16.夏陽国滞在~まだまだ帰れません~
夏陽国の街並みは、秋唐国と違って、機械的な街並みだった。
軍事産業で発展しただけのことはある。
街には自動車や鉄道といった機械仕掛けの乗り物がたくさん走っているし
武器を売る店や武器を修理する店なども、沢山ならんでいた。
あと大きく違う点があるとすれば、肌の色だった。
褐色の人が圧倒的に多い。
元々夏陽国の人々は遊牧民で
騎馬や狩りを得意とする民族を先祖としているためだ。
わたしのように肌が白い人の方が珍しい。
女性も健康的で体つきもがっちりしている人が多い。
夏陽国の女には逆らうな!と言われているくらい、女性が強い風習がある。
だから必然的に男性は女性を立てることのできる優しい気性の人が多いらしい。
雷覇殿があんなに、わたしに甘々なのも、そこら辺が影響している。
まぁ女性に優しいことはいいことよね!!うん。うん。
馬車を降りて、雷覇殿に手を引かれながら街を散策する。
すれ違う人は皆、彼を見るたびに挨拶を交わす。
「銀獅子様!!いつも国を守ってくださって、ありがとうございます!!」
「雷覇様!!今日新しく入った新鮮なお魚はいかがですか?」
などなど。この国の人たちと王族って距離感が近いのね…。
みんな怖くないのかしら?
でもよく考えたら、彼らにとっては国を守ってくれる軍人さんで
守護者みたいなものだから怖くないのか。
雷覇殿も気軽に挨拶を交わすから、よけいに話かけられるかもしれない。
あと!!女性に囲まれる回数が非常に多い!!!なんだか意外だわ…。
雷覇殿ってモテるのね~。
「雷覇様~。こちらでゆっくりお茶でもしませんかぁ?」
「いや、今日は婚約者と一緒なんだ!すまんな」
「いやーん。残念!!また遊びに来てね~」
おおう。ここの女性って積極的なのね~。
わたしの国はどらかというと、男性を立て淑やかで口数が少ない方が良いとされている。
男性を陰で支えて、黙って後ろからついていく。この国の人たちからすると正反対ね!
「この国の女性は皆さん元気で、積極的な方が多いですね~」
わたしは感心しながら雷覇殿に告げた。
「そうだな。女性は子供を産み育てるからとても大切にするように教えられる。あとは男性と平等だという考え方が強いかもしれんな」
ニコニコしながら、雷覇殿が答える。さっきからとってもご機嫌さんだった。
「なるほど~。やっぱり国が違うと国民性も違ってくるんですね~」
「なんだ?怜彬焼きもちか?」
「いえ。そんなことは全く!!」
「そうか…。怜彬が焼きもちを焼いてくれたら、天にも昇るような気持ちなんだが‥‥」
また訳のわらかないことを…。
「前から思ってたんですど、雷覇殿の表現って…。伝わらないですよね。いろいろと」
「えっ!!どこがだ?」
えー。気が付いてなかったの~?ってか、あれを素でやってたの?
天然なのかな・・・。雷覇殿って。
「どこがって、全体的にですよ。時々、熱量が凄すぎて内容が全然伝わってきませんし…
何言ってるかよくわからないですし…」
「そっ…そうなのか…」
雷覇殿は何か、もの凄いショックを受けている様子だった。
まぁ、伝わると思って言ってるんだものね~。
びっくりするのも無理ないか。でもそれがどう相手に伝わるかは別問題よね!!
よし!これを機に甘々攻撃をちょっとでも、減らせれるように誘導していこう!!
「そうです。普通に好きだよって言ってくれた方がわかりやすいです!」
「‥‥!!!!わかった…」
「ぶはっ!!!!もうだめだ!!お姫様、おもしろすぎる」
後ろで警護に当たっていた、サイガがお腹を抱えて笑い出した。
何がそんなに面白いのかしら?まぁ、喜んでもらえてよかった!!
そして今日もイケメンですね!!
一通り見て回ったところで昼食をとることにした。
この国でよく食べられている、鶏肉を使った料理だ。
いくつもの香辛料を使用して油と一緒に揚げる。外側がカリカリ、中身はとってもジューシーで美味しかった。
あとは蒸したお野菜を数種類のタレにつけて食べたり、塩をつけて食べたりした。
うーん!!美味しい~!!国が違うと結構、食文化も違う。
夏陽国の味付けは比較的あっさりしているので食べやすい。
もう・・・。皆さんお分かりかと思いますがモチのロン。
…。モチロン!雷覇殿の膝の上ですよ!!
ええ。そうですよ!断る前に、さらっと自然に乗せられてましたよ!!
お店の人にめっちゃニコニコしながら、色々言われるし…。
ぐぅ…。せめてもの救いが、個室での食事ってことだった。
「あっ。そういえば雷覇殿、昨日わたし宛に手紙がとどいてたんですけど…」
「ああ。聞いている。春魏国からだろう?知り合いでもいるのか?」
「わたしの小さいころからのお友達でマーリンって言うんですけど、夏陽国に来ているならそのまま、春魏国に遊びに来ないかって…」
春魏国にいる、わたしの数少ないお友達。マーリン。
おしゃれなもの、綺麗なものが大好きで、一度、秋唐国に宝石を買い付けに来た時に知り合ったのよね~。
ちなみにマーリンは、王族だ。
現状はお父様がいらっしゃるから、国政にかかわることは少ない。
比較的自由に動けるらしい。
でも会うのは数年ぶりだから、とっても楽しみ!!連絡くれて嬉しいな~。
「いいんじゃないか?」
「いいんですか?遊びに行っても」
「ああ。春魏国ならここから馬車で3日も走ればつく距離だし」
「やった!ありがとう!!雷覇殿」
わたしは思わず雷覇殿に抱きついてしまった。ハッ!!しまった!!つい怜秋にやる癖でやってしまった。
「今日の怜彬は積極的だな?」
満面の笑顔で抱きしめ返されてしまった!!ああ。捕まった!どうしよう…。
「すいません…。嬉しくてつい…」
「俺は大歓迎だ。」
「ううう…ごめんなさい、わたしはそんなつもりじゃないです…」
「ふふ。照れてる怜彬はかわいいな」
わーん。わたしの馬鹿!!わざとじゃないんです!!
いやわざとでもダメなのか!!
ってか、ほっぺとかおでこに口づけはもうお腹いっぱいです!!
やめて~!!!近い!!近いです!!
「春魏国へ行くなら、俺も行く。怜彬と旅行できるなんて、楽しみだ!!」
「へっ?雷覇殿も一緒に行くんですか?」
「もちろんだ!!早速、帰ったら話をつける」
「いや、でも…。この前も国を空けたばかりですし…。そんなにホイホイですね、あちこちへ行かない方がいいんじゃ…」
「怜彬は俺と一緒が嫌なのか…」
ぐぅ…。またそんな、しょげた犬みたいになるのずるい!!
ちょっとかわいいなって思っちゃうじゃん!!
嫌ではないけど…。でもなぁ…。
一緒に行くと良くない予感しかしないんだよね~。
マーリンと雷覇殿って合わない気がするし。
「嫌じゃないですけど‥‥。マーリンってちょっと変わってて、雷覇殿とは合わないかも…」
「大丈夫だ。怜彬の友人なら、なおさら会ってきちんと挨拶しないとな」
「わかりました…」
「なら決まりだな!!秋唐国には俺から連絡をしておこう」
「あっ!!それなら、手紙と一緒に今日買ったお土産も送ってもらえませんか?」
「いやだ」
「えっ!!なんでですか!!」
「怜秋殿に渡すお土産だろう。いやだ」
なんじゃそりゃ…。出たよ。子供か!!
雷覇殿の怜秋に焼きもち。
略して怜もち。
なんで怜秋にだけそんな感じになるかなぁ。同じ男だから?まったくわかりません!!
だが!!しかーし。ちょっと今日一日、雷覇殿と過ごしたおかげで、雷覇殿の扱い方わかってきたんだよね~。
「わかりました…。お土産は送らなくていいです…」
「そうか!わかってくれるか!怜彬」
「わたしが直接手渡しで、渡します」
「なっ!なんでそうなるんだ?」
「春魏国には行きません。もう秋唐国に帰ります…」
わたしは、しょんぼりしながら、プイっとそっぽを向いた。
「ちょっと待ってくれ、怜彬。分かった…。お土産も一緒に送ろう…」
「ほんとうですか!!ありがとうございます!雷覇殿」
わたしはニコニコしながら、伝えた。押してもダメなら引いてみなってね!!
雷覇殿は押しに強いが引きには弱いのよね~。
言い方をちょっと変えるだけで全然ちがう。
しょんぼりしながら言うのがポイント。
ふふふ。いつまでも振り回されてたまるもんか!!
向き合うって決めたからには、どんどんわたしの主張もさせてもらいますから!!
後ろでまたサイガが思いっきり笑ってた。本当に何が面白んだろう?
あと、水覇殿に、旅行の事を伝えたらめっちゃ、ネチネチ文句を言われてた。
ほら~。だから言ったじゃない。言わんこっちゃない…。
まぁでも。久しぶりにマーリンに会えるのはとっても楽しみだ!!
わたしが、秋唐国に帰るのはもっと後になることは
この時のわたしは知る由もなかった。
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