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43.黒髪の少年


わたしは息を切らしながら走ってテントに戻った。ちょうどテントではサイガとたラカンが話しているところだった。


「ラカン!!大変なの!!すぐ来て!!」


「わかりました!怜彬れいりん様」


「どうしたんだ?お姫様」


「川辺で人が倒れてたの!お願い助けてあげて!!」


 それを伝えて急いで二人と川辺に戻った。お水を口に含ませてあげると、よほど喉が渇いていたのか、ごくごくと勢いよく水を飲んでいた。


「大丈夫?」


「は…い。たすけて…いただいて…ありがとうございます」


 呼吸を整えながら黒髪の男の子が話す。綺麗なルビーのような瞳をした少年だった。


「ゆっくりでいいから…。ラカン!彼をわたし達のテントへ運んでちょうだい」


「かしこまりました」


 ラカンにテントへ運んでもらい、急いでお医者様を呼んでもらった。診てもらったところどこも怪我はしておらず、少し脱水症状があるとのことだった。彼は今テントのベットの上で眠っている。


「いったいどこから来たのかしら…」


「来ている服を見る限りじゃあ、夏陽国かようこくの人間じゃないっすね~」


 わたしの隣にいた、サイガが言った。夏陽国かようこくの人じゃなかったら、いったいどこの国からきたのかしら…。しかもあんな所に…。


「サイガ。どこの国の人なのかわかる?」


「うーん。多分ですけど、夏陽国かようこくの隣にある、黒秦国こくしんこくだ」


黒秦国こくしんこくですが…。またどうしてこんなところにいたんでしょうね?」


 不思議そうにラカンも言う。


「本当にね…。服もかなり汚れてたし…。わたしてっきり災害に巻き込まれた人だとおもったの」


「外傷はないんだったら、災害ではないっすね~…しかもあの見た目…」


 サイガが何か考え込むように腕を組む。どうしたんだろ…?


「何か思い当たることでもあるのですか?サイガ殿」


 不思議に思ったのだろう。ラカンがサイガに訪ねた。うーん。それにしても…。こんな時にすごく何なんだけど…。金髪碧眼イケメンと草食系モフモフイケメン二人が並ぶってヤバくない!!

あー!!目の保養だわ~!!ありがとうございます!!


「ちょっとな…。まだ確定ではないから何とも言えないんっすけど、もしかしたらかなりの身分の人かもしんないっすね!」


 ぇえええ!!そうなの?そんな人がどうしてこんなところに…。何か不穏な気配を感じるわ…。


「じゃあ、彼が目を覚ましたら話を聞いてみましょう!雷覇らいはにはわたしから話しておくわ!」


「よろしくっす!!俺は医者ともちょっと話してきますわ!」


「ではわたしは彼が目を覚ましたら何か食べれるように準備を致します」


「二人ともありがとう!!」


 わたしは二人とわかれて、雷覇らいはがいるテントに戻った。彼は目を覚ましたところのようで、まだ眠そうにしていた…。うわー!!寝起きの雷覇らいは!かわいいんですけど!!!


「おはよう。雷覇らいは少しは眠れた?」


 まばたき1回。彼にジッと見つめられる。喉乾いたのかな?


「よかった!あっ…喉乾いているの?お水飲む?」


 ニコッと笑ってまばたき1回。ぐっふぅ…!!笑顔の破壊力が凄い!!わたしは雷覇らいはにお水を渡した。飲み終わった後、また彼にジッと見つめられる。さっき外で騒いでたのに気が付いたのかな?


「さっき外が騒がしかったでしょう?わたしが川に行ったら人が倒れてて、ラカンとサイガに運んでもらってたの」


 わたしは、雷覇らいはの右手を握り締めながら、説明する。コクンと雷覇らいはが頷く。


「でね。サイガが言うには、その倒れてた人がどうやら黒秦国こくしんこくの人らしいの…。しかもかなり身分の高い人」


 それを聞いて、雷覇らいはが難しい顔をする。何か心当たりあるのかな?


「何か知ってるの?雷覇らいは…」


 コクンと頷いて首を少し降った。…?曖昧ってことかな?


「確信はないけど、心当たりあるって感じ?」


 雷覇らいはは驚いて、まばたき1回した。


「なるほど~。んじゃあ、あの男の子はやっぱり貴族か王族なのかな?真っ赤な綺麗な瞳でね、髪の毛もサラサラの黒髪なの!!」


 それを聞いた雷覇らいはの表情が曇る。あれ?どうしたんだろ?わたしは雷覇らいはの手をぎゅっと握る。


雷覇らいは…。大丈夫?」


 八ッと気が付いた様子で、雷覇らいははまばたき1回した。


「本当に?」


「だい…じょう…ぶだ…」


 上ずったかすれた声で雷覇らいは言う。まだ声はうまく出ないみたい。


「ならよかった…。あっ!あと無理に声だしちゃだめよ!!」


 雷覇らいははニコッと笑って頷いた。手も力は弱いけど握り返してくれる。雷覇らいはのさっきの表情は凄く気になるけど、雷覇らいはが大丈夫って言いうなら大丈夫よね!!


次の日、雷覇らいはにご飯を食べさせていたら、サイガがテントに入ってきた。


「お食事中すみません!二人ともちょっといいですか?」


「ええ。大丈夫よ!!どうしたの?」


「昨日拾ってきた子供いるじゃないっすか?今日、目を覚ましたんで話をしてきました」


 雷覇らいはがコクンと頷く。


「どうだったの?」


 わたしは雷覇らいはの手をつよく握った。


「やっぱり俺の考えていた通り、彼は王族でした…。黒秦国こくしんこくの第二王子の黒綾こくりょう殿だ」


「第二王子…。そうだったんだ…でもなんでそんな人が、あんな所に?」


「穏やかな話じゃなかったんっすよ。どうやら、誘拐されてここまで運ばれてきたそうっす」


「えっっ!!誘拐?!」


 第二王子を誘拐するなんて…。ただ事じゃない!一体彼になにがあったんだろう?


雷覇らいはは知っていると思うけど、実は黒秦国こくしんこくは今、後継ぎの事でもめていて、覇権争いになってるんすよ~」


「そうなの?それじゃあ…。彼を誘拐して殺そうとしたのって…第一王子とか?」


「さすがお姫様っすね!!ご名答!第一王子であり、彼の兄でもある黒爛こくらん殿っす」


 あっけらかんとサイガが答えた。そんな…。実の兄に命を狙われるなんて…。


「可愛そうに…。辛かったでしょうね…」


「まぁ、後継ぎ問題はどの国でもありますからね~。五神国ごしんこくが珍しく争いがないだけで」


 雷覇らいはもコクンと頷く。そうなんだ…。てっきりほかの国も似たようなものだとおもってた。基本的に五神国ごしんこくだけで、経済とか回っちゃうから、あんまり他国との接点ってないのよね…。雷覇らいはが心配そうに私の顔を覗き込む。


「大丈夫よ!雷覇らいは!!でも、ちょっと黒綾こくりょう殿が気になるから見てくるわ!!」


 そう言って私はテントを飛び出した。まだあんなに若いのに…。お兄さんから命を狙われるなんて…。きっと心細いに決まっているわ…。


「あーあ…。行っちゃった…。雷覇らいは、お前これから大変だな~」


 ニヤニヤしながらサイガが雷覇らいはに言った。それを聞いた雷覇らいははジロリとサイガを睨みつける。


「おーこわっ!!さー俺はやることあるから行くぞ~。じゃあな!!」


 そう言ってサイガはヒラヒラと手を振ってテントを出ていった。取り残された雷覇らいはは、悔しそうに一人顔をしかめていた。


最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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