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144.誕生祭~前日だけどわりとまったり~

評価して下さった方ありがとうございます!!(^O^)/

とっても嬉しいです☆

皆さんに楽しんでもらえるよう誕生祭も全力で書ききります!!


「ガハハハッ!!雷覇らいは殿、今回は前の様にはいかんぞ!」


「望むところです。桐生きりゅう殿」


何やってんだか…。

誕生祭を明日に控えた今日。桐生きりゅうおじ様が雷覇らいはに試合を申し込んできた。

前回未決着で終わってしまった試合をもう一度したいそうだ。

それも…。桐生きりゅうおじ様が勝手に試合放棄したからなのだけど…。

朝から元気なこのおじは、相変わらずムキムキな体をゴキゴキ言わせながら準備している。

雷覇らいはも剣を手に持ち感触を確かめている。


わたしと芙雅はすがおば様は少し離れた場所で見学していた。

二人ともノリノリじゃない…。


「じゃあやるぞ!二人ともいいか?」


サイガが今回も審判役を買って出てくれた。有難い!!


「ガハハハッ!儂はいつでもいいぞ!」


「俺も問題ない」


「ようい!初め!!」



キィィィン!!!!


激しく剣と剣をぶつけあう雷覇らいは桐生きりゅうおじ様。

朝からよくあれだけ動けるわね…。

二人は中庭で試合をしているのだが、珍しいのか見学者がどんどん増えてきている。

二人をぐるりと取り囲むようにして皆思い思いに応援していた。


そんなことはお構いなしにガンガン攻め合う二人。

雷覇らいはがしなやかに桐生きりゅうおじ様の攻撃をかわしながら

どんどん間合いの中に入っていって攻め込んでいく。

桐生きりゅうおじ様も負けじと荒々しい動きで雷覇らいはの攻撃を弾き返している。


二人とも楽しそう…。


怜彬れいりんちゃん。ありがとうね…」


芙雅はすがおば様…」


「あの人実は自分の息子と試合をしたかったのだけど、小さい頃から息子は全くその気がなくて…」


「そうだったんですか…」


「ええ。だから、雷覇らいは様がああしてお相手して下さってとっても喜んでると思うわ」


「なら、良かったです」


嬉しそうな表情で二人の試合を見守る芙雅はすがおば様。

そうか…。桐生きりゅうおじ様は息子さんと一緒に試合をしたかったのか…。

たしかに息子さんは大人しそうな感じの人でとても桐生きりゅうおじ様の子供には見えなかった。

剣術よりも学問に精通しておりとても博識でおじさまの仕事を陰ながら支えているそうだ。


雷覇らいは様とはいつ知り合ったの?」


「ええと…。一回目に嫁いだ時に」


「あら‥そうだったの」


「ええ。結婚相手の息子さんが雷覇らいはだったんです」


「まぁ!ご縁があったのね…」


「そうですね…。色々ありましたけど、雷覇らいはと会ってよかったと思ってます」


「ふふふ。良かったわ…。怜彬れいりんちゃんが幸せそうで…」


優しいまなざしで芙雅はすがおば様に見つめられた。

おば様もわたしの事を心配してくれたのかな…。

そう思うとくすぐったいような…恥ずかしいような気持になった。


「勝負あり!!勝者、雷覇らいは!!」


「わー!!!」


芙雅はすがおば様と話している間に、決着がついてしまった。

ふたりとも清々しい顔で握手している。

桐生きりゅうおじ様は息が上がって、肩を上げ下げしてるけど

雷覇らいはは全く息が上がっていなかった。

涼しい顔で桐生きりゅうおじ様と話をしている。


「ガハハハッ!いやー!!負けた。負けた」


「いい勝負でしたよ。桐生きりゅう殿」


「うむ!付き合ってくれて感謝する!雷覇らいは殿!!」


「俺の方こそ、楽しかったです」


「そうか。そうか。ガハハハッ!」


またすごい音を立てながら雷覇らいはの背中をバシバシ叩く桐生きりゅうおじ様。

よっぽど試合が出来たのが嬉しいのか、ニコニコしながら話している。

これで…。満足してくれるといいのだけれど…。


「よし!試合の後は酒だ!!!」


「いいですね!」


芙雅はすが!すぐに用意させてくれ!!」


「はいはい。わかりました」


やれやれと言いながらゆっくりと立ち上がりおじさまの元へ向かっていった。

朝からお酒だなんて…。

さすが、桐生きりゅうおじ様だわ!

雷覇らいはも飲むって言っているし…わたしは怜秋れいしゅうの所にでも行こうかな…。

あのおじさまの事だ、お酒をのむとややこしい事を言い出すに違いない。

一緒にいるのは避けたかった。


怜彬れいりん!ちょっと行ってくるよ!」


「行ってらっしゃい!飲み過ぎないでね」


大きく手を振り、楽しそうに桐生きりゅうおじ様と王宮に戻って行った雷覇らいは

ふぅ…。とにかく、試合が無事に終わって良かったわ。

さっきまでできていた人だかりもまばらになり自然と解散する流れになっていた。


わたしは中庭を後にして、執務室にいる怜秋れいしゅうの元へ向かった。

ここに来るのも久しぶりだ。

最近は夏陽国かようこくで過ごしているから半年以上来ていない。

ノックして中に入ると、珀樹はくじゅ殿と仕事している怜秋れいしゅうがいた。


「姉さん!どうしたの?」


嬉しそうにこちらに駆け寄ってくる怜秋れいしゅう

相変わらず…かわいいわ!!


「ちょっと時間が出来たから怜秋れいしゅうの顔を見に来たの」


「そうなんだ!じゃあ、一緒にお茶にしよう」


「お仕事は大丈夫なの?」


「うん!ちょうどひと段落ついたところだから」


「じゃあ、わたしはお茶の用意をしてきますね」


そう言いながら珀樹はくじゅ殿が部屋から出て行った。

ふふふ。久しぶりに怜秋れいしゅうとゆっくり話せるなんて!


「おじさんと雷覇らいは殿の試合はどうだったの?」


雷覇らいはが勝ったわ」


「そうなんだ。二人はどこにいるの?」


「お酒を飲みに行ってしまったわ」


「え…。朝からお酒?」


ぎょっとした顔の怜秋れいしゅう

言いたいことはわかるわ!


桐生きりゅうおじ様がご機嫌だからそっとしておこうと思って…」


「それもそうだね。だから姉さんはこっちに来たんだね!」


「うん。こっちの方が安全だと思って…」


「間違いなね!」


怜秋れいしゅうと笑い合って話をしていると珀樹はくじゅ殿が戻ってきた。

お茶のいい香り…。

久しぶりに飲む秋唐国しゅうとうこくのお茶だった。

夏陽国かようこくに行ってからはリョクチャを飲むことが多い。

わたしはゆっくり冷ましながらお茶を飲んだ。


「明日はいよいよ、誕生祭ですね」


「そうね!無事に終わることを祈るばかりだわ」


「そうだね…今年はイレギュラーが多いから…」


「何が起きるか分かりませんものね…」


三人でお茶をしながら、明日の誕生祭について話をした。

準備は完了していてあとはアシュラ王子とシャチー王女を迎え入れるだけだった。


「ほんとうに…珀樹はくじゅ殿がいてくれて良かったわ!」


「いえ…そんな…私なんて」


「僕もそう思う!」


怜秋れいしゅう様…」


恥ずかしそうに頬を赤らめて照れている珀樹はくじゅ殿。

最初に会った頃と比べるととても表情が豊かになっている。

照れてる珀樹はくじゅ殿…。かわいいわ!!


珀樹はくじゅ殿の働きぶりはいつも怜秋れいしゅうから手紙で聞いているの!」


「そうだったんですか…」


「仕事が早くてなんでもこなしてくれるから助かってるって!」


「ありがとうございます…。お役に立ててうれしいです」


「姉さん!恥ずかしいから手紙の事は言わないでよ!」


怜秋れいしゅうまで顔を真っ赤にして!

そんなに恥ずかしい内容なのかしら?


「ごめんなさい。嬉しくってつい…」


「お二人には感謝してもしきれません…こんな私を使って下さって…」


「そんな事ない!珀樹はくじゅ殿は優秀な人だ」


「そうよ!こんななんて言わないで!」


「お二人とも…」


「姉さんが言っていた通り、僕も珀樹はくじゅ殿に感謝してるんだ」


怜秋れいしゅう様…」


まぁ!怜秋れいしゅうがここまで言うなんて!

珀樹はくじゅ殿の仕事ぶりはとても優秀なのね。

電気事業も順調に進んでいて年内には試験運用ができるそうだった。

まだ半年も経ってないのに…。すごいわね。


珀樹はくじゅ殿がずっと秋唐国しゅうとうこくにいてくれればいいのに!」


「えっ…?」


びっくりした顔でこちらを見てきた珀樹はくじゅ殿。

えっ?わたし…何か変な事言った?


「そうだよ!それがいい」


怜秋れいしゅう様…」


秋唐国しゅうとうこくへ移住すればいいんだよ!」


「いいわね!珀樹はくじゅ殿さえよければだけど」


「…いいんですか?」


「もちろんよ」


そう言った瞬間、珀樹はくじゅ殿がポロポロと泣き出してしまった。

わたしと怜秋れいしゅうは慌ててフォローした。


「ごめんなさい!嫌なら無理にしなくていいから」


「そうだよ。珀樹はくじゅ殿が決めていいんだからね!」


「いえ…違うんです…」


怜秋れいしゅうがそっと横に座ってハンカチを差し出した。

それを受け取って、珀樹はくじゅ殿が鼻をすすりながら涙を拭う。


「私…嬉しくて…」


珀樹はくじゅ殿…」


「こんな…私を必要と…して下さって‥‥ほんとに…」


声を詰まらせながら必死に言葉を繋ごうとする珀樹はくじゅ殿。

聞けば、彼女は小さい頃から出来のいい弟達に比較されてきて

実家では居場所があまりなかったそうだ。

その上、雷覇らいはとの婚約をすることも出来ず、ますます立場が悪くなる一方。

孤立しているような状態だった。

あの時雷覇らいはに必死に婚約に縋ったのも家からの指示もあったからだと言っていた。


その後わたしとの電気事業の仕事に携わってから家族との関係も変わっていき

今では家族の方から珀樹はくじゅ殿に頼ってきているそうだった。


「ずっと…自分に自信がなかったんです…」


珀樹はくじゅ殿…」


「何をしても…比較されて…褒めてもらえなくて…」


「だから物凄く努力してきたのね?」


「…!はい…」


珀樹はくじゅ殿の資料を見た時や技術の話しを聞いてすぐにわかったわ。この人は努力してきた人だって…」


怜彬れいりん様…」


またポロポロと大粒の涙を流す珀樹はくじゅ殿。

彼女がここまで感情的になるくらいだ。

よっぽど今まで辛かったのだろう。


「おふたりに…仕事を…認めてもらった…だけでなく…この国にいていいと言われて…わたし…」


珀樹はくじゅ殿…。無理に話さなくていいよ」


怜秋れいしゅうが優しい手つきで珀樹はくじゅ殿の背中をさすっていた。

今は彼の方が年上に見える。

怜秋れいしゅうも成長したのね!


「じゃあ早速、移住の準備をしないとね!」


「そうだね!書類は僕が準備しておくよ」


怜秋れいしゅう様…。怜彬れいりん様…」


珀樹はくじゅ殿は真っ赤に目を腫らしていたけど表情は元気そうだった。


「家具やお部屋も整えないとね!」


「うん。今も王宮に住んでもらってるけど、まだ仮住まいだからね」


「ありがとう…ございます…」


珀樹はくじゅ殿の思わぬ一面に触れて、彼女の人となりがまた知れて良かった。

移住については家の許可さえ出ればすぐにできると言ってくれた。

彼女が本格的に秋唐国しゅうとうこくに住んでくれれば

わたしも安心して夏陽国かようこくに戻ることが出来る。


珀樹はくじゅ殿!これからもよろしくね」


「はい…!怜彬れいりん様」


泣きながら笑顔で答えてくれた。

その後は彼女が落ち着くまで怜秋れいしゅうと三人で他愛もない話をした。


珀樹はくじゅ殿の好きな食べ物は激辛な料理で

小物はフリルやレースが付いたような可愛い系が多いそうだ。…以外だ!


そんな感じで誕生祭の前日は割とのんびりと過ごした。


最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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