169.異例の五神国会議~話し合い~
「本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます」
「こんな事は五神国が建国以来初めての出来事だな!」
「いやはや…。長生きしてみるものですなふぉっ…ふぉっ…」
「ではさっそく、今回の議題について話し合いたいと思います。キーサ帝国のアシュラ王子が行ったことについてです」
怜秋が透き通った大きな声で五神国会議に出席しているメンバーに話しかけた。
実に堂々とした立ち姿だった。
ほんとうに…こんなに立派になって…。お姉ちゃん、感動で泣いちゃいそうだわ!
今日は待ちに待った五神国会議の日。
キーサ帝国のアシュラ王子の今後の処遇を決める大事な日だった。
五神国のそれぞれの首脳が出席し方針を決めることになっている。
怜秋から右に座っているのは冬條殿、その父冬玄殿。
さらにその右側には春魏国の国王でマーリンの父に当たる菊春殿
そしてその息子の鮫春殿だ。鮫春殿はマーリンのお兄さん。
つぎに水覇殿と雷覇。そしてわたしと言った順番で和になって座っている。
怜秋が一通り今回の事件の経緯を説明し終えると、冬玄殿が口を開いた。
「ふぉっふぉ…。なんとも大それたことをしてくれたのぅ…。はてさてどうしたものか…」
「直ちに打ち首にしてしまえばよかろう!怜彬殿を誘拐した罪は重い!」
そうキッパリと告げたのは、菊春殿。
彼は真面目過ぎるがゆえに融通が利かないのが難点だった。
「菊春殿、打ち首にしてしまってはキーサ帝国と戦争になりかねない…もっと慎重に検討するべきです」
そう言って冷静に話を進めようとする水覇殿。
やっぱりこう言う場に彼がいると安心するな~。
「僕も水覇殿の意見に賛成です。アシュラ王子は罪を認め、どんな罰も受けると言って反省しています。秋唐国としてはできる限り穏便に済ませたい」
怜秋も、淡々とした様子で意見を述べた。
落としどころが難しい所よね…。
軽くし過ぎると五神国の威厳が損なわれちゃうし…重くし過ぎると戦争になるかもしれないし…。
「だったらどうしろと言うのだ!甘い処分では五神国が舐められてしまうぞ」
「怜秋殿は…どのような処分をお考えかな?」
やんわりと優しい口調で冬玄殿が怜秋に話を振った。
上手いかわし方だった。菊春殿が熱くなってしまっては
冷静な会議にならない。その前に話の腰を折ってしまって流れを変えてしまった。
さすがだわ…。あのおじいちゃん…。
「僕は、5年間幽閉したのちにキーサ帝国に返すのがいいかと考えてます」
「なるほど…。あくまで秋唐国で…管理されるおつもりですな…」
「そうするのが妥当だと思ってます」
「冬羽国に来てもらえれば有効活用できるがのぅ…ふぉっふぉ…」
長い髭を撫でながら穏やかに話す冬玄殿。
彼が言いたいのは冬羽国に来れば実験体として利用できるという事だろう。
冬羽国では日々、新しい新薬の開発が進んでいる。
いきなり市場に出すことはできなからまずは被験者に試してその結果で改善改良を行っている。
被験者はほぼ罪人だという事を以前、冬條殿から聞いたことがある。
例外的に奴隷を買ったりしている時もあると言ってたっけ?
なんだかんだ言いながら冬玄殿は怖いな~。
ニコニコしながらさらっとああいう事言っちゃうんだもんな~。
わたしは思わず目があってしまって、にこやかに返した。
「僕も怜秋殿の意見に賛成だ。今回の事件は秋唐国で起きた事。あくまで秋唐国の法律で裁いた方がいいだろう」
「俺も水覇の意見に同感だ」
雷覇と水覇殿が怜秋に味方してくれたことにより
冬玄殿の発言はなしになった。
良かった~。
でもな~…。ただ単に幽閉するだけって勿体ない気もするのよね…。
アシュラ王子って性格には難ありだけど、頭もいいし回転も速いから頭脳労働とか向いてそうだけどな~。
しかもうちは人材不足…。
これから電力事業にも力を入れていきたいし、他の事もやっていきたい。
わたしが秋唐国にいられなくなった以上、仕事をこなせる人が必要だった。
「怜彬殿はどのようにお考えか!当事者であるそなたの意見も聞きたい!」
「えっ?わたし…ですか?」
いきなり、菊春殿に話を振られてしまった…。
皆が一斉にこちらを見て、立たずを飲んで待っている。
うーん…。何か言わないとまずよね…。
わたしは思い切ってさっき考えていたことを話して見ることにした。
「わたしは、ただ幽閉するだけでは勿体ないと考えてました」
「ほう?それはどういう意味ですかな!」
「えーと…。アシュラ王子は凄く頭がいいんです。とても先のことまで考えて計画し行動に移すことが出来る人です」
「だから今回の事件が起きたわけだな」
「はい、ただその頭脳をよりよい方向へ利用することが出来れば秋唐国にとってはメリットしかないと思います」
「ふぉっ…ふぉ…どのように利用されるのかな?」
「あくまで思い付きなのですが、秋唐国で無償で働いてもらってはどうでしょうか?」
「なんだって?!」
「彼は罪人だぞ?」
みんなびっくりして驚いてしまった。
まぁ…確かにそうよね~。普通に考えたらおかしな話なんだけどね…。
でもシャチーの事もあるし、わたしはあまり暴力的な事はしたくなかった。
「ただ幽閉するだけでは費用も掛かります。うちにそんな余裕はありません。だったら無償で秋唐国に尽くしてもらったらいいんじゃないかと…」
「ふぉっ…ふぉ…怜彬殿は面白ことを考える方ですな…」
「なるほどね…。飼い殺しにするのか。悪くないですね!」
水覇殿!言い方!
まぁ…端的に言えばそうなるんだけどね…。
「なるほど!無償で働けば罪滅ぼしになるというお考えか!実に聡明な判断だ」
「ありがとうございます。菊春殿」
「僕は怜彬殿の意見に賛成です」
「冬條殿…」
真っ直ぐに手を挙げて、冬條殿がわたしの意見を後押ししてくれた。
冬條殿も…立派になって…!!
「僕も怜彬殿の意見に賛成だ」
「俺もだ」
水覇殿と雷覇も挙手して賛成してくれた。
あとは…冬玄殿のだけどどうかな?
「ふぉ…ふぉ…新しい試みで…良いかもしれんの‥‥争いを生まず五神国の為にもなるからの…」
「でしたら…。アシュラ王子は秋唐国で働かせて良いのですね?」
「無論じゃ…。どのような結果になるのか楽しみですな…ふぉっ…ふぉっ…」
「ありがとうございます。冬玄殿」
「では!アシュラ王子は無償で秋唐国の為に尽くす!これで決まりだな」
「それなら、細かい所を詰めてしまいましょう」
「働く期限やどこまでの権限を許容するのか。あとはキーサ帝国に対する説明もどうするかだな」
やった!優秀人材を無料で確保できたわ!
わたしは心の中で万歳した。
これならアシュラ王子とシャチーを引き離すことをしなくていいし
秋唐国にとってもメリットになる。
その後わたし達は3時間ほどかけて、細かいすり合わせを行った。
アシュラ王子が秋唐国で無償労働する期間は3年間。
対外的には友好活動の一環として、秋唐国に滞在し文化共有をするというものだった。
衣食住は保証し、仕事の対価は一切なし。
シャチーとの面談は月に3回までとなった。
シャチーについても同じように秋唐国に滞在し知見を広めて学び
キーサ帝国との友好の懸け橋になってもらおうという事になった。
話し合いでは大きく揉めることもなく話し合いが進んでよかった!
わたしは満足する結果を得られてホクホクとしていた。
シャチーにこのことを伝えたら喜ぶだろうな!
彼女が泣いて喜ぶ姿が目に浮かぶ。
普段は態度には出さないけど、きっとお兄さんの事は気にしているはず…。
彼が死ぬことなく一緒に過ごせるならシャチーも安心することが出来ると思った。
「あと…俺からも皆に報告したいことがある。少しいいだろうか?」
話し合いに一区切りがついたタイミングで雷覇が話を切り出した。
「どうされたのかな?雷覇殿!」
「ふぉっ…ふぉっ…」
「俺と怜彬の結婚が決まった!詳細は追って連絡するがぜひ皆にも結婚式には出席して欲しい」
「なんと!!それはめでたい!!」
「おめでとうございます!雷覇殿。怜彬殿」
「ふぉっ…ふぉっ…。大物二人が結婚とな…。ますます未来が楽しみじゃのう…」
「ありがとう!これからは怜彬と二人で、五神国をよりよい方向へ導いていくと誓おう!」
皆からお祝いの言葉を掛けられてちょっと照れくさかったけど
喜んで貰えてよかった~。
雷覇も皆に宣言できてとても満足そうな顔をしていた。
それにしても…五神国の首脳陣を招待だなんて…。聞いていない。
これは後でお説教ね!
何はともあれ、五神国会議はこうして無事に終了したのである。
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