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54.サプライズ


なんだって!!試してた?今までの事全部、演技だったの…。

急にどっと疲れた。緊張感が一気になくなってしまったからだった。

わたしは、思わずよろめいてしまった。


怜彬れいりん殿は元々、炎覇えんはの妻だった。雷覇らいはが同情のような気持で接していないか?怜彬れいりん殿は、雷覇らいはの事を炎覇えんはの代わりにしていなか?そこが気になってな」


「それで、一芝居して二人がどんな気持ちか試そうってなったのよ~。うふ♪」


「二人とも…。お互いを想い合っていて素晴らしかった…。感動しました」


「嘘だろ…。そんな事のためにここまでするか?」


頭を抱えながら雷覇らいはが言った。全くその通りだと思ってしまった。


「だって~。聞くだけじゃ本心かわからないじゃない♪」


「人は追い詰められて初めて本来の姿を見せる!!なかなか、いいものが見れたな!」


「映像に…。おさめたいくらいでしたね…」


3人ともニコニコしながら、ネタバレをしてくれる。

そっか…。それじゃあ、雷覇らいはと離れなくていいのか…。

わたしはホッと胸をなでおろした。


「俺は、寿命が縮まりましたよ…。まったく…」


「わたしも…。一生分のエネルギーを使った気がします…」


「ハハハ!演技とはいえ私も本気でやったからな!!久しぶりに、現役当時の殺気を出したぞ!」


楽しそうに虹珠こうじゅ殿が話す。

まじか…。あの殺気は戦場の女豹だったんですか…。

どうりで怖いはずよ!死ぬかと思ったもん!!


「さぁ!話はこれくらいにして、二人の婚約のお祝いをしましょ~♡」


そう言って、虹禀こうひん殿が、両手をパンパンと叩いた。

すると、突然扉が開いて、ここの従業員の人がどんどん入ってきた。

テーブルの上に様々な料理やお酒が並べられた。


虹禀こうひん殿…。これはいったい…」


何が起きているのか、事態についていけなかった。展開が早すぎる…。


「私達、3人からのお祝いよ~♪実はこっちもやってあげたかったのよね~♡」


「せっかく、可愛い甥が婚約するのだ!こんなに喜ばしく、めでたいことはない!!」


「ふふふ。サプライズ…というやつですわ…」


本当に…。この3人の考えることは驚くことばかりだ。

でも、わたしと雷覇らいはの事を祝福してくれている。

それは十分に伝わってきた。やり方はどうかと思うけど…。


「よし!!ではみんなグラスを持て!乾杯するぞ!!」


「はい!!」


わたしと雷覇らいはは見つめ合いながら、笑った。

大騒ぎしてすったもんだしたけど、また二人の距離が縮まった気がした。

その後、5人で楽しくお酒を飲みながら食事を食べた。

とっても楽しかった。5人しかいないのに、まるで宴のような騒ぎだった。

あー!!でも綺麗に終わってよかった!終わり良ければ総て良し!!だよね。



翌日、叔母上様達は自分たちの家へ帰っていった。

わたしと雷覇らいはは、一緒に馬車に乗って、夏陽国かようこくへ向かっている。


帰り際に、叔母上様達はわたしに、婚約祝いだと言って

綺麗なすみれ色の扇子をプレゼントしてくれた。

持ち手にはアメジストの宝石が埋め込まれていた。

私の瞳と同じ色…。そう思ったらわたしは思わず泣いてしまった。

本当にわたしの事を可愛がってくれて、大切に想ってくれている。

こんなに幸せなことはない。わたしは、おもわず叔母上様達に抱きついた。



「やっと…。静かになったな…」


「そうですね…ぐす…」


わたしは、雷覇らいはにもたれかかって泣いていた。

さっきの出来事が嬉しすぎてまだ、涙が止まらない。

彼は今わたしの頭を優しく撫でてくれている。


雷覇らいはは温泉に入れて良かったね…体調はどう?」


「ああ!体が凄く軽いよ!きっと俺にあの温泉に入ってほしかったのだな…あの人達は」


「そうだね…。何も言わないけど、雷覇らいはの事大切に想っているね…」


「昔からあの人達は変わらない…。いつもああなんだ…」


「ふふふ。素敵な叔母上様達だわ。わたしにも良くしてくださったもの」


「そうだな!これで結婚した後の、怜彬れいりんとあの人達との関係は良好だな!!」


そう言いながら、雷覇らいははわたしの頬にくちづけする。

ううう。久しぶりだから、どう反応していいかわからない…。


「…」


怜彬れいりん?」


「何でもない!!」


わたしは恥ずかしくなって、雷覇らいはの胸に顔を埋めた。

結局、わたしと雷覇らいはのスキンシップは問題にならないそうだ。

一緒の部屋で寝ているとは言っていないです…。言えないです!!


「一線を越えていたら、雷覇らいはを殺していたがな!ハハハ!」と

笑いながら虹珠こうじゅ殿が言っていた。

ほんとうに…。本当に!!貞操を守っててよかった!!

何回か危ない時があったからな~。ふぅ。これからも気を付けないと!!

わたしは、雷覇らいはとの距離感に気をつけようと思った。

…。自信ないけど…。今も近いものね。はぁ…。


怜彬れいりん…。こっち向いて」


「無理…」


「なんで?」


雷覇らいはが髪を撫でながら、耳元で甘く囁く。

そういう事するからよ~!!わたしは身体中が熱くなる感じがした。


「泣いてブサイクになってるから!」


怜彬れいりんはどんな顔でもかわいいよ」


雷覇らいはは良くても、わたしは良くないの」


「困ったな…。そう言われると、ますます見たくなるな…」


「ひゃっ!!」


いきなり耳を噛まれた!!びっくりしたー!!

思わずわたしは顔を上げてしまった。くっそぅ…。

雷覇らいはは、怪我してない方の手で頬にそっと触れる。

キラキラする金色の目で見つめられた。心臓がドキリと音を立てて跳ねる。


「やっと見てくれた…」


思いっきり歯を出して雷覇らいはが笑った。眩しい…。

目が逸らせない。彼の顔をずっと見ていたい…。


「ほんとに…いじわる…」


いじわるしないで、と伝える前に雷覇らいはの唇で塞がれる。

久しぶりの雷覇らいはの感触だった。わたしは目をつむって

そのままその感触を味わった。




夏陽国かようこくに戻ってきて3日目。ようやく生活が落ち着いた。

帰ってきた当初は、案の定仕事が溜まってしまっていて大変だった。

黒綾こくりょう殿が、整理してくれていなかったらもっと凄いことになってただろう。


黒綾こくりょう殿、この前言っていた書式を統一する件はどうなった?」


わたしは書類に目を通しながら、黒綾こくりょう殿に尋ねた。


「はい!あれから統一した書類を作成して各部門に配布しました!今週中から切り替えが完了します」


「ありがとう~!さすが!黒綾こくりょう殿は仕事が早いわね~」


わたしは思わず、彼の頭をなでなでする。ああ!今日も笑顔がかわいい!

本当に黒綾こくりょう殿は優秀な人材だわ!いつまでもいてくれたらいいのに。


怜彬れいりん殿!ありがとうございます!嬉しいです」


「次はこの仕事を頼みたいのだけど…」


「お任せください!!」


天使のような笑顔で黒綾こくりょう殿が話す。

本当にいつも笑顔でいい子だわ~。うん。うん。癒されるわ~。

でも…。いつまでもこのままって訳にはいかないのよね…。

黒綾こくりょう殿の事は、雷覇らいはに預けている。

しばらく黒秦国こくしんこくの情勢を見ようということで

今すぐ、黒綾こくりょう殿が帰ることはないのだけれど…。

本当に!うちの子にならないかしら!!本気でそう考えていた、わたしだった。


怜彬れいりん!」


会議から戻ってきた雷覇らいはにいきなり抱きしめられた。

ちょっと!!黒綾こくりょう殿のいる前でやめてー!!

左手の固定がとれて、身軽になったのか、最近やたら抱きついてくることが多い。

足の固定はまだとれていない。一度治りかけたけど、なぜか悪化していた。

何をしたのかしら?


雷覇らいは!いきなりどうしたの?」


「やっと会議が終わったんだ。怜彬れいりんに会いたくて早く終わらせた」


「えっ?そうなの?会議はちゃんとしたんでしょ?」


「ああ。勿論だ。無駄な話を一切省いて進めたらすごく順調に終わったよ」


…。それって大丈夫かしら?

雷覇らいはは時々、仕事のこなし方が極端だ。

それにしても…。いい加減離して欲しいんだけどな…。


「そう…。ならよかったわ。今お茶を入れるわね!黒綾こくりょう殿も一緒に休憩しましょ!」


「はい!それなら僕もお手伝いします!!」


「ふふふ。ありがとう。黒綾こくりょう殿」


「それなら俺も…」


雷覇らいははじっとしてて!!」


思わず立ち上がりそうになった、雷覇らいはを止めた。

雷覇らいはがしょんぼりしながら、立ち上がりかけたところで止まって座る。


まったく!怪我しているのに何を考えているのかしら!

せっかく治りかけのもダメにするし!!

とてもじゃないけど、今の雷覇らいはに告白する気にはなれなかった。

だって…。告白したらまた大怪我しそうじゃない?

大騒ぎして大変な事になりそう…。考えただけで恐ろしかった。


せめて、足の固定が取れてからにしよう!うん。うん。

その方がいいわ!!ちょうど今は、黒綾こくりょう殿をどうするか?と

言う問題と、被災地の復興支援の問題も抱えていて忙しい。

毎日一緒に暮らしているから、お互い顔を合わせているけど

会議が重なったりすると会えないことも多々あった。

今日は珍しく、午後からはまったりと仕事をしていた。

こんな風にお茶ができるのは久しぶりだった。

でも、そんな穏やかな空気もすぐに、失われる。


雷覇らいは様!黒秦国こくしんこくの使者が謁見に参っております!」


その一言で、あっという間に緊張感が部屋中に走った。





最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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