24.冬羽国へ~再会と誤解~
わたしが冬羽国へきてもう3日が経った。
いまだに雷覇とは会えていない。
もっぱらわたしがしている事と言えば、冬條殿と仲良くなることだ。
彼はどうも、わたしにやってほしいことがあるみたいなのだけれど、なかなかそれを話してくれない。
人見知りで、人と話すことが苦手な彼はなかなか、本音を言ってくれない。
うーん。どうしたら話してくれるようになるのかしら?あたしとしては、穏便に冬羽国をでてマーリンのいる春魏国に戻りたい。
一応は無事だという手紙を書いた。きっと心配してるだろうな…。早く会って安心させたい。
「冬條殿、次はどうしたらいいのですか?」
「その…薬液をこっちの瓶に移し替えてください…」
「わかりました!」
今は冬條殿の研究を手伝っている。
彼が研究しているのは人の健康についてだった。
ざっくりいうとどうしたら病気にならずに、長生きできるか?といったものだった。
うーん…。難しい!!
因みにわたしは、この国ではお客様扱いとなっている。
わりと自由にさせてもらってるけど、なぜだか雷覇に会わせてと、言うと断れる。
なんでだろ?この国に来ていると聞いたけど、全く姿が見えない。
喧嘩別れしてから10日経つ…。
はぁ…。早く会いたいな~。会ってぎゅってして欲しい…。
…考えてて恥ずかしくなってきた!!!!ちょっと待って!!
今まで会えないと思ってたから割と必死だったけど、冷静になって考えてみたら、今まで散々いろんなことされたよね!!!
口づけまでされたし!ああああ!!!!だめだ!!
どんな顔して会えばいいかわかならい。
わたし、今までどうやって彼に接してきてたっけ?
ど~しよ~!!!意識しだしたら止まらなくなってきた…。
ううう。好きになるって難しいわ…。
「はぁ…」
「あ…の。考え…ごとですか?」
おずおずと、冬條殿が尋ねてくる。まだ、ビクビクしているのは変わらないけど、だいぶわたしに慣れてきてくれてる。結構話しかけてくれたりするのよね~。うん。うん。いい傾向だぞ~。
「そう。人を好きなるって難しいなって思って…」
「れっれいりんどのも…。好きな人いるんですか?」
「いるよ~。冬條殿いるの?」
「…。い…ます」
消えそうな声で冬條殿が答える。顔は真っ赤で耳まで赤くなっている。かわいい~。
そうか~。好きな人がいるんだ~。誰なんだろ?
「あっ!!もしかして、わたしにお願い事ってその好きな人のことですか?」
「…っっ!!!」
「あ…・。図星ですか」
「な…っんで…わかった…・んですか?」
「なんとなく?」
顔に出ますよ~。ふふふ。かわいいな。隠してたつもりなのかしら!本当に冬條殿はピュアよね!!とてもわたしより年上とは思えないわ!!
「あの…・
れい…りんどの…!」
なにか意を決したように、冬條殿が話し出す。
「なあに?どうしたの?」
「ぼっ…僕に…」
「うん!なになに~?」
恋のお手伝いかしら~?ふふふ。
「マーリン殿と…!!なっ仲良く…なる…・方法を教えてください!!!」
「マーリン!?」
なんですと!!まさかのマーリン!!マーリンって…。あの。マーリンよね?
「春魏国のマーリンの事…?」
真っ赤になってコクンと冬條殿が頷く。うわ~!!まじか!?
「マーリンって…その、男の人だけど大丈夫?」
なにが大丈夫なのか、自分でも聞いててわかならないけど。
「はい…。あんまり…女の人とか…男の人とか考えたことないです…けど」
「そっか~。なんでマーリンが好きなの?」
「とっても…。かっこいいんです…。いつも堂々として…いて」
冬條殿は目をキラキラさせながら、マーリンの事を話し出す。
どうやら、4年前の五神国会議の時にマーリンを見かけて、好きになったらしい。
何度も話してみようと思ったけどなかなかきっかけが掴めず、4年経過。
『春緑花祭』が開催されるタイミングでわたしが来ることを知り
まずはわたしと仲良くなってマーリンについて知ろうとしていたのだ。
なんてピュア!!!!健気だわ。これはぜひともうまくって欲しいわね~。
「わかったわ!!!マーリンを振り向かせれるようにがんばろう!!」
「ほんとうですか?!」
涙目になりながら、冬條殿がわたしの手を握ってきた。そんなに嬉しかったのか~。
「ええ。だから、これからは研究ばかりではなくまずは、人と話すことから慣れていきましょ!!」
「はい!!…れい…りん殿…ありがとう・」
バンっ!!!!
思い切り研究の扉があいた。
「怜彬!!!!」
「雷覇殿!?」
扉の向こうに立っていたのは雷覇だった。すごい息を切らせてる。走ってきたのかな?
「…。これはどういう状況だ…」
「ん?」
なんかすっごく、すっごく怒ってない!
…っ!はっ!ヤバい!!タイミングめっちゃ悪い。
ちょうどわたしは冬條殿と手を握り合っているところだった。
あああ。冷たい。空気がどんどん冷たくなる!!!!
「雷覇殿!違うの!これはたまたまで!!」
「たまたま?冬條殿…。たまたまで我が婚約者の手を握っているのか?」
「へっ…!あっ…!」
冬條殿の顔がみるみる真っ青になっていく。
無理もない、あの銀獅子に思いっきり睨まれているのだ。慌てて手を放すけどもう遅い。
「俺の婚約者を攫っただけでなく、手まで握りやがって!!!よっぽど殺されたいらしいな…」
あかん!!あかんやつや~!!!完全にキレてる。腰の剣を抜いて今にも冬條殿に切り掛かりそうだった。
「待って!!雷覇殿!!誤解よ!」
わたしは冬條殿の前に立って、説明しようとする。
「どけ!怜彬…。こいつはもう許さん!!」
「だめ!!」
わたしは雷覇に飛びついた!でないと本当に殺しちゃう!
冬條殿はいい人なのに~!
「怜彬…。なぜかばう?」
「雷覇殿!落ち着いてわたしの話を聞いて!!」
「そんなにこいつが好きなのか?…っっ!!!」
なんでそうなる!雷覇の顔が苦しそうに歪む。
「ちがう!!そうじゃないわ!誤解してると言ってるの」
「…。怜彬は…。俺に触れられるのが嫌だといっていたものな…」
「えっ?」
なんの話??そんなこと言った?わたし。
「俺はもう…。不要ということだな…」
もう!せっかく会えたのになんでそうなるの!!!
「雷覇殿!」
待って!と言おうとしたら、雷覇殿は走ってどこかに行ってしまった。うそでしょ!!
わたしと冬條殿はただ、ぼーぜんと雷覇殿が走り去った後を見ていた。
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