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62.怜彬の手作りお菓子2

******************************************


「皆さん…。今少しいいですか?」


「リンリン…。どうしたんだ?」


三人が頭を抱えて悩んでいた時リンリンが部屋に入ってきた。

三人ともとても驚いた。リンリンから尋ねてくるのは珍しい事だったからだ。


「皆様先ほどから、お嬢様に手作りお菓子を作るように言われてますよね?」


「そうなんだ…。何としてでも作って欲しいのだが断られてしまってな」


「お嬢様は一度決めたことは変えることは中々ありません。これは…。最後の手段になるのですが…一つだけ作ってもらう方法があります…」


「何!?リンリン!そんな方法があるのか?」


「ぜひとも教えて下さい。リンリン殿!」


「僕からもお願いします!!」


「それは…。お嬢様のやってあげたい欲求を引き出すことです!!」


物凄く真面目な表情でリンリンが話す。

三人はきょとんとしてしまった。


「やってあげたい欲求とはなんだ?リンリン」


雷覇らいはが尋ねた。


「お嬢様は誰かのために何をすることに喜びを感じます。ですから、お菓子を作ることでみんなが喜ぶことを伝えてその欲求を掻き立てれば作ろうとするはずです!」


「なるほど!もともと労ってあげたいと言っていましたね。怜彬れいりん様は…」


「さすが俺の怜彬れいりんだ!なんて心が優しい人なんだ!」


「でもどうやって伝えたら、その欲求を掻き立てれるんでしょうか?さっき僕がお願いしたけどだめでしたよ?」


雷覇らいはの主張は無視して、黒綾こくりょうが話し出す。


「今はテンションが下がってしまっているので、何を言っても無駄でしょう。日を改めてお願いすればよろしいかと思います」


「なるほど…。では2日ほど空けて怜彬れいりんにお願いしてみよう!」


「お願いする方法なのですが…。普通に話しても難しいので少し作り話をしてもいいかもしれません」


「作り話とはどんなことですか?」


ムツリがリンリンに尋ねる。


「例えば何ですが…。サイガ様は今まで、お母様に手作りお菓子を作ってもらったことがなくずっと食べたいと思っていた。とかどうでしょうか?」


「なるほど…。確かに私達の母親は早くに亡くなっているので不自然ではないですね」


「母の味が恋しい的な感じで同情を誘うんですね!!」


「よし!その話で行こう!2日後の執務室で、自然に話すようにしたらいいんじゃないか?」


みるみる三人の表情が明るくなる。

上手くいけば、怜彬れいりんの手作りお菓子を

食べれるかもしれないからだ。


「ご健闘を祈ります…。私は2日間、お嬢様がお買い物に行かないよう引き留めておきますので。では私はこれで失礼いたします。」


ペコリと頭を下げて、リンリンは部屋を出て行った。


「ではさっそく打ち合わせを行い完璧な自然な流れで同情を誘い出しましょう!!」


「はい!頑張りましょう!」


「うむ!何としてでも怜彬れいりんの手作りお菓子を食べるぞ!!」


三人の団結力が一気に上がった瞬間だった。

その後三人のは入念な打ち合わせを行ったのだった。


******************************************


~2日後・執務室~


「そういえば!ムツリさんのお母様ってどんな方なんですか?」


おもむろに黒綾こくりょう殿がムツリに尋ねた。

いきなりどうしたのかしら…?


「そうですね…。とても料理が好きな人でしたね…今はもう亡くなってますが」


「そうなんだ…。ムツリもお母様がいなのね…」


怜彬れいりん様も、確か早くに亡くされていましたね」


「ええそうね。料理って何をよく作っていたの?」


わたしは気になって尋ねた。


「そうですね。料理が好きな人でしたから。普通の家庭料理を作ってくれていましたね」


「そうだったの。素敵なお母様ね…」


「でも、サイガはあまり食べたことないって言っていたぞ?」


雷覇らいはが思い出したかのように言ってきた。


「サイガが小さい頃に亡くなりましたからね…母親の味を知らないのです」


「まぁ…。それは可哀想ね…」


「サイガはよく母親の手作りお菓子を食べるのが夢だったと良く言っていたな…」


「そうなんだ…今も食べたいって思っているのかしら?」


小さい頃に母親が亡くなったのなら母親の味が恋しくなるのも無理はない。

普段サイガは軽い感じだが本当は寂しいのかしら…。

急にサイガが可哀想に感じてきた。


「いくつになっても食べたいって思うともいます!僕も母の味は食べたいですから!」


明るい口調で黒綾こくりょう殿が話す。

やっぱりみんなお母さんが好きなのね…。


怜彬れいりん。この前言っていた、手作りお菓子をサイガに作ってやって貰えないだろうか?」


急に真剣な表情で雷覇らいはに頼まれた。

珍しいわね…。サイガのためにお願いするなんて。


「えっ…。それは構わないけど、雷覇らいはは嫌じゃないの?絶対焼きもちやくとおもっていたのに…」


怜彬れいりんが俺の分も一緒に作ってくれるなら問題ない!」


「あ…。そう?じゃあ作ろうかしら…」


「私からもぜひお願い致します!怜彬れいりん様」


ムツリまで頭を下げてきた!そっかそんなに母の味が恋しいのね!

ちょうど、プレゼントを買うこともできなかったし、この際だから

手作りお菓子を作ろうかな!


「わかったわ!サイガが帰ってきたら渡せるように作るわね!」


「ありがとうございます。怜彬れいりん様!弟も喜ぶと思います!!」


「僕もお手伝いしますね!怜彬れいりん殿!!」


「ええ。ありがとう。黒綾こくりょう殿。頑張って美味しいお菓子を作るわ!!」


よし!そうと決まったら、どんなお菓子にするか考えないとね~。

ふふふ。楽しみになってきたわ!!


「ムツリ、また前みたいに厨房を借りれるかしら?」


「問題ございません。怜彬れいりん様が使えるよう手配致します」


「ありがとう。宜しくね!あと材料なんだけど…」


「そちらも仰っていただければ全て手配致します」


流石!ムツリは仕事が早いな~。


怜彬れいりん。手作りお菓子を楽しみにしているぞ!」


雷覇らいはも嬉しそうにニコニコしている。

みんなやっぱりわたしのお菓子を食べたかったのね~。

リンリンの言った通りだったわ…。

こうしてわたしは、みんなのために手作りお菓子を作ることにした。


******************************************

~2日前・怜彬れいりんの部屋にて~


雷覇らいは、ムツリ、黒綾こくりょう殿が

順番にわたしの部屋に訪れた後、わたしは悩んでいた。


「うーん…。皆にあげるプレゼントどうしよう?リンリンどうしたらいいと思う?」


わたしは、被災地で頑張ってくれたみんなのために、何がプレゼントをしたいと考えていた。

だけど全員が喜んでくれると思うと中々決まらなかった。


「そうですね…。物は好みもございますし…。難しいかもしれませんね…」


「そうよね~。デザインとか色とか人によってバラバラだもね…」


「手作りお菓子を渡すと仰っていませんでしたか?」


「あー…。それね。雷覇らいはにサイガの好みを聞いたら、皆で揉めちゃって…。やめることにしたのよね」


「そうなんですか…。残念ですね。私も楽しみにしていましたのに…」


「えー!そうだったの?リンリンも?」


「はい…。お嬢様が作るお菓子はいつも美味しいですから…」


目を細めて微笑むリンリン。

そう言えば、リンリンが王宮に来たばかりの頃に

作ってあげてたっけ?仲良くなれるかな~とか思って…。


「昔はよく作って食べてたね!クッキーとか、マドレーヌとか!」


「はい。どれも美味しかったです」


「じゃあまた今度作るわ!そして二人で一緒に食べましょう?」


「はい!ぜひ…。ですがせっかくなので、今回のプレゼントで作ってはいかがですか?」


「えー?今回の労いのプレゼントで?」


リンリンに提案されたものの、正直気が乗らなかった。


「先ほど三人の方がお嬢様の部屋に訪ねてこられたのも、手作りお菓子を食べたいからだと思います…」


「えっ?そうだったの?まぁ…。雷覇らいははわかるけど。ムツリと黒綾こくりょう殿も?」


「おそらく。でなければお部屋まで来てお願いはされないかと…」


「確かに…。言われてみれば、やたら手作りお菓子を推してきてたわね…」


道理でみんな断るとしょんぼりして帰って行った訳だわ。


「わたしが、皆さまに上手にお願いするよう伝えてまいりますので…。お嬢様は承諾してくださいませんか?」


リンリンにここまで頼まれるのも珍しいわ…。

いつもは、わたしがお願いするばかりであまり主張しないのに。


「わかったわ。三人からお願いがあったら手作りお菓子を作るって言うわ!!」


「ありがとうございます。お嬢様」


そう言って珍しく、満面の笑みで微笑んだリンリン。

そんなに手作りお菓子を食べたかったのかしら?

でもリンリンがこんなに喜んでくれるなら作ろう!

あとはあの三人が揉めなければいいんだけどね~。


******************************************



良かったです…。

リンリンは密かにガッツポーズして喜んでいた。

お嬢様の手作りお菓子を食べれる…。本当に久しぶりだった。

昔はよく作ってくれていたが、最近は忙しいせいかほとんど

作ることがなくなっってしまった。少し寂しかった。

でもそれを怜彬れいりんに直接いう事ははばかられた。

しかし、今回の件でさりげなく主張するチャンスが訪れたのをリンリンは見逃さなかった。


お嬢様の手作りお菓子は、いつも優しくて温かい味がする…。

王宮に来たばかりの頃そんなことをよくわたしは考えていた。

王女様なのに、わざわざ厨房を借りて作ってくれている。

その行為自体もすごく嬉しかった。



誰も知らない。

リンリンが誰よりも怜彬れいりんの手作りお菓子を食べたいと思っていたことを。

三人にアドバイスをしたのも、リンリンが食べたかったからだという事を。


その後、焼き立てのお菓子を真っ先に怜彬れいりんから貰って

一緒に食べることが出来たご満悦のリンリン。



…。たまには私がお嬢様を独占してもいいですよね?

雷覇らいは様には悪いですけど…。

そう心の中で密かに想っていたリンリンなのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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