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53.試練


雷覇らいは

そなたと怜彬れいりん殿の関係に疑問を感じ、

少しの間、距離をあけた方がいいと判断した。

3日後、下に記している場所まで来るように。


虹珠こうじゅ


虹珠こうじゅ殿から貰った手紙は簡潔に記されていた。

記されていた場所は、春魏国しゅうぎこくにある高級旅館だった。

俺と怜彬れいりんの関係…。これのどこに疑問を感じるというのだ?

全く思い当たる節がない。婚約期間中であることは何もおかしなことではないはずだ。

秋唐国しゅうとうこくの習慣に倣って4人の立ち合いの決まった。

あとは怜彬れいりんの合意があれば、結婚できるのだ。

これのどこに疑問を感じるんだ?


…。それとも4人で話した際に、怜彬れいりんが俺の不満のようなものを

告げたのだろうか?…。この間の首に印をつけたことだろうか?いや…。

それともその前の…。ダメだ思い当たる節が多すぎる…。

だとしたらかなりまずい!あの人達は、男性は女性を大切にするべき!

と言う考えが特に強い。怜彬れいりんが嫌だと言っていたとしたら

あの人達の逆鱗に触れた可能性がある…。


今回のいきなり春魏国しゅうぎこくへ行くと言い出したのも何となく理解できた。

きっと俺は触れてしまったのだ。あの人達の逆鱗に…。

それなら、怜彬れいりんを迎えに行くときは相当な覚悟が必要だ。

何をするのか、言い出すのか全く想像できなかった。

もしかしたら、もう一度死にそうになるかもしれなかった。

それだけは何としてでも避けたい。あの人達の話をよく聞いたうえで

冷静に対処しよう…。そして真摯に謝ろう!これしかない!!


俺は腹を切るぐらいの気持ちで挑もうと決めた。

それくらいしなければ、怜彬れいりんを返してもらえないだろう。

俺は早く迎えに行きたい気持ちを抑えて、手土産の品は何をもっていくべきか

真剣に考えを巡らせていた。


*-------------------------------------*


はぁ…。だめだわ…。わたしこのままここにいたら

ダメな人間になっていく気がする…。

ここにきてもう3日目。今日はとうとう雷覇らいはと会える日だが

高級旅館の素晴らしさを堪能しすぎて、元の生活に戻れるか不安になっていた。

美味しい料理に、素晴らしい温泉、周りの目を気にせず自由にのびのび

上げ膳、据え膳の状態で暮らせる日々…。


ああ。帰りたくない!ずっとここでダラダラしていたい!!

温泉にずっと入っていたい!!そんな欲望にとらわれる。

もちろん、雷覇らいはには会いたい。が。それとこれとは話が別だった。

しかも、虹珠こうじゅ殿達と過ごすのはものすごく楽しい。

女同士という気軽さもあるし、わたしが何も頑張らなくてもしっかり者が

3人もいる状態だから、なにもしなくてもいい。

しかもそれを咎められることがない…。最高じゃん!!

甘えるってこんなに気持ちのいいことなのね…。


虹珠こうじゅはどうやって、雷ちゃんの指導をするつもり?」


「そうだな…。雷坊の主張にもよるがまずは肉体面から鍛えなおしだな!!」


「なるほどね♪んじゃあ、わたしは精神面の躾し直しね♡」


わたしの横でなにやら怖い話し合いをしている、虹珠こうじゅ殿と虹禀こうひん殿。

雷覇らいは…。無事に済むのかしら。


「では、わたしは議事録を付けますね…。あとで記憶にないと言われても困るので…」


夏緋かひ殿がさらりと告げる。

ああ!これで何があっても逃げれないようになってしまった。


「うむ!頼んだぞ。夏緋かひ


「よろしくね~♪」


3人ともとても楽しそうだった。まぁ、甥っこをかまえるのは

なんだかんだで楽しいのかな?

身内なんだし、そんなひどいことしないわよね?…。大丈夫よね?


でもなー。かたや戦場の女豹。かたや魔性の麗人。

そして冷静沈着な夏緋かひ殿…。誰が来ても勝てないような気がしてきた…。

水覇すいは殿が逃げるはずだわ!きっとこうなることがわかっていて

あの人は逃げたに違いない!!


はぁ…。どうか無事に話し合いが終わりますように。

わたしはただただ、祈るばかりだった。


*-------------------------------------*



その日の午後に雷覇らいははわたし達が滞在している旅館にやってきた。

これから戦いにでも行くかのような、物々しい雰囲気で部屋だった。


「よく来たな!雷坊。なかなかいい表情をしているではないか!」


意気揚々と虹珠こうじゅ殿が雷覇らいはに話しかける。


「ここまでの事をされたのです。それ相応の事を俺が行ったと思って参りました」


「あら~♪いい心がかけね。雷ちゃん。心当たりでもあるのかしら?」


ううう。早速。話し合い?とうか、雷覇らいはを尋問する会が始まった。

怖い!!ものすごく怖い。虹珠こうじゅ殿と虹禀こうひん殿は

表情が穏やかなものの、威圧感が半端ない!!

雷覇らいは雷覇らいはで、銀獅子ぎんししのオーラを惜しげもなく出している。

さっきまで、ここ天国でしたよね?楽園でしたよね?

いきなり、おどろおどろしい感じになってるんですけど!!ひえー!!


「心当たりなら、俺が日頃から、怜彬れいりんに対して行っている態度についてと思っております」


「うむ。まさにその通りだ!雷坊が怜彬れいりんに対して不埒なことをしていると聞いた」


怜彬れいりんちゃんから、話を聞いたときは驚いたわ~」


「不埒なこと?俺が…。怜彬れいりん対してですか?」


全く心当たりがない。といった表情の雷覇らいは

あ…。やっぱり、雷覇らいはもあのスキンシップは

不埒なことにはなってないのね…。


「よくもそんな事をぬけぬけと…。よその家の娘さんの、しかも!嫁入り前の女性に対して…っ!!!」


わなわなと肩を震わせながら、虹珠こうじゅ殿が話す。

今にも家が消し飛ぶんじゃないかと思うくらいの、凄い殺気だった。


「ふふふ。どうやって教育したら、そんな考えになるのかしら~♪雷ちゃんは、今まで一体何を学んできたのかしら?」


あああ!デジャヴ!水覇すいは殿が見える!虹禀こうひん殿の後ろに、翠龍りょくりゅうが見える!!


「待ってください!本当に俺は不埒な事と言われるようなことはしていない!怜彬れいりんに対しては誠心誠意、真心を込めて尽くしてきました!」


「愚か者め!!それはあくまで、お互いの気持ちが通じ合っていた場合だろう!」


「雷ちゃんが、どんなに怜彬れいりんちゃんを大切にしたって、怜彬れいりんちゃんの気持ちが伴ってなかったら意味ないでしょう?あなたがやっていることは犯罪よ?」


「…。そんな…。はんざい?俺が…」


二人に糾弾されて、がっくりと肩を落とす雷覇らいは

うーん…。これってわたしが半分くらい悪いわよね?

ちゃんと好きって言ってたらこんなことになってなかったのよね…。


「お前は今日から、怜彬れいりん殿に接触禁止だ!!あと毎日、腕立て伏せ1000回。腹筋1000回こなせ!!」


「そんな!いくら何でも酷過ぎる!腕立てや腹筋ならどれだけでもやります!怜彬れいりんと会えない状況は承知できない!!」


「あらあら♪元はと言えば、雷ちゃんが自分の精神をコントロールしていれば、こんな事にはなってなかったんじゃないかしら~。自業自得でしょ?」


「ぐ…。それは…」


夏陽国かようこくの最大当主だと言うのに何たること!全くもって遺憾だ!!その前に男として失格だ!己の好きな女性に対して、自分の気持ちを押し付けるばかり!そんなものは愛情でもなんでもない!」


「雷ちゃん♪一度でも怜彬れいりんちゃんにちゃんと会話したことあった?今、怜彬れいりんちゃんがどんな気持ちなのかきちんと確かめたことはあった?」


「それは…」


雷覇らいはは俯いてしまった。わたしは思わず、雷覇らいは虹禀こうひん殿の間に割って入った。


「お二人とも待ってください!」


怜彬れいりん殿…。どいて頂きたい。まだ話は終わっていない」


「話に割って入ったことはお詫びいたします!でも、雷覇らいはは決してわたしの事をないがしろにしたわけではありません!!」


「ないがしろにしていなくても、今の現状はそうといしか言いようがない」


「わたしがいけないんです!わたしが雷覇らいはにきちんと伝えていないから…。彼は不安になってあんな事したんだと思います!」


怜彬れいりんちゃん。気持ちはわかるけど、不安になったからと言って何をしてもいいわけではないわ。とくに雷覇らいはは軍人。力も強い。女性が襲われたら抵抗などできないでしょう?」


だめだ。このままでは、雷覇らいはだけが悪者になる。

彼は何も悪くない。少し過剰なだけだ。いつもわたしの事を思っていくれている…。

その事をなんとか二人に伝えたかった。


「でも…。わたしは嫌だと思ったことは一度もありません!むしろ、流されてしまったのは嬉しくて、離れたくなくて…、だから、だらしがないのはわたしです!お願いです!雷覇らいはを責めるならわたしも一緒にしてください」


わたしは二人に頭を下げた。

雷覇らいはに想いを告げるチャンスはいくらでもあった。

また、今度でもいいか。と胡坐をかいて疎かにしてしまった結果がこれだ。


怜彬れいりん…。お二人とも、怜彬れいりんは何も悪くない!俺が冷静さを失わなければ、こんな事にはなっていかったんです!」


「…。二人ともあくまで悪いのは自分だと言うのだな…」


「はい!!」


わたしと雷覇らいはが口を揃えて返事をした。

この人達の怒りを鎮めるには、きちんと謝罪するしかない。


「では、二人に問う。これからはお互いがどうすべきか」


「わたしは、きちんと雷覇らいはに気持ちを伝えます!彼が不安にならないように努めます!」


「俺は、怜彬れいりんの気持ちをちゃんと聞きます!今まで以上に誠意を持って接します!!」


「ふふふ。二人とも良い心掛けね♪」


虹珠こうじゅ殿、虹禀こうひん殿…。そろそろ、これくらいでいいんじゃないですか?」


「そうだな!!二人の気持ちはよく分かった!!お互いがそれぞれを想い合っていて素晴らしい!!」


「へ…?」


わたしと雷覇らいはは二人とも間の抜けた声を出した。


「試すような事してごめんなさいね~♪実は、二人が本当に愛し合っているのか確かめたかったのよ~♡」


「ええええええ!!!」


最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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