173.二人で一つ
少しのドキドキとワクワクで足が浮き立つ感じがする。
雷覇…。今忙しいかしら?
さっきラカンと話していたら急に彼の顔が見たくなり
わたしは急ぎ足で、彼のいる執務室へ向かっていた。
「雷覇~。いる~?」
「怜彬!どうしたんだ?」
嬉しそうな顔でわたしに駆け寄ってくる雷覇。
わたしも傍にいき彼に抱き着いた。
「ちょっと…近くまで来たから顔を見に来たの…」
「そうか!嬉しいよ…俺も会いたかった…」
そう言ってちゅっとおでこに口づけされた。
うあー…。ひさしぶりだな!この感じ!!
最近はすっかり甘々フェロモン攻撃はなりを潜めていたから新鮮だ…。
「忙しくないならちょっと息抜きでもしない?」
「ああ。もう少しでひと段落するからちょっと待ってくれ」
「わかった!」
わたしは雷覇の仕事が終わるまで執務室のソファで待つことにした。
ここに来るのも本当に久しぶりね~。
以前は黒綾殿と一緒によくここで仕事してたっけ…。
「あっ!お姫様じゃん」
「サイガ!久しぶりね」
「そうだな。あんまり話せなかったよな~。俺、お姫様に会ったらお礼を言いたいって思っててさ♪」
「お礼?わたし何かしたかしら?」
「したさ!それはそれは大きな偉業を成し遂げたね!」
「えっ?」
そんな大層な事した記憶ないけどな…。
むしろ最近まで誘拐されて皆に迷惑かけてたくらいだけど…。
ニコニコしながらこちらを見てくるサイガ。
いつにもまして笑顔が眩しい!ううう。イケメンの笑顔!最高ね。
「雷覇と結婚してくれてありがとうな!」
「はぁ…?」
「おい!サイガ。変な事言ってんな!」
「うるさいな~。お前の結婚の為にどれだけ俺が犠牲になったと思ってんだ?」
「何も被害なんて出てないだろ?むしろリンリンといい感じなんだろ?俺に感謝しろ!」
「はぁ?!お前な~。それを差し引いても足りないぞ!」
「十分だろ。厚かましいぞ」
「雷覇…お前な~。俺が来る日も来る日も、贈り物の手配してお姫様とのやり取りを補佐して、寝る間も惜しんでお前の仕事手伝ってきたの…忘れたとは言わせないぞ」
あらー…。これは雷覇が悪いわね!
サイガそんなにいろいろ見えないところでフォローしてくれてたんだ…。
これはサイガには何かお礼をしないといけないわね!
「だからお姫様!本当にありがとな!おかげでやっとこの地獄から解放されるよ!」
「いえいえ…。ごめんねサイガ。色々大変な思いをさせて…」
「怜彬が謝る事はないぞ!」
「サイガにはわたしから何かプレゼントしないとね!何か欲しいものはある?」
「えっ?いいのかお姫様!」
「勿論よ!何でも言って」
「それなら…リンリンに長期休暇だしてやってくれないか?二人でゆっくり過ごしたいんだ」
「いいわよ。結婚式が終わったらひと段落するし」
「やった~!まじでありがとな!お姫様!!」
雷覇を無視してわたしはサイガとの約束を交わした。
リンリンに休んでもらうくらいお安い御用よ!
「ついでに、虹禀殿にお願いして、春魏国の温泉旅館を手配するわ」
「うそだろ…お姫様…まじで神!!」
「いいのよそれくらい。サイガにはこれからも頑張って欲しいし…リンリンの事もお願いしたいし」
「はぁ…。雷覇には勿体ないくらいの器のでかさだな。さっすがお姫様!」
「ふふふ…。ありがとう。じゃあまた決まったら連絡するわ」
「おう!ありがとうな」
久しぶりにリンリンにはゆっくりして欲しい。
前に言った温泉旅館なら、人目を気にせずゆっくりできるだろうしね。
わたしもまた行きたいな~♡温泉♡
サイガとリンリンも順調に仲良くなっているみたいで良かった。
リンリンは何も言わないけど、きっとサイガの事は好意を持ってるはず。
一緒に二人で何度も出かけてるもんね♪
「怜彬…。サイガにあそこまでしなくていいんだぞ?」
「雷覇ってば…。お世話になってるんだから何かしてあげないと」
やっと雷覇の仕事がひと段落し今は二人で庭園を歩いて散歩していた。
「それでもだな…」
「雷覇!あんまり文句言うと怒るわよ」
「う…。わかった…もう何も言わない…」
「よし!じゃあこの話は終りね♡」
「ああ…」
雷覇ってば~。本当にわたし以外には心狭いんだから!
毎回思うけど、サイガに対してちょっと厳しすぎない?
雷覇の従者とはいえ色々やって貰ってるなんだから感謝しないと。
「そう言えば、四季国の神殿を利用する許可が出たぞ」
「ほんとうに?すごいわね…」
「ああ。でも相手方も喜んでくれていた。最近ではあまり利用する人も少なくなっていたそうだから」
「そうだったの…。それならお役に立てて良かったわ」
「神殿の中には生花をたくさん飾ってもらって、この庭みたいにしようと思ってるんだ!」
「素敵ね!お花に囲まれて式を挙げるなんて…」
「喜んでくれてるか?」
心配そうな顔で雷覇がわたしの顔を覗き込んできた。
眉毛を下げて少し子供っぽい…。ふふふ…かわいいな~。
「ええ。とっても嬉しいわ!」
「そうか!…良かった…」
雷覇がぎゅっと抱きしめて嬉しそうに何度も良かったと呟く。
そんなに嬉しくなさそうに見えたのかな?わたし…。
サイガにはあんなに強気なのに、わたしの時にはこんなに弱気になって…。
未だに彼はわたしがどう思うか心配になるそうだ。
「雷覇が一生懸命、二人の結婚式の準備してくれているのは知ってるしわたしも楽しみにしてるから…」
「ああ。ただ…俺だけはしゃいでるように感じてな…」
「それはちょっとあるかも…。勝手に色々決めちゃうし」
「う…。すまん…」
「五神国の首脳陣を招待するって聞いてないし」
「あ…ああ。言ってなかったな…悪かった」
「もう~!次からはちゃんと前もって相談してね!」
「わかった。きちんと怜彬に話すよ」
「うん。これからは夫婦になるのよ?二人でひとつなんだからね?」
「っ…!!!ああ…そうだな…」
嬉しそうに頬を染めてこちらを見つめる雷覇。
わたしは思わず彼の頬にそっと手を触れた。
「怜彬から…誘ってくるなんて珍しいな…」
「えっ?別に…そんなつもりじゃ…」
頬に添えていた手を引っ張られて雷覇の顔がぐっと近くなった。
急に…これは反則よ!!!
恥ずかしい!と思った瞬間、雷覇に唇を奪われ重ねられていた。
「んっぅ…!」
深く何度も何度も重ね、何度も何度も舌を絡ませる。
ああ…頭が蕩けそう…。
久しぶりに味わう彼の唇はとても熱く、とても甘く感じた。
「はぁ…雷覇…好き…」
「っ…!怜彬…それ以上俺を誘うのはやめてくれ…」
「え…?」
「そんな蕩けた顔をして…好きだと言われたら…今すぐにでもベットに行きたくなる…」
「あ…。わたし…そんなつもりじゃなくて!」
「知ってる…だから今は見逃してやる…」
「んっ‥‥」
雷覇に言われた言葉を何度も頭の中で反芻する。
うわー…。恥ずかしいよ~。
でも…今はそれどころじゃない。
雷覇に抱きしめられながらする口づけは逃げ場がない。
こんなにドキドキするのは息が苦しいからだろうか…。
それとも抱きしめられているからだろうか。
わからない…。
嵐のごとく雷覇に唇を攫われた後でようやく解放された。
「ふぅ…」
「大丈夫か?怜彬」
「うん…でも今だに慣れないわ…」
「そのうち嫌でもなれる…結婚したら…な?」
「ううう…お手柔らかにお願いします…」
「はぁ!ああもう…怜彬は…何でこんなに可愛いだ…」
そう言ってまた思いっきり抱きしめられた。
そうか…夫婦になったらこれ以上の事するのか…。
そうよね…夫婦だもんね…。
うーん…。なんだか急に不安になって怖くなってきたかも…。
体験した事ない事だけに自分がどうなるのか分からないからだ。
雷覇の事だから…わたしが嫌がることはしないと思うけど…。
でもさっきの口づけから察するに、相当な甘々フェロモン攻撃が待っていそうだった。
慣れる日なんてくるのかしら…?
むしろ一生慣れないのかもしれない。結婚式まであと1ヶ月。
ううう…。ドキドキしすぎて憂鬱だ!
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