182.聞いてないです!!
虹禀殿と四季国から戻ってきてからは怒涛の毎日だった。
結婚式まで一ヶ月を切ったため皆で急ピッチで準備が進められた。
それから四季国から戻ってきてすぐに、虹禀殿は温泉旅館の手配をしてくれた。
さすが!仕事ができる人は早い!!!
虹禀殿が予約完了した事を証明する書面を持ってきてくれたため、わたしはサイガにそれを渡した。
その場で踊りだしそうな勢いで喜んでくれた。
「うわー!!まじで!!お姫様」
「遅くなってごめんね。サイガ」
「全然いいってそんな事。すっげぇな!ここめちゃくちゃ良い旅館だろう?」
「ええ。わたしも一度行ったことあるけどとっても綺麗でいい場所だったわ」
「これは行くのが楽しみだな~!」
「リンリンのことくれぐれもよろしくね。お休みは取るように伝えてあるから」
「ああ。任せとけって!色々と気を使ってくれてありがとうな!」
サイガに何度もありがとうとお礼を言われながらわたしは虹珠殿達のところへ向かった。
最終的な確認をするためだ。それが終わったら今度はマダムベリーと会うことになっている。
変更したドレスの仮縫いができたため試着する必要がある。
みんながそれぞれの役割を十分果たしているから、とても素晴らしい結婚式になるだろう。
ああ…。いよいよって感じがするな~。
あと1週間もしたら四季国へ行って神殿の飾り付け作業をして
その後は高級旅館での披露宴の準備をして…。
わたしは皆の補佐くらいしかできないけど、虹禀殿が気を使ってくれたおかげで
準備を手伝うことができているから、以前のような疎外感はない。
今となっては皆一眼となってより良いものを作ろうという空気感が漂っている。
なんだか…。お祭りの準備をしているみたいね…。ふふふ。
「怜琳!」
振り返ると雷覇が小走りで駆け寄ってきた。
ちょうど会議が終わったところのようだった。
「雷覇。会議は終わったの?」
「ああ。今終わって君に会いに行こうとしていたところだ」
「ちょうど良かった。わたしも今 虹珠殿達との打ち合わせが終わったところよ」
「じゃあ、久しぶりに中庭で食事をしよう」
「いいわね!そうしましょう」
二人で手をつないで中庭のテラスまで向かった。
雷覇と昼食を一緒に食べるのは久しぶりだった。
今日は天気もいいから気持ちいいだろうな~。
「今日は天気がいいから気持ちいいだろうな」
「…!」
「どうした?怜琳」
「今…わたしも同じことを考えてた!」
「本当か?息ぴったりだな俺たち」
「ふふふ。本当にそうね♪」
わたしは嬉しくなって雷覇の腕に抱きついた。
こんなちょっとしたことが幸せだった。
わたしが高熱を出して倒れて以来、雷覇は頻繁に時間を作ってくれるようになった。
わたしも以前に比べて気持ちを伝えるようしているから、わだかまりはない。
一つ一つ積み重ねて信頼を築いたり、愛情を深めていくんだろうな…。
「結婚式が終わったら、新婚旅行に行こうと思ってるんだ」
「前に言っていたわね…。確か水覇殿も行っていたところ?」
「ああ。父のときも祖父のときも代々そこへ行くのが習わしなんだ。結婚式が終わって2ヶ月間はそこに滞在する事になってるんだ」
「へぇ…そうなんだ」
「蜜月と言ってな。二人で多くの時間を共有して跡継ぎを作りやすいようにする意味もあるんだ」
わたしは思わず飲んでいたお茶を吹き出しそうになった。
蜜月?跡継ぎを作る?どういうこと??聞いてなんだけど!!
「黙っていてすまない…隠していた訳ではないんだが…」
「つまりひたすらそこに籠もって…その…」
「子作りをするということだ。蜜月とはそう言う意味だ」
「ううう…そうなんだ」
わたしは急に恥ずかしくなって顔を伏せてしまった。
なんてこった!!夏陽国にはそんな風習があるの?
聞いてないよ~。うわーん!!
そうかだから…。水蓮殿もすぐに妊娠することができたのか!
わたしは水蓮殿の妊娠時期と新婚旅行へ行っていた期間を照らし合わせた。
するとピッタリ一致した。どうして気が付かなかったのかしら!
なんだか結婚式が可愛らしく思えてきたわ…。
恐るべし夏陽国。うっかり結婚式がゴールだって思っていたけどそうじゃない。
むしろそこからがスタートだ。それに前々から雷覇には色々我慢していると言われていたし…。
ああ…。わたしどうなるのかしら…。
「怜琳…不安にさせてすまない…いきなり向こうで伝えるのもなんだと思って」
「え…ええ。今言っておいてくれてよかったわ…ただちょっとびっくりしただけ…」
「怜琳に無理強いさせるつもりはないし、籠もっているからと言って毎日同じことをするわけでもないんだ…気楽に考えていてくれ」
「あ…。そうなんだ…」
良かった~。わたしはホッと胸をなでおろした。
雷覇ってば大げさな言い方をしたのね。びっくりさせないでよ…。
それでもまだ心臓はドキドキと大きく鼓動している。
なかなかこの手の話には慣れないな~。
「後は…俺がどれだけ耐えれるかの問題なんだよな…」
「えっ?なにか言った?」
「いや。なんでもない」
雷覇はにっこり笑ってさらっと話を流した。
今…雷覇がボソッと何か言った気がしたけど…気のせいか…。
前にマーリンやリヨウ、スバルにも相談したら流れに身を任せろって言われてるし…。
あまり深く考えるのはやめよう…。今は…。
結婚式のことだけに集中しよう…。今は…。
でもでも…問題を先送りにしている気がする~!!
実際に体験したことないわたしにとっては心配するだけ無駄な気がした。
雷覇のほうが経験豊富なんだろうし…そこはおまかせしよう。うんうん。
「怜琳…そんなに嫌か?」
「えっ?」
雷覇がものすごいしょんぼりした顔で尋ねてきた。
ああ!しまった…。また一人で色々考え込んでしまってた!
「嫌じゃ…ないんだけどその…」
「なにを思ってる?正直に言ってくれ」
「あのね…。わたし初めてだから…不安で…何となく知識としては知ってるけど…体験したことないことは怖いっていうか…」
「そうか…まぁ確かに経験したことないものは不安だよな…」
「うん…ごめんね」
「怜琳は悪くないさ。怜琳はなにが怖いんだ?」
雷覇にふわっと抱きかかえられて膝の上に座らされてしまった。
この体勢て…それを言うの?
めちゃくちゃ恥ずかしいんだけどな…。
「雷覇はよく我慢してるって言ってるでしょ?」
「ああ。そうだな。実際によく耐えてると自分でも思うぞ」
「それは今、結婚してない状態だからでしょ?それが結婚したら我慢しなくていいって事だから…」
「まぁ…今まで以上に遠慮はしないだろうな」
「ううう…そうなるわよね。わたし雷覇に食べられるんじゃないかって…思ってちょっと怖いなって…」
「…」
「雷覇?」
急に雷覇が肩を震わせて下を向いてしまった。
あれ?わたし何か変なこと言ったのかしら?
「アッハハハ!!!」
「もーなによ!そんなに笑って」
「嫌…すまない。あまりにも可愛いことを言うもんだからつい…」
「だからってそんなに大声で笑わなくてもいいじゃないの」
「クックック。あー腹が痛い。本当に俺の怜琳は可愛いが過ぎるな…」
「絶対わたしのこと馬鹿にしてるでしょ?」
「してないよ。食べられるか…、まぁあながち間違ってはいないかもな。いつも食べたいくらいに怜琳に触れていたいと思ってるからな」
「ううう…」
またそんな甘いこと言って!!
まぁでもちょっとスッキリしたかも…。
やっぱり思っていることは口に出して言ったほうがいいわね。
雷覇が大笑いしてくれたおかげで、なんだか気が抜けてしまったし…。
それにしてもあんなに笑った雷覇を見たのは初めてだわ。
雷覇でも大笑いすることってあるのね…。
笑った顔かわいかったし…。まぁ笑ったことは許してやるか。
「でも、怜琳が正直に話してくれて嬉しいよ」
「うん。わたしも話せてよかったわ」
「これからもなんでも話してくれ…俺は鈍いから…はっきり言ってもらわないと分からないことが多い」
「確かに…雷覇って鈍いし時々ずれてるものね…」
「おいおい。それは言いすぎだろ?」
「ふふふ。どうかしら?」
わたしは愛おしくなって雷覇がおでこに口づけした。
軽くだけど…。
雷覇が拗ねてるところって本当にかわいいのよね~。
「まったく…怜琳は俺の努力を無駄にするのがうまいよな…」
「どういうこと?」
「いいさ…。結婚したら覚えてろよ?」
「んんっ…」
しまった!!雷覇の何かに火をつけてしまった!!
と口づけされながらちょっぴり後悔した。
雷覇の上に座りながらとか…。いつもより密着する。
彼の体温や彼の匂い、彼の息遣い。全部が目の前にあって全身にまとわりつくような感覚だった。
「…っはぁ…」
「怜彬こんなのはまだまだ序の口だぞ?」
「えっ?そうなの?」
「ふっ…そうさ。楽しみにしていてくれ」
「うーん?」
楽しみにしてていいものなのかしら?
っていうか今の口づけでも序の口なの?
こ…これは相当な覚悟が必要ね…。むむむ。
雷覇に抱きしめられながら、そんな事を考えていた。
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