23.冬羽国へ~おかしなご招待~
これで五神国4つの国だせました~!!!(^O^)/
冬羽国の第一王子、冬茉殿。
わたしが嫁いて3ヶ月で不慮の事故で亡くなってしまった人。
正直、あまり話した記憶がない。栗色の髪に薄茶色の瞳で大人しくて無口。
いつも伏目がちで何を考えているか分からない人だった。
その人の弟でもある、第二王子の冬條殿がなんでオークション会場にいるの?
しかもわたしのこと買っちゃってるし…。
ジっ…っと冬條殿に睨まれる。…。なんか怖いんですけど…。
一重で細長い薄い水色の瞳に、冬茉殿と同じ栗色の髪の毛。
面影はあるものの、四年前に会ったときよりやつれて見える。
「まさか、あなたのような人がオークション会場で売りにだされているとはね?怜彬殿…」
おもむろに冬條殿が口を開いた。明らかに威圧的で冷たい言い方だ。
「わたしも驚いたわ。冬羽国の第二王子がこんなところで、競りをしてるなんて思わないもの…」
「僕はたまに、奴隷を買いに来るのですよ…。研究の実験に必要なんでね」
「研究?実験…?」
「そう。医療の発展には研究と実験がつきものだ、その実験のための奴隷を買いにきている」
冬羽国は五神国の中でもっとも、科学や医療が発展している医療大国。
そのおかげで、助かった命は多くある。
常に新しいものを追い求めて探求する向上心は並々ならぬものがあると聞いたことがある…。
奴隷で実験してるなんて…。ひどい。
でも、今そんなことは言えない。彼を怒らせるわけにはいかないのだ。
とにかく、わたしは何としてでも雷覇のところに帰れければならない。
「冬條殿がここにいる理由は分かったわ。でもどうしてわたしを買ったの?」
「面白そうだからだ」
「面白そう?」
不敵に冬條殿が笑う。全く彼の意図が分からない。
そもそも接点がなかったのだ。
「とにかく、ここで話しても意味がない。あなたには私の国へ来てもらう」
「ちょっと待って!!わたしを買ってくれたのはありがたいけど、わたしは帰らないと!!待ってる人がいるの!!」
慌てて冬條殿に詰め寄る。
一刻も早く雷覇のところに帰りたかった。
「何を言っている?人助けであなたを買ったと思っているのか?それに、あなたを買ったのはわたしだ。あなたをどうするのかは、僕の自由だ。連れていけ!!」
冬條殿の付き人二人に羽交い締めされる。
…!!いやだ!!逃げなきゃ!!
「いやっっ!!!離して!!!」
「抵抗したって無駄だ。あたなは今日から僕の奴隷なのだから…!ハハハ!!」
この人馬鹿なんじゃない!!一国の姫であるわたしを…。
夏陽国の雷覇の婚約者であるわたしを奴隷として連れていくなんて…。
戦争を起こすようなものだ。
相手はあの銀獅子。彼は軍事国家の最大党首なのだ。
そんな彼を怒らせればどうなるのか…。想像もできなかった。
わたしの抵抗むなしく交い締めにされたまま、冬羽国へ連れていかれることになってしまった。
どうしよう…。ますます雷覇に会える確率が低くなってしまう。
ああ…。雷覇…。早く助けにけに来て…!!!
彼の顔を思い浮かべながらわたしは必死に祈った。
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サイガにもらった報告書に書かれた内容に目を通す。
怜彬は奴隷商人にさらわれそのまま、オークション会場へ連れていかれた。
そこで競りに出され、彼女を買い付けた人物がいる。
冬羽国第二王子。冬條…。
彼がどうして彼女を競り落としたのかは分からないが、どうも嫌な予感がする。
冬羽国は医療大国として有名だが、あまりいい噂を聞かない。
俺は今、冬羽国の当主。冬玄殿と会っている。かなりの高齢のはずだが医療の技術を駆使しているのか、今でもこの国の統治をおこなっている。
「お時間いただき感謝する。この国に我が婚約者、怜彬がいると聞いてここまで来た。早急に返していただきたい」
「ふぉっ。ふぉっ。夏陽国の雷覇殿…。返してほしいとは、いささか物騒ですな…。まるで我々がさらってきたかのような言い方じゃな」
「事実を述べている。怜彬はどこだ?」
「ふぉっ。ふぉっ。ふむ…。若いとはいいものよの。情熱的で。いや実に羨ましい…わしにもそんな時代もあったのじゃがなぁ」
仙人のような長い口髭を撫でながら、現国王はゆったりと口調で話す。
今にも切り掛かってしまいそうな衝動をどうにか抑える。
ここで交渉が決裂したら、二度と怜彬には会えないだろう。
「ふぉっ。ふぉっ。ちと思うところがあっての…。雷覇殿には悪いのじゃが少し時間をもらえないかのう…」
「断る。俺の望みは怜彬を返してもらうことだ」
「ふぉっ。ふぉっ。まぁそう焦らんと…。必ず怜彬殿と会わせよう。それは補償するぞ」
「…。何が望みだ。さっさと話してくれ。こっちは一秒でも惜しいんだ」
「ふぉっ。ふぉっ。そうか。そうか。この老いぼれの話を聞いてくれるか…。雷覇殿は優しいのう~」
…くそっ!!!水覇を連れてくればよかった。こういう交渉事は俺は向いていない。とくに冬玄殿と俺は相性が悪い。こういう、何を考えているかわからないタイプは苦手だった。
やっとここまで来たのに…。怜彬…。
俺は拳をぎゅっと握りしめて、ひたすら冬玄殿の話に耳を傾けていた。
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「怜彬殿!!さっきはあのような手荒な真似をして、すいませんでした!!」
冬條殿の部屋に連れてこられてきて、いきなり土下座して謝られてしまった。
…?
なにがどうなってるの?さっきとキャラ違うくない?
「あっ…あの、どういうことですか?」
「僕…。普段はあのようにふるまってるんです…。本当は気が弱くて…」
「あれは演技で、今の冬條殿が本当の冬條殿ってこと?」
「そうなんです…。本当は人と話すのも苦手で…。父からは早く直せと言われてるんですが…今まで研究しかしたことないので…分からなくて」
おおう。なんかおかしな展開だけど、ひとまず冬條殿は悪い人ではなさそう。
なんか、子犬みたいになってるし…。
部屋についてからは手荒なことはされてない。
「じゃあなんで、わたしを買ったんですか?」
「それは…。その…」
もじもじしてなかなか話さない。本当に人と話すのが苦手なのね…。
さっきから全然目を合わせて話そうとしない。
ビクビクしながら震えている。もう私の目には子犬が震えているようにしか見えなかった。
かわいいな…!!
「ふぅ…。話しにくいなら、無理に話さなくてもいいわ。ひとまず雷覇殿と連絡を取りたいの。どうにかできないかしら?」
「あっ…。それなら、大丈夫だと…。おもいます」
「どういうこと?」
「雷覇殿はもうすぐこの国に来ます…。僕がわざと痕跡を残してきたので…。すぐにわかるかと…」
「えっ?そうなの?」
「はい…。もともと怜彬殿を誘拐する気はなくてですね…。怜彬殿にどうしても…お願いしたいことがあって…。しかたなくあの方法をとったんです…」
仕方なくって…。いったいどこからがこの人の手の内だったのだろ?でも。
雷覇がこの国に来るなら、もう安心ね!!
それにしても、この人大胆なのか無知なのかよくわからない…。
「じゃあ。あのオークション会場のやり取りはわざと?」
「いえ…。オークション会場でのやり取りは本物です…。僕、怜彬殿が『春緑花祭』に来ていてるって聞いて…会いたくて春魏国に来てたんです」
「えぇっ!!!そうだったの?」
「はい…。それで怜彬殿と話そうと、後をつけてたんですが…誘拐されるのを見てしまって…それでなんとか、助けないと思って…」
「たまたま、わたしを見かけて、誘拐されたから競り落としたの?」
「はい…。信じてもらえないかもしれませんが…」
ちょっとこの人は天然なのだろうか。なんだかおかしな方向へ話が進んでいる気がする。
本当に雷覇殿とすぐに会えるのかしら?不安になってきたわ…。
でも、今は冬條殿の望みを叶えてあげて、開放してもらうのが一番、穏便にことが進みそうだった。
なかなか難しそうだが…。
まぁ。死ぬことはなさそうだし、ここは切り替えて気長に待つか!!!
「冬條殿!ひとまず、あなたの話を信じるわ!!まずはお風呂に入れてもらえないかしら。もう何日も入ってなくて気持ち悪いのよね!」
「はいっ…!!わかりました…。すぐに用意させます」
ぱぁっと、急に明るくなった表情で、冬條殿がこちらを見た。
ううう。子犬め!!かわいいな!!わたし、こういう目に弱いのよ~!!!
かくして、わたしは何だかよくわからないが、冬羽国に滞在することになった。
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