147.誕生祭~アシュラ王子の思惑~
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「少しは落ち着いた?」
シャチー王女の背中を撫でながら話しかける。
コクリと小さく彼女は頷いた。
ショックな胸の内を告白されたわたしは、戸惑いながらも
なんとかシャチー王女には考えを改めて欲しいと思っていた。
「じゃあ…もう殺してくれなんて言わないでね…」
「はい…ごめんなさい」
「あなたが死んでしまったらわたしも悲しいわ…」
「怜彬…おねえさま…も?」
驚いたといった表情でこちらを見上げてくるシャチー王女。
会ったばかりだけど彼女の事は好きだった。
笑顔が可愛らしくて、とても素直で真っ直ぐな女の子。
嫌いになるはずがない。
「ええ。ちょっとしか話していないけど、シャチーの事は好きよ」
「わたし…を…?」
彼女に素直に気持ちを伝えたらまたポロポロと泣いてしまった。
最近よく泣かせてしまうな~。
わたしはそっとハンカチを差し出した。
シャチー王女はそれをゆっくり受け取り涙を拭った。
いったい何をすればこんな小さな子が思いつめるのか…。
彼女くらいの女の子ならもっと感情表現が豊かなのに。
「これ…ごめんなさい…」
「いいのよ。シャチーにあげるわ」
「…ありがとう…」
シャチー王女がわたしが渡したハンカチを見つながら、少し嬉しそうにはにかむ。
やっぱり…笑うと可愛い。
わたしは思わずシャチー王女を抱きしめた。
「怜彬…おねえさま…!」
「シャチー。ごめんね。あなたがあまりにも可愛いから…つい」
「わたし…可愛くなんてない…ドジでいらない子だもの…」
「お兄様を大切に想っている子がいらない子なわけないわ…」
「うぅ‥‥」
我慢していたものが一気に溢れたのかシャチー王女が大声で泣きだした。
わたしはホッとした。
子供はこれくらい大きな声で泣くものよね…。
何かを我慢して耐えて、涙を流す時も声を殺しながら泣く。
シャチー王女が今までそんな環境にいたのではないかと思った。
「わたし…ずっといらない子って…言われてたの…」
「そう…悲しいわね」
「アシュラ…お兄様だけなの…うっ…う‥‥」
「そうだったのね…」
シャチー王女を抱きしめながら彼女の言葉に耳を傾ける。
ポツリポツリと胸の内を明かしだす。
小さい頃からアシュラ王子以外の家族から否定されながら育ち
ずっと我慢しながら生きてきた。
アシュラ王子が大好きで彼だけが心の拠り所だったようだ。
わたしはしばらくの間、シャチー王女の言葉に耳を傾けた。
「でも…お兄様…最近おかしくて…」
「おかしい?」
「いつも知らない人と‥‥怖い顔で話をしていて‥‥」
「何を話していたの?」
「それは…」
思いきり泣いてすっきりしたのか、かなり落ち着いて話ができるようになってきた。
彼女がわたしの服をぎゅっと握りしめながらこちらを見上げてきた。
「アシュラお兄様…怜彬お姉様を…連れて帰るって…」
「えっ?わたしを?」
「うん…。どうしてかは…わからないけど…そう聞こえたの…だから止めないとおもって…」
「それであんなに必死になっていたのね。ありがとう…教えてくれて」
「わたしも…怜彬お姉様が…すきだから…」
顔を赤くしながら恥ずかしそうに言ってくれた。
ほんとうに可愛い!!
シャチー王女の話が本当だとすると、やはりアシュラ王子は何かを企んでいるようだ。
あの…似非王子め!
子供にそんな話を聞かせるなんて最低!
そもそも、シャチー王女がここまで思いつめていた事を知ってるのかしら?
わたしはなんだかだんだんと腹が立ってきた。
絶対に思い通りにさせてやるもんですか!
彼の思惑を知った以上油断するわけにはいかない。
今は大人しくしているが、きっと何かをしかけてくるに違いない。
急いでこの事を皆に知らせないと…。
わたしは立ち上がって珀樹殿を呼んだ。
「珀樹殿、悪いけどシャチー王女をお部屋まで案内してあげてくれる?」
「分かりました…お任せください」
「シャチー。また後でお部屋まで行くわね。ちょっと用事を思い出したから少し席を外すね」
「わかりました…。まってます…」
わたしは庭園でシャチー王女たちと別れて雷覇の所へ向かった。
ちょうど話し合いが終わって部屋から出てくるところだった。
わたしはアシュラ王子に悟られないよう、平静を装った。
「アシュラ王子。すみません…シャチー王女が気分が悪いみたいで…お部屋で休んでもらってます」
「そうですか…。妹がご迷惑をおかけして申し訳ありません…」
「今は珀樹殿が付いてくれてますから安心してください」
「ありがとうございます。怜彬王女…」
彼はそれだけ言うと妹の様子を見ると言ってその場を立ち去った。
わたしは人払いをさせて、雷覇と怜秋と三人だけにしてもらった。
さっきシャチー王女から聞いた内容を彼らにそのまま伝えた。
「やっぱり…何か企んでいたのか…アシュラ王子は」
「この貿易の話もフェイクだったんですね」
「そうみたい。わたしをキーサ帝国に連れて帰ることが目的みたいなの」
「許せん!俺の怜彬を…奪うなどと‥」
「雷覇…そこはいいから落ち着いて」
ああ!また私情が入って話がおかしな方向へ行ってしまっている。
いつもの事だけど‥‥。
「雷覇殿。今はどうやってそれを防ぐか?ですよ」
「そうだったな…。怜彬には俺が常に傍にいるようにしよう」
「分かりました。僕もなるべく姉さんとアシュラ王子が一緒にいないようにします」
「ああ。もし俺がいないときはサイガを付ける。何かあったらあいつに言ってくれればい」
「ありがとう。二人とも」
とにかく今は相手の出方が分からないため、知らないふりをしてこのまま誕生祭を進めようという事になった。
今日は行う予定はほぼ終わっている。後は夕食を一緒に食べるくらいだった。
「もし、怜彬に接触してくるとしたら最終日だろう」
「そうですね。最後の祝いの席は大勢人が集まりますからね」
「確かに…。何かをするにはもってこいね…」
「ちょっと…俺に考えがあるんだが…」
雷覇が小声で思いついたことを説明してくれた。
わたしと怜秋はその提案に乗ることにした。
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「シャチー…体調が悪いと聞いたけど大丈夫かい?」
アシュラお兄様がいつもの笑顔でやさしく問いかけてくれる。
「はい。大丈夫です…アシュラお兄様…」
「長旅で疲れてたのかもしれないね…。今日はもうゆっくりお休み」
「そうします…。でも‥‥怜彬お姉様が後で来てくださるの‥‥」
「怜彬王女が?」
わたしはコクリと頷いた。
もうすぐ来てくれるだろうか?それとも来ないだろうか?
来てくれたら嬉しい…。
また沢山お話ししたいな…。
わたしはベッドで横になりながら怜彬お姉様が来てくれるのを心待ちにしていた。
「とっても仲良くなったんだね。シャチー…」
「はい!怜彬お姉様はとっても素敵な方でした」
「そうか…。それは良かったね」
アシュラお兄様が優しい手つきで頭を撫でてくれる。
お兄様に頭を撫ででもらうのが一番好き…。
ホッとするもの。
でも、怜彬お姉様にぎゅっとしてもらうの好きだな…。
わたしはさっきのやり取りを思い返していた。
今までに嗅いだことないいい香りがした。
本当に怜彬お姉様は妖精さんなんだわ…。
「僕はこれから会食があるから、部屋で大人しくてるんだよ?」
「分かりました。アシュラお兄様」
おでこに優しいキスをしてお兄様が部屋を出て行く。
いつも…ああならいいのに…。
アシュラお兄様の背中を見送りならがそんなことを思った。
お兄様が何か良からぬことを考えている…。
その事を知ってしまっていてからは、どうしたら止められるか必死に考えた。
恐らく直接お兄様に言っても無駄だろう。
怜彬お姉様に会うまでずっと緊張していた。
早く私が死んでしまえば…。
お兄様はあんなことしなくて済むかもしれない。
縋るような気持で怜彬お姉様に話をした。
返ってきた答えは想像をはるかに超えるものだった。
自分が死ねば兄が悲しむ…。
そんな簡単な事に今まで考えなかっただなんて…。
わたしはベットに顔を埋めて自分を恥じた。
やっぱり私はドジでダメな子だ‥‥。
でも…。
こんな私でも怜彬お姉様は好きだと言ってくれた…。
優しく抱きしめてくれた。
温かい手で頭を撫でてくれた。
それを思い出すと今でも胸がくすぐったくて泣きたくなるような気持ちになる。
わたしはさっき貰ったハンカチを取り出して眺めた。
薄紫色で繊細なレースが施された綺麗なハンカチだった。
貰っていいって…言ってくれた…。
ふふふ。嬉しいな…。
アシュラお兄様以外の誰かに優しくされたのは初めてだわ…。
それに…。あんなに沢山泣いたのも初めて…。
不思議な気持ちだった。
今まで感情を押し殺して生活してきた。
泣いたりわめいたりすれば何をされるか分からないからだ。
怜彬お姉様は泣いても怒らなかった…。
あんなに優しい人もいるのね…。
彼女にアシュラお兄様の計画を伝えることが出来て良かった。
怜彬お姉様と一緒にはいたいけど、連れ去るのは違うもの。
お兄様のやろうとしていることは悪い事だもの。
ハンカチをぎゅっと握りしめて、祈った。
何も起きませんように。と…。
コンコン
ドアがノックされる音がした。
メイドがドアを開けると怜彬お姉様が入ってきた。
「怜彬お姉様!!」
私は嬉しくって思わずベッドから飛び起きた。
「シャチー…。気分はどう?」
「もう平気です!怜彬お姉様」
「そう…良かったわ」
そう言って怜彬お姉様はしゃがんでまた私を抱きしめてくれた。
嬉しかった。
心がジュワってなって、温かくなるのを感じた。
「さっき渡そうと思ってたのだけど…」
そう言って、怜彬お姉様は沢山のプレゼント箱を持ってきてくれていた。
部屋の机の上に数えきれないほどの箱が並べられた。
「すごーい!!誕生日でもないのに…」
「ふふふ。わたしからシャチー…へのプレゼントよ」
「怜彬お姉様から?」
「ええ。気に入ってくれるといいのだけれど」
ニコニコしながら怜彬お姉様が箱を手渡してくれる。
開けてみると綺麗な花型のブローチだった。
ピンク色の可愛い花だった。
「綺麗…」
「とってもかわいいでしょ?」
「はい!とってもかわいいです」
「気にってもらえてよかったわ」
キラキラ光を反射して眩しいばかりの色を放つピンク色の宝石。
すごい…。こんな綺麗な宝石は初めて…。
怜彬お姉様はそっと手に取って私の胸に着けてくれた。
「よく似合ってる!」
「ありがとう…ございます…」
わたしは嬉しくなってまた泣きそうになった。
俯いて涙を押さえているとポンポンと怜彬お姉様がまた頭を撫でてくれた。
「じゃあ次はこっちを開けてみて!」
「はい!」
わたしは怜彬お姉様の横に座って沢山の箱を開けて中身を確認した。
どれも綺麗なアクセサリーで、今まで見たことないものばかりだった。
「こっちはアシュラ王子によ!」
「アシュラ…お兄様に?」
「ええ。喜んでもらるか分からないけど‥」
「きっと…きっと喜びます!」
嬉しかった。
アシュラお兄様の事を想ってくれている人がいる。
それだけで幸せな気持ちでいっぱいだった。
「後で戻ってきたら渡してくれる?」
「はい!渡しておきます」
「ありがとう。シャチー…」
優しく微笑みかけながらまた頭を撫でてくれた。
怜彬お姉様が本当のお姉様ならいいのに…。
温かい太陽の様な人。
美しく可憐で笑顔が素敵な宝石の妖精さん…。
ここに来て良かった…。
このプレゼントを見たらお兄様も改心してくれるかもしれない。
怜彬お姉様を連れて行こうなんて思わないかもしれない。
わたしはそんな淡い期待を抱きながら
怜彬お姉様と楽しくおしゃべりしたのだった。
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