63.高揚
「ラカン!サイガ!お帰りなさい!!」
わたしは玄関に到着した二人を出迎えた。二人とも元気そうだった。
「怜彬様、ただいま戻りました」
穏やかな表情で微笑むラカン。ああ!久しぶりに見るラカン!
今日もイケメンね!!キラキラ眩しいわ!!
「お姫様!久しぶりだな!!」
ニカっと太陽のような笑顔のサイガ。
ああ!サイガもイケメンね!!そしてモフモフ健在ね!!
「長い期間の支援活動ご苦労だった。しばらくはゆっくり休むといい」
威厳ある態度で雷覇が応じる。おお!なんか王様っぽいぞー!
「本当にお疲れ様!!」
わたしは笑顔で支援から帰ってきた人々に声を掛けた。
「皆にはね、わたしが作った手作りお菓子を用意しています!後で食べて下さいね」
「おお!怜彬様の…。手作りお菓子!!」
場内が歓声で湧き上がる。おおお!凄い!皆そんなにお菓子が食べたかったのかしら?
「一生の宝にします!」
「わたしも我が家の家宝に致します!!」
泣きながら、凄いお礼を言われた…。そんな大げさな!
ちゃっんと食べて下さいね!!でも喜んでもらえているようでよかったな!
リンリンのアドバイス通り、手作りお菓子にしてよかったわ!!
「怜彬のお菓子は天下一品!神よりも尊い!みな心して食すように!!」
「ははっ!!」
いやいやいや!!やめて!普通の手作りお菓子だから!皆が一斉にお菓子を崇めだす。
怖い怖い!普通に食べて!普通に!!
「雷覇…。皆気を使ってしまうからもう行きましょう?」
わたしはいたたまれくなって、雷覇を促した。
「怜彬!君は本当に優しい素晴らしい人だな!!」
雷覇が満足そうに顔をほころばせる。
うーん。いい笑顔なんだけど、また前の熱烈過ぎて伝わらない感じになってきてるわよ?
「ありがとう。雷覇の分もちゃんとあるから、一緒に食べましょう?ね?」
わたしは、半ば強引に車椅子を押して執務室へ向かった。
これ以上あの場にはいられなかった。いたたまれない感が凄い!
ふぅ…。お菓子一つあげるだけで、凄い騒ぎ…。しばらくは作らないでおこう。
わたしはそう心に決めたのだった。
あーあ。ラカンとサイガともっと話がしたかったけど…。また今度にしよう。
執務室へ入って、リンリンにリョクチャを入れてもらった。
今部屋にはわたしと雷覇だけだった。
ムツリは皆の受け入れ作業。黒綾殿は皆のアイドルだから
支援に携わっていた人達に捕まった。しばらくは帰ってこれないだろう。
「みんな無事に帰ってきてくれてよかったわね!」
「そうだな。復興作業も順調に進んでいるようだ。怜彬達が教えてくれた知識のおかげだ」
「役に立てたならよかったわ!」
「今回の件では色々学んだよ。夏陽国ももっと災害に対する対策をしないとな…」
「何かあってからでは遅いものね…。また支援活動に詳しい人を紹介するわ!」
「ああ頼む。それにしても…」
雷覇がお菓子をつまんで口に頬張る。
「うまいな!!このお菓子は!!」
「ほんとう?良かった~!!」
何度も味見して、リンリンにも美味しいって言って貰えたけど
やっぱり、実際に雷覇の口から聞くまではドキドキしていた。
「甘すぎず、サクサクして美味しいよ」
「ふふふ。気に入ってくれた?」
「ああ!リョクチャにもよく合うしな!何個でも食べれるよ」
「そうね…。あっ!!リョクチャと言えば、販売の件今のうちに話し合わない?」
災害の件や、黒綾殿の件で忘れていた!!
来年には商品化して、販売する予定なんだった!!
しかも、マーリンのお店にも置いてもらう約束をしている。
期日を過ぎるわけにはいかない。
「そうだな!そうしよう。まずはどのリョクチャの茶葉を使うかだな…」
「それなら、いくつかリストアップしていたの!これがその一覧よ!!」
販売すると決まった際に作っておいたリストを雷覇に見せた。
ふふふ。こんなこともあろうかと、実はいつその話題がでてもいいように
資料を持ってきていたのよね!!
「凄いな!怜彬は本当に、王女にしておくのはもったいないな!!」
資料に目を通しながら雷覇が関心しながら言う。
「ありがと。実はね、秋唐国でも、新しい事業ができないか考えていたの」
「そうなのか?」
「ええ。貧民街の問題を解決したくて…。ご用聞きの仕事を手配できないか考えていたの!」
「ご用聞き?おもしろそうだな!それはどんな仕事だ?」
雷覇も興味津々な様子だった。実は雷覇から逃げ回っている時に
思いついたアイディアなんだけど…。それは言わないでおこうっと!!
「仕事がない人に、誰でもできるおつかいのような仕事を紹介するシステムよ。それなら文字が読めない人でもできるし、忙しい人には用事を済ませておけるから需要があると思って!!」
「なるほど…。人と仕事を繋ぐ仕事というわけか。斬新だな」
「そうでしょう?こちらが仕事を与えるばかりでは、その人も自立しないと思ったの。初めは簡単な仕事をこなしていって、信頼を得て行けば重要な仕事を任せてもらうようにして…。そうしたら一人一人が自分で稼ぐ力が身につくと思わない?」
「そうだな。凄いな!そんアイディアどうやったら思いつくんだ?」
「リンリンが貧民街で倒れていたのを見つけた時よ…。彼女のような人をなんとか救いたいとおもったの…」
「怜彬は本当に誰かのために、何かをすることが本当に好きなんだな…」
雷覇そう言いながら頬に口づけする。
「ふふふ。そういう性分みたい!好きなのよ!人の笑った顔が…」
リンリンのような子供をなくしたい。もっと多くの人に笑っていて欲しい。
いつも思っていたことだ。幸いわたしには王女という立場がある。
お金も時間もあるのなら、誰かのために使うべきだ…。
「怜彬のような素敵な女性が婚約者なら俺も鼻が高いよ…」
「ありがとう!さっ!話がそれちゃったけど、リョクチャの事業も話を進めましょう!!」
「ああ…。そうだな」
わたしに触れていた手を止めて、少し雷覇がしょんぼりする。
この、リョクチ販売事業も楽しみだわ~。商品化するならマーリンの意見ももらおう!!
早速あとで手紙を書かなくっちゃ!!ふふ。忙しくなりそうだわ!!
そうして、リョクチャを飲みながら、わたしと雷覇は話を進めた。
まずは試験的に販売して、そこでの評価をみて軌道修正し、市場に売り出そうとなった。
茶器や包装紙のデザインについてはマーリンの意見を聞くことにして、リョクチャの試飲は
秋唐国でお世話になっている人たちを招いて行うことにした。
やる事が盛りだくさんだ!!とってもワクワクするわね~!!
そうこうしているうちにあっという間に、夕方になった。
やっと支援部隊に解放された黒綾殿が執務室へ戻ってきた。
「遅くなってすみません!なかなか、離してもらえなくて…」
「黒綾殿!いいのよ。気にしないで!ちょうど雷覇とリョクチャの販売について話をしていたから、大丈夫よ!!」
「そうだったんですか…。リョクチャの販売って、怜彬殿が行うのですか?」
興味津々で、黒綾殿に聞かれた。
「そうなの!夏陽国のリョクチャを秋唐国で販売しようとしているのよ!」
「それは面白い取り組みですね!!怜彬殿のアイディアですか?」
「そうなの!販売する人に合わせてランク付けして、茶器やパッケージも変えて販売できたらと思っているわ!」
「わあー!楽しそうですね!パッケージなら、黒秦国の布地を使いませんか?」
わたしの話に興味をもっていた黒綾殿が提案してくれた。
「黒秦国の?」
「はい!手作りなので少し値段は高いですが、富裕層向けの高価な贈り物なら、ぴったりだと思うんです!」
「まぁ!素敵ね!!黒秦国の綺麗な織物だったらきっと喜ばれるわ!!」
さすが、仕事ができる黒綾殿!!ナイスアイディアだわ!
黒秦国の織物は繊細な柄で、彩もきれいだから絶対に女性に
人気が出るはず!!
「ありがとうございます!」
「ぜひ一緒に販売していきましょう!!」
「はい!よろしくお願いします!!」
こうして、リョクチャの販売事業は、わたし、雷覇
マーリン、黒綾殿の四人で立ち上げることにした。
黒綾殿なら、全体を見てくれるから
安心して事務仕事も任せることが出来そう!!
ますますパワーアップしていく感じで楽しいわ!!
「今度、春魏国のマーリンというわたしの友人を紹介するわ!男性なのだけど、女性のような繊細なセンスをもっていて素敵な人なの!!」
「そうなんですね。それはお会いできるのが楽しみです!!あっ…今思ったんですけど…」
「なあに?」
「このユノミの下に、小さの布を敷いて飲んだらもっと華やかになると思いませんか?」
「まぁ!!とっても素敵だわ!!それも、黒秦国の織物を使うのね!」
黒綾殿の目の付け所は本当に凄いわ!!
繊細なセンスはマーリンと似ているかも!!これはすごい事になるわ。ふふふ。
「茶器に合わせて柄も変えれますし、贈り物でも喜ばれると思うんです!」
「黒綾殿!天才だわ!!それ採用しましょう!!」
「ありがとうございます!楽しみだなー!!因みに、リョクチャはどの茶葉を使うんですか?」
「それはね…。この一覧にまとめてみたの!どうかしら?」
わたしは、さっき雷覇に見せた資料を黒綾殿に手渡した。
真剣な表情で目を通してくれている。おお。必殺仕事人の黒綾殿だわ!!
「とってもわかりやすくていいですね!採取できる時期や、産地によって味覚がかわるんですね…」
「そうなのよ~!だから、茶葉のグレードに応じて価格設定をして、幅広い客層に販売したいの!」
ああ!商売の話ができるなんて楽しいわ!!
しかも、黒綾殿の理解がものすごく早い!
その後、遅くまで商品について二人で話をした。
マーリンには夏陽国に来てもらい、顔合わせと
商品について打ち合わせをすることに決まった。
寝室に行くと雷覇が拗ねていたけど
そこは頭をなでなでして機嫌を直してもらった。
充実感で胸がいっぱいで高鳴った。私はドキドキしながら眠りについた。
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