60.和解
黒綾殿が2人きりになってしばらくしてから
2人は仲良さそうに一緒に部屋から出てきた。
きっと分かりあえたんだわ!わたしはほんとうに良かったと思った…。
「黒綾殿!良かったわね!!」
わたしは思わず黒爛殿に駆け寄った。
「怜琳殿!ありがとうございます…」
「黒綾…。こちらの方は?」
黒綾殿の隣にいた黒爛殿に
不思議そうに見つめられた。
そう言えば!!まだ挨拶してなかった!
「わたしは、秋唐国の第一王女。怜琳と申します」
「兄さん、怜琳殿は僕の命の恩人なんだ」
「あなたが…!黒綾を助けて頂きありがとうございます!」
「いえ!わたしは、当たり前のことをしただけです」
優しい表情で、黒爛殿に微笑みかけられる。
凄い!やっぱり、近くで見るとイケメンだわ!!
雷覇が肉食系でワイルドなイケメンなら
黒爛殿は、正反対で柔和でジェントルマンみないなカッコよさだわ!!
わたしは、一人そんな事を考えていた。
「それに…。あの怜琳殿に会えるなんて…」
「あの?」
ん?あの怜琳ってどの怜琳だ?
「傾向の美女、宝石の妖精。五神国で一番の美人と聞いております」
「えっ!!」
なにそれ!?いつの間に五神国代表みたいになってんの?
おかしいでしょ!!
「おおげさな…。何かの間違いではないですか?」
「確かな話です。今すごく人気のある小説にそう書いてありました」
すごく穏やかに笑いながら、黒爛殿に告げられる。
…。
あの小説!!そんなことまで書いてるの!!
しかも黒秦国まで販売されてるの!!
いーやーだー!!!わたしは心のなかで思いっきりのたうち回った。
なんでいつも忘れた頃に、あの小説の話題がやってくるのかしら!!
「黒爛殿。あまりわたしの婚約者に馴れ馴れしくしないで頂きたい」
そう言いながらぐいっと雷覇の方に引き寄せられる。
いやいや!こんなところで焼きもちしないで!!
「それは大変失礼致しました。雷覇殿」
黒爛殿が深々謝罪した。
大丈夫ですよ!!雷覇がただの焼きもちやきなのよ!!
「それより、黒爛殿はこれからどうされるおつもりか?」
「今後は内部の統制を行って、新しい王を据えようと思います」
「新しい王?」
その場にいた全員がきょとんとした顔で黒爛殿を見た。
黒綾殿を王に据えるのではないの?
「兄さんどういうこと?僕が後を継ぐんじゃ…」
黒綾殿も不思議そうに見ていた。
「でも、黒綾は国王にはなりたくないのだろう?」
「そうだけど…」
「それなら、国王になりたいと思っている人に任せたほうがうまくいくと思わないかい?」
「そんな事できるの?」
「ああ。可能だ。少し時間はかかるかもしれないけどね」
満面の笑みで黒爛殿が言った。
一体どんな方法でできるんだろう?
「それなら、問題ないな。そちらが早く落ちつてくれれば、夏陽国としてもありがたい」
「はい。雷覇殿。必ずや国内を一つにまとめてまいります」
そうなんだー!黒爛殿も黒綾殿も
王座に着かなくても解決するなら、2人にとって一番いいよね!
跡継ぎ争いしなくてもいいもの。
「兄さん!ありがとう!僕のためにそこまで…」
「いいんだ。黒綾が幸せなことが一番だからね」
穏やかな笑顔で、黒爛殿が黒綾殿の
頭を撫でる。…。これはもしかして、あれじゃないかしら?
黒爛殿はわたしと同じニオイがするわ!!
「黒爛殿は弟さん思いなのですね!!」
「はい!目にいれても痛くない!黒綾は、明るくて可愛いくて、私の自慢の弟です!!」
瞳を爛々と輝かせながら黒爛殿が語りだす。
やっぱり!!弟大好き!な人なのね!!
わたしは思わず前のめりになって話し出す。
「分かります!わたしも10歳年下の弟がいてて、怜秋と言うんですけど、本当に優しくて賢くていい子なんです!!」
「怜彬殿も弟君がいるのですね!わかります。弟とは尊い生き物ですよね」
「はい!何よりも大切な存在ですわ!!」
嬉しい!弟ラブな人がこんなところにいるなんて!!
黒爛殿とは絶対に仲良くなれそうだわ!!
「兄さん!恥ずかしいからこんなところでやめて!」
顔を赤くしながら、黒綾殿が話しに入ってきた。
「怜彬…。俺より怜秋殿が大切なのか?」
まったく違う論点で落ち込んでいる雷覇も話に入ってきた。
怜秋は弟なのよ?比べるものではないと思うけど…。
うーん。大切な種類が違うというか…。なんというか…。
「怜秋は大切です!雷覇と怜秋どちらか一人しか助けられないなら、わたしは怜秋を助けます!!」
わたしはズバリ言い切った。
雷覇には悪いけど、やっぱり弟は大事だわ!!
「…っ!!そんな…」
思いっきり頭をぶつけたような顔をして雷覇が
ショックを受けている。まぁ…。仕方ないと思うけど。
雷覇も雷覇でちゃんと好きなんだけどね~。
「雷覇殿。こればかりはどうしようもないのです!私も怜彬殿も小さい頃から弟を見てます。もはや父や母のような心境なのです!無償の愛です!何者にも代えがたいのです!」
「無償の愛…。何者にも代えがたい…」
フォローしているつもりだろうが、黒爛殿の
言っていることはさらに雷覇を追い打ちをかけているようにしか見えない。
雷覇はぐったりとして、項垂れてしまった。
ちょっと可哀想になってきた。
落ち込んでいる雷覇を尻目に、わたし達は今後どうするかを
ムツリやテンリを交えて話し合った。国内の安全が確認できてから、
黒綾殿は黒秦国へ帰ることになった。
まだまだ、夏陽国にとどまることになりそうだ。
黒綾殿と黒爛殿が楽しそうに会話している…。
二人ともすごくいい笑顔だった。
今日、一晩二人でゆっくり過ごしてもらう事になり
黒爛殿は明日、黒秦国へ帰ることになった。
久しぶりの再会だもの。二人でたくさん話して欲しいわ!!
そして、黒爛殿とはぜひ!また別の機会で弟について
熱く語り合いたいと思ったのだった。
その日の夜、寝室へ行くと案の定落ち込んでいる雷覇がいた。
ベットの上でしょんぼりしていた。
「雷覇…。まだ落ち込んでるの?」
「怜彬…」
わたしを恨めしそうに見てくる雷覇。
そうとうヘコんでいるようだった
「怜秋の事は前から何度も言っているでしょう?あの子はわたしにとって、大切な存在なの…」
「…。分かっているが…」
「怜秋への愛情は、母性愛みたいなものなのよ?小さい頃から面倒を見てるから母親みたいな気持ちになっちゃうの」
「母親…そうか!では、異性として好きではないのだな!」
いきなり、元気になった!!
わたしが怜秋を好きなのって異性としてって思ってたの?
「うーん…。異性とか同性とか関係なく好きよ?多分、怜秋が女の子でも、同じように好きだわ」
「なるほど!父や母を好きだという気持ちと同じだという事だな!!」
「そうね!その気持ちに近いわ」
「そうか…。そうなのか…」
噛みしめるように呟きながら、雷覇はわたしの膝の上にゴロンと寝る。
わたしが、怜秋を好きっていうのと別だって
分かってくれたのかしら…?
「だから…。ね?もう怜秋に焼きもちやくのはやめてね?」
「それは無理だ!」
「えっ?どうしてよ?」
「俺は誰がきても、きっと嫉妬する。仕方ないんだ」
「えー!じゃあ…怜秋とは仲良くできないの…?」
それはとても悲しかった…。
結婚をしたとして、雷覇と怜秋は家族になるのだ。
今のように凍り付くような雰囲気になるのはやめてほしい…。
「難しい問題だな!怜秋殿はライバルだ!」
「何でそうなるの?怜秋は12歳でまだ子供よ?」
「年齢は関係ない。俺は怜秋殿より優先順位が低いからな」
あ…。さっきの話で拗ねてるの?
そしてちょっと怒ってるわよね?
まぁ…。どう言われても、怜秋を想う気持ちは
変わらないけど…。
「そう…。じゃあ結婚はますます無理ね…」
ぼそっとわたしが呟いた。
「えっ…!!どういう事だ!!怜彬!!」
いきなり飛び起きて前のめりになる雷覇。
どうもこうも…。怜秋も結婚を反対しているし
雷覇も歩み寄る気ないし…。無理じゃない?結婚。
「怜秋と仲良くできないなら、わたしが雷覇を好きになる以前の問題よ!怜秋とうまくできない人とは結婚は無理!」
「はっ…!なんだって!ちょっと待ってくれ怜彬…。結婚できないって…どういう意味だ!」
「どうもこうも…。そのままの意味だけれど…」
「そんな…それはどうにもならないのか?」
すごい動揺してオロオロしけど。えー…。そんなに大変なこと言ってる?
当たり前のことだと思うけど…。一生の問題だし…。
でもこれを機に、怜もちをやめてもらえるよう誘導できないかしら?
「わたしは怜秋が何より大切なの。あの子がいなくなったらきっと生きてはいけないわ…。それくらい大事なの。だから雷覇にも怜秋も大切にして欲しい…」
「…」
物凄く悩んでいる様子の雷覇。
そんなに難しい話をしているかしら?わたし…。
「だからね?雷覇。怜秋とは仲良くしてね?」
「わかった…。努力する」
「ほんとう?」
「ああ。だから結婚は無理とか言わないでくれ…」
「それは雷覇次第だわ!ちゃんと仲良くしてね?」
「う…。分かった…。ナカヨクスル…」
最後の方棒読みだけど、まぁいっか!!雷覇はこれで問題なさそう!
あとは怜秋よね~。前に会ったとき認めないって言ってたからな~。
うーん…。これは時間かかりそうね…。
「怜彬。ちゃんと仲良くできたら、何かご褒美をくれないか?」
「ご褒美?うーん…。わたしであげれるものならいいけど…」
「よし!わかった!なら最大限のことをするよ」
「ご褒美ってなにがほしいの?雷覇」
「それはこれから考える!楽しみにしていてくれ!」
「わかったわ」
うーん…。なんか嫌な予感もするけど、雷覇と怜秋が
仲良くなってくれるのはいい事よね!
雷覇が仲良くなる気なら、歩み寄りも前よりは難しくなさそう!
いつか仲良く3人でお茶できたらいいな~。
よし!わたしも2人が仲良くなれるよう頑張らないと!!
新たなミッションに燃える私なのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)
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