25.冬羽国へ~無事解決しました!!~
うーん…。困ったな~。
雷覇殿が誤解して以来、全然顔を会わせてもらえていない…。
忙しいとか、用事があるとか言ってなかなか会えてなかった。ふぅ…。
もう!なんであんな誤解するかな!!!!プンプン。
ちょっと冬條殿と手を握りあってただけじゃん。
今日も雷覇殿がいる部屋へ行ってみたけど、誰もいないって言われちゃった。
絶対避けられてるよね~。
『そんなにこいつが好きなのか?…っっ!!!』
傷ついた顔をしている雷覇を思い出す。
わたしが好きなのは、雷覇なのに!!
誤解を解きたいけど会えないからどうしようもない。手紙でも書いてみる?
いや!会って直接ちゃんと言った方がいいよね。うん!そうしよう!
わたしはいつものように、冬條殿の研究室に向かった。
「あーあ…。せっかく会えたのに…。雷覇はわたしに会いたくなかったの?」
ポツリとつぶやいた。
「怜彬殿の好きな人は…。雷覇殿…ですか?」
「きゃっ!!びっくりした!!」
いきなり、冬條殿に話しかけられた。しかも独り言を聞かれてしまった…。
「すっ…。すいません。つい…。気になって」
「ううん。大丈夫」
「ごめんなさい…。僕のせい…で」
「冬條殿が悪いわけじゃないわ!!勝手に勘違いしている、あいつがわるいのよ!」
最近の冬條殿は、割と普通に話せている。
目を合わせることも徐々にできてきた。
これなら、マーリンと会える日も近いわね!!
わたしが、春魏国に帰るときに一緒に来てもらおう!!
それで二人を引き合わせて、仲良くなればいいよね!!うん。うん。
我ながらナイスアイディアだわ!!
「でも…。僕が…誤解させた」
「大丈夫!ちゃんと仲直りするわ!それより今日は何をしたらいいの?」
「今日は、動物に餌をあげます!!」
二パっと、またいい笑顔の冬條殿。
この無邪気さで30歳とか…。どんだけピュアよ!!
まぁ…可愛いんだからいいんだけど!!
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~1日前~
怜彬に会えるとなって、俺は急いで研究室に向かった。
やっと…。やっと怜彬に会える。長かった。本当に苦しかった。
生きた心地がしなかった。
『春緑花祭』で喧嘩してからもう10日も経ってる。
抱きしめたくて仕方なかった。
俺ははやる気持ちを抑えて、研究室の扉を思い切り開けた。
…っっ!!!
どういうことだ?なんで、怜彬と冬條殿が手を握り合っている?
先に湧いてきたのは激しい怒りだった!!
こいつ!!怜彬を誘拐しておいて、さらには怜彬になれなれしく触りやがって!!
しかも、あの冬條殿の顔!目をキラキラさせて頬を赤く染めて…。
怜彬を好きだといっているようなものだ。
「…。これはどういう状況だ…」
「雷覇殿!違うの!これはたまたまで!!」
「たまたま?冬條殿…。たまたまで我が婚約者の手を握っているのか?」
「へっ…!あっ…!」
「俺の婚約者を攫っただけでなく、手まで握りやがって!!!よっぽど殺されたいらしいな…」
俺は腰についている剣に手をかけた。こんなに激しい殺気を放ったのは久しぶりだ。
「待って!!雷覇殿!!誤解よ!」
「どけ!怜彬…。こいつはもう許さん!!」
「だめ!!」
「怜彬…。なぜかばう?」
そうだ!なんで庇う?君は誘拐されたんじゃないのか?
「雷覇殿!落ち着いてわたしの話を聞いて!!」
誘拐されたのに…。こいつを庇う理由はなんだ?…っっ!!!
俺は最悪なことに気が付いた。
「そんなにこいつが好きなのか?…っっ!!!」
「ちがう!!そうじゃないわ!誤解してると言ってるの」
「…。怜彬は…。俺に触れられるのが嫌だといっていたものな…」
「えっ?」
そうだ…。俺は怜彬に会える嬉しさで忘れていた。
彼女は俺に触れられるのが嫌だといったんだ。嫌だけど我慢していると…。
そう思い出した途端…急に、この状況が読み込めた。
もう、怜彬は俺のことなど忘れていて、冬條殿と仲睦まじくしている。
たった…。10日会わなかっただけで…!!!!
そう考えるとこの場にはいられなかった。見たくなかった。二人が愛し合っているところなんて…。
俺は何も考えられなくなりその場を駆け出していた。
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~現在~
やっと怜彬に会えた俺だったが、衝撃的な場面に出くわしてしまい、ものすごく落ち込んでいた。
「はぁ…」
何度か怜彬が部屋に訪ねてきてはくれていたが
とても会える状態じゃないため避けていた。
これで、婚約を解消とか言われた日にはどうにかなりそうだ…。
まぁ。時間の問題…か。いい加減自分の国へ帰ろうかとも思ったが、そんな気にもなれず
俺は時間を持て余していたため城の中をウロウロしていた。
もう10日もまともに会っていない。こんな状態だがやっぱり彼女に会いたい。
やっぱり、諦めきれなかった。
「…。あっ…!だめ…」
なんだ?誰の声だ?俺は中庭から誰かの声が聞こえてきたため、そちらに向かった。
「きゃっ…。もうっ…・!おね…がい…だめ…」
…っ!!!!茂みの向こうから聞こえてきた声は怜彬だった。
一気に血の気が引いた気がした。なんだこの艶めいた声は?
もしかして冬條殿と一緒?
ドクン…。ドクン…。
激しい動悸がしてきた。二人はそこまで仲が進んでたのか…?
こんな昼間から愛し合うほどに…っ!!!
いやな想像しかできなかった。考えたくもない!もう!やめてくれ!俺は茂みから飛び出した!
「…っ雷覇殿?」
怜彬が犬まみれになりながら木陰でブラッシングしていた。
…。どういう状況だ?
「怜彬…。これは…?」
「ふふふ。かわいいでしょ?冬條殿が飼っているわんちゃんよ!ブラッシングが大変だから手伝っていたのだけど、すごいなつかれちゃって…。っきゃ!!」
大小さまざまな犬が、次々に怜彬に向かってじゃれている。
「もう…。だめって…くすぐったい!」
はぁ~。俺は力が抜けてその場にしゃがみ込んでしまった。
「雷覇殿?大丈夫ですか?」
「ああ。問題ない」
最悪だ…。カッコ悪い。
「体調は大丈夫なんですか?昨日お伺いしたら、サイガが言ってた…」
怜彬に会いたくないから、仮病をつかったんだった…。今さらながら自分の小ささに愕然とする。
「もう大丈夫だ。心配かけてすまない…」
「なら…。よかったです」
彼女が優しく俺に微笑みかける。もうそれだけで、十分だった。
「俺も手伝おう!」
そう言って怜彬の横に座り、犬の毛並みを整えた。
とても人懐っこいのか俺にまでじゃれてきた。
なかなかブラッシングさせてもらえなかった。
「ふふふ。とっても人懐っこいでしょ?冬條殿が小さいころから飼っているんですって」
「そうなのか。冬條殿はいい奴なのだな…」
「怜彬殿!」
少しおどおどしながら、冬條殿がこちらへやってきた。
「ありがとうございます…。手伝っていただいて…」
「ううん。いいの!とっても楽しかったわ」
「…。雷覇殿も…ありがとうございます」
「いや…大したことはしていない」
おずおずしながら、冬條殿がこちらをじっと見てくる。
なにか言いたいことがあるのか?
「あの…。雷覇殿…」
「なんだ?」
「ぼっ…僕が好き…なのは…」
「っ!」
何を言うきだ?まさか怜彬に告白でもする気か?俺は内心すごく焦った。
「マーリンなんです!!!」
「はっ?…はああああ!?」
なんだと?マーリン?男だぞ?だが彼の様子をよく見ると
とても嘘を言っているようには見えない。顔や耳まで真っ赤にしている。
本当に…。マーリンが好きなのか?
「やった!冬條殿いえるじゃない!!!凄いわ!!」
「はい!言え…ました…怜彬殿」
大喜びで、冬條殿に飛びつく怜彬。涙を流しながら喜んでいる冬條殿。何が何だかさっぱりわからない…。
「よかった~。本当によかった!すごい進歩よ!!冬條殿!!」
「れっ…。怜彬殿の…おかげです」
「怜彬。これはどういうことだ?説明してくれ」
「ああ。雷覇殿。ごめんなさい。嬉しくてつい…」
怜彬まで涙ぐんでる。全くわけが分からない…。
「実はね。冬條殿はずっとマーリンが好きなの。でもなかなか、告白できなくて困ってて、だからまずはわたしと人と話す特訓をしてたの!!」
怜彬の話によると、こうだった。
冬條殿は長年ひそかに想っていたマーリンに会うため
春魏国へ行ったもののやっぱり声をかけることができなかった。
それならせめてと、マーリンと仲のいい怜彬に話しかけようとした。
そしたら彼女が誘拐されているところを目撃し、慌てて従者に後を追うように指示し
あのオークション会場にたどり着いた。
そこで怜彬の買い取りをして保護をした…。
というのが事の顛末だった。
全く俺の勘違いもいいところだった。
とっくに怜彬には嫌われているとばかり思っていた。
しかも冬條殿も、凄くいい奴だった。
怜彬を助けるために大金を使ってくれた。
おまけにマーリンが好きでずっと一途に想い続けてる。純粋な男だった。
「ねぇ、冬條殿せっかくだからこのままマーリンに会いに行かない?」
「えっ!!」
「だって、今なら言えそうだと思うの!それに、わたしもそろそろ帰らないとみんなが心配してるし…どうかな?」
「…。わっ…分かりました!会ってみます!!」
「やった!!早速マーリンに手紙をだして、会いに行く準備をしましょう!!」
なんだかよくわからないが、怜彬と冬條殿は何もなかった。
俺はほっと胸をなでおろした。
…。あの冬玄殿が、思うところがあるというのはこう言うことだったのか?
あの狸じじいめ!!それならそうと、はっきり言えばいいだろう!!
なにはともあれ、怜彬をめぐる誘拐事件はこれでまくを閉じたのだった。
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