表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/198

25.冬羽国へ~無事解決しました!!~


うーん…。困ったな~。

雷覇らいは殿が誤解して以来、全然顔を会わせてもらえていない…。

忙しいとか、用事があるとか言ってなかなか会えてなかった。ふぅ…。

もう!なんであんな誤解するかな!!!!プンプン。

ちょっと冬條とうじょう殿と手を握りあってただけじゃん。

今日も雷覇らいは殿がいる部屋へ行ってみたけど、誰もいないって言われちゃった。

絶対避けられてるよね~。


『そんなにこいつが好きなのか?…っっ!!!』


傷ついた顔をしている雷覇らいはを思い出す。

わたしが好きなのは、雷覇らいはなのに!!

誤解を解きたいけど会えないからどうしようもない。手紙でも書いてみる?

いや!会って直接ちゃんと言った方がいいよね。うん!そうしよう!

わたしはいつものように、冬條とうじょう殿の研究室に向かった。


「あーあ…。せっかく会えたのに…。雷覇らいははわたしに会いたくなかったの?」


ポツリとつぶやいた。


怜彬れいりん殿の好きな人は…。雷覇らいは殿…ですか?」


「きゃっ!!びっくりした!!」


 いきなり、冬條とうじょう殿に話しかけられた。しかも独り言を聞かれてしまった…。


「すっ…。すいません。つい…。気になって」


「ううん。大丈夫」


「ごめんなさい…。僕のせい…で」


冬條とうじょう殿が悪いわけじゃないわ!!勝手に勘違いしている、あいつがわるいのよ!」


 最近の冬條とうじょう殿は、割と普通に話せている。

目を合わせることも徐々にできてきた。

これなら、マーリンと会える日も近いわね!!

わたしが、春魏国しゅうぎこくに帰るときに一緒に来てもらおう!!

それで二人を引き合わせて、仲良くなればいいよね!!うん。うん。

我ながらナイスアイディアだわ!!


「でも…。僕が…誤解させた」


「大丈夫!ちゃんと仲直りするわ!それより今日は何をしたらいいの?」


「今日は、動物に餌をあげます!!」


 二パっと、またいい笑顔の冬條とうじょう殿。

この無邪気さで30歳とか…。どんだけピュアよ!!

まぁ…可愛いんだからいいんだけど!!




*-------------------------------------*

~1日前~


怜彬れいりんに会えるとなって、俺は急いで研究室に向かった。

やっと…。やっと怜彬れいりんに会える。長かった。本当に苦しかった。

生きた心地がしなかった。

春緑花祭しゅうりょっかさい』で喧嘩してからもう10日も経ってる。

抱きしめたくて仕方なかった。


俺ははやる気持ちを抑えて、研究室の扉を思い切り開けた。


…っっ!!!


どういうことだ?なんで、怜彬れいりん冬條とうじょう殿が手を握り合っている?

先に湧いてきたのは激しい怒りだった!!

こいつ!!怜彬れいりんを誘拐しておいて、さらには怜彬れいりんになれなれしく触りやがって!!

しかも、あの冬條とうじょう殿の顔!目をキラキラさせて頬を赤く染めて…。

怜彬れいりんを好きだといっているようなものだ。


「…。これはどういう状況だ…」


雷覇らいは殿!違うの!これはたまたまで!!」


「たまたま?冬條とうじょう殿…。たまたまで我が婚約者の手を握っているのか?」


「へっ…!あっ…!」


「俺の婚約者を攫っただけでなく、手まで握りやがって!!!よっぽど殺されたいらしいな…」


俺は腰についている剣に手をかけた。こんなに激しい殺気を放ったのは久しぶりだ。


「待って!!雷覇らいは殿!!誤解よ!」


「どけ!怜彬れいりん…。こいつはもう許さん!!」


「だめ!!」


怜彬れいりん…。なぜかばう?」


そうだ!なんで庇う?君は誘拐されたんじゃないのか?


雷覇らいは殿!落ち着いてわたしの話を聞いて!!」


誘拐されたのに…。こいつを庇う理由はなんだ?…っっ!!!

俺は最悪なことに気が付いた。


「そんなにこいつが好きなのか?…っっ!!!」


「ちがう!!そうじゃないわ!誤解してると言ってるの」


「…。怜彬れいりんは…。俺に触れられるのが嫌だといっていたものな…」


「えっ?」


そうだ…。俺は怜彬れいりんに会える嬉しさで忘れていた。

彼女は俺に触れられるのが嫌だといったんだ。嫌だけど我慢していると…。

そう思い出した途端…急に、この状況が読み込めた。

もう、怜彬れいりんは俺のことなど忘れていて、冬條とうじょう殿と仲睦まじくしている。

たった…。10日会わなかっただけで…!!!!


そう考えるとこの場にはいられなかった。見たくなかった。二人が愛し合っているところなんて…。


俺は何も考えられなくなりその場を駆け出していた。


*-------------------------------------*


~現在~


やっと怜彬れいりんに会えた俺だったが、衝撃的な場面に出くわしてしまい、ものすごく落ち込んでいた。


「はぁ…」


何度か怜彬れいりんが部屋に訪ねてきてはくれていたが

とても会える状態じゃないため避けていた。

これで、婚約を解消とか言われた日にはどうにかなりそうだ…。

まぁ。時間の問題…か。いい加減自分の国へ帰ろうかとも思ったが、そんな気にもなれず

俺は時間を持て余していたため城の中をウロウロしていた。

もう10日もまともに会っていない。こんな状態だがやっぱり彼女に会いたい。

やっぱり、諦めきれなかった。


「…。あっ…!だめ…」


なんだ?誰の声だ?俺は中庭から誰かの声が聞こえてきたため、そちらに向かった。


「きゃっ…。もうっ…・!おね…がい…だめ…」


…っ!!!!茂みの向こうから聞こえてきた声は怜彬れいりんだった。

一気に血の気が引いた気がした。なんだこの艶めいた声は?

もしかして冬條とうじょう殿と一緒?


ドクン…。ドクン…。


激しい動悸がしてきた。二人はそこまで仲が進んでたのか…?

こんな昼間から愛し合うほどに…っ!!!

いやな想像しかできなかった。考えたくもない!もう!やめてくれ!俺は茂みから飛び出した!


「…っ雷覇らいは殿?」


怜彬れいりんが犬まみれになりながら木陰でブラッシングしていた。


…。どういう状況だ?


怜彬れいりん…。これは…?」


「ふふふ。かわいいでしょ?冬條とうじょう殿が飼っているわんちゃんよ!ブラッシングが大変だから手伝っていたのだけど、すごいなつかれちゃって…。っきゃ!!」


大小さまざまな犬が、次々に怜彬れいりんに向かってじゃれている。


「もう…。だめって…くすぐったい!」


はぁ~。俺は力が抜けてその場にしゃがみ込んでしまった。


雷覇らいは殿?大丈夫ですか?」


「ああ。問題ない」


最悪だ…。カッコ悪い。


「体調は大丈夫なんですか?昨日お伺いしたら、サイガが言ってた…」


 怜彬れいりんに会いたくないから、仮病をつかったんだった…。今さらながら自分の小ささに愕然とする。


「もう大丈夫だ。心配かけてすまない…」


「なら…。よかったです」


 彼女が優しく俺に微笑みかける。もうそれだけで、十分だった。


「俺も手伝おう!」


 そう言って怜彬れいりんの横に座り、犬の毛並みを整えた。

とても人懐っこいのか俺にまでじゃれてきた。

なかなかブラッシングさせてもらえなかった。


「ふふふ。とっても人懐っこいでしょ?冬條とうじょう殿が小さいころから飼っているんですって」


「そうなのか。冬條とうじょう殿はいい奴なのだな…」


怜彬れいりん殿!」


 少しおどおどしながら、冬條とうじょう殿がこちらへやってきた。


「ありがとうございます…。手伝っていただいて…」


「ううん。いいの!とっても楽しかったわ」


「…。雷覇らいは殿も…ありがとうございます」


「いや…大したことはしていない」


おずおずしながら、冬條とうじょう殿がこちらをじっと見てくる。

なにか言いたいことがあるのか?


「あの…。雷覇らいは殿…」


「なんだ?」


「ぼっ…僕が好き…なのは…」


「っ!」


 何を言うきだ?まさか怜彬れいりんに告白でもする気か?俺は内心すごく焦った。


「マーリンなんです!!!」


「はっ?…はああああ!?」


 なんだと?マーリン?男だぞ?だが彼の様子をよく見ると

とても嘘を言っているようには見えない。顔や耳まで真っ赤にしている。

本当に…。マーリンが好きなのか?


「やった!冬條とうじょう殿いえるじゃない!!!凄いわ!!」


「はい!言え…ました…怜彬れいりん殿」


 大喜びで、冬條とうじょう殿に飛びつく怜彬れいりん。涙を流しながら喜んでいる冬條とうじょう殿。何が何だかさっぱりわからない…。


「よかった~。本当によかった!すごい進歩よ!!冬條とうじょう殿!!」


「れっ…。怜彬れいりん殿の…おかげです」


怜彬れいりん。これはどういうことだ?説明してくれ」


「ああ。雷覇らいは殿。ごめんなさい。嬉しくてつい…」


 怜彬れいりんまで涙ぐんでる。全くわけが分からない…。


「実はね。冬條とうじょう殿はずっとマーリンが好きなの。でもなかなか、告白できなくて困ってて、だからまずはわたしと人と話す特訓をしてたの!!」



怜彬れいりんの話によると、こうだった。

冬條とうじょう殿は長年ひそかに想っていたマーリンに会うため

春魏国しゅうぎこくへ行ったもののやっぱり声をかけることができなかった。

それならせめてと、マーリンと仲のいい怜彬れいりんに話しかけようとした。

そしたら彼女が誘拐されているところを目撃し、慌てて従者に後を追うように指示し

あのオークション会場にたどり着いた。

そこで怜彬れいりんの買い取りをして保護をした…。

というのが事の顛末だった。


全く俺の勘違いもいいところだった。

とっくに怜彬れいりんには嫌われているとばかり思っていた。

しかも冬條とうじょう殿も、凄くいい奴だった。

怜彬れいりんを助けるために大金を使ってくれた。

おまけにマーリンが好きでずっと一途に想い続けてる。純粋な男だった。


「ねぇ、冬條とうじょう殿せっかくだからこのままマーリンに会いに行かない?」


「えっ!!」


「だって、今なら言えそうだと思うの!それに、わたしもそろそろ帰らないとみんなが心配してるし…どうかな?」


「…。わっ…分かりました!会ってみます!!」


「やった!!早速マーリンに手紙をだして、会いに行く準備をしましょう!!」


 なんだかよくわからないが、怜彬れいりん冬條とうじょう殿は何もなかった。

俺はほっと胸をなでおろした。

…。あの冬玄とうげん殿が、思うところがあるというのはこう言うことだったのか?

あの狸じじいめ!!それならそうと、はっきり言えばいいだろう!!


なにはともあれ、怜彬れいりんをめぐる誘拐事件はこれでまくを閉じたのだった。



最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)


ブックマークしてくださった方ありがとうございます!!


ちょっとでもいいなと思ったら、広告の下の☆☆にぽちりしていただけると嬉しいです(#^.^#)


感想・ご意見お待ちしております!(^^)!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ