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139.誕生祭~開催に向けて~

怜秋れいしゅう!久しぶり」


「久しぶり!姉さん。元気だった?」


「ええ。とっても元気よ」


怜彬れいりん様。お久しぶりです」


珀樹はくじゅ殿!お久しぶり。お元気そうで何よりだわ」


秋唐国しゅうとうこくの誕生祭に参加するため、わたしと雷覇らいは

少し早めに秋唐国しゅうとうこくに戻ってきた。

あと1週間後には誕生祭が開催される。

それまでの期間、怜秋れいしゅう達の準備を手伝おうという事になったのだ。


怜秋れいしゅう殿。久しいな!」


雷覇らいは殿…。相変わらずお元気そうでなによりです」


うーん…。この二人は相変わらずって感じね。

会うなり睨みあって笑ってはいるものの笑顔がギスギスしている。


怜彬れいりん様と雷覇らいは様のお部屋は滞在用に準備しております」


「まぁ!ありがとう。珀樹はくじゅ殿」


「心使い感謝する。珀樹はくじゅ殿」


「恐れ入ります。お二人にご満足頂けるよう誠心誠意、お世話させていただきます」


恭しくお辞儀された後、珀樹はくじゅ殿に部屋まで案内してもらった。

わたしが使っていた部屋では少し狭いだろうと新しく別の部屋を用意してくれていた。

よく考えてみたら秋唐国しゅうとうこくでは雷覇らいはから逃げていたから

一緒の部屋なんてものはなかった。大体は庭か応接室で過ごしていたっけ?


「わぁ!とっても綺麗になってるわね~」


「少し内装を変えました。家具はほとんどそのままです」


「ありがとう。とっても素敵な部屋になってるわ」


白と青を基調とした清潔感のある内装に変わっていた。

ここはかつて父とその正室(父の一人目の奥さん)が使っていた部屋で

父が亡くなってからは封鎖していたけど、珀樹はくじゅ殿が綺麗に整えてくれた。

かつての面影はほとんどない。これなら、雷覇らいはと落ち着いて過ごすことができそうだわ。


「あ!これ…怜秋れいしゅう珀樹はくじゅ殿にお土産よ!」


「わぁ…ありがとう。姉さん」


「ありがとうございます。怜彬れいりん様」


わたしは夏陽国かようこくで購入してきた、お菓子とバル爺のお店で見繕ってもらった

お土産を二人に渡した。

怜秋れいしゅうには時計を、珀樹はくじゅ殿にはブレスレットをプレゼントした。


「こんな…高価な物いただいてもいいんですか?」


「遠慮しないで!珀樹はくじゅ殿にはこれからずっとお世話になるから」


「そうだよ。珀樹はくじゅ殿。ブレスレットだけじゃ足りないかもしれないよ?」


「お二人とも…。ありがとうございます。大切に致します…」


「ふふふ。そう言ってもらえて嬉しいわ」


すこし瞳を潤ませながら、珀樹はくじゅ殿がお土産を受け取ってくれた。

ほんとうに…。健気で優しいいい人よね~。

今回の誕生祭の準備も珀樹はくじゅ殿が中心になって取り仕切ってくれているそうだ。

怜秋れいしゅうもかなり助かっていると手紙に書いてあった。

珀樹はくじゅ殿とはこれから…長いお付き合いになりそうな予感がしてるのよね~。ふふふ。


「では、私達はこれで…お二人は長旅でお疲れでしょうから、ゆっくりお休みください」


「じゃあ、また明日ね!姉さん」


「ありがとう。二人とも!また明日ね」


誕生祭の準備は明日から行う事にして、今日はゆっくりさせてもらう事になった。

毎回…秋唐国しゅうとうこくまでの距離。2週間は重労働だ。


怜彬れいりん…。疲れていなければ少し散歩しないか?」


「いいわよ。どこに行きたいの?」


怜彬れいりんの庭に行きたい!」


「クス…わかったわ。行きましょう」


雷覇らいはったら…。どうしたのかしら?

わたしと雷覇らいはは身軽な格好に着替えて庭園へ向かった。

庭園へ行くのも凄く久しぶりね…。

以前来た時はリョクチャ事業の事を中心に行動していたから、全く立ち寄っていなかった。

お庭の世話も庭師に任せっきりだった。


「どうしたの?急に私の庭に行きたいだなんて…」


「もう一度ちゃんと見てみたいと思ってな。以前来た時は怜彬れいりんしか見てなかったから…」


「そう…」


いきなり恥ずかくなるようなことを言われて思わず俯いてしまった。

確かに…。あの時はゴリゴリに結婚を迫られている時だったわね…。

今思うと随分遠い昔の事のように感じる。


怜彬れいりんが育って生きてきた場所をちゃんと知りたいと思ったんだ」


雷覇らいは…」


「庭以外にも怜彬れいりんの思い出の場所があるなら行ってみたい!」


「わかったわ。じゃあ滞在中に案内するわね」


「ああ。ありがとう。怜彬れいりん


軽く頬に口づけされながら、二人で並んで庭園に向かった。

わたしがお世話する前と変わらず綺麗に保たれていた。ほんとうに…うちの庭師は優秀だわ!


「あの木はラカンと一緒に植えた木よ」


「綺麗だな…。ちょうど今が紅葉の季節なんだな」


「ええ。寒くなってくると葉っぱの色が緑から赤くなるの」


「なるほど…。温度差で色が変わるのか。面白いな」


「あ!あの花はお母様が好きだった花よ」


「そうか…。何という花だ?」


「あじさいというの。雨の日にしか咲かない珍しい花なの」


「雨の日だけ…すごいな」


雷覇らいはがかがんでまじまじと花を眺めている。

ふふふ。小さい子供みたいで可愛い…。


「まだお母様が元気だった時、雨の日に傘をさして抱っこされながら一緒に見ていたわ」


「そうだったのか…」


「小さな花が沢山集まって、遠くから見ると一つの花みたいに見えるの」


「じゃあ、雨が降ったらまた見に来よう!」


「うん!」


そう言ってまた手を繋いで再び歩き出した。

懐かしい…。おぼろげだけど母と一緒に庭を回ったことを思い出した。

あの時はまだ母は元気でよく一緒に連れて歩いてくれていた。

側にはラカンもいたっけ…。



「ラカンともよくお庭を一緒に散歩していたの」


「そうか」


「たくさん歩いて疲れたらいつもラカンが抱っこして歩いてくれてた」


「ラカンは本当に面倒見のいい奴だな…」


「ええ。わたしにとっては家族も同然だから…」


母が亡くなった時は毎晩付き添ってわたしが眠るまで手を握ってくれてた。

炎覇えんはが亡くなった時は、毎日部屋に花を飾ってくれていた…。

思い返せば、ラカンはどんな時もわたしの傍にいてくれた。


「そう言えば…。ラカンは最近リヨウと仲がいいのよ?知ってた?」


「え?そうなのか…。全然知らなかった」


「ふふふ。実はね建国祭から知り合って時々二人で会ってるみたいなの」


「あの二人がなー。意外な組み合わせだ」


目を丸くして雷覇らいはが驚いた表情を見せた。

あの二人が仲良くなったことは、まだ周囲には知られていないみたいだった。

二人がくっつくのも時間の問題ね…。わたしはそんな事を考えていた。


一通り庭園を見えて回ったところで四阿に行って休憩することにした。

ここも…。以前来た時は雷覇らいはが勝手に押しかけてきたんだっけ…。

いつもいつも…。わたしがお城のどこにいても必ず会いに来てくれてた。


「ここに来るのも久しぶりだな…。懐かしいな」


「ふふふ。そうね…。あの時はすっごく嫌だったけど…」


「えっ…!そんなにか…」


「気が付いてなかったの?物凄い迷惑だって思ってたわ」


「それは…すまない‥‥」


雷覇らいはがしょんぼりして、叱られた犬みたいになってしまった。

時々わんこ雷覇らいはになる彼はとってもかわいい。


「あの時は雷覇らいはが嫌というよりかは、雷覇らいはといると炎覇えんはの事がよぎるから嫌だったの…」


怜彬れいりん…」


雷覇らいはって炎覇えんはによく似ているでしょう?だから余計に思い出してしまって…」


「そうだったのか…」


「でも、雷覇らいはと話していると不思議と思い出さないの!きっとどうやったら結婚を諦めてくれるか?って考えてたからだわ」


「うーん…。嬉しいような…それは複雑な気持ちだな…」


「あ!雷覇らいはが送ってくれた草木があそこにあるのよ」


「え?どれだ?」


わたしは立って少し右前を指さした。

雷覇らいは秋唐国しゅうとうこくへ初めて来た日。

大量に送られてきた草木を植えた場所だった。


「あの背の高いやつとその隣あたりは全部、雷覇らいはがくれたものよ」


「そうか…怜彬れいりんはちゃんと受け取ってくれたんだな」


「もちろんよ!綺麗な草木だったから嬉しかったわ」


「そっか…よかった!」


そう言うと雷覇らいはがくしゃっとほころんだ笑顔を見せた。

胸がぎゅっとして締付けられるような感じがした。

ああ。この笑顔…弱いな~。

普段、雷覇らいはが見せるどんな顔より今の笑顔が好きだ。

その笑顔を見ただけで泣きそうなくらい幸せな気持ちになる。

わたしは雷覇らいはの腕にぎゅっと抱き着いた。


怜彬れいりん?」


「なんでもない…ちょっと…こうしたかっただけ」


雷覇らいはは何も言わず抱きしめ返してくれた。

温かい…。

雷覇らいはが優しい手つきで髪を撫でてくれてる…。

ほっとする…。彼の体温や肌が触れる感触…。大きな布団にくるまっているような安堵感だった。


怜彬れいりん…そろそろ戻ろうか?」


「うん…。そうね。明日も朝から準備があるし」


「疲れてないか?俺が…部屋まで抱えていこうか?」


「大丈夫!」


雷覇らいはの手を握って歩き出す。

彼がわたしを気遣ってくれることも今こうして傍にいてくれることも

何もかも幸福な事だ…。当たり前じゃない。

わたしは彼と過ごす一つ一つの時間を大切にしようと思ったのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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