56.進展
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朝、目が覚めると、僕はいつの間にか自分部屋にいた…。
あれ?僕…。昨日は怜琳殿と中庭にいなかったっけ?
僕は記憶をたどる…。
「うわー…。やっちゃった…」
そして思い出す。昨日は、思いっきり泣いてしまったことを。
穴があったら入りたい!!!恥ずかしい!!
僕は何をやってるんだ…。みっともなく泣いたあげく寝るとか!!カッコ悪い…。
僕はベットで悶えた。
「はぁ…」
こんなんじゃ、好きになってもらえるはずがない…。
怜彬殿は、僕の事を弟としか思ってない。
いつも優しく笑いかけくれる、頭を撫でてほめてくれる。
それは弟のように思っているからだ…。
彼女の視線の先にはいつも雷覇殿がいる。
僕と話していても、彼を目で追っている時がある。
「お似合いだしな…。実際…」
雷覇殿も、怜彬殿を物凄く大切にしている。
態度や、仕草、呼吸…。全部、彼女を想っての事だとわかる。
銀獅子という異名を持ち、誰からも恐れられる軍人が
たった一人の女性に夢中になり好きになっている。
少し前なら考えられないことだったけど…。
きっとお互いは相思相愛なのだろう…。
なんで早く、結婚しないんだろう?いやだなー。
…。
あ…。僕…今、兄さんの事で悩んでない!!
嘘だろ…。昨日あんなに思いつめてたのに…。
自分で自分が信じられない。昨日はあんなに、死ぬかもしれない…。
殺されるかもしれない。そんな事を昨日は考えていたのに
もう、怜彬殿ことばかり考えている。
恋は盲目とよく言われているけど、こういう事か!!
僕はまたベットで悶えた。
「黒綾殿、起きてる?」
ノックとともに、ドアの外から怜彬殿声がした。
僕はベットから飛び起きた。
「はっ…はい」
ドアを開けると、料理のお盆を持った怜彬殿が立っていた。
「朝ご飯まだでしょう?一緒に食べないかなって思って!!」
キラキラと眩しい笑顔で、怜彬殿が話す。
ああ…。これだけでもう、僕は幸せだ…。
「はい!頂きます!」
今は、弟のままでいい。彼女の傍にいられるなら。
僕は、ゆっくり彼女との朝食を味わった。
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わたしは、黒綾殿の様子が気になって
朝食をもって部屋を訪ねた。
ドアから出てきた彼は、思ったほど憔悴してはいなかった。
良かった…。
彼のいつものかわいい笑顔が戻っていた。
「昨日はあれからよく眠れた?」
何気なく黒綾殿に尋ねた。
「えっ…。はい…すいません…」
すると、どんどん顔が赤くなって、小さくなっていく。
あれれ?どうしたの?…めっちゃかわいいんですけど!!!
「ずっと眠れていなかったのでしょう?」
「そうですね…。夜は色々考えちゃって…」
「わかるわ。わたしも眠れない時があるもの!でも泣いちゃうとすっきりして眠れるのよね!」
「う…。すいません!みっとなく泣いちゃって」
彼が申し訳なさそうに謝まる。
ふふふ。きっと泣いてしまったことが恥ずかしいのね。
雷覇も同じような事言ってたし…。
どうも、男の人とは恰好を付けたい生き物みたい。
泣いているところを見られるのって、凄い恥ずかしい事らしい。
別に、そんなに見栄を張らなくてもいいと思うんだけどね~。
「誰にでもそんな時はあるわ!!わたしで良ければ話を聞くから、いつでも言ってね!!」
「ありがとうございます…」
嬉しいような、悲しいような複雑な顔で
黒綾殿が微笑む。
ご飯もちゃんと食べれているし、もう元気になっているかも。
「それでね、昨日、雷覇と話したんだけど」
「あ…。はい」
「一度、お兄さんとちゃんと話した方が良いなってなったの!」
「え…。」
黒綾殿は目を大きく見開いて驚いている様子だった。
まぁ。そうよね…。
「これはあくまで、予想なんだけど、お兄さんは黒綾殿を逃がすためにわざと
誘拐して夏陽国まで連れて行ったんじゃないかって思うの」
「そんな…どうして…」
「それは、わたしにも分からない。だからきちんとお兄さんと話してみない?」
「…」
深く考え込んでいる。複雑な表情をしていた。
信じられない気持ちと、信じたい気持ちでいっぱいなのだろう。
「わかりました…。僕、兄と会ってみます!」
意を決したように、黒綾殿が告げた。
その瞳にはもう悲しみも、迷いもなかった。
「わかった!雷覇に伝えるね。お兄さんに会うときはわたしも立ち会うから安心してね…」
「ありがとうございます。怜彬殿」
穏やかな笑顔で、黒綾殿が笑う。
お兄さんともこんな風に話をしてくれたらいいな…。
「黒綾殿。今入ってもいいか?」
外から、雷覇の声がした。
「はい!どうぞ」
黒綾殿が立ち上がって彼を迎えいに行く。
「怜彬から話は聞いているか?」
車椅子に座りながら、雷覇が話し出した。
きっと、お兄さんの事を伝えに来たのだわ…。
「はい。今さっき聞きました。兄と会って話ができるって…」
「そうだ。ちょうど取引を持ち掛けられているから、それに便乗する。こちらの条件として
黒綾殿の兄上と直接交渉がしたいと持ち掛けて、兄上を呼び出す」
「…。分かりました」
「黒綾殿には俺の従者として、同席してもらう。そこで俺が二人きりになるタイミングをつくるよ」
「雷覇殿!!ありがとうございます!!」
凄く嬉しそうに、黒綾殿が笑う。見ているわたしまで、嬉しくなった。
「良かったわね!黒綾殿」
「はい!!」
取引は今日から1週間後だ。
それまでに準備をしっかりして、なんとか二人には仲良くして欲しい。
きちんと話をできるようにしてあげたい…。やっぱり兄弟で仲が悪いって辛いものね。
黒綾殿から聞いている話だと、とてもいい人のような
気がするんだけどね~。
名前はえーとたしか…。黒爛殿!!
28歳で黒綾殿よりも10歳年上!わたしと怜秋と同じね!
こんなに年齢が離れていて、かわいくないはずないわ!!
うん。うん。きっとかわいいって思ってるに決まってる。
わたしは一人でそんな事を考えていた。
「それじゃあ、今日の午後から打ち合わせをしよう」
そう言って雷覇が部屋を出ようとする。
わたしも食器を片付けて彼の後に続いた。
「それじゃあ、黒綾殿。また執務室でね!!」
「わかりました!」
「黒綾殿…。ちゃんとお兄さんとお話できるといいわね」
「…。そうだな…」
うん?これは…。あれよね?拗ねてるパターンよね?
「どうしたの?雷覇」
「別に…。なんでもない…」
いやいや!あるでしょ!!明らかに不貞腐れてるじゃん!
車椅子を漕ぎながら、雷覇は何も話さない。
うーん…。何が不満なのかしら?
「雷覇…。ちゃんと言ってくれないと分からないわ」
「…。食べたかった…」
「何を?」
「俺も、怜彬と朝ご飯食べたかった…」
捨てられて犬みたいにしょんぼりしながら雷覇が言った。
えぇー!!そこー?!
あー。朝起きてすぐに準備しに行ったからなー…。
それでしょんぼりしてるのね!!焼きもちやかないだけいいけど。
「ごめんね!お昼は一緒にたべましょう?」
「…わかった」
「お昼は私が作るわ!!雷覇は何が食べたい?」
「…っ!!作ってくれるのか?」
「ええ。そんな凝ったものは作れないけど…」
物凄い目を輝かせて雷覇が聞いてきた。
もう落ち込んではいないようだわ…。ふふふ。
かわいいわねー。本当に雷覇ってわたしより年上なのかしら?
「怜彬が作ってくれるなら、何でも食べたい!!楽しみだ!!」
「ふふふ。それなら、ご期待に沿えるよう頑張って作るわ!!」
あっという間に上機嫌になった、雷覇。
そういえば…。前にお菓子をあげようとして結局渡せなかったのよねー。
今回は料理だけど今度はお菓子も作ってあげよう!!
結構、甘いものも食べるのよね!雷覇って!!
どんな料理を作ろうかしら…。できるだけ、体にいいものにしたいわね!!
怪我も、良くなってきているし。体力が付くものがいいわよね!
さっそく、厨房を貸してもらえるようムツリに言おう!!
そんなことを考えなら、わたしはワクワクしていた。
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