がしている。
「はぁ…。わたしも病気ってことね…」
ベットに横になって、彼といた時を考えた。
傍にいると心地良い。ホッとする…。
彼に触れられると胸が高鳴って、体中が熱くなる…。
ううう。やっぱり駄目だわ…。もう会いたくなってきてる…。
ダメ!ダメ!我慢よ!!
ここで会ったら絶対!!今後の為にならないわ。
ずっと一緒にいるなら、ちゃんとしないと!!
「人前で触れたら、1ヶ月間、わたしに口づけ禁止とかどうかしら…?」
そうなったら絶対に、叱られた犬みたいに落ち込むだろう。
ふふふ。そう考えたら少し可哀想な気もする…。
かわいいだろうけど。わんこ雷覇…。
でもでも!何でもかんでも許すと一昨日の事のようになりかねない。
非公式だったからまだ良かったものの、あれが公式の場なら最悪だ。
「それとも婚約期間延長してもらう?…。それもありかもね!どうせ怜秋が反対しているからできないし!」
うん!そうしよう!!
今回の罰として婚約期間の延長。あと2、3年は延ばしてもらおう。
そして人前で触れたら、1ヶ月間、わたしに口づけ禁止!!
これに決まりね!!よし。よし。これならあんな事態はさけれそうね!!
「あー!!スッキリした!そう思ったらお腹すいちゃった」
そう思って立ち上がったときに扉をノックする音が聞こえた。
「怜彬様。お届け物が届いております」
お届け物…?なにかしら?
「ありがとう」
扉を開くと、旅館の従業員が立っていた。
わたしはドアを開けて、荷物を受け取った。
手紙をみると、雷覇からだった。
居場所…。バレているのね…。さすがだわ。
『怜彬へ
一昨日の事は本当にすまない。俺が悪かった。
自分の愚かさを猛烈に反省している。
だから…。どうか帰ってきて欲しい。
もう一度ちゃんと君に会って謝りたい。
どれだけでも待つから、俺のところまで帰ってきて来てくれ。
雷覇より』
「本当に…。ばかね…雷覇」
自然と顔がほころぶのがわかった。
わたしが帰るところは雷覇の所だけなのに…。
わたしの気持ちをちゃんと聞かないからこうなるのよ?
手紙には彼の香水が振りかけられていた。
いつものシトラスの香り…。
手紙と一緒に花も3本添えられていた。
綺麗な真っ赤なバラの花だった…。なんで3本なんだろう?
確か送る本数で意味が違っていたはずだ。
バラの花3本って…。花言葉は…。
「愛しています」
意味がわかった瞬間、ぶわっと体中が熱を帯びるのが分かった。
ほんとうに…。ばか…。
わたしはもう一度、手紙を顔に近づけて香りを嗅いだ。
その日は午後から、マダムベリーのお店に行くことにした。
旅館で軽くご飯をたべたあと、わたし達はお店に向かった。
夏陽国で一番のオーダーメイドの服を手掛けるお店。
雷覇も小さい頃からお世話になっていると言っていた。
マダムベリーのお店は大通りの、一番目立つ場所に立っていた。
見た目が大きな洋館のような佇まいで、白と青を基調とした落ち着いた雰囲気だった。
「いや~ん♡ワクワクするわね!」
朝から楽しみにしていたマーリン。
やっぱり同じデザイナーとして、刺激されることもあるのかしら。
「まぁまぁ!いらっしゃいまし!!怜彬様~」
いつものパワフルなオーラで、マダムベリーが出迎えてくれた。
「一昨日はお見苦しいところを見せてしまって、申し訳ございません」
わたしは深く謝罪した。
せっかく時間をあけてきてくれていたのに…。
わたしはその場から出て行ってしまったのだ。最低だ…。
「いいですのよ~!!お気になさらないでくださいまし♪わたくしとしましては、とてもいいものを見れましたわ~」
ものすごいいい笑顔で、マダムベリーが話してくれた。
あー!!昨日の口づけの場面見られてたのよね!!
ぐふぅ…!!今さらながら、ダメージが…。
「やはり!小説の通り、お熱い二人の関係!ほとばしる愛!!素晴らしいですわ~」
「はぁ…」
あああ!そうだった!
マダムベリーって例の小説のファンだったんだ!!
「れいちゃん、小説ってなんの事~?」
「何でもないの!!気にしないでマーリン!!」
「こちらの小説でございますわ~」
持ってんのかい!!
ぎゃー!!やめて!!お願いします!!
わたしは止めようとしたけど遅かった。
マーリンと黒綾殿に手渡されて
二人は小説を見てしまった…。うう…。
もう終わりよ。破滅だわ…。
「凄い小説ですね!!夏陽国ではこれが人気なのですか?」
「やだ~♡すごく面白いじゃな~い!!」
「そうでしょう?今この国で一番流行っている小説ですわ~♪オホホ~」
もう…。その場で倒れそうなくらいの眩暈を覚えた。
やめてください。お願いします。
それからしばらくの間、わたしは絶え間ない辱めを受けることになった。
トホホ…。
落ち着いたところでお店を見せてもらい、陶器の商人を紹介してもらうことになった。
かなりの高齢の方らしいが、長年の経験から見る目があり
マダムベリーが最も信頼している人だそうだ。
そんな人を紹介してもらえるなんて!!
雷覇との信頼関係があるからだろうな…。
「わたくし、小さいころから雷覇様を見ておりますが、あんなに幸せそうになさっているのは初めてですわ~」
おもむろに紅茶を入れながらマダムベリーが話し出した。
今、マーリンと黒綾殿はお店の商品を見ていていなかった。
「そうなんですか?」
「はい♪そもそも女性に物を贈るなんて初めてですわよ~。うふふ」
「え…?そうなんですか?」
「はい。雷覇様はとても女性にモテていらっしゃいましたが、どの女性とも長くは続かないようで…。いつもフラれると言っておられましたわ~」
「へぇー…」
何だか意外な気がした。
雷覇はとても優しいし、愛情深い人だ。
好かれた女性はきっと幸せになると思うのだけれど…。
っていうか、マダムベリーの情報網凄いな!!
誰に聞いたんだろ?
「雷覇って、経験豊富そうに思ってました…」
「数は多いでしょうが、真剣に愛したのは怜彬様だけですわ~。だから、わたくし嬉しくって…」
「マダムベリー…」
「小さい頃から真面目で、何事にも一生懸命で…。特に剣のお稽古は大層力を入れておられましたわ~!!」
「そうなんですね…」
そんな話は聞いたことがなかった。
いつも話をしようとすると、あの甘々フェロモン攻撃が待っている。
これは…。まずわ。コミュニケーション不足だわ!!
「おこがましいですが、自分の息子のように見守ってまいりましたの…。その雷覇様が、とても幸せそうで…わたくしもとっても嬉しんですのよ…」
マダムベリーが愛おしい物を見つめるように手元のティーカップに目を落としながら話した。
きっと雷覇の事を想っているのだろう…。
「だから…。怜彬様!雷覇様の事をよろしくお願いいたしますね!」
そう言ってぎゅっと手を握り締められた。
マダムベリーがどれほど、雷覇の事を大切に想っているかが伝わってきた。
「分かりました!マダムベリー!わたし、雷覇を必ず幸せにします!!」
「ありがとうございます!怜彬様…」
雷覇って人気者なのよね。
街を歩けばみんなが雷覇の事を褒め称える。
悪口を言う人は一人もいなかった。
マダムベリーがとても大切に想っていることが聞けて良かった。
きっと、わたしと二人きりの時に言いたかったのね…。
マダムベリーがとても雷覇の事を思っていることがわかって、
わたしはますます雷覇に会いたくなってきたのだった。
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