145.誕生祭~始まりの合図~
いよいよ、誕生祭スタートです!!(^O^)/
お楽しみ頂けると幸いです☆
「怜彬様も雷覇様もとっても素敵です!!」
「ありがとう!珀樹殿」
「お二人の衣装はお揃いにしてあるんですね」
「そうなの!マダムベリーにお願いして作ってもらったの」
「お二人によくお似合いですね…首元のファーがとてもカッコいいです」
「ふふふ。ありがとう。珀樹殿もとってもかわいいわ」
今日はいよいよ誕生祭の当日。
そしてキーサ帝国のアシュラ王子とシャチー王女に会う日でもあった。
わたしと雷覇は朝早くから衣装の準備をしている。
怜秋は最終確認の為ここにはいない。
わたしと雷覇の衣装は同じ生地に同じ糸を使ってデザインも揃えて貰っている。
首元と手首にファーをあしらい、ウエスト部分は革のベルトで占めている。
足元はゆったりとしたズボンで足首にいくほどボリュームが出ているデザインだ。
髪型はお団子にしてもらって首元がスッキリ見えるようにしてもらった。
雷覇から貰った髪飾りを付けて準備ばっちりだ!
「私の衣装は怜秋様が用意して下さった衣装なんです…」
「まあ!怜秋が?」
「はい。いつも頑張ってくれているからと…」
「そうだったの…。やるわね!怜秋」
珀樹殿が着ている衣装はとてもよく似合っていた。
秋唐国の伝統的な衣装で色合いこそシックなものだが
珀樹殿の美しさをより引き立てていた。
全身黒色で統一されていて、青い糸で胸元に花柄が刺繍されていてとっても綺麗だった。
黒と青って…。
怜秋の髪の色と瞳の色だわ…。
珀樹殿の事好きなのかしら?怜秋…。
何となくだがそう感じた。
ここ数日の彼女に対する態度を見ているとそうだとしか思えなかった。
あとでこっそり怜秋に聞いてみよっと!
-誕生祭は3日間かかけて行われる。
一日目は王宮に集まった参加者たちに向けて挨拶をし開会を宣言する。
その後は各地から収穫された穀物や宝石などが献上される。
内容としてはそれだけだが、国中の貴族が集まる為、結構な時間がかかる。
そして一番多く献上した貴族だけが2日目に参加することが出来るのだ。
2日目は献上された収穫物を持って神殿へ向かう。
そして神に祈りと感謝の気持ちを捧げながら奉納の儀式を行う。
神殿は山の上にあって勾配がとても激しい。
それに空気も薄くて寒いのだ。小さい頃はこの行事が苦手だった。
何の意味があるのかさっぱり分からかったからだ。
今となっては、貴族を一つにまとめるために必要な事としてとらえている。
3日目は、ひたすらお祝いをする。
豪華な料理やお酒をふるまい、献上してくれた人達をねぎらうのだ。
朝から晩まで飲み明かし、神殿に納められなかった献上品を食べてしまうのだ。
とても全員では食べきれない事は分かっているため、余った分に関しては国民に配ることになってる。
特に貧民街には多く配分するようにして、全ての人々に行き届くように配慮している。
そこに住む彼らにとっては年に一度、豪華な食事を食べる機会だからだ。
「と…まぁ、ざっくり説明するとこんな流れでしょうか」
「なるほど…。とても面白い風習ですね」
怜秋が、アシュラ王子に対して誕生祭の概要を説明している。
横には可愛らしいシャチー王女も一緒に座って話を聞いていた。
今のところ和やかに進んでいる。
アシュラ王子も特に変わった様子はない。まだ…油断はできないんだけど…。
一通り挨拶と説明が終わったところで、わたしはシャチー王女をお茶会に招待した。
「あの…宜しければシャチー王女をお茶会にご招待したいのですが」
「素晴らしい。ありがとう。怜彬王女」
爽やかな笑顔で受け答えしてくれるアシュラ王子。
報告書で書かれていたような、人物像には見えなかった。
プラチナブロンドの長い髪を後ろに三つ編みにして結った髪型に
大きくてつぶらなスミレのような紫に黄金色が混ざりあう宝石。アメトリンのような瞳。
複雑な光をはなつ瞳は見るもの全てを魅了しそうなほどの繊細な輝きを持っていた。
「ありがとうございます…怜彬王女」
恥ずかしそうにシャチー王女もお礼を述べた。
アシュラ王子と同じで綺麗なプラチナブロンド。髪の長さは腰まで伸びて緩やかにウェーブしている。
大きくてつぶらなピンクサファイアのような瞳。
長いまつ毛に小さな形のいい唇はまさに美少女という呼び名にふさわしいと思った。
「では…ご案内しますね」
「じゃあ…また後でねシャチー」
「はい!アシュラお兄様」
わたしは、当初決まっていた通りにシャチー王女をおもてなしするためわたしの庭園へ案内をした。
いつものテラスへ行き、リンリンに紅茶を入れてもらった。
わたし以外には珀樹殿も一緒に同席してくれている。
「シャチー王女。これから3日間宜しくお願いしますね」
「はい!こちらこそよろしくお願いします」
まるでお人形の様に可愛い笑顔で受け答えするシャチー王女。
彼女が本当に…、秋唐国の宝石が全部欲しいと言っていたのかしら…。
「シャチー王女は、わたしの国の宝石を気に入ってくださったんですよね?」
「はい!本で読んでみて、欲しいなって思いました」
「どんな宝石を?」
「えーと…。あの…」
「シャチー王女?」
すごくもじもじして恥ずかしそうに下を向いているシャチー王女。
可愛い!
わたしは抱き着きたくなる衝動をグッとこらえて彼女の答えを待った。
「怜彬王女のような…瞳の宝石です」
「まぁ!アメジストですね」
「はい!本で怜彬様の事を読んでとっても綺麗だなって…」
ん?本?
私の事が書いている?
嫌な予感がした…。だいたいこの流れは…。
「私大ファンなんです!怜彬王女と雷覇国王のラブロマンス小説の」
「あー…」
やっぱりかー!!!
そんな気がしたのよ!わたしの事が書いてある本と言えばもうそれしかない。
何で…キーサ帝国の人にまで知られているの?
夏陽国と秋唐国だけの販売じゃなかった?
「だから…アシュラお兄様にお願いしたんです。宝石の妖精さんに会ってみたいって」
「まぁ…そうだったんですね」
「怜彬王女は宝石の妖精さんなんですよね?」
「えっ?」
綺麗な澄んだ瞳を輝かせながらシャチー王女が尋ねてくる。
ううう!なんだか良心が痛む!別に妖精でもなんでもないんだけどなー!!
でも本当の事を言うと傷つけてしまいそうだし…。
「シャチー王女様…。怜彬殿は自分から妖精とは言えないのです」
「まぁ!どうしてなの?」
「言ってしまうと、怜彬殿は妖精の国へ帰らなければならないのです」
「そうだったのね…。ごめんなさい…怜彬王女」
ナイス!!珀樹殿!!
わたしは思わず心の中で大きな拍手をした。
夢を壊さない程度に話をうまくかわしてくれた。
「それより、シャチー王女。わたしのことは怜彬と呼んでください」
「え…?でも…」
「同じ王女ですし、その方がわたしも話しやすいです」
「分かりました…じゃあ…怜彬お姉様と…呼んでもいいですか?」
「ええ。いいですよ!」
上目遣いの潤んだ瞳でシャチー王女にお願いされてしまった。
ヤバい…。可愛すぎるんですけど…。
わたしはまた、抱きしめたい衝動をグッと堪えた。
「あの…怜彬お姉様…」
「どうしたんですか?シャチー」
「恋をするってどんな気持ちですか?」
「へっ…?」
持っていたティーカップを思わず落としそうになってしまった。
恋!?シャチー王女が?
まだ8歳なのに…。
「アシュラお兄様を好きって思う気持ちと…同じですか…?」
「そうですね…。家族を好きに想う気持ちとはまた違います」
「そうなのですか…」
「その人の事を考えると幸せで嬉しくなって…でもぎゅっと胸も苦しくなる…そんな複雑な気持ちになります」
「まぁ…そうなのですね‥‥」
「シャチーは誰か好きな人はいるんですか?」
「いいえ…。誰も好きになったことなくて…」
「じゃあこれからですね!」
「‥‥」
急にシャチー王女が口を摘むんで黙り込んでしまった。
わたし‥何か変な事を言ったのかしら?
自分のドレスをぎゅっと握りしめて俯くシャチー王女。
何か思いつめた表情をしていた。
「あの…怜彬お姉様と…二人だけで話をしたいんですが…」
「シャチー王女…それは」
珀樹殿が断ろとする。
わたしは咄嗟にそれを止めた。
なんだか二人で話を聞いた方が良い気がしたのだ。
「しかし…怜彬殿」
「大丈夫よ!ちょっとだけ庭を歩きながら話をするわ」
「分かりました。あまり遠くへは行かないで下さいね…」
「ありがとう…珀樹殿」
わたしは立ち上がってシャチー王女の手を取った。
「シャチー。一緒に歩きながら話をしませんか?」
「…はい!」
小さな少女が嬉しそうな顔でこちらを見上げてくる。
一体…何をそんなに思い詰めているのだろうか…?
さっき見せたシャチー王女が見せた表情が忘れられなかった。
そして水覇殿から聞いていた報告とは異なる人物像にわたしは少し戸惑っていた。
「ここのお花は全部、わたしがお世話してるんです」
「すごい…これぜんぶですか…?」
「はい!とっても綺麗でしょう?」」
「とっても…きれいです…」
「シャチー。何か悩みでもあるんですか?」
わたしはかがんで彼女の目線になるようにした。
やっぱり表情は暗い…。
さっきまでにこやかに笑っていた面影は今はなかった。
「…怜彬…おねえさま…」
「はい…」
シャチー王女がぎゅっとわたしの手を握り締めてくる。
とても緊張している様子だった。
「怜彬お姉さまは…【死神姫】とも…呼ばれてるんですよね…?」
「シャチー…どうしてそんな事を…」
とても真剣な表情で真っ直ぐわたしを見つめるシャチー王女。
どうして…彼女が【死神姫】だなんて…。
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怜彬達が、シャチー王女を連れて部屋を出て行ったあと
残った俺と怜秋殿。そしてアシュラ王子で貿易の話をすることにした。
「それでは…我々は貿易の話をしましょう」
「そうですね…。でもまずは…今回は急な申し出にも関わらず、ご対応頂き感謝します」
「こちらこそ、いい取引の機会を頂き感謝します」
淡々と話をするめる怜秋殿。
今の段階ではアシュラ王子に変わった様子はない。むしろ良すぎると言っていい。
「秋唐国の宝石は現物も見ましたが本当に素晴らしいです。さすが…宝石の国と呼ばれているだけの事はある!」
「ありがとうございます。アシュラ王子…大変恐縮です」
「それから…急遽、誕生祭に参加させていただきありがとうございます」
「いえ…他国の方からしたら面白くないかもしれませんが…」
「シャチーにどうしても見せたかったんです…。あの子は外に出たことがあまりないので…」
「そうなんですか…。とてもシャチー王女の事を大事にされてるんですね」
「歳が離れているからかもしれません…。可愛くてしょうがないんです」
屈託のない笑顔でかたる、アシュラ王子。
妹を大切に想っているのは本当のようだった。
「その気持ちはよく分かります。僕も姉が大切ですから…」
「怜秋国王もですか!嬉しい限りです」
「話はそれくらいにして、貿易の話を進めないか?」
「あっと…これはすみません…。妹の事になるとつい…」
「いや…。午後からは誕生祭が控えている。なるべくスムーズにした方が良いと思ってな」
「ありがとうございます。雷覇国王」
途中で話を遮ったのにも関わらず、穏やかな対応を見せるアシュラ王子。
水覇から聞いていた話とは印象が違っていた。
まぁ…。最初から本音を出す奴はいないな…。
俺は二人のやり取りを傍でじっと見ていた。
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