160.相談
「わたしに相談とは…どういった内容でしょうか?」
「そんなにかしこまらないで。ちょっと怜秋の事で相談に乗ってほしくて」
「怜秋様の事ですか?」
「ええ…」
リンリンが助言してくれた通り、わたしは珀樹殿に相談することにした。
今はお庭の四阿で二人でお茶をしながら話をしている。
今日は天気がいいから温かい。爽やかな風に吹かれて飲むお茶も格別だった。
シャチーの事はリンリンが面倒を見てくれているから心配ない。
「怜秋が…結婚を反対しているのは知ってるでしょう?」
「はい。存じております」
「どうしたら雷覇の事を認めてもらえるかなって…」
「なるほど‥‥」
「別に好きになってもらわなくてもいいの。でも結婚に賛成はして欲しくて」
「そうですね…。怜秋様も分かってはいると思います」
「珀樹殿から見て、怜秋はどう考えていると思う?」
わたしは藁にも縋る思いで尋ねた。
わたしはどうしても弟大好きっていう先入観があって
冷静に、怜秋の事を見れていない。
でも珀樹殿なら客観的な意見が聞けるかもしれなかった。
「以前に比べると落ち着いていらっしゃいます。雷覇殿事も徐々にですが認めていらっしゃいます」
「そう…なんだ」
「ただ、結婚した後の事を気にされているようでした」
「結婚した後の事?」
「はい。嫁いでしまったら簡単には会えなくなると…」
「なるほど…」
怜秋は不安になってるのだろうか。
会おうと思えばいつでも会いには行けるし、何も今生の別れになるわけでもない。
むしろ、秋唐国に来る頻度は増えるかもしれないのだ。
リョクチャ事業もあるし、電力事業の事もある。
そんな理由がなくても会いに来たいとは思っているけど…。
「あくまで私の推察ですが…」
「なに?教えて!珀樹殿」
「怜秋様は甘えているだけだと…」
「甘えている?」
「はい」
にっこりと優しく微笑んで、佇む珀樹殿。
とっても優雅で落ち着いたたたずまい。
わたしとはまるで正反対な人…。きれい…。
わたしは思わず珀樹殿に見とれてしまった。
「怜彬様?」
「あ…。ごめんなさい。甘えてるってどういう意味かしら?」
「小さい時に、わざと我がままを言って困らせたいってときはありませんでしたか?」
「あったわ。こっちを見て欲しくてつい変な事しちゃうのよね~」
「ふふふ。怜秋様の行動はあれと同じだと思います」
「なるほどー。じゃあ完全に反対って訳でもないのね?」
「はい。認めたいけど認めたくない…そんな気持ちなんじゃないでしょうか…」
「そっかー。なるほどね…」
「せっかく秋唐国にいらしていますし、ご姉妹の時間をもっと持たれてみてはいかかですか?」
「確かに。そうした方がいいかもしれないわね…」
「ただでさえ今回、怜彬様が攫われてしまって、その後の事の対応で時間に追われてましたし…」
「そうね!怜秋にもっと一緒に過ごせる時間を作ってもらうわ!」
「その辺のスケジュール調整はお任せください」
「いいの?珀樹殿にお願いして…」
「勿論でございます!今も怜秋のスケジュール調整をしているのは私の役割ですし」
「まぁ!そうだったのね。じゃあお願いするわ!」
「お任せ下さいませ。怜彬様」
「ほんとうに、ありがとう!珀樹殿」
「お役に立てて良かったです」
ああ!!良かった~。何とか怜秋に賛成してもらえる兆しが見えてきたわ!
とにかく今は怜秋といっぱい過ごして、甘えてもらえるようにしよう。
シャチーの事で頭がいっぱいだったから、ちょっとほったらかしになっていたし…。
「早速、明日からお二人で過ごせる時間をとるように致します」
「さすが珀樹殿は仕事が出来る人ね~」
「いえ…私なんて怜秋様に比べたらまだまだです…」
「そんな事ないわ!怜秋が変わってきたのは珀樹殿のおかげよ」
「怜彬様…」
恥ずかしそうに顔を赤らめて目を伏せてしまった。
かわいい!珀樹殿の照れてる顔!
何だかとっても艶っぽいし…女子って感じよね~。珀樹殿って。
「珀樹殿に相談して良かったわ」
「少しでも協力できるなら、なんだってします」
「ありがとう。これからもよろしくね!」
「はい!」
わたしは珀樹殿の手を取って握り締めた。
珀樹殿もわたしの手を握り返してくれた。
それからは仕事の話をしたり、お互いの好きな食べ物の話をしたり
他愛のない会話をしてお茶会は終了した。
珀樹殿は知れば知るほど魅力的な人だった。
控えめでおしとやかで…。でも決して流されたりはしない強い女性だった。
そういえば…珀樹殿は、怜秋の事どう思っているのかしら?
わたしはふと気になったので尋ねてみた。
「珀樹殿は怜秋の事どう思ってるの?」
「え…?どう…とは?」
「うーん…。怜秋はどう見えてるのかなって」
「そうですね…」
「うん、うん」
「こんな事言うのはおこがましいかもしれませんが…弟の様に大切に想っております!それにとても尊敬しております」
「あー…なるほど。そんな感じね」
「なにか…おかしいでしょうか?」
「ううん。全然!怜秋の事大切に想ってくれて嬉しいわ」
「ありがとうございます。怜彬様」
そっかー…。
珀樹殿は弟と思って接してくれてるのね!
それもそうか…。怜秋はまだ12歳だしね!
でも…怜秋はそうでもないと思うんだけどな~。
わたしは誕生祭の時に着ていた珀樹殿の衣装を思い出していた。
あれは絶対に、怜秋の気持ちがこもっていた。
それも好きって感じの…。
とても凝ったデザインだったし、生地や糸も上質なものだった。
王族だから当り前と言えば、当り前だけど…。
普通の部下に渡す物にしては豪華過ぎるくらいだった。
怜秋と一緒に過ごすようになったらこの件についても確認しなくちゃ!!
もし…怜秋が珀樹殿の事を好きになっているなら
とても喜ばしい事だと思った。
今までわたしかそれ以外か。という価値観の中で生きてきた怜秋。
それがやっと他の人に目を向けてくれるようになったのだ。
姉としては弟の成長を温かく見守っていきたい。
どんな話をしようかしら…。
でも…怜秋の気持ちを、想いをきちんと聞くことの方が大切よね…。
わたしは、久しぶりに怜秋とゆっくり過ごせることに胸を弾ませていた。
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