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171.寂しがってる暇はない!

「…それじゃあ…お兄様は死なないんですね…」


「ええ。3年間のお勤めを果たせばキーサ帝国にも帰れるわ」


「…良かったです…」


小さな体を震わせながら、ポロポロと涙を流すシャチー。

わたしはアシュラ王子の今後の処遇を説明していた。

無償で3年間秋唐国しゅうとうこくの為に働く。

これが五神国ごしんこく会議で決まった内容だった。


「それに月に3回までアシュラ王子と面会できるわ」


「本当ですか!!お兄様に会えるんですね」


「そうよ。だから…今後の事なんだけどシャチーはどうしたい?」


「私はお兄様の傍にいたいです」


「分かったわ。じゃあ、秋唐国しゅうとうこくへ行くという事でいいのね?」


「はい…。怜彬れいりんお姉様と離れるのは寂しいですけど…」


「シャチー…わたしも寂しいわ。…でも全く会えなくなるわけじゃない。わたしからも遊びに行くわ」


「はい!お待ちしております。あと…お手紙もいっぱい書きます!」


涙を拭きながら笑顔を見せたシャチー。

シャチーが秋唐国しゅうとうこくへ行きたいと言っている以上は尊重してあげたい。

珀樹はくじゅ殿が明日戻ってくるから、その時に一緒に秋唐国しゅうとうこくへ行ってもらおう。

…でも寂しくなるのはわたしも同じね…。

わたしは、シャチーと話ながらそんな事を考えていた。


短い期間だったけどシャチーと過ごす日々は本当に楽しかった。

毎日たくさんおしゃべりをして、お庭を世話したりお人形遊びをしたり‥‥。

まるで妹のような…娘のような…気分を味わえた。

シャチーと出会えたことはわたしにとっては宝物だった。

わたしはシャチーの頭を撫でながら、過ごしてきた日々に思いを馳せた。


怜彬れいりんお姉様はいつ…雷覇らいは国王様と結婚するのですか?」


「えっ?」


「皆いってました。やっと結婚式を挙げて正式に夫婦になれるって!」


「シャチー…よく知ってるわね」


「大好きなお二人の事ですもの!それに、色んな人が話してましたし」


シャチーは本当に8歳なのかしら…。

時々、彼女は大人のような口ぶりになるからドキリとする。

でも…いまだにわたしの事は妖精さんと思っているから、純粋に聞いているだけなんだろうけど。


雷覇らいはの話では1か月後にあげるそうよ」


「わぁ…。怜彬れいりんお姉様の花嫁姿…楽しみです」


「ふふふ。シャチーもぜひ結婚式には参加してね」


「はい!必ず来ます」


「ありがとう。シャチー」


「えへへへ…」


シャチーはふわふわとした髪を揺らしながら、わたしに抱き着いてきた。

ふふふ。ほんとうにかわいいな~。

その後は二人で夜になるまで思いっきり遊んで過ごした。



「シャチ王女はもう寝たのか?」


「ええ。遊び疲れてたみたい。もうぐっすり寝てるわ…」


雷覇らいはが仕事が終わり別邸まで戻ってきた。

わたしは眠っているシャチーの傍で、彼女の寝顔を見ていた。

雷覇らいはもわたしの隣座ってシャチーの頭を撫でていた。


「明日…行くんだな」


「ええ。アシュラ王子の傍に居たいって…」


「そうか…寂しくなるな」


「そうね…」


「また好きな時に会いに行けばいい」


「ありがとう…そうするわ」


雷覇らいはがわたしの頬に触れて口づけした。

彼の手はとても温かかった。きっと私を慰めてくれているんだろうな…。


「そろそろ戻ろう」


「そうね…」


雷覇らいはに促されてわたしは部屋を出た。

明日でシャチーともお別れ…。せめて彼女が向こうで寂しくないように沢山お土産を持たせよう。

そう決めて、わたしは夜遅くまで雷覇らいはと一緒に荷造りをしたのだった。



怜彬れいりんお姉様…雷覇らいは国王様!行ってきます!」


「シャチー気を付けてね…風邪ひかないようにね!」


「よく食べて良く寝るんだぞ」


「はいっ!」


わたし達はシャチーの見送りの為お城の外に出てきていた。

彼女に昨日荷造りした荷物を渡して別れを告げた。


珀樹はくじゅ殿。シャチーのこと宜しくね…」


「はい。お任せください。怜彬れいりん様」


珀樹はくじゅ殿が一緒なら大丈夫!

ここは笑顔で見送ろう!わたしは笑いながら大きく手を振った。

シャチーも場所の窓から身を乗り出して手を振ってくれた。

しばらく姿が見えなくなるまではわたしはシャチーを見送った。


「行っちゃった…」


「そうだな…」


雷覇らいはがわたしの肩を抱き寄せる。

彼の傍でシャチーが向こうで元気に過ごすことを祈った。


「いい子だったな。シャチ王女は…」


「ええ。とても可愛くて…素直な子だったわ…」


話しているとポロリと涙がこぼれてきた。

ああ…。やっぱりわたしシャチーと一緒に居たかったのね…。

胸が締め付けられていたい…。

目を閉じれば、沢山のシャチーとの出来事が頭の中を駆け巡る。


怜彬れいりん…大丈夫だ。今生の別れじゃないんだ」


「うん…」


わたしは雷覇らいはにぎゅっと抱き着いた。

彼に抱きしめて欲しかった。そうすればこの寂しい気持ちも少しは楽になるだろうから…。

雷覇らいはのぬくもりを背中で感じながらシャチーの笑顔を思い出していた。



見送った後、お城の中へ戻ると寂しさに浸る間もなく虹珠こうじゅ殿達に掴まった。

結婚式について話し合いをしたいと言われたためだった。

雷覇らいはは仕事がある為、執務室へ行ってしまった。


怜彬れいりんちゃんの希望も聞いておきたいと思って~♡」


「ありがとうございます。虹禀こうひん殿」


「ドレスはマダムベリーに依頼しているそうだな」


「はい。できるだけ身軽になるようにお願いしています」


「なるほど…他に何か希望はあるか?」


叔母上様達と一緒に応接室で打ち合わせを行う。

とてもありがたかった。シャチーの事でちょっと落ち込んでいたけど

こうして色々話をしていたら気が紛れる…。


「そうですね…わたしはあまり豪華な式はちょっと…」


「確かに疲れるわよね~」


「時間も…長くなりますしね」


「だったら、式は身内だけで行い披露宴を豪華にするのはどうだ?」


「良いわね~♡お色直しもできるし♪」


「それなら…会場を抑えないとですね…」


おおう…。結局は豪勢な感じになるのね…。

まぁ式だけでも控えめにしてくれるだけいいか。

楽しそうに打ち合わせしている叔母上様達を見ているととても嫌とは言えない。

それなら…。わたし自身も楽しまないとね!


「披露宴では、わたしが手掛けているリョクチャ事業の品をふるまいたいです」


「それはいい考えだ。引出物で渡してもいいだろうな」


「そうね~♡宣伝になるしいいんじゃないかしら」


「それなら、引出物のリストに入れておきましょう…」


「ありがとうございます!」


やった~!!出席者の人達にも宣伝できるのはメリットがかなり大きい。

広告費がいらないのだから、費用も抑えつつ最大限の告知にもなるだろう。


「それから、披露宴に飾る花なんですが…冬條とうじょう殿が作ってくれた枯れないお花にしたいんです」


「ああ。あのガラスケースに入っていた花か」


「あのお花とっても綺麗よね~♡」


「さっそく冬羽国とううこくへ連絡して手配しましょう」


「そう言えば…四季国しきこくのどこで結婚式をするんですか?」


「神殿があるからそこで行えるよう調整しているところだ」


「おお…。いいんですかそんな…神聖な場所で…」


「問題ない。元々は神々に祈りをささげる場所だからな」


「なるほど…」


四季国しきこくにある神殿は、昔は神々との交流の場に使われていたそうだ。

巫女が祈りをささげるとそれに神様が答えてくれていたという伝説を聞いたことがある。

今は時代も変わり神様の声は聞こえないが、祈りをささげる場所として利用されている。

披露宴の場所は、虹禀こうひん殿の旦那さんのつてで大きな旅館で行われることになった。

ここも昔からある老舗の旅館で、神殿と同じくらい歴史が古い。


「それにしても!怜彬れいりんちゃんの花嫁姿…楽しみね~♡」


「そうだな!美しい花嫁になるのは間違いない」


「沢山…写真を撮らないとね…」


「ううう。恥ずかしいんでそんなにはいらないですよ…」


「何を言っている!写真があれば後から思い返せるではないか」


「あ…確かにそうですね」


「歳を取ると余計に思うわよね~。思い出は沢山残したいって」


「写真があれば…たくさん記憶しておけますしね…」


そっか…。そう言う考え方もあるのね…。

わたしはただただ注目されるのが嫌で写真なんて!って思っていたけど

虹禀こうひん殿が言うように、自分が歳をとっておばあさんになったときに

見れれば楽しいのかもしれない…。雷覇らいはと二人で…。


それから数時間かけて虹珠こうじゅ殿達の結婚式の話を聞いたり

結婚式と披露宴の打ち合わせをした。

みんなそれぞれ沢山の思い出を話ししてくれた。

虹珠こうじゅ殿は旦那さんが気弱で式の途中で気を失って大変だったこと。

虹禀こうひん殿は、式の中でたくさんの男性に囲まれて式を止められて大変だったこと。

二人の話はインパクトが凄かった。

やっぱりこの二人は昔から破天荒な人達だったのね…。


夏輝かき殿は意外にも式は挙げておらず、身内だけで食事会で済ませたそうだった。

旦那さんも式を挙げることが嫌だったそうで二人で話し合いそう決めたそうだ。

それにしても…叔母上様達の旦那様ってどんな人たちなのかしら…。

彼女たちと結婚できるくらいの人だ相当な精神力の持ち主に違ない。

結婚式には来てくれるそうだから会えるのが楽しみだ。


最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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