153.ガツンと一発お見舞いしてやりました
はぁ!!やっと書きたいシーンを書けました(*^▽^*)
楽しんでいただけると幸いです☆
*-------------------------------------*
怜彬が攫われて一晩経った。
未だに彼女の姿は確認できていないが、居場所が特定できそうな情報が集まってきている。
怜秋殿の提案で、秋唐国の全国民対して
情報提供を求めたところ有力な情報がいくつも寄せられた。
それによって三つの場所に絞り込めるところまで来ていた。
女性の叫び声がしたや、夜中に変わった物音がした。
キーサ帝国の人が沢山出入りしているなどだ。
俺は朝早くから、その情報をもとに絞り込んだ三つの旅館のうちの一つ目に来ていた。
早く怜彬を見つけないと‥‥。
明後日にはキーサ帝国に戻ると報告が上がってきていた。
このままでは簡単に手出しできないところに行ってしまう…。
はやる気持ちを抑えながら旅館の支配人に話を付け調査させてもらう。
怜彬‥‥。
心の中で何度も彼女の名前を呼ぶ。
彼女の笑顔、彼女の声、彼女の輪郭。
今も手に取るように思い出せる。
昨日まで確かにそこにあったのに…。
胸のあたりで重く苦い気持ちがせり上げてくる。
早く彼女の顔が見たい。抱きしめたい。彼女の温もりを感じたい。
こんな気持ちになったのは春魏国で、拉致された時以来だ。
部屋を一つ一つ確認していく。勿論従業員が使う部屋や厨房など物置全て確認した。
しかし一つ目の旅館では手掛かりがなかった。
俺とサイガは二件目の旅館に向かう事にした。
「はぁ…」
「大丈夫か?雷覇」
「ああ…。何とかな…」
珍しく心配そうに俺の様子をうかがってくるサイガ。
いつもなら悪口の一つや二つ言いそうなものを…。
一つ目の旅館を後にして二つ目の旅館を目指す。
思ったよりも時間がかかってしまいもう午後に差し掛かっていた。
「絞り込んだ三つのうちのどれかにお姫様はいるよ」
「そうだといいんだがな…」
「あんなわずかな時間でここまで絞り込めるなんて、お姫様の小説ってよっぽど人気なんだな~」
「お前な…今そんな事言ってる場合じゃないだろう?」
「なんだよ!雷覇が暗いから明るい話をしようとしてるんじゃないか」
「そうかよ…。まぁ…あの小説は作らせて正解だったな」
怜彬と俺との仲を広めるため、外堀を埋めるため作らせた小説だった。
彼女の存在を夏陽国中の人々に知らせるという意図と
怜彬と俺が結婚しやすいように、怜彬のイメージアップの意図も含まれている。
どちらも功を奏して、秋唐国と夏陽国で大ヒット。
キーサ帝国のシャチー王女が知っているほど有名な書物になった。
そして怜彬の印象は劇的に変化した。
【死神姫】。という異名を持つ女性から、宝石の妖精へ変化している。
かつての輝きを取り戻しつつあるのだ。
もしかしたら…それ以上になるかもしれないが…。
「よし!ここが二件目の旅館だな」
「ああ。さっそく支配人と交渉してこよう」
そう言って、俺とサイガが旅館の中に入った。
不審な点がないか一つ一つ確認していく。
後から来た俺の部下たちも一緒に部屋を確認していく。
しかし…。空振りだった。
ここもか…。クソ!!
淡い期待はすぐにチリの様に吹き飛ばされてしまった。
次でもし…見つからなかったら…。
嫌な考えが頭をよぎる。明後日にはキーサ帝国に…。
ドクリと心臓が大きく跳ねる。背筋に鳥肌が立つ感覚がした。
「雷覇国王!!」
どこからか俺を呼ぶ声がした。
この声は…。
振り向くとこマントをかぶった小さな子供が立っていた。
「シャチー王女?」
「えっ?」
サイガも慌てて振り向く。
俺達は慌てて彼女に駆け寄った。
どうして…シャチー王女がこんなところに?
「シャチー王女…どうしてここに?」
「雷覇…国王さま…」
俺の姿を見るとホッとしたのかその場にへたり込んでしまった。
小さな体を震わせて、それでも必死になって何か伝えようとしている。
「どうした?もしかして…怜彬の事で何か知っているのか?」
「はい…」
「教えてくれ!!怜彬はどこだ?」
「落ち着け!雷覇。そんなに大きな声出したら、怖くてしゃべれないだろ?」
「あ…ああ。すまない…」
怜彬に会えるかもしれないと希望を抱いて思わず声を荒げてしまった。
こんな小さな女の子に…。
俺は膝をついて、彼女の顔が見れるように屈んだ。
「怜彬…お姉様はいます…」
「どこだ?どこにいるんだ?」
「アシュラお兄様が閉じ込めて…います…申し訳ございません…」
「そんな事は後回しだ。怜彬の場所を教えてくれ!」
「雷覇国王…」
ジッと硬い表情で俺を見つめるシャチー王女。
体は震えているが、その瞳には強い意思を感じた。
「どうした?シャチー王女…言ってみろ」
「私を…人質にして下さいませ…」
「なに?どういう事だ?」
「今行っても…お兄様は怜彬お姉様を解放しません…」
「だから、そなたを人質にしろというのか?」
「そうです…。お兄様は分からないといけません…」
ぎゅっと両手を握り締めて震える体を必死に抑えようとしている。
8歳の女の子が一人でここまで来るだけでも相当なことだっただろう。
それが…自ら人質にしろ言う…。シャチー王女の考えが分からかなった。
「雷覇…ここじゃ人目に付きすぎる。ひとまずどこかに移動しよう」
「そうだな…。さっき行った旅館で部屋を取ろう」
俺とサイガ、それにシャチー王女の三人で元来た道を戻り二件目の旅館へ行った。
彼女は腰が抜けて立てないため俺が抱いて移動することになった。
その間もずっと詫びの言葉を述べていた。
「ごめんなさい‥‥ごめんなさい…」
「いいんだ。シャチー王女のせいじゃない」
「私がちゃんと‥‥お兄様を止めなかったから…」
「シャチー王女…。あまり自分を責めるな…君は正しい事をした」
俺は彼女の頭を撫でながら優しく話しかけた。
この子は真面目で正義感のある子だ。
兄のしたことに対して妹である自分が悪いと言っている…。
まだ…8歳なのに。
健気としか言いようがない。あの兄の妹にしておくには勿体ないくらいだ。
「ふぅ…うぅ‥‥」
ホッとしたのかシャチー王女は俺に縋りついて泣き出してしまった。
可哀想に…。よほど思いつめていたんだな…。
無理もない。一国の王女を誘拐したんだ。その罪は重い。
場合によっては極刑もあり得る。
シャチー王女は賢い。きっとそこまで考えが及んでいるに違いないと思った。
「なんか…お前が子供を抱いていると変な感じだな」
「サイガ…。こんな時に茶化すなよ」
「すまんすまん…。あまりにも似合わなさ過ぎてな…」
「それは…俺もそう思う」
サイガと話していたら、気が抜けてリラックスすることが出来た。
わざとやっているのか…そうでないのか分からないが
肩の力を抜けて色々考えが回るようになってきた。
部屋に着いた俺達はシャチー王女が落ち着くのを待った。
*-------------------------------------*
「少しは大人しくする気になりましたか?」
部屋でシャチー王女が戻るのを待っていたら、アシュラ王子が入ってきた。
ニコニコしながら料理と包帯を運んできた。
「お願いだからわたしを雷覇の所へ帰して」
「怜彬王女も往生際が悪いですね…。それはもう無理ですよ」
「さっき…シャチー王女がここへ来たわ」
「なんだって?」
さっきまで余裕だった声と表情が一変した。
やっぱり…シャチー王女には知られたくないのね…。
わたしはどうにかして彼が動揺して鍵の場所を探れないか話をすることにした。
「わたしのこの姿を見て真っ青な顔をしていたわ…」
「そんな…まさか…」
「あなたにここへ連れてこられたと言ったら、とても傷ついた顔をしていた」
「‥‥」
「あなた…本当に妹の事を大切にしているの?」
「どういう意味だ…」
わたしはじっとアシュラ王子を見つめて話を続ける。
ずっと前から気になっていた事だった。
「シャチー王女がわたしに初めて会った時…何て言ったと思う?」
「何が言いたい?」
「わたしを殺してくれって言ってきたのよ!」
「なっ…に…」
「あんな‥‥あんな小さな子が…自分を殺してくれって…」
「嘘だ…シャチーがそんな事を言うはずない!」
「嘘なんかじゃない…。私が【死神姫】と呼ばれているの知って会いに来たと…私に会えば死ねると言っていたわ…」
「なんで…そんな事をシャチーが…」
アシュラ王子の顔からみるみる血の気失せていく。
それもそうだ。妹が死にたがっているなんて話聞きたくないはずだ。
「あなたに負担をかけてるんじゃないかって…。足枷になってしまってるんじゃないかって…悩んでいたわ」
「シャチーがそんな事を…」
「あなたの事が大好きで…傍にいて何の役にも立てない事を悔いていた!たった…8歳の女の子がよ?」
「‥‥」
「そんな彼女の気持ちに寄り添ったことはある?どんなことを思っていたか考えていたことはあるの?」
「アシュラ王子…あたなは自分の事ばかりで全く妹の事考えていないわ!」
「それは違う!!僕は…シャチーの為に色々やってきた」
「だったらなぜ?どうしてシャチー王女はあんなに思いつめて泣いているの?」
アシュラ王子が崩れ落ちてその場にがっくりと項垂れてしまった。
よほどショックだったのだろう。でも…これは事実だ。
あの日…庭園でシャチー王女がこぼした胸の内をわたしはありのまま伝えた。
「そんな…そんなはずはない…シャチーは…」
「わたしをここに連れてきたのだって妹の為なんかじゃない!自分の為でしょ?」
「それは…」
「あなたがそんなだから、シャチーはあなたの前で泣けなくなったんじゃない!!」
話しているうちにわたしも感情が高ぶって涙が出てきた。
悔しい!!あんなに可愛くて素直で…いい子なのに…。
お兄さん思いの優しい子。それなのに…当の本人は妹の事をまったく考えず
自分のやりたいようにふるまっている。
これではどちらが子供か分からなかった。
「‥‥あの子は泣いて…いたのか?」
「ええ。庭園で話をしていたら大声出して泣いていたわ…」
「そんな…に…」
「アシュラ王子…まだやり直せる。お願いだから…」
そう言王とした瞬間手を握られてアシュラ王子が迫ってきた。
「やっぱり!あなたは素晴らしい人だ!怜彬王女」
「はぁ?!」
「僕の悪い所を指摘してくれて…しかもシャチーの事をこんなにも思ってくれている」
「何言ってるの?今はそんな事…」
「ますますあなたが欲しくなったよ。怜彬王女!」
‥‥。
ブチ
血管が切れるような音がした。まぁ…実際には切れてないけど。
こいつ…!!!ばっっっかじゃないの!!!
わたしは頭にきて、アシュラ王子の胸ぐらをつかんだ。
「怜彬王女?」
「いい加減にしろ!!このヘタレ王子!!」
そして思いっきり頭突きをした。
ガツン!!!!
頭と頭が激しくぶつかる音がした。
「‥‥!!!!???」
あまりの衝撃にアシュラ王子が後ずさって倒れ込む。
鳩が豆鉄砲を食ったような物凄く驚いた顔をしていた。
いった~。くぅ‥‥。
脳みそがぐらんぐらん揺れてる…。おでこもいたい…。
頭突きなんて生まれて初めてした。両手が塞がっていたから咄嗟だったけど!
でもすっごくすっきりしたわ!一度、ガツンと言ってやりたかったのよね!!
最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)
ブックマークしてくださった方ありがとうございます!!
ちょっとでもいいなと思ったら、
広告の下の☆☆にぽちりしていただけると嬉しいです(#^.^#)
感想・ご意見お待ちしております!(^^)!