35.【追憶編】~怜彬の記憶3~
炎覇は書いていて本当に楽しいキャラクターでした!( *´艸`)
「炎覇殿って、赤い不死鳥って呼ばれてたんですよね?」
庭園で、お茶を飲みながら雷覇殿から聞いた話をしてみた。
「うっ・・・。うん。どこでそんな話を聞いたの?」
なんか・・・・。すごい嫌そうな顔をしている。珍しいな・・・・。なんでだろ?
「さっき、書庫室で雷覇殿から教えてもらいました!!凄く強かったんですってね!!死なない男?って意味でついたんですよね?」
わたしは嬉々としながら、炎覇殿にさっき聞いた話を伝えた。炎覇殿と二人でいる時は他愛ない話をすることが多かった。
「そうなんだ・・・・。まぁ・・・・昔の話だよ・・・・」
ちょっと照れくさそうに炎覇殿は言う。最近は体調も落ち着いている。お薬の量も減ってきていた。
「どんな戦い方をされたんですか?」
「うーん・・・。わりと血生臭い話だよ?聞きたいの?」
「はい!!とっても聞きたいです」
炎覇殿の事なら何でも知りたかったし、話を聞きたかった。わたし達は二人でいる時はできる限り話をしていた。二人の時間を大事にしようと二人で決めた。結構、炎覇殿って自分の事を話さないのよね~。いつもわたしの話を聞いてくれるばかりで・・・・。
「僕が軍人だったころは結構、他国からの侵略が多くてね・・・・。いつも最前線で敵と戦ってたよ・・・。僕の武器は鉾でね。それで敵を薙ぎ払うんだけど、ものすごい血しぶきが飛ぶんだ・・・・」
「おおお・・・・。物語に出てくる登場人物みたいですね!!」
「敵の返り血をたくさん浴びて、どんな戦場でも必ず生きて帰ってくる・・・・。そこから赤い不死鳥なんて異名をつけられたんだ・・・・」
「なるほど!!だから赤い不死鳥なんですね~」
「ああ・・・・。本当に怜彬は好奇心旺盛だね」
「そうですかね?あんまり考えたことはないですけど・・・・」
「やっぱり、君を妻にできて良かったよ・・・・。本当に毎日が飽きないし、楽しいよ」
ぐっはぁ!!!ときどき・・・・。炎覇殿は爆弾を落としてくる。妻とか嬉しいけど・・・。なんだかむずがゆい・・・・。
「炎覇殿が・・・・。楽しいなら・・・・。よかったです」
「ふふふ・・・・」
わーん。絶対照れてるな~。とか思われてそう・・・・。なんか話を逸らそう!!
「炎覇殿!ちょっと散歩しませんか?」
「ああ。いいよ・・・・行こう」
ふー。危ない。危ない。何が危ないって?わたしの心臓がですよ!!!本当に炎覇殿はずるいわ。かっこいいうえに、こんな甘いセリフをサラッと言ってしまうんだもの・・・・。
そんな事を考えていると、目の前にあった木に咲いていた赤い花に目が留まった。きれい・・・・。
何重にも花弁が重なって大きな花になっている。
「怜琳は赤い花や黄色・・・・。濃い色の花がすきなのかい?」
散歩している時に、炎覇に聞かれた。わたしがじっとその花を見ていたから気になったのだろう。
「そうですね・・・・。特に意識したことはないけど、明るい色の花は好きだわ!」
「そうか・・・・。この花はきれいだね。なんて言う花?」
「この花はサザンカと言って、おもに寒い地域でよく咲いている花で、雪の中でもきれいな花を咲かせる珍しい花なんです!!」
「そうなの?すごいな~。雪の中でも咲くんだね・・・・」
炎覇殿は、わたしの話をほんとうによく熱心に聞いてくれる。炎覇殿の方が好奇心旺盛だと思うけどな・・・・。ふふふ。お互い様ね!きっと!!
それから1週間くらい経った頃、炎覇殿から簪をもらった。赤い大きな花の飾りがついたもので何重にも花びらが重なっている繊細なデザインのものだった。
「いいんですか・・・・?こんな高そうなものもらって・・・・」
「君に似合うと思ってね・・・・。買ってきたんだ」
「この花ってこの間の・・・・」
わたしが何気なく話したことを覚えてくれてたのね・・・・。すごく嬉しい・・・・。それにわざわざ買いにいってくれたなんて・・・・。自然と顔がほころぶ。
「そう!君が庭で見ていた、サザンカの花だよ・・・・。花言葉は素直、飾らない心・・・・君にぴったりだろう?」
そういいながら、炎覇殿は髪をすくい上げて簪をさす。花言葉まで調べてたなんて・・・。
「ああ・・・・。やっぱりとても似合うね・・・・。怜彬・・・・」
眩しそうに笑いながら、彼は言った・・・・。ああ・・・。本当に炎覇殿が好きだわ。わたし・・・・。炎覇殿見つめながらそう感じた。彼といるだけでこんなにも、幸せな気持ちになる。人を好きなるってこんな気持ちになるね・・・・。
「ありがとうございます!!とってもきれい。大事に使いますね!!」
「ああ」
そう言って彼は私に頬に口づけする。わたしは彼の胸に顔を埋めて抱きしめた。
「炎覇殿・・・・。大好き・・・・」
「僕もだよ・・・・怜彬・・・・」
彼が優しく抱きしめ返してくれる。いつものいい香りがした。
「あの・・・・。怜彬・・・・お願いがあるんだけど」
「なんですか?」
頬を赤くしながら炎覇殿が遠慮しがちに話しかけてきた。珍しい・・・・。照れてるなんて。
「そろそろ、名前でよんでくれないかな・・・・あの・・・・嫌じゃなければだけど」
「あ・・・・・」
あんまり意識してなかったけど、炎覇殿って呼ぶの気にしてたのね!!ううう。かわいいな!!
「炎覇・・・・」
「ありがとう。怜彬」
とっても嬉しそうに炎覇が笑う。わたしも嬉しくなって微笑み返した。こんな日がずっと続けばいいのに・・・・。
幸せを感じれば感じるほど、失うことへの恐怖も増す。余命半年と言われた期間は過ぎてる・・・・。きっと大丈夫。炎覇は死なない。わたしは祈るように、炎覇を抱きしめたのだった。
それから、何事もなくさらに半年がたち、わたしが嫁いできて1年が経とうとしていた。
最近では、近くならお城以外の場所へ出かけられるようになっていた。今、炎覇は
薬はほとんど飲んでいない。周囲から奇跡だ!さすが、赤い不死鳥だとも言われていた。
毎日が穏やかに過ぎていった。炎覇は相変わらず、野菜が嫌いだけどちゃんと食べてるし二人で一緒に運動もしたり、散歩したり、本を読んだりして過ごした。時々、雷覇殿も様子を見に来てくれて、3人で話したりもした。思えばこの頃が一番幸せだった。朝一緒に起きて、ご飯を食べて、2人で散歩して・・・・。夜になったら一緒のベットで眠る。特別なことがなくても、彼の傍にいれることだけで満ち足りた気持ちになった。
「ほんとうに、怜彬のおかげだよ!僕がここまで生きてこれたのは!」
「ふふふ。そんなことないわ!炎覇が頑張ったからよ!!」
今日は雨が降っていたから部屋で読書しようということになった。炎覇がふたりで過ごすために作った別邸でわたしたちは午後を過ごしていた。わたしは炎覇の前に座りながら本を読んでいた。後ろからぎゅっと抱きしめられる形で本を読むのは少し照れくさい。でも炎覇とくっついているのが好きだから、ぴったりと寄り添っていた。背中があったかくて心地いい。
「怜彬。今日は何の本を読んでるんだい?」
「今日は、植物図鑑の本よ!異国の植物がたくさん載っていて面白いの!」
後ろから覗き込むような形で炎覇が尋ねてきた。
「ほんとうに、怜彬は、草花が好きだね・・・・何かきっかけはあるの?」
「うーん?なんだったかな~」
わたしが好きになったきっかけかぁ・・・・。そういえば何だったんだろう?
「たしか、わたしの母が好きだったからだと思う。小さい時に亡くなったけど、よくお庭を散歩したのを覚えているわ」
「そうなんだ。母君の影響だったんだね」
「うん。懐かしいなぁ!母は体が弱い人だったから、あまり外にでれなくて・・・・。だからよくお花を摘んで部屋までもって行ってたわ!」
「きっと母君も嬉しかっただろうね」
「そこから、花の事を調べるようになったわ。たくさん種類があって育て方も全部バラバラで・・・・5歳の時にはお庭が欲しいっておねだりしたわ」
「ハハハ。誕生日プレゼントがお庭ってすごいね!!怜彬は面白い子供だったんだろうな」
「そうね。よく変わってるとは言われてた。宝石の国の姫の割には宝石に興味なかったし・・・・」
「そういう炎覇はどんな子供だった?」
わたしはくるっと後ろを向いて炎覇の顔を覗き込んだ。
「うーん。僕はどちらかというとあまり活発な方じゃなかったな~。戦いも嫌いだったしね!」
「えっ?そうなの?」
「うん。そもそも訓練が嫌いなんだ・・・。しんどいだろ?だからよく師匠の目を盗んではさぼって、バレてめちゃくちゃ怒られてたな~」
「ふふふ。そうなのね!でも赤い不死鳥って呼ばれるほど、強くなったのでしょう?なにかきっかけはあったの?」
「大事な人を守れたなかったからかな・・・・。戦で目の前で父が殺されてね・・・・。僕が15歳の時だ。だから強くなろうって思ったよ・・・・誰も死なせないために」
「そう・・・だったの。凄いわね・・・炎覇は」
「凄いのは僕より、怜彬だよ!あの時一緒に生きようって言ってくれた。あの言葉がなかったら僕は今日まで生きてなかったと思う・・・・」
「そんなこと・・・・わたしは必死だっただけだもの・・・・」
「それでも、僕にとっては救いになったよ・・・・愛してるよ。怜彬・・・・」
「わたしもです・・・・炎覇」
そう言ってわたしたちはしばらく見つめあった後、抱きしめ合った。
「ああ!最高に幸せだな~!!!ほんとうに思い残すことなんにもないな~」
「ふふふ。わたしも幸せよ。炎覇と一緒にいると何もなくても満たされた気持ちになるもの」
「ありがとう!!怜彬」
「こちらこそ!ありがとう!炎覇・・・・」
それがわたしと炎覇が交わした最後の会話だった。
次の日の朝。起きたら彼は冷たくなっていて、永遠に目が覚めることはなかった。
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