41.もう一度君に会いたい
色々誤字すみません!!m(__)m
都度読み返して訂正します!!
被災地へ到着し、雷覇がいるテントへ案内された。
「…っ!!!」
ひどい…。雷覇の状態を見て、言葉が出なかった。顔は右半分包帯で覆われ、右足と左手にも包帯が巻かれて固定されていた。全治3ヶ月だそうだ。助かったのは奇跡で、一歩間違えていたら死んでいたとサイガから説明を受ける。それくらい酷い事故で、雷覇以外にもけが人が沢山いて、今、ラカンとリンリンが支持を出しながら、治療を手伝っている。
「雷覇…」
彼の右手を握る。良かった…。温かい…。怪我をしてから2日経つがまだ目を覚まさない。
お医者様の見立てでは、頭を強く打った為に、意識が戻らないとのことだ。こればかりはいつ目を覚ますかは分からないらしい…。
「やっと…会いに来たのよ…雷覇…お願い目を開けて…」
そう呼びかけたが、雷覇は目を覚まさない。静かに眠っているだけだった。
彼の手を握りしめて祈った。五神の神様…。お願いです。彼を連れて行かないで…。もう…。わたしの大切な人を連れて行かないでください…。お願いします…。わたしは必死に祈った。もう誰にも死んでほしくない。雷覇までいなくなったらどうしたいいの?
わたしはひと晩中、雷覇の手を握りしめ続けた。
次の日も、その次の日も雷覇は目を覚まさなかった。時々、雷覇の様子を見に来ては、怪我人の手当てを手伝う毎日を送っている。傷は骨折が酷いが、最初の応急処置が良かったため、後遺症にはならないそうだ。生きているだけでも幸運だった。事故で怪我をした人たちの手当をして思ったが、雷覇と同じくらいみんな酷い怪我をしていた。この長雨で地盤が緩み、一気に落石したそうだった。
わたしは取り替えた包帯を洗うため、近くの川まで来ていた。
雷覇はいつ目を覚ますのかしら…。もう一生目を覚まさなかったら…?
瞳から涙が溢れてくる。雷覇が目を覚まさないことばかり考えてしまう。怖い…。
炎覇のときと同じだ。包帯を洗う手が震える。炎覇も突然死んでしまった…。
雷覇も…。だめ!!そんなことない!!大丈夫。大丈夫。何度も自分に言い聞かせる。彼は帰ってくる。わたしに会いに来る!
わたしは、涙を拭って再び、包帯を洗い始めた。
雷覇の包帯を取り替えるために、彼のいるテントの中へ入った。まだ彼は静かに眠ってる。
彼の右手を握りしめる。
「雷覇…。お願い…。目を開けて…」
彼は何も答えない。
「また…名前を…よんで…」
とぎれとぎれになりながら雷覇に呼びかける。彼の顔を見つめながら、出会った頃を思い出していた。手紙でいきなり結婚しようと言って、突然、騙し討ちのように訪問してきた。その後は怒涛の日々だった。毎日わたしに会いに来るために国王が長期滞在。前代未聞の事態だった。
そんな日も突然終わる。水覇殿が連れ戻しに来たからだ。ふふふ。雷覇はちっとも反論できずに論破されてたんだったっけ…。
その後、婚約して夏陽国へ行き雷覇と向き合ってみようとなった。
「あの後の甘々攻撃すごかったな~。もう本当に恥ずかしかったんだから…」
雷覇の顔を拭きながら呟いた。頭の包帯は取れてる。
その後も慌ただしい日々だった。マーリンに招待されて春魏国へ行き、誘拐されて冬羽国へ。雷覇に会えない時間ができて、初めて自分の気持ちに気がついた。雷覇が好きという気持ち…。その後、冬條殿と出会って…。あの時、雷覇はわたしと冬條殿が好き合ってるって勘違いしてたんだ。ふふふ。変な勘違いよね。わたしが冬條殿を好きだなんて…。まぁ仕方ないか。その頃、雷覇と喧嘩してた。春魏国の祭りでのことだった。怜秋に対して凄い焼きもちをやいて…。それで口論になった。初めての喧嘩だった。
「怜秋に焼きもちなんて…。怜秋は弟よ?」
雷覇の頬に触れる。良かった、傷は残ってない。
喧嘩して仲直りをして、雷覇に好きって告白しようと思っていた。
なかなかタイミングが掴めなくて、五神国会議が始まって、色々考えてたら自分の気持ちに自信が無くなって…。過去に捕まった。はぁ…。今思えば、もっと早く気持ちを伝えていたらよかった…。考えても仕方ないけど。
「雷覇…。早く起きて…」
わたしは再び雷覇に呼び掛けた。彼が目を覚ますまで何度も呼び掛けよう…。ずっと待っていよう。彼がそうしてくれたように、わたしも雷覇が目を覚ますまで待とうと思った。今度こそ、一緒にいたい。なにがあっても傍にいたかった。
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目を開けると真っ青な空の上に立っていた。…。ここはどこだろう。ぼんやりしながらあたりを見渡す。なにもない。真っ青な空がどこまでも続く世界だった。
「君はまだここに来ちゃいけいないよ…」
懐かしい声がして俺は振り向いた。
「親父…」
振り返ると父が立っていた。
「早く戻ってあげなさい。雷覇」
「戻る?どこへ?」
「分かっているだろう?君がもっとも会いたい人のところだよ…」
会いたい人…。誰だっただろう…。まだ頭がぼんやりしていて思い出せない。ここに来る前、ずっと会いたいと思っていた人がいた気がする。
「俺の会いたい人は…」
「彼女はずっと待ってるよ…君の事を」
「…」
目を閉じると彼女の顔が浮かぶ…。楽しそうに笑う顔…。
父が俺に近づいてくる。生前と変わらない姿だった。
「雷覇…。今泣いているよ?彼女は…」
「泣いてる…」
父の言葉をそのまま繰り返す。彼女が泣いている。最後に会ったとき泣いていた…。
「怜彬…」
彼女の名前を呟く。ああ…。そうだ。俺は彼女に会いに行かなくては…。
「やっと思い出したね…。さぁ。早く行ってあげなさい…」
そういって父は優しく背中を押す。
その瞬間、俺はそっと目を開けた。
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「…!!雷覇!!」
目を覚ますと瞳に涙をいっぱいためた、怜彬の顔が飛び込んできた。
「れ…い…りん」
声がかすれてうまく出てこない。
「雷覇…。雷覇…」
俺の手を握り締めながら、彼女がポロポロと涙をながす。ああ…。早く涙を拭いてあげないと…。そう思うけどうまく体が動かせない。
「よかった…。もう…目を覚まさないかと…」
震える声で彼女が話す。怜彬を見つめる。目の前に会いたかった人がいる。これは夢ではないだろうか…?ぼんやりした意識の中でそう思った。
「雷覇…。会いたかった…ずっと…ずっと…」
彼女の冷たい指先が頬に触れる…。ああ…。夢ではないのか…。
「おれ…も…」
俺も会いたかった。そう伝えようとしたけどやっぱり上手く声が出せない。もどかしい。
「無理して話さなくていいよ…何日も眠ってたんだもの」
涙を流しながら怜彬が優しい顔で笑う。どれくらい眠ってたんだろう…。記憶が朧気で、思い出せない。
「ちょっと待ってて!今すぐお医者様を呼んでくるから!!」
まだ傍にいてほしい…。そう伝えようとしたけど怜彬はすぐに走ってどこかに行ってしまった。俺は…。何があったんだっけ?
それから、すぐに医者が来て俺は2週間もの間、眠り続けていたと聞かされた。意識がなかった前後の記憶が曖昧なのは頭を強く打った事が影響しているらしい。
俺の顔を見るために、次々に人が来た。みんなとても心配してくれていた。怜彬を見ると、リンリンに何か言いながら話してた。また泣いていた。でも表情は明るいから、悲しんで泣いているのではないんだろう…。早く怜彬に触れたい…。彼女をジッと見つめると俺の視線に気が付いたのか、彼女が駆け寄ってきた。
「雷覇。大丈夫?どこか痛む?」
心配そうな顔をしながら彼女が俺の手を握ってくれる。握り返したいけど力が入らなかった。
「だ…いじょ…ぶ」
「本当?辛かったら合図してね…」
怜彬が優しく微笑む。俺も嬉しくなって微笑んだ。うまく笑えているかは分からないが…。生きてまた彼女に会えてよかった。まだ実感はわかないが、一歩間違えれば俺は一生、怜彬に会えないかもしれなかったのだ。
親父…。ありがとう…。ぼんやりした意識で父と話したことを思った。あれは夢だったのだろうか?不思議な体験だった。父が背中を押してくれなけば戻ってこなかった気がする。
きっと俺を引き留めるために現れてくれたのだろう…。そう考えて俺はまた眠りについた。
翌朝、目を覚ますと、すでに怜彬が傍にいて俺の手を握ってくれていた。もしかして、一晩中付いててくれたのか…?そう尋ねたいけど、まだ声は出ない。
怜彬の話では2週間何も食べてないせいで、体力が落ちているらしい。少しずつ食べて体力が取り戻せれば、言葉も話すことができるそうだ。
「雷覇、ご飯持ってきたんだけど…食べれそう?」
俺はまばたきして合図した。俺が話せるようになるまでは、まばたき1回で「はい」、まばたき2回で「いいえ」という決まり事をした。これで意思疎通がはかれるからありがたかった。
俺はまばたき1回をする。すると怜彬が嬉しそうに、ご飯を口元まで運んで食べさせてくれる。お粥をさらに細かくつぶしたものだった。流動食で胃の負担にならないものしか、今は食べれないらしい。早く体力を取り戻さないと…。俺は無心になってご飯を食べ続けた。
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