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175.悪夢

雷覇らいは!ちょっと話したいことがあるんだけれど…」


「すまない。怜彬れいりん…この後すぐに会議なんだ」


「そう。分かったわ…じゃあまた今度」


「ああ。落ち着いたら必ず時間を作るよ」


「うん…。行ってらっしゃい」



そう言って雷覇らいははおでこに口づけだけして仕事に行ってしまった。

このやり取りが5日続いている。

結婚式まであと10日を切ったあたりから忙しくなりなかなか話す時間が取れなかった。

はぁ~。昨日も結局帰ってくるのが遅くて話が出来なかったし…。

そろそろゆっくり話がしたいな~。

執務室へ行ってみても不在になっていることが多く、ほとんど顔を合わせない。

何がそんなに忙しいのかしら…??


結婚式まであと5日だ。ほとんど準備はできているし、虹珠こうじゅ殿達が手伝ってくれてるから

やることもそんなに無いと思うのに…。

なんで忙しいのか?を話してくれたらまた別なんだけど…。


「はぁ…。せめて理由くらい言ってほしいな…」


「お嬢様…。何かお悩みですか?」


「うーん…悩みと言うか…雷覇らいはとちゃんと話せないなって思って…」


「確かに…最近は朝早くに仕事に行かれて遅くに帰ってきますものね…」


「そうなのよね~。何がそんなに忙しいのかしら…」


「私もサイガ様にさりげなく聞いてみます」


「ありがとう…リンリン」


リンリンにも気を遣ってもらうくらいだからよっぽどだろうな…。

ああああ…。それにしてもリンリンのマッサージ気持ちい~!

うつ伏せになって寝ながら優しく背中から全体をほぐしてもらう。

アロマオイルのいい香りとリンリンのしっとりとした手の感触は

何とも言えないくらい安らぐものだった。

うっとりしながらわたしはそっと目を閉じてリンリンに身を委ねていた。



・・・・・。


「お嬢様!お嬢様」


「うーん…」


遠くからリンリンの声が聞こえる。

あー…あと5分‥‥。寝てたい‥‥。


「お嬢様!起きてください。結婚式に間に合わなくなりますよ」


「え?結婚式?」


どういう事だ?式まではあと5日じゃなかったっけ?

勢いよく目覚めて瞳をあけるとわたしは純白のウエディングドレスに身を包まれ

鏡の前で座っている状態だった。


綺麗に化粧され髪型もセットされた状態だった。

わたし…。夢でも見てるのかな?


「さぁ。も準備はできましたのでこれから神殿へ向かいましょう!」


「え…ええ」


せかされるようにリンリンに手を引かれて控室を後にした。

真っ白な純白のドレス…。

コツンコツンとヒールの音が廊下に響き渡る。

そっか…。もう今日が結婚式だったのか…。

わたしったら、リンリンにマッサージしてもらっている夢見てたのね…。


怜彬れいりん!待っておったぞ!ガハハハッ」


桐生きりゅうおじ様…すみませんお待たせして」


祭壇までのエスコートは、桐生きりゅうおじ様だったのね…。

真っ黒な燕尾服を着た桐生きりゅうおじ様にエスコートされて

わたしは真っ赤なバージンロードを歩いていく。

バージンロードの先には、真っ白な生地に銀色の糸で刺繍を施された

タキシード姿の雷覇らいはが立っていた。


怜彬れいりん…綺麗だ」


「ありがとう…雷覇らいは


そっと雷覇らいはが差し出した手に自分の手を重ねる。

二人並んで司祭様の前に立ち、誓いの言葉を述べる。


新郎雷覇らいは、あなたはここにいる雷覇らいはを、病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」


司祭様がにこやかに雷覇らいはに尋ねる。


「‥‥」


どれだけ待っても雷覇らいはの返事がない。

横を見上げると、雷覇らいはが真っ青な顔をしてがくがく震えだしていた。


雷覇らいは!!」


それからあっという間に意識を失い倒れ込んでしまった。

誰かが叫ぶ声、医者を呼べと呼ぶ声様々な声が飛び交う中で

わたしはただただ立ちすくんで雷覇らいはを見ていた。


「嘘…雷覇らいは?」


雷覇らいはは何も答えない。目を閉じたまま全く動かない…。

どうして?なんで?

昨日まで…さっきまであんなに元気だったじゃない…。


足元が急に不安定になり、ズルズルと地面に引き込まれている感覚がした。

ああ…。また…。


「【死神姫】の呪いだ!!()()死んだぞ!!」


「これで4人目だ…()()人が死んだ…」


ざわざわと人々の声が飛び交うのに、その言葉だけははっきりと耳に届いた。

【死神姫】。死を呼ぶ姫。呪い。

違う!!わたしのせいじゃない!!

わたしは泣き叫びながら耳を塞いでその場にへたり込んだ。


違う…。違う…。


どれだけ否定してもみんなが指をさして怒鳴り散らしてくる。


「お前のせいだ!!!」


「お前が殺したんだ!!!」


やめて‥。やめて…。

知らない…何もしていないわ!



‥‥‥‥!!!!!




「お嬢様…お嬢様…」


「う…リン…リン…?」


「大丈夫ですか?かなりうなされておられましたけど…」


「ゆめ…」


ゆっくり起き上がるとそこはいつものマッサージを受けている場所だった。

額には嫌な汗をかき髪の毛がべったりと頬に張り付いていた

良かった…。あれは…夢だったのね。

でもまだ心臓がドキドキしてる…。


「お嬢様!どうしたんですかそんなに震えて!寒いのですか?」


リンリンが慌ててタオルをかけてくれて肩をさすってくれた。

怖かった…。あれが現実だったら‥‥。

物凄く生々しい夢だった。結婚式の途中で雷覇らいはが死ぬなんて‥‥。


わたしは自分で自分を抱きしめてうずくまってしまった。

大丈夫…。大丈夫…。

何度も何度も自分にそう言い聞かせる。

雷覇らいはが死ぬはずない…。あんなに元気そうだったもの…。


それでも底知れない不安が押し寄せてくる。

怖い…。

このまま結婚してしまったら雷覇らいはは本当に死んでしまうじゃないか?

あの夢の様になってしまうんじゃないか?

どうしよう…。雷覇らいはが死んでしまったら…わたし…。

そう考えだしたら止まらなかった。


誰が保証できる?雷覇らいはは絶対に死なないと…。

今まで嫁いできた人達は皆…不運にも無くなってしまっている…。

それが今回は無いと…誰が言い切れるのだろう。

どこにもそんなものはない。父も兄も突然亡くなってしまった。

あっという間に…あっけなく…。


ああ…。わたし忘れてたわ…。

わたし…そう言えば【死神姫】って呼ばれていたわね‥‥。

かつての異名。呪いの言葉。

どうして忘れていたんだろ…。わたしは死を呼んでしまうのに…。

瞳を閉じると三人の男性が浮かぶ。


一人目の旦那様。炎覇えんはは1年と6か月たった朝…目を覚ますとわたしの横で冷たくなっていた。

二人目の旦那様は狩りに出かけると言って不慮の事故で亡くなった。

三人目の旦那様は祝いの席でお餅を喉に詰まらせて亡くなってしまった。


みんな昨日まで普通に暮らしていた人達だったのに…。

なんにも…悪い事なんてしていないのに…。わたしが嫁いだせいで‥‥。

それを思い出した途端わたしはそのまま意識を失ってしまった。



最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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