42.それぞれの幸せな午後
この回もちょっと文章多めです!
最後までお付き合いいただけると幸いですm(__)m
雷覇が目を覚まして1週間。徐々にだけど雷覇の体は体力を取り戻しつつある。
本当に…。本当に目が覚めて良かった…!!雷覇が目を覚ますまでの2週間、生きた心地がしなかった。毎日、雷覇の顔を見ては、生きているか確かめた。わたしが寝ている間に死んでしまってたらどうしよう…。そんなことばかり考えて、夜もなかなか眠れなかった。
リンリンには休むように言われてたけど、横になってもいろんなことを考えて全然眠れなかった。
毎日、不安との葛藤だった。大丈夫!と思える日もあれば、もうダメなんじゃないか…。と思う日もあった。わたしはとにかく、体を動かし続けた。止まってしまうと心が折れそうだった。
でも、今はそんな不安もなくなった。彼が生きている。雷覇がここにいる…。その喜びで胸がいっぱいだった。
「雷覇!おはよう!ご飯持ってきたよ。食べる?」
雷覇がまばたき1回する。「はい」の合図だ。彼がどうしたいか意思疎通するために、簡単なきまりごとを決めた。そのおかげで雷覇のお世話もやりやすくなった。
雷覇は出された食べ物は全部食べた。必死になってよくなろうとしていると感じた。元々、軍人さんで体も丈夫だから、きちんと食べていれば体力もすぐに戻ると先生も言っていた。今は流動食はやめて、普通のお粥を食べてる。本当に回復が速いわ!!
「ちゃんと噛んで食べてね…。お水いる?」
まばたき1回。ふふふ。なんか大人しい雷覇って新鮮!!とってもかわいい!!なんか…。こう…。怪我した猛獣を手懐けてる的な?おっと、いけない。いけない。お水を飲ませてあげなくちゃ!
雷覇のお世話をできることが嬉しい。本当に幸せな気持ちだった。今は、雷覇が
元気になることだけ考えよう。わたしはお水を飲ませながらそんなことを考えていた。
「今日は天気がいいから、雷覇の髪を洗うね!」
まばたき1回。実は密かに楽しみにしてたのよね~。雷覇の髪の毛をさわるの!!本当にサラッとしていて、綺麗!!事故でなくならなくて本当によかった!!雷覇はかっこいいから、髪の毛が短くても似合うだろうけど、やっぱりこれだけ綺麗だと切るのもったいないわよね!!
雷覇を外へ運んでもらって、シャンプーを泡立てて髪の毛を洗う。気持ちがいいのか、ニコニコしながら目を閉じている。
「痛くない?」
まばたき1回。
「わたしの力加減は大丈夫?」
まばたき1回。
ほっとする。よかった~!!人の髪の毛洗うの初めてだから緊張するわ!!本当はリンリンの方が上手なんだろうけど、やっぱりわたしがやりたかった。頭皮を優しくマッサージしながら、毛先の方も洗っていく。雷覇の髪の毛が、日差しあたってキラキラしている。ほんとうに綺麗だな~。
お水をすくってシャンプーを洗い流す。雷覇の体を起こしてタオルで水気をとって乾かしていく。
「風がそよそよ吹いてて気持ちいいね!」
まばたき1回。
「元気になったら、一緒にお散歩しようね!」
まばたき1回。
雷覇が笑顔になる。最近では表情も変えれるようになってきてる。最初のころはほとんど無表情だった。仕方ないけど。でも目で訴えてくるから何を言いたいのかはだいたいは読み取れた。わたしはできるだけ、雷覇に話しかけた。今日の天気とか、今朝、わたしが食べたもの。たくさん話しかけることで、脳が刺激されて体の回復するスピードもあがるらしい。
髪を乾かし終えて、テントに戻る。ベットの上に雷覇を運んでもらって彼の横に腰かけた。
雷覇の右手を握る。ほんのわずかだけど、握り返してくれる。それだけも嬉しかった。
「ほんとうに雷覇の髪の毛って綺麗よね~」
まばたき2回。
「綺麗よ~。銀色に輝いててキラキラしてるもの、それにすっごくサラサラよね!!」
まばたき2回。
首をかしげてる。そんなことないって言いたいのかな?自覚ないのね!!本当に綺麗なのに!!きっと雷覇の子供を産んだら、おんなじ髪の色の子供が産まれるんだろうな~。女の子だったら絶対かわいいよね!!雷覇の女の子バージョンみたいな?…。うそ!!やだ!!絶対かわいい!!想像しただけでかわいい!そして雷覇は絶対お嫁には出さない!!とか言いそう。
「ふふふ…」
雷覇がきょとんとする。
「ごめんね…。ちょっと想像して楽しくなってたの。もし雷覇の…」
ハタと気が付く…。雷覇との子供とか…っ!!!恥ずかしすぎる!!わたし何を想像してんのよー!!!
「…かっ髪の毛くくったりしたら楽しいだろうな~…って」
とっさに誤魔化す。ふぅ…。危ない。危ない。こんなこと絶対言えない!!
まばたき1回。
「くくっていいの?」
まばたき1回。
「やった~!!んじゃあちょっと触るね!」
適当に言ったのに!ラッキー♪ああ。やっぱりサラサラしてて綺麗…。
わたしはその後、ちょっとと言いながら、雷覇に色んな髪型をして楽しんだのだった。
とても幸せな午後だった。
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…。俺はもうすぐ死ぬかもしれない。
毎日、怜彬がかいがいしく、俺の世話を焼いてくれている。こんなに幸せなことはない!!俺はやっぱり、死ぬんじゃないんだろうか?絶対におかしい!この1週間、怜彬の様子を見ているがいつも笑顔で俺に接してくれている。
「雷覇。ご飯食べれる?」「痒いところはない?」「しんどくない?大丈夫?」
怜彬に言われた様々な場面を思い出す。…。どの怜彬もかわいい。そしてすごく優しい!!何なんだこれは!!幸せすぎて逆に辛い!!
五神国会議の後、あんなに酷いことしたのに…。俺の事を心配してくれて、毎日、話しかけてくれる。話しているときは必ず手を握ってくれる。ああ!!抱きしめたい!!そんな衝動に駆られるが、残念なことに体が全く動かない。無理もない。2週間も眠り続けていたから体力がない。毎日、出された食事は残さず食べた。そのおかげでかなり回復しているのを自分でも感じている。
「雷覇!おはよう!ご飯持ってきたよ。食べる?」
怜彬が天使のような笑顔でテントに入ってくる。今日もすごくかわいい。俺はまばたき1回した。
「はい。あーん」
怜彬が食事を食べさせてくれる。…!!最高に幸せだ!!まさかこんな日がくるとは…。怪我して本当によかった!
「ちゃんと噛んで食べてね…。お水いる?」
まばたき1回する。彼女は俺の意図をよく、汲み取ってくれる。しゃべれないのは不便ではあるが、彼女を見つめると、怜彬が察してこちらの要望をかなえてくれる。…。凄い!言葉がなくても通じる!俺は衝撃だった。伝えないと、伝わらないと思い込んでいただけに、今の状況はかなりショッキングだった。
「今日は天気がいいから、雷覇の髪を洗うね!」
そんなことまでしてくれるのか!!…。もういつ死んでもいい!!俺は天にも昇るような気持だった。彼女の手は柔らかくて気持ちいい。優しく触れようとする感じが伝わってくる。
「痛くない?」
まばたき1回。
「わたしの力加減は大丈夫?」
まばたき1回。
怜彬が俺を労わってくれている。その気持ちだけで十分だった。自分のしたことが恐ろしくて彼女から離れたが、今となっては離れて良かったと思う。どれだけ自分が感情のコントロールができないかがよく分かったし、やっぱり怜彬が好きだと改めて思った。彼女に触れたい衝動があっても、体が動かない。今、怪我で動けないのはちょうどいいかもしれない。
怜彬が上から俺の顔を覗き込む。
「風がそよそよ吹いてて気持ちいいね!」
まばたき1回。
「元気になったら、一緒にお散歩しようね!」
まばたき1回。
…。やばい…!!怪我が治るまでに、感情のコントロールできるようにならないと!!このままでは、怜彬を押し倒してしまいそうだ…。いや…。確実にするな!!一体どうすれば、コントロールできるようになるんだ?精神力には自信があったが、ことさら怜彬の事になると自制がきかない。もう一度、剣の訓練でもするか…。本気でそう思った。
髪の毛を洗い終わって、テントの中に戻る。怜彬が髪を乾かしてくれている。
「ほんとうに雷覇の髪の毛って綺麗よね~」
まばたき2回。いやいや。怜彬の方が何万倍も綺麗だ!!
「綺麗よ~。銀色に輝いててキラキラしてるもの、それにすっごくサラサラよね!!」
まばたき2回。いやいや。怜彬の方が何万倍もサラサラだ!!
「ふふふ…」
…?何か考えているのか、ニコニコしながら手を動かしている。
「ごめんね…。ちょっと想像して楽しくなってたの。もし雷覇の…」
…?俺の?なんだ?怜彬は一瞬固まったように見えた。
「…かっ髪の毛くくったりしたら楽しいだろうな~…って」
まばたき1回した。怜彬が触れてくれるなら、喜んで髪を差し出そう!!それで楽しんでもらえるなら俺も嬉しい。自然に表情が緩む。
その後、怜彬は鼻歌をくちずさみながら、俺の髪の毛をいじって楽しんでいた。
とても幸せな午後だった。
そして俺は怪我が回復して体が動かせるようになったら、どんなメニューで剣の訓練をするか考えを巡らせた。
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ひとしきり、雷覇の髪の毛いじりを楽しんだ後、わたしは洗濯するために川へ向かっていた。
雷覇は今、お昼寝中だ。ご飯を食べて少ししたら話している途中で眠ってしまった。とてもリラックスしているのだと思う。わたしといる時は笑顔で微笑んでることが多い。彼が嬉しいと私も嬉しかった。
川辺のあたりに、黒い塊が見えた。…。なんだろ?わたしは目を凝らして見る。
近づくとだんだん、輪郭がくっきりしてきた。人が倒れていた!!大変だ!!わたしはすぐに駆け寄って声を掛けた。
「大丈夫ですか!?どこか痛むんですか?」
顔を覗き込む。真っ青な顔をしていた。一瞬死んでいるのではと思ったけど、呼吸している音が聞こえた。凄く整った顔をしているが男性だった。服がかなり汚れてよれよれになっている。もしかしたら、災害に巻き込まれた人かもしれない。
「…み…ず…」
彼が目を覚まして呟いた。よかった!意識があって!
「水ね!!わかったすぐに持ってくるから待ってて!!」
わたしは急いでラカンやリンリンがいるテントに向かった。
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