158.収束
誕生祭編はこれで終了です(#^^#)
怜彬のことは雷覇が助けに来る設定でしたが
彼女がじっとしていることが出来ない人だったので自分で逃げてしまいました(笑)
雷覇…出番なくて申し訳ない(´;ω;`)
わたしが王宮に戻ってきた次の日、色んな人が面会に来てくれた。
怜秋に、シャチー王女それから、珀樹殿に桐生おじ様達…。
みんなとても心配してくれていた。
3日とはいえ王宮を不在にしていたのだ。心配なのも無理はない。
なかでもシャチー王女は泣きながらわたしに会いに来てくれた。
わたしは何とも言えない気持ちになり思いっきり彼女を抱きしめた。
「怜琳お姉様…!ごめんなさい…」
「シャチーは悪くないわ」
「いいえ…ぐす…お兄様を止めれませんでした…」
「こちらも注意を怠ったからいけなかったのよ」
「でも…」
「自分を人質にしてくれと言ってくれたんですってね…」
わたしはシャチー王女の頭をなんでながら語りかけた。
彼女はさっきからずっと震えていた。
可哀想に…。
「はい…どうしても…お姉様を助けたくって…ううう…」
「ありがとう…シャチー」
「怜琳…おねえさまぁ…」
「怖かったでしょう?偉いわ…」
「とっても…こわかったです…いっぱい…歩いて…」
「いっぱい頑張ったのね…シャチーはすごい子ね」
「ふぅっ…うう…」
足が震えながらも一人で王宮までの道のりを歩いたシャチー王女。
今まで誰にも頼らずに外を歩いたことのない彼女がそこまでしたのは
本当に勇気のいることだと思った。
途中で雷覇に出会ったことは運が良かったとしか言いようがない。
怪我がなくて…本当に良かった…。
雷覇に優しくしてもらったこともとても嬉しかったらしく
もらったホットミルクがとても美味しかったと言っていた。
わたしはリンリンに頼んで二人分持ってきてもらった。
あと冷たいタオルも。
しばらくの間わたしは、シャチー王女を抱っこしながら椅子に腰掛けた。
彼女が落ち着くまで、静かに待った。
その間にリンリンがホットミルクを持ってきてくれた。
わたしはそれをシャチー王女に手渡した。
「ホットミルクよ。飲める?」
「…はい」
泣きはらしためでじっとホットミルクを見つて受け取った。
ふーふーと小さ口で息を吹きかけて飲む姿は本当に可愛らしかった。
妹ができたらこんな感じなのかしら。
どちらにしても、かわいいことには変わりないわね。
「怜琳お姉様も…これを飲むんですよね?」
「ええ。わたしも泣いた時は必ず飲むわ」
「雷覇…国王様が言ってました…」
「雷覇が?」
「はい。泣いたときにはこれがいいって…」
へぇ…。雷覇でもそんな事言うのか。
ちょっと感心してしまった。
雷覇のことだから、サバサバした、大人と変わらないような対応してそうだけど
優しいところあるじゃん!うん。うん。よかったぁ。
「泣いた後に飲むととてもほっこりして…美味しいのよね~」
「はい…美味しいです…」
「シャチー、お兄さんの事が片付くまで一緒にいましょうね」
「ほんとうですか?」
「ええ。しばらくわたしは秋唐国にいるし」
「わぁ…とっても…嬉しいです」
頬を真っ赤にしてとても嬉しそうに微笑むシャチー王女。
ああん!ほんとうに…ほんとうにかわいい!!
シャチー王女は気持ちが落ち着いて来たのか、だんだんと表情が明るくなってきた。
泣いて吐き出してすっきりしたのだろうな…。
「アシュラお兄様は…どうなりますか?」
不安そうにシャチー王女が尋ねてきた。
「それはわたしにも分からないの…。今度、五神国会議をしてそこで決定されるわ」
「そうなんですか…」
わたしはありのままを伝えた。
嘘をついてもいずれ分かる…。変に希望を持たせるのも良くないと感じた。
シャチー王女が俯いて手にしているコップを見つめている。
不安よね…。大好きな兄にもう会えないかもしれないんだもの…。
わたしはひとまず、シャチー王女の気が紛れるようにしようと思った。
「シャチーがよければ、今度わたしのお庭を一緒にお世話しましょう」
「いいんですか?」
「もちろんよ」
「わぁ…。妖精さんのお庭…楽しみです!」
「うーん…そうね…ハハハ」
まだ…シャチー王女の中でわたしは妖精さんの設定らしい…。
まぁしばらくはそのままでいいか。
シャチー王女はニコニコしながらまたホットミルクを飲み始めた。
わたしは彼女のきれいなプラチナブロンドの髪をなでながらその様子を見守った。
「へへへ…」
「どうしたの?シャチー」
「怜琳お姉様に…頭撫でてもらうの好きです…」
「わたしも、シャチーの頭を撫でるのが好きだわ」
彼女は照れて俯いてしまった。
やっと・・・子供らしい表情が見れた…。
無邪気で、屈託のない笑顔。これがシャチー王女の本来の笑顔だろう。
彼女が少しずでいいから、子供らしくたくさん感情を出してくれればいいと思った。
あとは…あのヘタレ王子よね…。
ちょっとは反省してくれてるといいんだけど…。
わたしはシャチー王女の頭を撫でながら、アシュラ王子が改心することを祈った。
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怜彬王女が逃げてしまった…。
完全に僕の落ち度だった。
あの状況で自分で逃げ出す人がいるのだろうか?
「はぁ…」
僕はため息をつきながら、収容されている牢屋の小さな窓を見上げた。
彼女の行動の原動力はどこからくるのだろうか?
どういう教育をしたら、あのような王女に育つのか…。
全く想像もできなかった。
今でも彼女にされた頭突きでおでこが痛む。
シャチーが逃げ出した時点で、手詰まりだったんだな。
どうして…?シャチーが…。
分からない事だらけだった。
でも…。楽しかったな。
秋唐国にきてからは、久しぶりに生きていると感じた。
ワクワクとドキドキを味わった。
キーサ帝国でいた頃とは比べ物にならないくらい感情の起伏を感じた。
そして…。
見失っていたものも見えた…。
「シャチー…」
僕の大切なたった一人の妹。
どんなことをしても何を犠牲にしても守りたい存在。
それでも…。彼女の事を想っていると勘違いしていたんだけど…。
シャチーが死にたいと考えているなんて思いもしなかった。
怜彬王女から聞かされた言葉はとてもショッキングだった。
僕の前ではシャチーはずっと明るかったからだ。
「ずっと…僕の事を心配してくれていた…」
兄の負担になるなら自分がいない方がいい。
年端もいかない子が、そんな事を考えていたんだなんて…。
僕は自分のしてきたことを振り返った。
どれもこれも、自分の事しか見えていない事が今ならよく分かる。
兄たちを蹴落とすことばかり考えて、早く王座を手に入れることしか見えてなかった。
そうすることでシャチーを守れると思い込んでいた。
シャチーがどれほど心の中に不安や悲しみを抱えているなんて考えもしないで…。
ごめんよ…。シャチー…。
心の中で何度も彼女に謝った。
至らない兄で…頼りにならない兄で…すまない。
出来る事なら死ぬ前に彼女にもう一度会いたい。
僕のしたことは大罪だ。極刑は免れない。
それは…覚悟していた。今さら言い訳する気もない。
心残りといえばシャチーだ。
彼女の今後が気になる。
ただ…怜彬王女なら見捨てないだろうという確信もあった。
彼女の傍で過ごせるなら、シャチーも幸せに違ない。
真っ直ぐ正しく育ってくれるだろう。
窓の外を見上げながら、僕はひたすらシャチーの事だけを考えていた。
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