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178.怪我の功名?

目覚めたわたしはどうやら3日もの間、高熱でうなされていたそうだった。

ずっと怖い夢を見ていた気がする…。

薬を飲んで眠りにつくたびに、雷覇らいはが死んでしまう夢…。

そのどれもが結婚式で様々な形で雷覇らいはが死んでしまう夢だった。


とても恐ろしかった。今も思い出すと体が少し震える。

傍に居る雷覇らいはにきゅっと捕まっていないと不安になるくらいだった。

でも…最後に見た夢は怖くなかった…。

それどころか愛おしいとさえ感じる…。ずっとずっと傍に居てわたしを一番見ていた人…。

それはわたし自身だった。

そんな自分をいつも知らないふりして考えないようにしていた。

だから…。突然怖くなったのだ。過去に体験していたことをもう一度味わうと思い出してしまった。


窓の外に目をやりながら今までの出来事に想いを馳せた。

父や兄がいなくなって悲しかった事。

炎覇えんはが死んで苦しかった事。

その後の旦那様が次々亡くなって辛かった事。

辛いことが沢山あって、心が痛く痛くて仕方なかった。

だから次第に誰も好きになりたくないと思ってた。

でも本当は誰かを好きになりたかった。愛したかった…。

そう思ったらまた涙が出てきた。


「そっか…わたし…愛したかったのね…」


父や兄、炎覇えんはや出会った人達…みんな。

愛したかった。一緒に生きてご飯を食べて…笑って過ごしたかったのだ。

それをずっと心のどこかで否定していたからあんなに苦しい思いをしたのだ。

人を愛したい。それを認めた途端に心がとても軽くなった気がした。


怜彬れいりん…大丈夫か?」


慌てた様子で雷覇らいはが駆け寄ってきた。

わたしが泣いていたからびっくりしたのだろう。


「大丈夫…。ちょっと感極まって…」


「そうか。辛いことがあったなら言ってくれ。今度は…ちゃんと話を聞くよ」


「うん…ありがとう」


わたしが目覚めた後、雷覇らいはが謝ってくれた。

ちゃんと話を聞かなくて悪かったと…。

わたしと結婚式を挙げることが嬉しくて嬉しくて仕方なかったと。

雷覇らいはが優しく涙を拭ってくれる。

大きな体で温かく包んで抱きしめてくれる。

それだけで、もう怖くなかった。雷覇らいはにきちんと話せて良かった。

そう思えばわたしが熱を出したことも無駄じゃなかったかもしれない。


雷覇らいは…ごめんね。結婚式を延期しちゃって…」


「大丈夫だ。準備の期間が沢山できたと思えばいい」


「でも…」


「まずは怜彬れいりんの体調がよくなる方が先だ!なっ?」


「…うん」


雷覇らいはにポンポンと頭を撫でられた。

申し訳ないことしちゃったな…。あんなに楽しみにしていたのに…。

早く元気になって式を挙げれるようにしないと…。


雷覇らいは…」


「なんだ?」


「わたしが雷覇らいはを好きなのは変わらないからね?」


「あっ…ああ。どうしたんだ?急に」


「だって…結婚式を延期したのはわたしに嫌われてるからとか考えてそうだもん」


「それは…まぁなくはなかったが…」


「やっぱり!わたしが一緒に居たいのは雷覇らいはだけだからね。雷覇らいはが好きだから…」


「分かった!分かったから…もう泣くな。怜彬れいりん


「うう…だって…」


ああ…。また涙もろくなっちゃった…。

熱が下がってからというもの、以前にも増して泣きやすくなってしまった。

今も感情が高ぶるとすぐに涙が出てきてしまう。

雷覇らいはは少し困ったような顔をして、優しく唇で涙を拭う。

目元や頬、顔のいたるところに口づけの雨が降ってくる。


「でも…泣いている怜彬れいりんも可愛いから困ったものだ…」


「またからかって…。わたしだって泣きたくて泣いてないもん…」


「ふっ…そうか。それはすまない」


「んっ…」


雷覇らいはと唇が重なる。

ちゅっちゅとついばむように何度も唇を吸われる。

その度に頭の奥がジンジンして、さっきまで何で泣いていたのか忘れてしまう。

わたしはふわふわして温かくなる感触を味わいながら雷覇らいはに身を委ねた。


「延期になって…良かったと思ってるんだ。俺は…」


「そうなの?」


「ああ。前より怜彬れいりんの事が知れたし…俺も自分の甘さを改めることが出来たからな」


「そっか…じゃあ良かった」


「だから、怜彬れいりんは何も気にする必要はない。全部起こるべくして起きた事だ」


「そうね。わたしも雷覇らいはに色々話せて良かったと思ってる」


「ああ…。怜彬れいりん好きだよ…」


「うん…わたしも…雷覇らいはが大好き」


わたしが大好きと言った瞬間…雷覇らいはがくしゃっとした顔で笑った。

ああ…。わたしの大好きな顔だ…。

無邪気な少年みたいでキラキラしてて…とっても眩しい笑顔。

わたしは彼の頬に手を当てて、そっと唇に触れた。

雷覇らいははびっくりしていたけど、すぐに受け入れてくれた。


もっと…もっと伝えたい。

言葉でも仕草でも態度でも…どんな方法でも。

彼に大好きだって言いたい。たくさん、たくさんわたしの気持ちを与えたい。

なんだか、頭の中がすっきりしてる。

人を愛したいと認めてからとってもクリアになった気がする。

色んな雑念が消えて、彼への思いだけが明確になったような‥‥。

それに雷覇らいはが応えてくれなくても構わないって思う。

わたしが持ってる愛情を伝えられるだけで幸せになる。


人を愛するってこんな気持ちなのね…。

嬉しいな。楽しいな。ワクワクするな。

前まですっごく恥ずかしかったけど、今は全くそんな事を感じなかった。

わたしは雷覇らいはに思いっきり抱き着いた。

ああ。今日も温かくていい香りがする…。


怜彬れいりん…。どうしたんだ?さっきから…なんか変だぞ」


「ふふふ…。内緒」


「はぁ…。これはまた…俺にとっては新たな試練だな…」


「何か言った?」


「いや…。何でもない」


雷覇らいはがわたしを抱きしめながら何か言っていたけど

小さな声だったから聞こえなかった。

でも声の感じからして雷覇らいはが喜んでくれていることは分かった。

よーし!これからどんどん積極的に伝えていくぞ~。

わたしが沢山気持ちを伝えれば雷覇らいはも変な心配しなくて済むもんね。

なんでその考えに至らかなかったのかしら…。

雷覇らいはがわたしに嫌わてるとか考えてしまうのは

わたしがちゃんと気持ちを伝えていなかったからだ。

だから、わたしとの関係に自信が持てなかったのだ。


雷覇らいはは今まで沢山伝えてくれてた…だから今度はわたしの番だ…。

そう思っていたらだんだんお腹が空いてきた。

そう言えば…熱が出ている間まともに食べてなかった気がする…。

その事を雷覇らいはに伝えるとすぐに食事を用意するように伝えてくれた。

雷覇らいはの仕事が気になったけど、今は落ち着いているためゆっくりできるのだそうだ。

だったらここは何も気にせず思いっきり雷覇らいはに甘えるとしよう!


「ほら…怜彬れいりん、口を開けて…」


「あーん」


雷覇らいはがリンリンの持ってきたお粥を食べさせてくれた。

ふふふ。怪我した時に戻ったみたいね…。

それにしても…このお粥おいしい~。

優しい魚介類の出汁がじゅんと胃に染みわたるようだった。

わたしはペロリとお粥を食べてしまった。


雷覇らいはも嬉しそうにしている。

熱があるときはあまり食べなかったから心配だったそうだ。

まぁ…あの時はとてもじゃないけど食べたいと思わなかったしね。

メンタルって本当に大事だな~。


「そうだ。俺達の結婚式なんだが、怜彬れいりんの体調をみながらだが1か月後にしようと思うんだ」


「分かった。それまでに万全の体調にして整えるわ」


「ああ。でも無理は禁物だからな」


「うん。まずはちゃんと食べれるようになるところからね!」


「そうだな。でも延期になったことでマダムベリーはドレスにもっと手を加えることが出来ると言って喜んでいたし、叔母上様達に至っては細部にまでこだわることができて良かったと言ってるぞ」


「まぁ!みんなすごい前向きね」


「そうだな。俺も驚いたよ。どんな時でも女性は強いものだな」


「ふふふ。そうかもね。特に夏陽国かようこくの女性は皆パワフルだわ」


「ああ。こっちが圧倒されるくらいだよ」


やれやれといった顔で肩をすくめる雷覇らいは

わたしの都合で延期になってしまったのは申し訳ないけど

その分、叔母上様達が言っているように沢山やれることが出来たと思えばいい。

わたしもブーケのデザイン途中だったし…。自分でできるところから取り組んでいこう!


あとドレスについてもマダムベリーにちょこっとお願いしてみよう。

雷覇らいはとマダムベリーが選んでくれている時はあまり気にしていなかったけど

もう少しわたしの意見を言ってみようと思っていた。

ブーケのデザインに合わせて、ドレスに枯れない花を付けてもらったり

頭にわたしの庭園で咲いているお花を使って冠を作ろうと考えていたのだ。

花が好きなわたしらしい、お花に囲まれた結婚式にしたい。


ふふふ。こんな姿になったら、シャチーはますます妖精さんだと思い込んでしまうわね…。

その姿を想像するだけで顔がほころんだ。

だんだんやる気がみなぎってくる気がした。

わたしは1か月後の結婚式に向けて本格的に動き出そうと決めたのだった。


最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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