【番外】雷覇《らいは》の憂鬱2
ひさしぶりの雷覇目線です(^o^)
雷覇目線
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無意識のうちに彼女を抱きしめていた。すこし体がこわばっているけど、嫌がってる感じではない。
「怜彬。大丈夫だ」
そういいながら、俺は怜琳の頭をなでる。思いつめて何かを話そうとしている怜琳は今にも折れそうな感じがした。彼女の呼吸がどんどん浅くなっていく。
それほど思いつめたのだろう…。
「無理に話す必要はない。ゆっくりでいい。落ち着いて呼吸をしろ」
「でも…。早く言わないと雷覇殿が…」
「俺のことは気にするな。ゆっくり深呼吸して」
細い…。考えれば当たり前だ。彼女は女だ。華奢な体で目一杯何かを溜め込んでいる。
それが何かがはっきりとはわからない。だから今は、無理しなくていい。自分のことだけ考えろ…。
俺が傍にいる。支えるから…。背中をさすりながら彼女の呼吸が整っていくのを感じた。
「らい…は…。ご…めん…な…さい」
「怜彬…。俺は大丈夫だ。何があっても…」
…。怜琳の静かな呼吸音が聞こえてきた。
どうやら眠ってしまったらしい。俺は彼女を横抱きにして、顔を覗き込んだ。
少し目の下に隈ができている。ゆうべ眠れなかったのか…。
彼女の頬に触れる…。長い睫毛も、かわいい唇も全部愛おしい。
このまま、怜琳を自分の寝室まで連れて行きたい衝動を抑えて
俺は彼女を抱きかかえて寝室まで連れて行った。
怜琳が目が覚めたと聞いて彼女の部屋向かった。
今日は彼女に渡したいと思っていたものを用意していた。喜んでくれるといいのだが…。
「怜彬。体調はどうだ?」
「雷覇殿。昨日はすみません…。わたし寝てしまって」
遠慮しがちに彼女が言う。昨日話している途中で寝てしまっている事を気にしているんだろう。
俺からすれば抱きしめられただけで、嬉しかったのだが。彼女はそうではないようだ。
「気にするな!長旅の疲れが出たんだろう。」
「ありがとうございます」
「もう体調がいいなら、一緒に来てほしい所があるんだが」
「わかりました。すぐに準備しますね!」
「ああ。隣の部屋で待ってる。服装はなるべく軽装で頼む」
この国の衣装をオーダーメイドで作ろうと考えていた。
今回彼女のために呼び寄せたのはこの国一番のデザイナー。マダムベリーだ。
昔から、兄弟揃ってよく衣装を作ってくれている信頼のできる人物だ。
「今日は怜彬の服を作ろと思ってな!」
「えっ?わたしのですか??」
「ああ。せっかく夏陽国に来たんだ。こちらの国の服を作ってもいいんじゃないかと思ってな!!」
「はぁ…」
どうやら、怜琳はびっくりしているようだった。
ふふ。驚いている顔もかわいいな。彼女に毎日会える。
たったそれだけで、心がこんなに弾む。
「今日はこの国一番のデザイナーと針子にも来てもらった。怜彬の好きなデザインで作ってもらうといい」
「すっ…すごいですね…ありがとうございます」
「お初にお目にかかります。マダムベリーと申します。秋唐国の傾国の美女!宝石の妖精とまで謳われた、怜彬様のお召し物を手掛けることができて、幸せでございますわ~」
「今日はよろしくお願いします。この国の服のことは何も知らないので色々教えてください」
「もちろんですとも!!姫様ならどんなお召し物でも、とってもお似合いになられますわ~」
「うむ。怜彬なら何を着てもかわいく、美しいだろう」
「まぁ。雷覇様ったら。お熱いことです事~。ふふふ~。あっ!そういえば!わたしくし読みましたよ!」
「えっ?何をですか??」
「姫様と雷覇様のラブロマンス小説!!」
「ぇぇえ!!!」
まぁ…。そりゃあ驚くよな。秋唐国しか販売されていないのを
わざわざ取り寄せて、こちらで販売し広めたのだから。
もちろん怜琳には内緒で。だ。
こういう大衆文化は彼女の存在を広めるには丁度いい。
とくに、夏陽国は国土が広い。
全国民に知らせるには、物理的に無理がある。口伝えで広めてもらうのが一番だ。
「もう~。とっっても素敵でしたわ~。お二人が結ばれるために様々な困難に立ち向かっていく。はぁ…。素敵ですわ~」
「ああ。あれは俺も読んだぞ!なかなか面白い発想で楽しかったな!!」
「だが、しょせんは小説だ。本物の怜彬に勝るものはない」
「ふふふ。さようでございますね~。愛されておりますね!姫様!!」
俺と怜琳の小説は分かるが、俺と怜秋殿の小説も、流行っていることは解せない…。
「どのデザインも怜彬によく似合っていた」
「ありがとうございます。もう何を着ていたのか忘れてしまいました」
一通り衣装の手配をすませ、一段落したところで。二人でお茶をすることにした。
全部で10着作ることになり、そのうち5着は滞在中に届けてもらうよう手配した。
彼女に着てもらう日が楽しみだ。怜琳は、少しぐったりしているようだった。
あれだけ試着したのであればむりもない。
…。今度は程々にしよう!!
ひとつだけ気がかりなのは、彼女が熱心に見ていた、青色の生地。…。
怜秋殿の瞳の色とよく似ていた。
彼女の生地を見つめる目は明らかにほかのと違っていた。大事なものを見るような目だった。
胸が焼け焦げる感じを抑えて、俺は努めて明るく話す。
「ハハハ!すまない。なんでも似合うのでついつい、着せ替えをさせてしまったな」
「ほんとですよ~。もうクタクタです!!」
彼女がぷうっと頬を膨らませて怒る。っ…!!かわいいな。なんでそんなかわいいんだ?
彼女は俺が好きだって言うことを知っているんだろうか?
クルクルと変わる怜琳の顔は、ずっと見ていても飽きない。もっと触れたい。
もっと近くにいたい…。そんな欲が湧いてくる。
「ふふ。怒っている怜彬もかわいいな。食べてしまいたくなる」
「食べないでください。おいしくないですよ!」
「それは食べてみないとわからないぞ?」
俺は試してみたくなった。彼女がどんな反応をするのか。手の甲にそっと口をつける。
「ひゃっ!!」
「反応もかわいいな」
「怜彬はおいしいぞ…ほら…」
顔を真赤にして、照れている怜琳は、本当に食べたくなるほど綺麗だった。
「雷覇殿…。離してくださいっ!!」
「ふふふ。残念だ」
ふー、危なかった。本当に襲ってしまうかと思った。
日頃から精神を鍛えていて、本当に良かったと思った瞬間だった。
試した結果、彼女は驚きはするが嫌がってはいないということだ。
前に抱きしめたときも拒否されている感じはしなった。
だから、俺は全く嫌われているわけではないだろう。
せっかく彼女がこの国にまできてくれて、邪魔者はいないんだ…。
これを逃すはずがない。遠慮なく行かせてもらう。もう我慢はしないと決めた。
次の日から俺は、事あるごとに怜琳に対して接する機会を多くした。
驚いたり、ちょっと怒ったり、彼女の反応が嬉しくてついついかまってしまう。
そんな怜琳を独り占めできたら、どんなに幸せだろう…。
今はまだ、心を開いてくれていない。
彼女が心を開いてくれたら思いっきり愛そう。今までできなかった分も含めて…。
マダムベリーの仮縫いの衣装合わせも終わり、今日は中庭でお茶をすることにした。
今日は彼女が選んでくれたセイロンティというお茶だった。
色は濃いが渋みも少なく、スッキリとしていて美味しい。
彼女とこうして二人で一緒にいられるのは本当にありがたかった。…。
ふいに彼女の視線が気になった。
「怜彬。何か気になることでもあるのか?」
「あ~。芝生でゴロゴロしたいな~って見てました…」
「なるほど!!いいな!そうしよう。すぐに準備させよう!」
彼女の、望みは大小関わらず叶えてあげたい。
彼女と日差しの下で穏やかに過ごせるのは俺にとっても嬉しいことだった。
「へっ?!」
「…いいんですか?」
「もちろんだ!怜彬が寝てくれたら芝生も喜ぶだろう!!」
「ありがとうございます!雷覇殿!すっごく嬉しいです!!」
思いっきり、不意打ちで怜琳は眩しい笑顔をこちらに向けてきた。
やばい…。かわいい。抱きしめたい!!!一呼吸をおいて作り笑いをする。
「…っ。ああ。喜んでもらえて、俺も嬉しい…」
「怜秋も一緒だったらなぁ…」
「ふーん。怜秋殿もな…」
彼女が芝生を見つめながら、ポツリと呟いた。
無意識に言っているようだったが、無意識で出てくるということは常にその相手のことを考えているということだ…。
なんで俺といるのにそうなるんだ?彼女の中での彼の存在はそんなに大きいのか…。
「怜彬は…。本当に弟のことが好きなんだな…」
「はいっ!!大好きです!!かわいくて、綺麗なラピスラズリの瞳に、サラサラな黒髪は天使かって思います!!おまけにとっても姉思いのいい子なんです!!」
ああ。聞くんじゃなかった。俺は言った後ですごく後悔した…。
まさかこんなに熱烈に弟のことをアピールされるとは!!
聞いていて全く面白いものではなかった。
むしろ彼女の彼に対する思いが伝わってきてイライラした。
「それに10歳も年が離れているせいか、わたしもついつい面倒を見てしまうんです…。あの子は物心ついたころから父も母もいませんでしたから…。わたしが母親代わりみたいなところもあるんです」
あ…。またあの目だ。遠くを見ているような、何かを思い出しているような目…。
それは目の前にいる俺じゃなく、怜秋殿の事だろう…。
「まぁ・・。10歳も年が離れていたら可愛がるのは無理ないが…」
「ほんと~に!!ほんとうに!!怜秋は可愛いんですよ!小さい頃はわたしをお嫁さんにするって言ってきかなくて…」
ブチッッ!!!「なるほど…。よくわかった」
理性の糸が切れる感覚がした。これ以上聞きたくない。
彼女の口からたとえ弟であっても男の名前を聞くのも、彼女が意識が他のことに向けられることも。耐えられなかった。
俺はためらわず彼女を押し倒した。
「えっ?…きゃっ…」
「あの?雷覇殿?」
「俺といる時は他の男の話をするな…」
少しでも俺に意識を向けさせたかった。彼女のアメジスト色の瞳を見つめる。
彼女も俺を見返してくる。こんな時でも目を逸らさない彼女が好きだ。
相手に怯むことがない強い女性だ。だから惹かれる…。どうしようもなく…。
だがそんな彼女が目を向ける相手は俺じゃない…。
そんな事俺が一番良く知ってる。彼女をよく見ているからだ。怜琳に惹かれる。
近づきたい。でも近づけば、近づくほど思い知らされる。彼女の中に俺はいないことを…。
「ホカノオトコ…?」
「男って言っても弟ですよ。しかもまだ怜秋は12歳ですし」
「怜彬は何もわかっていない…」
本当に何も分かってない!!わざと言っているのか?それとも無意識なのか?
俺が怜秋殿に嫉妬しているということを…。どうしてわからないんだ?
「わかってないって何をですか?」
「何で俺が他の男の話をするなと、言うと思う?」
「何でって…。」
「嫌だからだ。たとえ血の繋がっている弟だとしても、怜彬の口から他の男の話は聞きたくない!!」
「聞きたくないって言われても、無理ですよ!怜秋は私の弟なんですよ?切っても切り離せない」
「そんなの知っているさ。だから余計に嫉妬する…。なんの理由もなく君の傍にいられる、そんな彼が妬ましくて羨ましいくて仕方がない…」
そうだ。羨ましい…。弟というだけで彼女に特別に想われ、愛される。
どんな時でも忘れることがない存在。悔しさと嫉妬と色んな感情がない交ぜになる。
「俺がどんなに望んでも今のままじゃ、無条件で怜彬の傍にはいられない…」
「雷覇殿…」
「怜彬…今日、最初に試着した服の色も怜秋殿を思って選んだのではないのか?」
「えっ…。どうしてそれを?」
やっぱり…。くそっ…。
彼女の頭の中から、彼を消し去ってやりたい。俺だけで一杯にしてやりたい。
そんな激しい独占欲でいっぱいだった。余裕なんて無い。いつもギリギリだ。
彼女を大切にしたい。傷つけたくない。それと同時に、閉じ込めてしまいたい。
誰にも触れさせず、俺だけ見つめるようにしたい…。
「怜彬を見ていればわかる。あの服を見る時の君の表情だけ、明らかに違っていた…」
「あの服は…。青色がとてもきれいで…。だから怜秋の瞳の色に似ているなっておもっ…」
彼女が何か言っているようだったが頭に入ってこなかった。
俺は耐えきれず彼女の唇に口づけをした。
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最後までお読みいただきありがとうございます!!\(^o^)/
イケイケゴーゴーの雷覇は可愛いですね!!
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