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30.五神国会議~戸惑う気持ち~


大量の贈り物を受け取った次の日、わたしは早速お断りの手紙を書いていた。

ふぅ…。でもなんだか気が重いな…。

いらなっていったら、彼はどんな顔をするだろう…。

きっとあさってな方向に捉えて、またすごい事になりそう…。

そして傷ついた顔をするだろう。

そもそも、わたしは彼に好かれる資格がない。

これ以上傷が深くなる前に早々に断った方がいい。

一年もかけるメリットはない。わかってる…。

でも…と思う気持ちもあった。


彼の事は好きだ…。それは変わらない。

でも、好きだと伝えて4年前の事は?どう説明する?

怖かった…。

雷覇らいはを好きだというと、彼への気持ちが消えてしまって嘘になるような気がした。

前に進みたいのに進みたくない…。複雑な気持ちだった。


考えれば考えるほど今後、雷覇らいはにどう接すればいいのかわからない。

触れたい…。触れられたい反面、卑怯だとも思う…。

彼の気持ちに甘えて、曖昧にして誤魔化してる…。

今の状態のわたしって二股する、浮気男みたい…。最悪…。


どっちも好きだなんて身勝手すぎる。

正直…。今、雷覇らいはに会えない状況は、有難かった。

会えばきっと、彼の優しさに甘えてしまう。彼の傍は居心地がいい…。

温かくて優しくてふわふわする。

考えることをやめてしまう…。

これくらいの距離感がちょうど良かった。

会わない方がいい。

こんな中途半端な自分ではとてもじゃないけど雷覇らいはに好きだと言えない…。


せっかく話そうと覚悟を決めたのに…。

急に怖くなって自信がなくなった…。

こんな気持ちを話したらきっと嫌われる。軽蔑される…。

雷覇らいはの目に…。あの金色の瞳に冷たくみられるのは耐えられない。


どうしよう…。どうしたらいいの…?

わからない…。その日結局、わたしは雷覇らいはへの手紙を書けなかった。


わたしは息抜きするために、自分の庭園へ出た。


今日は雨が降っていて、少し肌寒かった。

雨にぬれると、草や土のにおいがより濃くなってわたしは好きだった。

爽やかないい香り…。とっても落ち着くわ…。

わたしは傘をさしながら庭を見て見回った。すると、雨の日にしか咲かない花に目が留まった。


******************************************


「これは、あじさいと言って雨の日にしか咲かない花なんです!小さな花がたくさん集まって一つの花に見えるんです!」


嬉々としてわたしが、彼にあじさいの花について説明している場面を思い出した。


「なるほどね。だからこの庭は温かい感じがするんだね…。君みたいに」


彼はそう言って優しくほほえんでくれた…。ひだまりみたいな人…。


初めて会ったときそう感じた…。


******************************************


懐かしい…。あじさいの花を眺めながらそう思った…。

夜会で作り笑いをするのが嫌で今日みたいに庭園で一人でいた時に声を掛けられたのだっけ?


あの時は雨じゃなかったから、あじさいの花は咲いていなかったけど…。

彼との会話を思い出して、ポロっと涙がこぼれてきた。今でも鮮明に覚えてる…。

昨日の事のように…。

ああ…だめだ…。

またポロポロと溢れてくる…。


わたしは雨の中、ひとり涙をながしながらアジサイの花を見つめていた。

振り子のように、行ったり来たりしながら揺れる気持ち…。

彼の事を思い出しては、雷覇らいはのことも考える…。

この気持ちにどう折り合いをつけたらいいのか分からない…。

わたしはしばらくの間、ぼんやりしながら花を眺めていた。


結局、その後どれだけ考えても答えは出なかった。

そうこうしているうちに、いよいよ1週間後には五神国ごしんこく会議が開催される。

わたしと怜秋れいしゅうは開催国である、四季国しきこくへ向かっていた。

とにかくいつも通り振舞おう…。わたしの気持ちが整理できるまで…。


なんだか問題を先送りしている気がして、モヤモヤはするが

かと言って雷覇らいはを拒否できるほど、意志が持てるか?といわれれば無理な気がした…。

今も、雷覇らいはに会えるってだけで、ドキドキするし嬉しい…。

手作りのお菓子まで焼いてきちゃってるし…。


手紙に書いていた、お菓子を渡す。という約束。

忘れたことにして作らないことも考えたが、それはそれで、ものすごくしょんぼりする雷覇らいはが想像できて、できなかった。

今回は日持ちのする焼き菓子を作った。綺麗な紙に包んで持ってきている…。


ううう…。でも渡し辛いな~。

手紙の返事も結局、当たり障りない感じで返しちゃってるし…。

ああ!!本当にわたしって中途半端!雷覇らいはに申し訳ない…。


「姉さん…。大丈夫?さっきからずっと項垂れてるけど…」


怜秋れいしゅう…。会いたいけど、会いたくない時はどうしたらいいの?」


「えっ?それって…。雷覇らいは殿のこと?」


「そう…。久しぶりに会えてうれしい反面、色々複雑と言いますか…。何と言いますか…」


 ああ!どうするか決めてないってこんなに、しどろもどろになるのね!!


「姉さんって…。雷覇らいは殿の事好きだったの?いつから?僕…聞いてないけど」


「えっ?…そう…だよね…ごめんなさい…いつからって言われても曖昧なんだけど、なんとなく一緒にいるうちに居心地いいなぁ…って思い始めて…」


 ううう。言ってて恥ずかしい!!!

そして怜秋れいしゅうの視線が冷たい!!

そりゃそうだよね!絶対結婚しないとか言っておいて、今は好きとか!!!



「ふーん。で?もう結婚するの?」


「えっ?結婚?」


「そう。婚約期間中だけど、お互いの合意があればいつでも結婚できるだろ?」


「…。そうね…。合意…ある…よね今の状態は…」


「どうしたの?姉さん…。いつもならもっとさっぱりしてるでしょ?」


 怜秋れいしゅうに言われて改めて考えてみると、結婚って言葉がずっしり重く感じる…。

そっか…。わたしが、結婚したいって言うだけでこの話は進むんだ…。

最初からそういう話だったのをすっかり忘れてた。

元々、雷覇らいはは乗り気だったのだ。

あとはわたしの気持ちがどうかだったのだ。そのための婚約期間だった。

急に現実味を帯びてきて怖くなった。雷覇らいはは真剣だ。

わたしと一生一緒にいたいと思っているから、結婚しようと言ってくれている。


でもわたしは?そんな彼の気持ちに応えられるだけの覚悟はある?


怜秋れいしゅう…どうしよう…?わたし…本当に分からない…」


 じわっと涙が出てきた…。弟の前で情けないって思ったけど抑えられなかった。


「っ…!!姉さん何も泣かなくても…。もし本当に嫌なら結婚しなくていいんだから!」


 怜秋れいしゅうが慌てて慰めてくれる。ううう。相変わらず優しいな!!


「う…ん。ありがとう…怜秋れいしゅう…ぐすっ…」


 本当に情緒不安定で嫌になる…。涙が止まらない…。


「大丈夫!姉さんには僕がついてるから…。会議も僕とラカンで出席する!姉さんは体調不良ってことで休んでもいいんだよ?」


 怜秋れいしゅうがぎゅっと抱きしめてくれる…。本当にいい弟を持ったなと思った。


「ありがとう…。到着するまでに…どうするか決めるね…」


「わかった…。でも無理はしなくていいからね!」


 いつの間にか怜秋れいしゅうも抱きしめられるくらい大きくなったのね…。

どんどん大人になってく怜秋れいしゅう…。ちょっと寂しいけど、嬉しくもあった。


「うん…。怜秋れいしゅうみたいな弟をもてて、わたしは幸せだわ…」


「…。うん。僕も姉さんの弟でよかったよ…」


 優しい怜秋れいしゅう…。優しい雷覇らいは…。

わたしの周りには優しい人がたくさんいるな…。

幸せ者だわ…。わたし。

そう思いながら目を閉じていつの間にか寝てしまっていた。



四季国しきこくに到着した当日。本当に体調不良になってしまった。

朝から頭がガンガンするし喉もいたい…。

最悪な気分で体調も最悪だった。

この間雨の中なん時間もいたからかな~。

ああ。情けない…。大事な日に熱出すなんて…。


「姉さん…。大丈夫?」


「うん…。大丈夫…おとなしく寝てれば治るわ…」


 怜秋れいしゅうが心配そうに覗き込む。


「何かあったらすぐに知らせてね!なるべく早く戻ってくるから!」


「いってらっしゃい…。きをつけて…ね」


 そう言って怜秋れいしゅうの背中を見送った。ぱたんと部屋のドアが閉まる音がした。


「お嬢様。なにかお召し上がりになりませんか?お薬も飲めませんので…」


「そう…ね。喉が痛いから…あっさりしたものがいいな…」


「わかりました。少々お待ちください」


 リンリンも一緒に来てくれていて、朝からわたしの看病をずっとしてくれている。

こんな時誰かがいてくれるって心強いな…。

どうしても弱ってるとき一人でいると余計な事を考えてしまう…。

少ししてリンリンが戻ってきた。リンゴをすりおろしたものを持ってきてくれた。

冷たくて気持ちいい。

それを食べたあと、薬を飲んでわたしは眠りについた。



*****************************************


あなたがいれば何もいらない。なにも…。

ただ傍に居てくれるだけでよかった。そこに居てくくれればわたしは何もいらなかった。

ずっと笑って、手を握ったり、一緒にご飯を食べたり…。

そんな何気ない当たり前な日常でいい。それだけでいいのに…。

ポロポロとこぼれ落ちる。すく上げるけど、何もつかめない。


待って!!行かないで!!わたしを置いていかないで。一人にしないで!!


どんなに手を伸ばしても、叫んでも届かない。何度も何度も手を伸ばしながら叫ぶ。

でも…。わたしの手は空を切るだけで届かなかった…。


*****************************************


ああ…。またあの夢だわ…。夢だとわかっていても辛く苦しかった…。

どんなに手を伸ばしても…叫んでも…もう届かない…。


怜彬れいりん…」


ふいに誰かに呼ばれているような気がしてわたしは目を覚ました。



最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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