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12.夏陽国へ

いよいよ夏陽国編です!!(^O^)/

*****************************************

あなたがいれば何もいらない。なにも…。

ただ傍に居てくれるだけでよかった。そこに居てくくれればわたしは何もいらなかった。

ずっと笑って、手を握ったり、一緒にご飯を食べたり…。

そんな何気ない当たり前な日常でいい。それだけでいいのに…。


ポロポロとこぼれ落ちる。すく上げるけど、何もつかめない。

待って!!行かないで!!わたしを置いていかないで。一人にしないで!!


どんなに手を伸ばしても、叫んでも届かない。何度も何度も手を伸ばしながら叫ぶ。

でも…・。わたしの手は空を切るだけで届かなかった…。

わたしは夢を見ていた。もうずっと見ていなかったのに…。

雷覇らいは殿に会ってから頻繁に見るようになった。もう思い出したくもないのに。

*****************************************


「姫様。もうすぐ到着します。大丈夫ですか?」


「う…ん。リンリン?」


うつらうつらしながら窓の外を眺めた。どうやらいつの間にか寝てしまっていたらしい。

目の前には広陵とした土地が広がっていた。山岳地帯で山に囲まれている秋唐国しゅうとこくの景色とは全く違っていた。

わたしは今、夏陽国かようこくにリンリンと一緒に向かっている。

婚約期間の取り決めでもある「できる限りお互いに交流すること」そのために一ヶ月前に夏陽国かようこくに訪問することが決まった。


雷覇らいは殿が帰ってすぐのことだった。こんなに早く対面にすることになるなんて。

うう…。気まずい。できれば会いたくない。このまま馬車が壊れたりしないかな?そんな事言ったらまたリンリンに怒られそうだけど。

ちょうど一ヶ月前に、温室で話したきり。あの日、逃げてしまった日。


でも彼はその後には何事もなかったように手紙を何通も送ってきた。

どの手紙も体調を気遣うものばかりだった。

本当に…。優しい人ね…。いっそう罵ってくれたらいいのに。そうしたら楽になれる。

あの人にそっくり…。優しいところも、真っ直ぐなところも…。


どんな事をしても、態度の変わらない雷覇らいは殿が嫌だった。

というより怖かった。

彼のそれは本気でわたしを好きだと言っているような気がした。

決して揺らがない。強い意志を感じた。

だったらわたしにできることはありのままを伝えることだけな気がした。

飾らない、そのままの自分をさらけ出すしか無い。

ただ、それが怖くて今までずっと逃げたのだけど。


「ずっと馬車に乗っていたので酔ってしまったのでは?」


リンリンが心配そうに尋ねてくれる。今日一緒に来てくれるのがリンリンで良かった。

ちょうど4年前に輿入れしたときも、リンリンが同伴してくれた。わたしの侍女として。


「多分そうね…。胸がムカムカするもの。あと頭も痛い」


「では到着しましたらすぐにお休みになられるように伝えましょう」


「ありがとう…。お願いね…」


はぁ。ずんと胸に鉛のような思いを抱えたままわたしは夏陽国かようこくに到着するのだった。



怜琳れいりん殿は大丈夫なのか?」


扉の向こう側で雷覇らいは殿が心配する声が聞こえてきた。

どうやら、部屋に尋ねてきた雷覇らいは殿をリンリンが追い返しているようだった。


「問題ございません。馬車に酔ってしまわれただけです。このままゆっくり休まれたら回復されると思います。今日はどうかお引取りを…。」


「そうか…。何かあったらすぐにわたしに知らせてくれ」


「はい。かしこまりました。雷覇らいは様」


彼は納得したのか立ち去ってしまった。少ししてリンリンが部屋に入ってきた。

とても心配そうにわたしの顔を覗き込む。

普段は厳しいのに…こんな時はすごく優しいのよね。


「大丈夫ですか?お嬢様。何かお飲み物でもお持ちしましょうか?」


「うん。冷たい飲み物が飲みたいわ」


「かしこまりました」


起き上がって、部屋を眺めた。

木目調の家具で整えられていて落ち着いた雰囲気の部屋だった。

淡いピンクや黄色の麻やリネン素材のクッションにカバー。

観葉植物もたくさん飾られていて森の中にいるみたいな感じがした。

わたしが植物好きなのを知っていて整えてくれたのかもしれない。


窓から外を眺める。4年前と変わらない景色が広がっていた。

もっと変わっていると思っていたけど

4年だけではそうはならなかったらしい。

どこまでも続く草木のない広陵とした土地。畑を耕すことも作物を育てることも

難しいこの土地では、武器を作るための工場が多く立ち並んでいる。


「お嬢様。冷たいレモン水をお持ちしました」


「ありがとう。リンリン」


わたしはレモン水を飲みながら。明日、雷覇らいは殿にどんな顔をして会えばいいか考えていた。


*-------------------------------------*


「まだ着かないのか?遅くないか?迎えに行ったほうがいいのではないのか?」


ソワソワしながら雷覇らいは殿が大広間でウロウロしていた。

あと数時間もすれば、怜琳れいりんがこの国に来る。

4年ぶりに。考えるだけで浮き立つ。

前回会ってから一ヶ月も待った。とにかく早く彼女の顔が見たかった。


「いやいや。落ち着けよ、相変わらず気持ち悪いなお前は」


「そうだよ、兄さん。余裕の無い男は嫌われるよ?」


サイガと水覇すいはの両方に責められる。二人共遠慮がないから言葉が辛辣だ。

こっちは気が気じゃないというのに…。

水覇すいはは椅子に腰掛けて本を読んでいるし、サイガは何か食べてるし。

まったく自由だなお前たちは!!

怜琳れいりんの様子が気になって仕方かなった。

一ヶ月前に温室で会ったきりだ。かなり気まずい別れ方をしてしまった。

彼女のことだ。きっと、気に病んでいるに違いない。

だから気にすることがないように、いつも通りの手紙を送った。


「毎日手紙を送るとか、ほんとよくやるよなぁ~」


「本当に兄さんは気持ち悪いですね」


「だから何なんだよ!!お前たちは!文句ばかり言うならさっさと帰れ!」


「いや無理でしょ?俺従者だし」


「僕も無理だよ。夏陽国かようこくの国王だし」


サイガでさえ相手をするのが面倒なのに、水覇すいはまで加わると質が悪い。むかしからコイツらは一緒になって俺の悪口を言ってくる。


そうこうしている間に、怜琳れいりんを乗せた馬車が到着したとの知らせが来た。

急いで迎えに行こうとしたが、体調が悪いということで、会うことは叶わなかった。


*-------------------------------------*


夏陽国かようこくに到着した次の日、応接室に通されたわたしは、雷覇らいは殿たちと挨拶を交わした。


怜琳れいりん殿!!久しぶりだな!…体調は大丈夫なのか?」


雷覇らいは殿。お久しぶりです。昨日はご挨拶できず申し訳ございませんでした。

体調はもう大丈夫です。ありがとうございます」


相変わらず、オーラが凄い!この人。まじでメンタルすごいわね…。

わたしは、どんな顔して会えばいいかわからなくて全然眠れなかったのに!!!

いつも通りとか。わたしはめっちゃ気まずいのに~。

傍には、従者であるサイガと、水覇すいは殿がいた。


怜琳れいりん殿、お久しぶりですね。遠いところよくお出でくださいました。一週間の滞在ですが、ゆっくり過ごしてくださいね」


ドス黒イケメン国王。水覇すいは殿にかしこまって挨拶をされてしまった。

うーん。相変わらず今日も何考えているかわからないですね!!


「お久しぶりっすね!!お姫様!!」


草食系・イケメンサイガはいつも通りだ~。なんか和む。ありがとう!!そして今日もフワフワ健在ですね!


「来る途中、馬車に酔ってしまわれてたとか?山岳地帯を超えてくるのは大変でしたでしょう?」


「そうですね。くねくねした道が多くて…。それで酔ってしまったと思います」


「お帰りの際には酔い止めを準備させましょう」


「ありがとうございます!水覇すいは殿」


「では、我々はそろそろ失礼しますね」


「はい…。また後ほど…」


一通り挨拶も終わったところで、雷覇らいは殿と二人きりになってしまった!!早い!!

まぁそうりゃ、そうよね!婚約期間の訪問だもの。一応!()()()()婚約者だし…。

でも、あの二人にもうちょっといてほしかったな~。気まずい…。


怜琳れいりん、昨日はあんまり眠れなかったのか?顔色が良くない」


「そんな事ないですよ?」


うん?もう呼び捨てなのね~。切り替えはや~。

そう言いながら、ナチュラルにわたしの頬にふれる雷覇らいは殿。

そして今日も安定の横に座るスタイルです。

もう慣れたけどね!!この距離感!!


「無理はするな。辛くなったらすぐに言え」


「はい…。わかりました」


辛いです!今がすごく辛いです!できたら帰りたいです。今すぐにでも!!!


「今日はゆっくり過ごそう。怜琳れいりんが好きなリョクチャも用意している」


「ありがとうございます」


とにかく、先にこの間の事謝ってスッキリしちゃお!

言うタイミングを考えながら、リョクチャを飲む。ふぅ。


「美味しい…。ほっこりしますね。渋みも少ない気がします」


「今日のお茶は新芽を使った茶葉だ。新芽を使うと味がまろやかになるんだ」


「そうなんですね。これなら子供でも飲めそうですね」


「そうだな。リョクチャの販売事業も順調に進んでいると聞いた」


雷覇らいは殿が推薦してくださった、お茶農園の方ががとってもいい方達だったので、話をすすめやすかったです。来年には販売できると思います」


「楽しみだな」


ぎゅっと手を握り締めて、深呼吸する。ちゃんと言わなくちゃ…。


「……。あっ…。あの雷覇らいは殿」


「ん?どうした?」


「この前の…。温室でのことなんですけど…。話の途中で逃げ出してしまって…。すいません」


「ハハハ。さすがに逃げられると思わなかったから、ちょっとショックだったぞ」


冗談ぽく雷覇らいは殿が言う。そうですよね~。自分でもびっくりした。

気が付いたら部屋にいたんだもの。


「ごめんなさい…。わたし…。」


どうしよう。いざ言葉にしようとすると出てこない。

喉に何かがつっかえてる感じがする。

息も苦しい。

今、自分が息を吸っているのか、吐いているのかがわからない。…。

雷覇らいは殿の顔も見れない。でも言わなくちゃ…。

俯いたまま、握り締めてる自分の手を見つめる。



……。


怜彬れいりん。大丈夫だ」


すごく長く感じた沈黙のあと、いつの間にかわたしは雷覇らいは殿に抱きしめられていた。

またシトラスのいい香りがした…。

お読みいただきありがとうございました(^O^)/

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