33.【追憶編】~怜琳の記憶~
いよいよ過去編です!!!
~4年前秋唐国~
「はぁ…。今日も憂鬱だわ…」
わたしは自分の庭園の花壇の前でしゃがみ込んで、花を眺めてた。
今日の夜会は私の婚約者を探すために開かれたものだった。
五神国の各国の首脳陣とそのご子息様たちが、一同にこの秋唐国に集まっていた。
兄があっという間に亡くなり、後を継いだ怜秋。
彼を守るための縁談とはいえ、正直気が乗らないのも事実である。
怜秋の傍を離れたくないのに…。
「宝石の妖精がこんなところでなにしてるの?」
ふいに後ろから誰かに話しかけられた。
振り向くと、褐色の肌に綺麗な銀色の髪、キラキラ光る金色の瞳をした男性が立っていた。
どこかで見たことあるけど…。だれだっけ?
いっぱい人に会ったから忘れちゃった…。
「花を眺めてたんです…。ここの花はわたしが育てているので…」
「そう!これは見事だね!この花は何ていうんだい?」
「これは、あじさいと言って雨の日にしか咲かない花なんです!小さな花がたくさん集まって一つの花に見えるんです!とってもきれいな青色で…ごめんさい」
「なにがだい?」
「こんな話面白くないでしょう?」
わたしの悪い癖だ。花の事となるとついつい、話すぎてしまう…。大体の人はきょとんとした顔をする。宝石の妖精が意外だと…。
「とっても面白いよ…。僕の国にはあまり花が咲かなくてね…。ここは本当に綺麗な場所だね…」
「ありがとうございます!!」
わたしは嬉しくなって、また力説しだす。初めてほめてもらえた!わたしのお庭…。私自身。
「この庭園は父にお願いして作ってもらったんです。5歳の誕生日に!それから毎日自分でお世話して育ててるんです!」
「なるほどね。だからこの庭は温かい感じがするんだね…。君みたいに」
「そうですかね?あんまり分からないですけど…。嬉しいです」
この人は誰なんだろう?兄よりも年上な気がするけど、でもそんなに老けてる感じもしない。
不思議な人。妖精ってこんな人をいうのかも…。
穏やかに笑っててなんだか、ひだまりみたいな人。
炎覇と初めて会って話したのはこれくらい。
時間にして数分のことだったと思う。
それでもわたしはその夜会で会った人の中で唯一、記憶に鮮明に残ってた。
その夜会のあと、すぐにわたしの結婚が決まった。拒否権はなしだった。
なんでも、初めから相手は決まっていたらしいけど、誰かが横から入ってきて
その人にゴリ押しされて決まったらしい。
あの夜会で来ていた人の中からだろうけど…。誰なんだろう?まぁ…。誰でもいっか…。
反対したところで通るはずもない…。ただ心配なのは怜秋のこと。
あの子を残して嫁ぐことだけが心の残りだった。でも…。
1年我慢すれば戻ってこれる。なぜだかわからないけど、相手の出した条件が結婚期間だった。1年だけでいいってどういうことだろう?
形だけの夫婦でいいってことかな?なんにせよ、1年で怜秋のところに戻ってこれるのは有難かった。
結婚式は盛大に行われた。それも費用はすべて相手持ちとのことだった。
豪華な衣装に盛大なパレード。
異国からくる姫を全力で迎えようとする意志が伺える。
何時間もかけて輿にのって練り歩き、ようやく旦那様のまつ城へたどり着いた。
朝から出発してもう午後も回っていた。
お腹すいた…。朝から何も食べてない。
結婚式ってこんなに大変なんだ…。衣装は重いしきついし、動けないし…。
もう二度とごめんだ。
輿から降りて待っていたのは、驚くべき相手だった。
「あなたは…。あの時の…」
「会うのは二回目だね…。花園の妖精さん」
穏やかににっこり笑う、ひだまりみたいな人…。
夜会で会った男性がわたしの旦那様…。
この人がゴリ押しで結婚進めたの?とてもそんな風には見えない。
今も穏やかにニコニコ笑ってる。
優しそうに見えるけどな…。
「…。びっくりしました…。お相手があなたとは思っても見なかったので」
「ああ。そうだろね…。僕も正直びっくりしてるんだ」
彼に手を引かれながらゆっくり、輿から降りる。大きな手…。温かい…。
「まさか、息子ほど年の変わらない君に恋してしまったんだからね」
「えっ?」
…?恋?こい?コイっっ!!
一瞬頭が真っ白になった。何を言っているのかしら?この人…。
「ああ。やっぱり君は綺麗だね…。眩しすぎて目がくらむほどだよ」
恍惚とした表情で彼に見つめられる。きれいな金色の瞳。
「ありがとうございます。この衣装は凄いですものね…」
「ハハハ。君自身を褒めたつもりだったんだがね。
その衣装もよく似合ってる。怜彬…」
くしゃっと彼が笑う。わたしは不思議な気持ちで眺めてた。
多分、実感がわかなかったんだと思う。本当にこの人と結婚するのだうか?
これは夢なんじゃないだろうか?だっていまだに彼は妖精みたいに見える。
ただ、彼に名前を呼ばれるのは心地よかった…。
それだけは実感が湧いていた。
結婚式が終わって3日。今日は炎覇殿と一緒にお城を回ってる。
「ここは君のために作らせた庭園だ。好きにするといい。気に入ってもらえるといいんだが…」
少し照れくさそうに炎覇殿が言った。
「ここ全部ですか?すごい!!」
自分の庭園よりも何倍もの広さの庭だった。たくさんの木々に、様々な国の草花。
よく短期間で作れたものだ。どれもわたしが好きなものばかりだった。
それ以外にも見たこともないような種類のものもたくさんあった。
「喜んでくれてよかったよ。怜彬」
「本当に嬉しいです!!!ありがとう!炎覇殿!」
わたしは嬉しくて、つい炎覇殿に抱きついてしまった。
あわわ!!どうしよう…。
慌てて離れようとしたけど、逆に炎覇殿に抱き留められてしまう。
「ハハハ。怜彬に、そんなに喜んでもらえるなんて嬉しいよ!」
炎覇殿にぎゅっと抱きしめられると、とってもいい香りがした。
それに大きくてあたたかい…。大人の男の人ってこんな感じなのね…。
いつも怜秋を抱きしめてるけどやっぱり全然違うわ!
「とっても素敵な庭園です。お世話するのが楽しみ…」
「そうだね…。天気のいい日はこうやって散歩して庭を眺めて過ごそう…」
「はい…」
わたし炎覇を見上げながら答えた。
わたしの為にここまでしてくれるなんて…。この人は本気なのね…。
炎覇と庭を眺めて歩きながらそんな事を思っていた。
でも、わたしはまだこの時知らなかった。
なぜ彼がこれほど自分に沢山のことをしてくれているのか?
そしてなぜ結婚期間が1年間という、限定的にしているのかを…。
結婚してすぐに、炎覇に言われたことは、跡継ぎは作らないということだった。
期間が限定されていることもあったけど、すでに息子さん二人がこの国の当主として統治していたからだった。
わたしとの子供は後々、跡継ぎ問題になる可能性もあるため、子供は持たないと言われた。
たしかにそうね…。と思った、1年間の限定なら、子供はいらないだろうと感じた。
ちょっとホッとしている部分もあった。嫁ぐということは、相手の子供をもうけるということでもある。
跡継ぎを産む。その使命もあるから最初は結構、緊張していたけど…。
「僕はもう引退しているからね…。これからはのんびり老後を過ごそうと思うんだ…。怜琳には申し訳ないけど、年寄の道楽に付き合ってもらえないか?」
「炎覇殿はそんなに年上に見えないですけど…」
「本当かい?いやあ嬉しいな…!」
本当に若々しいと思った、とてもあんな大きな子供が二人もいるなんて思えない。
銀色の長い髪の毛をゆったり後ろで結んでいて、金色の瞳はキラキラしている。
宝石みたい…。
若くみえるのは炎覇殿が、無邪気によく笑うからだとも感じた。
一緒にいるとよくあるのだけど、本当に子供みたいだった。
純粋な人なのだと感じた。
わたしと結婚するまでは再婚せず、ずっと奥さんのことを大切にしていた。
「ふふふ。炎覇殿って子供みたいですね…」
わたしは笑いながら言った。彼の傍は居心地がよかった。
温かくて優しい…。こんな気持は初めてでった。
兄が亡くなってずっと気を張っていたかもしれない。
こんなに笑ったのは久しぶりだった。
「怜琳は笑ったほうがかわいいね…」
「あっ…ありが…とうございます…」
「いや。照れてるのもかわいいね!」
そう言いながらおでこに口づけされる。すごくびっくりした!!!
「っ…!!!!」
そんな事今までされたことがない。
凄く恥ずかしかった!いやー!!!おでこにチュッって何!!?
前々から気になってけど。炎覇殿はすごく…。
ものすごく…スキンシップが多い。
夫婦ってこんな感じなの???
常に手を繋ぐし、さっき見たいに頬やおでこにも口づけされる。
そのたびに、どうしたらいいか分からなくなる。
「炎覇殿!!!恥ずかしいのでやめてください!!」
わたしはべしべし炎覇殿の胸をたたきながら抗議した!
「ハハハ!!それは無理だよ~。怜琳が可愛すぎるんだから」
そう言って、またギュッと抱きしめられる…。
幸せだった。毎日。いつも笑ってた。
穏やかな日々だった。わたしはだんだん、炎覇殿に惹かれていった。
いつもわたしの事を考えてくれてる。
彼の優しさや愛情はふわふわ降る雪みたいだった。
ふわふわしてずっと上から振り続けてくるみたいな…。
今まで味わったこと無い感情だった。これは何なのだろう?
彼を思うと温かくて、でも泣きそうなくらい切なくなる…。
ずっと傍にいたい…。そう思うたび1年という期間が重くのしかかる…。
どうして1年なのだろう。わたしと年齢差があるからなのかな…。
聞きたいけど、聞くのが恐ろしくもあった。
知ってはいけないような気もしていた。
わたしが、夏陽国に嫁いで3ヶ月経過した頃、突然それは起こった。
炎覇殿が急に倒れたのだ。顔が真っ青になって苦しそうだった。
ただ事ではない。
わたしは慌てて、助けを呼んだ。その時の周りの反応に違和感を感じた。
皆驚くどころかどこか冷静に対処していた。
まるで知っていたみたいに…。
だからわたしは、主治医を問い詰めた。すると衝撃な事を聞かされた。
「奥様。落ち着いて聞いてください…。本当は絶対に言うなと言われていたのです…」
凄く困った顔をしながらそう言われた。すごくドキドキした。
「なに!炎覇殿はどこが悪いの?皆の反応もおかしいの!!お願い。教えて!!」
わたしは縋るように聞いた。
「炎覇様は…。不治の病にかかっておられます。余命はあと半年です…」
「えっ…・」
目の前が真っ暗になった。
不治の病?
余命半年?
何を言っているの…?
「ほんとうなの…?」
主治医は無言で頷くだけだった。
「っ…・!!!!」
わたしはこの時初めて知った。炎覇殿が1年というの結婚期間を設けた意味を。
彼はあと半年しか生きられないのだ。
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