151.捜索
ベタですが、ヒロインが誘拐されたそれをヒーローが探し出す…。
そんな話は大好きです!!ベタ万歳ヽ(^o^)丿
「いや…!!」
「怜彬王女…。僕はあなたが欲しい!どんなことをしてでも!」
万歳させられた状態でベットの上に押し倒されてしまった。
手錠がはめられているから抵抗しようにもうまく動けない。
男性の力は強い。女であるわたしがいくら力を込めてもびくともしなかった。
「やめてっ!!‥‥やだ!!」
足をジタバタさせてできる限りの抵抗をした。
怖い…。
初めて人に対して恐怖した。
アシュラ王子の瞳は薄暗い洞窟のような瞳だった。
覗き込んでしまったら中から恐ろしい獣がでてきそうな…。そんな怖さだった。
「どうしてです?僕のどこが気に入らないんです?」
「分からないの?こんな…無理やり連れてこられて…手錠までかけて…」
「そうでもしないと、二人きりになれない。あなたの傍にはいつも雷覇国王が…あの番犬のような男がいる‥‥」
アシュラ王子の顔が悔しそうに歪む。
そう言って不意に顔が近づいてきて、口づけされそうになった。
わたしは思いっきり顔を逸らせて避けた。
絶対に…いや!雷覇以外の人に触れられるなんて嫌!!
「…そんなに…僕が嫌ですか…」
がっくりと項垂れた様子で近づいた顔を離した。
手が震えてくる。今のわたしは無力だ…。
必死に抵抗してもまるで歯が立たない。
でも‥‥心だけは絶対に折れない。
「わたしが好きなのは雷覇よ!…彼だけなの…」
「‥‥」
彼がゆっくりとわたしの傍を離れて、立ち上がった。
顔を見るとまた無表情に戻っていた。
ゾッとした。背中に直接氷を張る着けてグルグル巻きにされているような感覚。
ねっとりとした憎悪が体中にまとわり付くような感覚。
「あいつが…居なくなれば問題ないですね…」
「何する気?」
「怜彬王女はここで大人しくして下さい」
「やめて!雷覇には何もしないで!!」
起き上がって思い切り叫んだ。
彼は何も言わずそのまま踵を返して部屋を出て行ってしまった。
どうしよう…!!!
雷覇が危ない。動いて身をよじるけどベットの上から起き上がるのが精一杯だった。
何とかして…ここを抜け出さないと!!
考えて!どうするのが一番いい?
わたしは部屋を見渡して何かいい方法はないか考えた。
部屋はベッドとサイドテーブル以外何も置いておらずシンプルだった。
幸い足は自由だ。ベットを動かして窓際まで行けば助けを呼べるかもしれない。
わたしはベットのヘッド部分を持って引きずり移動させる。
「…っ!重い!!」
少しはずらすことが出来たが全くびくともしない。
それならこの手錠を何とかできないかしら…。
わたしは何か身に着けているもので鍵を開けれそうな物を探した。
「…ない…」
髪飾りはおろか靴も全部取り上げられている。
着ているのは肌着のような薄着の服のみ。
わたしが逃げられないように…完璧に整えられている。
「だったら…」
わたしは傍に会ったコップや水の入ったポットを手にして窓に向かって投げた。
両手が繋がれているからうまく投げれなかったが物音くらいは立てられるだろう。
誰かが気づいて助けてくれるかもしれない。
わたしは手当たり次第に近くに手に取れるものを投げた。
「はぁ…だめか…」
大方投げつくしても、何も反応がない…。
ああ‥。どうしたら…。わたしは途方に暮れた。
このままだと雷覇がどんな目に合うか分からない。
彼は簡単には死なないだろうが、アシュラ王子のあの異様さを見たら
どんな手を使うか分からなった。
もしかたら毒を使うかもしれない…。
わたしと雷覇が眠らされたくらいだ。
他に何か持っていてもおかしくなかった。
「雷覇…会いたい…」
急激に彼が恋しくなってきた。
さっきアシュラ王子に触れられた箇所がひどく軋む。
怖気がして気持ち悪い。
雷覇に触れられた時とは全く違う感触。体中がアシュラ王子を拒絶している。
さっきは何もされなかったけど…。次はどうなるか分からない。
初めてアシュラ王子が…男性が怖いと思った。
あんな圧倒的な力で抑え込まれて何もかも暴かれてしまったら…。
想像するだけでまた震えが止まらなくなる。
…だめ!!こんなことで…折れちゃだめよ!!
わたしは震える手を握り締めながら必死に自分を鼓舞した。
逃げないと…。何とかしてここから逃げないと。
幸いまだここは秋唐国だ。
今逃げれば何とか王宮までたどり着ける。誰かに助けを求めることも出来る。
諦めるのはまだ早い。
私はもう一度ベットを押して必死に窓際を目指した。
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「アシュラ王子が滞在している旅館はここです」
怜秋殿が秋唐国の城下街の地図を指さした。
アシュラ王子がまだこの国居るという事は、怜彬も一緒にいる可能性が高いと判断した。
その為、捜索する場所を城下街に絞り込んで人員を割くことにした。
「そのまま連れていかれているので、そんなに遠くには行っていないと思います」
「そうだな…。俺が逆の立場なら目の届くところに閉じ込めておく」
「だったら同じ滞在場所か、その近くに部屋を借りている可能性もあるな」
「よし!まずはアシュラ王子の周辺の旅館や建物をしらみつぶしで探すぞ」
「はい!」
「それから国外へ続く道を封鎖しろ。出国しようとするやつは全て調べろ」
「分かりました」
俺は皆に声を掛けてサイガを連れて出かける準備をした。
怜彬…。
右手の指輪を見て彼女の笑った顔を思い浮かべた。
お揃いの物を身に着けたいと可愛い事を言って用意させた指輪…。
彼女が俺のモノだという印…。
バル爺の店で指輪をはめた時花が咲いたようにほころんで嬉しそうな顔をしていた。
守ると…言ったのに…すまない。
見つめていた手をグッと握り締めて力を籠める。
怜彬。必ず助け出す。
「雷覇殿!」
部屋のドアの前で不意に怜秋殿に呼び止められた。
「どうした?怜秋殿」
「あの、僕考えたんですけど…」
「なんだ?言ってくれ!」
「あの…小説の認知度を利用したらいいんじゃないかと思って」
「俺と怜彬が題材になっている小説の事か?」
「はい。秋唐国で多くの人が知っています。姉が誘拐されたと知ったら全国民が協力してくれると思うんです」
「なるほど…。あえて公にして情報を募るのか…」
「はい!どうでしょうか?」
「いい作戦だ!やろう」
「分かりました。ラカン!頼むよ」
「畏まりました」
鋭い目つきになっているラカンが短く返事をして部屋を出て行った。
あれは…相当キレてるな‥‥。纏っている空気が尋常じゃないくらい重い。
あんなに感情があらわになった彼を見るのは初めてだった。
ラカンも俺と同じように怜彬を大切に想っている。
守ってきた大切な人を奪われたんだ。怒って当然だ。
怜秋殿は他の人に指示をして、情報を集めるように声を掛けている。
よく頑張っていると思う。まだ…12歳なのに…。
姉が攫われて取り乱してもおかしくないこの状況で彼は冷静に振舞い
時には他の人を励まして指示を出している。
素晴らしい王の器だと感じた。
「じゃあ、怜秋殿!ここは頼む」
「わかりました」
「俺はサイガと城下街を探す」
「はい!お気を付けて」
「ああ」
俺はサイガと一緒に部屋を出て城下街へ向かった。
ラカンの呼びかけで城下街は大騒ぎになっていた。
怜彬王女が誘拐された。秋唐国の国民が
一丸となって彼女を捜索している。
あの小説がまさかこんな効果を発揮するとは…。
この分ならもしかたら、早い段階で目撃情報が入ってくるかもしれない。
俺とサイガもその小説を手にして城下街を駆けずり回った。
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