163.冬羽国へ
「怜彬よ!しばらく会えないと思うと俺は寂しいぞ!!」
「また…遊びに行きますので…落ち着いてくださいおじ様…」
「でも…今回はかなり頑張ったのだぞ!!あの…アシュラとかいう王子め…」
「桐生おじ様、わたしはもう大丈夫ですから…」
「いや!まだまだ懲らしめておかねば何をするかわからん!!」
「ほんとうに!大丈夫ですから!桐生おじ様…怒りますよ?」
「そうか?‥‥怜彬がそう言うなら…なにもするまい」
思いっきりがっかりした様子で、何とか諦めてくれた桐生おじ様。
わたしはホッと胸をなでおろした。
今日は桐生おじ様が帰る日だった。
わたしが誘拐されてしまった為に滞在期間が延びてしまっていたのだ。
ううう。おじ様ごめんなさい。さっきまで存在自体を忘れてました…。
名残惜しそうに力いっぱいおじ様に抱きしめられる。
苦しいけど、忘れていたという罪悪感から大人しくしていた。
「いいか?何かあったらすぐに俺に言うのだぞ!!」
「はい。すぐにご連絡致します」
「うむ。では帰るとするか!ガハハハッ」
「芙雅おば様もお元気で」
「ええ。怜彬ちゃんも元気でね」
豪快な桐生おじ様と、穏やかな芙雅おば様を見送って
わたしは自分の部屋に戻って行った。
ふぅ…やれやれ…。
まだまだアシュラ王子を懲らしめ足りないと言っているおじ様を説得するのに
おもったよりも時間がかかってしまった。
今日は冬羽国へ行く準備をする日だ。
明日にはこちらを出ないと旅路は2週間以上かかる。
その為にはなるべく早くこちらを出る必要性があった。
「リンリン、準備はどうなってるかしら?」
「問題ございません。お嬢様」
「ありがとう…シャチーの準備はどう?」
「そちらも整っております」
「さすがね!リンリン」
「雷覇様から、シャチー様宛に荷物が届いておりますがどうなさいますか?」
「ああ…。プレゼントを贈るって言っていたわね…中身を確認するわ」
「かしこまりました」
そう言って、リンリンが大きな箱に入ったプレゼントを持ってきてくれた。
…いったい何が入っているのかしら?
わたしは恐る恐る箱に手をかけてふたを開けた。
すると中には大きな銀色の虎のぬいぐるみが入っていた。
しかも…結構リアルなぬいぐるみである…。
シャチーが怖がったりしないかしら‥‥。
「雷覇ったら、女の子にあげるならもっと可愛らしい物にしたらいいのに…」
「これは…なというか…剥製みたいですね…」
流石の怜彬も表現に困っている様子だった。
毛並みや瞳の輝きなど本物の虎のようなぬいぐるみだった。
今にも動き出しそうでちょっと怖い…。
「ひとまず、シャチーに渡してみるわ…隠しておくわけにもいかないし」
「かしこまりました。ではシャチー様をお呼び致します」
「ええ。お願いね」
しばらくしてから、シャチーが部屋に連れられてきた。
わたしは理由を説明して箱のふたを開けるように言った。
「わぁ…!!」
「どう?怖くない?」
「はい!すごい綺麗な獅子様です…まるで小説に出てくるような…」
「え?そうなの…」
「はい!雷覇国王様は獅子様の化身なのです!!」
「へっ…へぇー…すごいわね…それは」
「はい!うわ~…ふかふかで気持ちいいです!」
あの小説はいったい何を書いているのかしら…。
雷覇が獅子の化身って…どんな設定なの?
まぁ、でもシャチーが喜んでいるならいいか…。
嬉しそうにぬいぐるみに抱き着くシャチー。
ぬいぐるみの方が大きいから、まるで本物の虎と戯れているように見える。
雷覇は小説の内容を知っていてこのプレゼントを思いついたのかな?
だとしたら、このプレゼントは大成功だ。
予想に反してシャチーは大喜びだったからだ。
「これからは、この子と一緒に寝ることにします!」
「ふふふ。ベットから落ちないように気を付けてね」
「はい!また雷覇国王様に会ったらお礼が言いたいです」
「そうね。雷覇もきっと喜ぶわ」
「へへへ…」
シャチーの頭を撫でながら、わたしはシャチーの顔を眺めていた。
それからしばらく大きな虎と戯れてから、冬羽国へ行く準備をした。
シャチーはどうしても虎を持っていきたいと言っていたけど
荷物になるから置いていくように話をした。
とっても悲しそうだったけど仕方ない。わたしは心を鬼にしてやめさせた。
名前は雷虎と名付けられた。
雷覇の虎だから、雷虎だそうだった。
これだけ気に入っているのを知ったら雷覇も喜ぶだろうな…。
そんなこんなで翌朝。
まだ太陽も登らないうちにわたし達は夏陽国を目指すため王宮を出発した。
シャチーはまだ夢の中だ。
わたしと一緒の馬車に乗り、今はスヤスヤと眠っている。
今回は怜秋と珀樹殿も一緒に冬羽国へ向かう。
珀樹殿に案内してもらおうという事になったのだ。
珀樹殿がいくなら僕も…と言ったかたちで怜秋も一緒に行くことになった。
みんなで一緒に参加できるなんて楽しみだわ!!
「久しぶりに…雷覇にも会えるし…」
彼に呼ばれる声が懐かしい。
両想いになってこんなに離れて過ごすのは初めてだった。
雷覇は我慢の限界だとか手紙に書いていたけど…。
わたしもちょっぴり寂しかった。
「早く会いたいな…」
わたしは馬車の外を眺めながら雷覇の事を考えるのだった。
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