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137.冬支度

怜彬れいりん様!今日はよろしくお願いします!」


晴れ晴れとした爽やかな朝。わたしはスバルとリヨウの仕事場に足を運んでいた。

先日、約束していた庭作りの下見をするためだった。


「こちらこそよろしくね!スバル」


「さっそくですが、こちらへどうぞ」


スバルに案内されて彼女たちの作業場の横にある更地へ行った。

思っていたよりも広々としたした土地が広がっており、テーブルと椅子二つおいても

十分な広さが余るほどの土地だった。


「思っていたよりも広いわね!これなら、しっかりしたお庭が作れると思う」


「ほんとう?」


「ええ。土は入れ替えてもっと水はけもよくした方が良いと思うけど」


「じゃあ、それができたらお庭が作れるんだね!」


「問題ないわ。どんなお庭にしたいとかってある?」


わたしとスバルは更地を後にして作業部屋へ移動した。

出来る限り彼女たちが寛げるお庭にしたかった。


「そうね…。木陰があって、暑い日でも涼しく過ごせる庭が良いかな」


「わかった。リヨウは何かご要望あるかしら?」


わたしは隣で作業していたリヨウに話しかけた。


「できれば、お花が多めがいいわ!色んな香りでインスピレーション得たいから!」


「わかったわ。木陰と…お花が多めね…」


二人の意見をメモにまとめる。

どんなお庭にしようか…。考えるだけで今からワクワクする。


「どれくらいかかりそう?」


「だいたい、1ヶ月もあればできるわ!」


「そうなんだ。思っていたよりも早いのね」


満足げにスバルに言われた。


「これから肌寒くなってくるから、寒くても咲くお花を植えて年中楽しめる庭にするわね」


「うわー!素敵」


ほころんだ花の様に笑うリヨウ。

二人ともとても楽しみにしてくれているようだった。

よーし!期待に応えれるよう頑張るぞ~!


「あ…。今日はスバルに渡したいものがあって…」


わたしは持ってきていた、マダムベリーからの品を恐る恐る手渡した。


「ありがとう!なになに?」


「うーん…。マダムベリーから貰ったのだけど…わたしにはハードル高くて…」


怜彬れいりん様がハードル高い服ってどんな…」


箱のふたを開けて、スバルの動きが止まってしまった。

目が点。そんな表現が相応しい顔つきになっている。無理もないわ…。

だって…。すごい下着なんですもの!!


「きゃー!すっごいかわいいじゃない!」


リヨウは乗り気なようだった。予想に反してニコニコしながら、下着を手に取る。


「いや…。私はこんなの着けれないよ!」


「いいじゃーん。これ着てムツリとラブラブしたら~♡」


「リヨウ!勝手な事言わないで!こんな恥ずかしい下着…無理!」


「やっぱり…。スバルでも無理か~」


そりゃそうだ。わたしだってこんな恥ずかしい下着…。雷覇らいはの前で身に着けるのはごめんだ。

大事なところが何一つ守れていない…。男性は本当にこんなもので喜ぶの?


「じゃあ!わたしが貰っていい?」


「えっ…。リヨウが…貰ってくれるの?」


「うん!一度こういうの着てみたかったんだよね~」


「リヨウ…。あんたいつのまにそんな破廉恥な女になったの…?」


「破廉恥って…、失礼な!相手を喜ばせるための演出でしょ」


「うわ~…。リヨウって大胆なのね~」


「へへへ♪」


舌をペロッとだして少し恥ずかしそうに笑うリヨウ。

ラカンの…前でつけるのかしら…。

想像するだけで鼻血を出してしまいそうなくらい妖艶なリヨウをイメージしてしまった!わたしってば…。


まぁ…。とにかく、マダムベリーから貰った品が無駄にならずに済んでよかったと思った。

ラカンとはまだお付き合いには至っていないため、陽の目をみるのはもう少し先になりそうだが

勝負所で使うわ!とガッツポーズしてくれた。

たくましい…。


二人と少し談笑したあと、わたしは別邸へ戻って行った。

今日は午後から雷覇らいはと一緒に、マダムベリーのお店に行く予定なのだ。


「お嬢様。今日はこのお召し物を着てください」


「わかった!」


リンリンから手渡された衣装を身にまとう。

秋唐国しゅうとうこくから持ってきていた普段着だ。

夏陽国かようこくの服を着ることが多かったけど、最近は肌寒くなってきたから

秋唐国しゅうとうこくの服を着る機会が増えてきた。

あの…露出の多い服はこの時期には少し厳しい。

普段から着なれた衣装の為こちらのほうが過ごしやすかった。


怜彬れいりんのその衣装を見るのは久しぶりだな!」


仕事から戻ってきていた雷覇らいはに後ろから声を掛けられた。


雷覇らいは!もう仕事は終わったの?」


「ああ。午後はマダムベリーの所へ行くから調整してもらった」


「よかった!」


ふわっと雷覇らいはに抱き上げられる。


「まるで秋唐国しゅうとうこくに戻ったみたいだな!」


「ふふふ。そうね…再会した時みたいね」


怜彬れいりんは何を着ても美しいな…」


「ありがとう…雷覇らいは


しばらく、雷覇らいはと見つめ合っているとリンリンに声を掛けられた。


雷覇らいは様、お嬢様…お出かけの準備が整いました」


「おっと…遅れるところだった」


「ありがとう。リンリン」


リンリンが黙ってお辞儀をする。


いけない。いけない。

ふたりで慌てて別邸を後にする。

雷覇らいはといるとつい、時間が経つことを忘れてしまう…。

リンリンも普段は何も言わずに控えてくれているが、今日の様に予定があるときは

上手く声を掛けてくれる。本当によくできた侍女だと思った。



怜彬れいりん…。すまない。俺としたことが冬用の衣装を準備させていなかった」


「別にいいの。秋唐国しゅうとうこくの服を着れば事足りるし」


「いいや!良くない。今日、マダムベリーに言って新しく服を誂えてもらおう」


「そう?わたしは…この服の方が過ごしやすいのだけれど…」


「じゃあ、過ごしやすいような服を沢山用意させよう」


「うん…。わかったわ」



だめだ…。まったくわたしの言っていることを聞いていない。

雷覇らいははこうなると、自分の主張を曲げないからな~。

このところ買ってもらってばかりだから、あるものでいいなって思うんだけど…。

どうも、雷覇らいははそれでは嫌らしい。女性に衣服を送ったり装飾品を送ることは

男の甲斐性?なのだとか…。どれだけ自分の好きな女性を着飾ることができるか?

それによって男性の権力や、財力をアピールすることができるのだそうだ。

うーん…秋唐国しゅうとうこくにはない考え方…。未だになれないわ!



「まぁまぁ!ようこそお出で下さいました♪」


いつもの様にパワフルなオーラで出迎えてくれたマダムベリー。

今日もお店は貸し切りで待っていてくれた。



「デザインが決まったのでお願いしに来ました」


「ありがとうございます。怜彬れいりん様。ホホホ~」


奥の部屋に通されてわたしは、マダムベリーから預かっていたデザイン画を出した。


「こちらのデザインでお願いします!」


「畏まりました。必ずや素敵なお召し物に仕上げてみせますわ~」


「よろしくお願いします」


「マダムベリー、別口でまた頼みたいのだが…」


「喜んでお受けいたしますわ!雷覇らいは様」


満面の笑みで依頼を受けてくれるマダムベリー。

衣装と言えばマダムベリー。もう彼女以外に考えられなかった。

あの…。プレゼントさえなければなぁ~。



怜彬れいりんの冬用の服を用立ててくれ」


「仰せのままに。ではいくつかサンプルをお持ちしましょう~♪」


ご機嫌なマダムベリーがパンパンと両手を叩くと、アシスタントの女性たちが

次々に衣装を運んでくる。一つ一つ丁寧にトルソーに着せていって並べてくれる。

どれも生地が厚手で温かそう!なにより…おへそが出ていない!!

わたしは嬉しさのあまり心の中でガッツポーズをしてしまった。


「うむ…。どれも怜彬れいりんに似合いそうな衣装だな」


「はい!こんな日もあろうかとイメージして準備しておりましたのよ。ホホホ」


「ううう。さすが…マダムベリー。商売上手ですね」


「お褒めに預かり恐縮です」


前もって準備していただなんて…。さすがです!マダムベリー。

どれも、わたし好みの色やデザインだった。

シンプルで派手な装飾品は少なくて、どれも動きやすそうだった。

雷覇らいはがいつも来ているような首周りが詰まったものに

スカートのような裾でしたにズボンを履くようなデザインや、上から下までストンと一枚で着れる

ウエスト周りがゆったりしているデザインまで、様々なものが用意されていた。


「いつもご贔屓にしていただいてますので、冬用の衣装は全てマダムベリーが負担させていただきます!」


「えっ…!!」


「そうか…。ならそれで、宜しく頼む」


「いいんですか?マダムベリー」


「はい♪雷覇らいは様と怜彬れいりん様のおかげで店は繁盛しておりますので~。ホホホ」


「ありがとうございます。マダムベリー」


「こちらこそ♪引き続きよろしくお願いいたします」


ニコニコしながら、衣装の説明を始めたマダムベリー。

すごいな~。こんなに沢山サービスしてくれるなんて…。

マダムベリーの商売の仕方はとても参考になる。こんなに良くしてくれたなら

また利用しようって気持ちになるものね~。

損をして得をするというのは、こういう事なのね!


冬服に使う生地や糸の相談などをしながら細かく衣装を決めていき

最終的には一冬超すには十分すぎるほどの衣装を注文した。

こんなに沢山…。全部着るには何年もかかりそうね…。

横目で雷覇らいはを見るととても満足そうにしていた。

まだ、マダムベリーと話していて衣装についてやり取りをしている。


雷覇らいは…。こんなに沢山、ありがとう」


「こらくらい、どうとない。怜彬れいりんはこれからずっと夏陽国かようこくにいるのだからな!」


「まぁまぁ…。ではついにご結婚なさるのですね」


「ああ。近いうちにな。その時はまた婚礼の衣装も頼む」


「ああ!なんと喜ばしいことでしょう!さっそく準備しませんと‥‥」


「あの~。まだすぐにと決まったわけでは…」


二人はわたしの話を聞いている様子もなく、どの生地でどんなデザインの衣装を作るか話し込んでいる。

ああ。なんか既視感…。

最初に、夏陽国かようこくにきて衣装を作ったときもこんな感じだったけ…。

二人が楽しそうなら、なんでもいいや…。

正直なところ婚礼は二回目でわたしとしてはシンプルな式を望んでいる。

炎覇えんはの時は、準備に何時間もかかったし、生地は暑くて苦しかったし重かったしで

しんどい!という印象しかない…。

何もかも、炎覇えんはが準備して費用も出してくれたから文句を言ったら失礼なんだけど‥‥。


でも…。あの何時間も練り歩くのだけはやめてもらおう!

お腹は空くし足は痺れていたかったし‥‥。


「ところで、結婚式はどちらで行うのですか?」


「まだ決めてないが…。四季国しきこくでやろうと考えている!」


「そうなの?聞いてないわ…」


「俺が考えていただけだ。怜彬れいりんには許可を貰ってから相談しようと思っていた」


「まぁまぁ!四季国しきこくで!なんと神聖な結婚式でしょう」


「前例がないからな!準備に時間がかかるだろうが、それだけの価値はある」


「それでは、私もそれ相応の衣装を用意しないといけませんね。ホホホ♪」


四季国しきこくでなんて…。ちょっと大袈裟じゃない?」


四季国しきこくと言えば、五神国ごしんこくの中心的国であり、始まりの地でもある。

つまり神様に最も近い土地とされている神聖な場所だ。

普段は五神国ごしんこく会議で訪れることしかしないその国は、わたし達他の国から見ても

神秘的な国だった…。そこで結婚式だなんて…。不遜にあたらないかしら?


「俺と怜彬れいりんの結婚式だぞ?これくらいやって当然だ!」


「わたしはそんなに大それたこと…したくないんだけど…」


怜彬れいりん…君が慎ましい奥ゆかしい考えだという事は知っている」


「うん。だったら…」


「でも!こればかりは譲れない!」


「どうしてそこまで?」


「親父と一緒は嫌だからだ!」


思いっきりふんぞり返って腕組みをする雷覇らいは


そこ?四季国しきこくでやる理由がそれ?!

呆れて次に返す言葉が出てこない。

まさか…、炎覇えんはと張り合ってるから四季国しきこくでやろうとしてるの?


雷覇らいは…。内容を変えれば同じにならないんじゃない?」


「それでは意味がない」


「結婚することが大事なのであって、結婚式が目的じゃないでしょう?」


「勿論、怜彬れいりんがいう事も一理ある」


「それなら、夏陽国かようこくでシンプルな式にしましょう?」


「ダメだ!怜彬れいりんが俺の妻になったと五神国ごしんこく中に知らせなければ!」


「なっ…」


「まぁまぁ!なんとお熱いお二人ですこと♪ホホホ」


はぁ…。

まさかそこまで雷覇らいはが結婚式にこだわりをもっているなんて知らなかった。

いつものように、怜彬れいりんに任せると言ってくるとばかり思っていた。

こればかりは、雷覇らいはに譲るしかなさそう…。

この感じだと何を言っても、聞く耳を持たない。


マダムベリーがさりげなく、お茶を用意して差し出してくれる。

わたしは何も言わずに出されたお茶を飲んだ。

もういっか…。雷覇らいはの好きなようにさせよう…。

ずっと告白の返事を待たせていた負い目もあるし…。


「そういえば…。マダムベリーがくれた新製品なんですけど…」


「あら♪いかがでございましたか?怜彬れいりん様!」


「ちょっと…わたしには刺激が強すぎて…。友人に譲りました」


「まぁ…。お気に召しませんでしたか?」


「すみません…。ちょっと…あれを着こなす自信はなくて…」


「そうでしたの…。残念ですわ。きっとお気に召して頂けると思ってましたのに…」


「ほんとうに…ごめんなさい」


「普段から着て頂けるよう、布地にこだわった衣装だったのですけれどね~」


「えっ?」


衣装?下着ではなくって?


「あの…。因みにどんな衣装ですか?」


「はい…。あの右から三番目のトルソーに着せているようなデザインの服ですわ」


「えぇ!!!」


「どうしたんだ?怜彬れいりん


「じゃあ…。じゃあ…。あの箱に入ってたのって‥‥」


驚きのあまり言葉が出てこない。

マダムベリーが考えているものとわたしが実際に受け取ったものは別物だ。

どこかで手違いがあったらしい。


わたしは雷覇らいはに聞こえないようにこっそりそれを耳打ちした。


「まぁまぁ!なんという失礼を‥‥申し訳ございません」


マダムベリーに深々と頭を下げられてしまった。


「いいんです!結果的に友人には好評でしたから…」


「いいえ!これでは私の気が収まりませんわ。ちょっとお待ちくださいまし…」


そう言って、マダムベリーがすごい勢いで立ち上がって部屋を出て行ってしまった。


最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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