22.春魏国へ~会いたい~
「くそっ!!怜琳はまだ見つからないのか!!」
俺は思いっきり怒鳴った。彼女と祭りで喧嘩別れして3日。
すぐに後を追いかけたが、人が多すぎてすぐに見失ってしまった…。
その後消息がつかめていない。俺はかなり焦っていた。
ずっと探しているが見つからない。
「ライライ落ち着いて。今情報を集めてるから。それにあたなたこの3日間寝てないじゃない?」
マーリンが心配そうに尋ねてくる。街中の情報を彼女が集めてくれている。
今は彼女の家を拠点として怜琳を捜索している。
集まった情報では、彼女に似た容姿の女性が男二人組に連れて行かれたのが目撃されている。
がその後の足取りが掴めていない状態だった。
もしかしたらこの国にはいないのかもしれない…。
「俺のことはどうでもいい。サイガ、俺の部隊はまだ着かないのか?」
「今日の昼には着く予定だ。でも雷覇、一度休んで冷静になれ!」
「到着次第、ほうぼうに散って情報を集めろ。この国にはもういない可能性が高い」
「…・。わかったよ。何か分かったらすぐに報告する」
「ライライ。わたしの取引先にすごく顔の広い人がいるの。この国以外の情報ならそこからでも集められるわ」
「頼む‥‥。」
そう言うと、サイガとマーリンは部屋を出ていった。
「雷覇様。リョクチャです…。」
怜琳の侍女のリンリンが、ユノミを手渡してくれる。
「ありがとう‥‥。すまない。俺がついていながら…」
「雷覇様、お嬢様は大丈夫です。たくましい方ですから」
どこか確信めいた瞳で彼女に言われた。さすが、怜琳の傍にいた侍女殿だ‥‥。
彼女が誘拐されたと聞いて、最初は取り乱したがすぐに冷静になり
捜索隊の世話をしてくれている。強い女性だと思った。今はサイガと話をして、ここの切り盛りをしてくれている。
それが自分にできることだと分かっているのだろう。
俺はソファに腰掛けて深く息を吐いた。この間までこの手の中にいたんだ…。彼女は…。
まただ。また彼女はスルリと俺の手の中から出ていってしまった。
やっと手に入れたと思ったのが間違いだったのか?
いや…。そもそも、彼女は俺のことを好ましくは思ってなかった。
『何よ!自分だけ我慢してると思ってるの!!わたしだって、我慢してる!雷覇殿がいちいちくっ付いてくるのとか、ほっぺたやおでこに障るのだって、本当は止めてほしいけど我慢してるもの!!!』
彼女が最後に俺に向けて放った言葉だ。今でも鮮明に覚えている…。
俺に触られるのがそんなに嫌だったのか‥‥。結構ショックだった。
かなり距離は縮まったと思ってた。
俺だけ舞い上がって、勘違いしてたのか‥‥。
はっ…。滑稽だな。
嬉しかった。怜琳が俺だけの為に笑い、怒り、驚いたり…。クルクル回る表情を手に入れたと思ってた。
…。会いたい。怜琳…。もう一度君に触れられるなら何だってしよう。
どうか。無事でいてくれ‥‥。怜琳…。
俺はそのままいつの間にかソファで横たわり、意識を手放していた。
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目が覚めるとわたしは、両手両足を縛られて、口に何か布を噛ませれていた。
ここは‥‥?わたし…どうなったの?
雷覇殿と喧嘩して、その後…。
そうだ!!変な人に捕まったんだった。
周りを見ると薄暗いが馬車か何かの中だった。
ゴトゴトどこかに運ばれているらしい。
外を確認できるような窓はなかった。誘拐?連れ去られた…。
!!!!
ようやく事態を飲み込めてきた。あの男に捕まり、どこかに運ばれてる。
幸いどこも、怪我はしていなかった。服もあの時のままで、装飾品だけ無くなっているだけだった。
…。どこかに売られるのかな?あの男は普通じゃなかった。
人攫いだったのかも。
どうしよう。逃げてもまた連れ戻される‥‥。
なんとか助けを呼ぶ方法を考えないと!
とにかく大人しくしてチャンスを伺おう。
きっと大丈夫。雷覇殿がわたしを見つけてくれる。
わたしは変な確信があった。呑気だと言われるかもしれない。
でも。あの銀獅子だ。
狙った獲物は逃さない。きっと私のことを見つけてくれる。
大丈夫!しっかりしろ!わたし!
ガタン!
馬車が止まった。どこかに着いたらしい。
後ろの扉が開いた。するとそこには路地裏でみたあの男がいた。
「やっっほ~♪お姉さん起きてたんだね!もう着いたよ~」
「…・」
「だいじょうぶだよ~♪おとなしくしてくれれば乱暴なことはしない。君は高級品だからね♪」
やっぱり、売られるんだわ!!でも、それなら殺されはしない。しかも高級感なら、尚更変なことはされないはず…。
男はニヤニヤしながら近づいてきて、腕を掴んできた。
そのまま馬車を降ろされて、どこかの地下牢みたいな所に連れて行かれた。
牢屋に閉じ込められながら、わたしは考えていた。…。
雷覇・・会いたい。
ちゃんと会って、ごめんなさいって言いたい…。
彼の声が聞きたい、名前を呼んでほしかった。ずっと一緒にいたから…。
「彼に酷いこと言っちゃった…・雷覇…」
離れて気がつくなんて…馬鹿だわ。わたし…。彼のくしゃっと笑った顔が頭に浮かんだ。
少年みたいに笑う顔‥‥。怜秋の話をするとすぐに拗ねて子供みたいになる。
わたしと離れると、犬みたいにしょんぼりする…。
いつの間にか、わたしの中は彼で一杯になってた。
雷覇が好きだ。本当に心のそこから思った。
だから、彼に会うまでは絶対に死なない!
絶対生きて会おう!!!わたしは強く心に誓ったのだった。
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「お姫様の居場所が分かったぞ!!」
サイガが勢いよく部屋に入ってきた。
怜琳がいなくなって5日目。ようやく手がかりを掴んだ!
予想したとおり、この国にはいなかった。
彼女がいるのは、ここから早馬で1日もあれば行ける
冬羽国。
そこで金持ちに買われて、連れて行かれたらしい。
良かった‥‥。彼女は生きている。
すぐに俺の部隊と合流し、救出部隊を結成した。
ここからが、銀獅子の真骨頂。
俺を怒らせたらどうなるか、目にもの見せてやる!
必ず怜琳を取り戻す。
俺は準備をして、馬に飛び乗った。
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ほんとうに…。わたしは運がいいのか?悪いのか?
まぁ。死んでないから運がいいとしよう!!
誘拐されておそらく4日目、地下に連れて行かれたわたしはそのままそこで二晩過ごし
オークション会場へ連れて行かれた。
もちろん拘束されたままだ。
そしてその日の目玉商品として競りに出された。
司会らしき仮面の男がわたしを紹介し始めた。
『さぁ!!皆様!!本日の一番の目玉!!!綺麗な、アメジスト色の瞳を持つ少女。異国の姫の登場です!!!!』
姫ってバレてるのか…。まぁわたしの容姿を照らし合わせたら、死神姫って分かるかもね!
会場の真ん中に立たされる。目の前には仮面をつけた人たちでいっぱいだった。
「まあ!!なんて可愛らしいでしょう!!100万!!」
『100万出ました!!おっとお次は150万!!』
次々に値段が釣り上がっていく。ううう‥‥。逃げたいけど、こんな会場じゃ無理だわ。
とにかく買ってくれた人に交渉しないと…。
『800!950!!さぁお次はいませんか??』
「2000万」
えっ‥‥!2000万!!!誰よそんな大金をはたくのは!!!見るとVIP席のような場所で座っていた男性が手を上げていた。
『2000万!!さぁ!この次はいらっしゃいませんか!!!』
誰も、手を挙げる人はいなかった。
カンカン!!!司会の男が金を鳴らす。
『2000万で異国の姫ご入札です!!!!』
わたしはそのまま、舞台裏から別の部屋に連れて行かれた。
そこには、わたしに破格の値段をつけた男が座っていた。見るからに貴族のような出で立ちだった。
「全く今日はいい買い物をした…」
「…。あなた。わたしを知ってるの…?」
誰なの?仮面で声がくぐもっててわかならい…。
「知ってるとも。そなたは秋唐国第一王女、怜琳殿だな?」
「っ…!!!?あなたは‥‥。何でこんな所に?」
仮面を外した男に見覚えがある。わたしが二回目に嫁いだ国にいた人物。
わたしを買った男は、忘れるはずもない。
冬羽国の第二王子。
冬條だった。
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