136.準備
『怜彬殿
お久しぶりです。お元気にしてますか?
足の怪我はもう治りましたか?
僕は相変わらず、研究ばかりしている毎日を過ごしております。
健康は至って良好です。
マーリンさんとも仲良くすることが出来ております。
月に一度はお互いの国を行き来して交流するようになりました。
本当に、怜彬殿のおかげです。
お礼と言ってはなんですが、新しく開発した技術を応用して
花を綺麗なまま保てる方法を見つけました。
お送りした試作品をぜひ見ていただきたいと思います。
きっと怜彬殿にピッタリな技術ではないのでしょうか?
また必要であれば、こちらで保存方法をお教えいたしますのでご連絡ください。
ではお体ご自愛下さい。
冬條より』
久しぶりに冬條殿から手紙が届いた。
元気そうにしていてよかった…。マーリンとも上手くいっているみたいね。
それにしても…。花を綺麗に保つ方法だなんて凄くない!?
冬條殿ってやっぱり天才なんじゃないかしら…。
説明書きによれば、送られてきた試作品の花は3か月前に保存したもので、脱水・脱色加工を行った後、
染色液や保存液をお花の内部に満たす。そうすることで
お花を好きな色に染め上げ、さらにお花その物の瑞々しさをそのままに保存できると言った技術だった。
とても…。3か月前の花とは思えない!
さっきまで咲いて居たかのような新鮮な花に見えた。
ガラスの箱には色とりどりの花が飾られていてそのまま部屋においても綺麗だろうと思った。
「これ…水蓮殿のお祝いにいいんじゃないかな?」
綺麗なまま保たれている瑞々しい花を見ながらふと、そんな事を思った。
これなら匂いも気にならないし、お菓子ではないから味の好みも関係ない。ちょうどいいと感じた。
お部屋に飾っておけば気晴らしになるかもしれないし…。
よし!これにしよう。
わたしは早速、冬條殿に手紙の返事を書いた。
すぐに新しい技術を教えて欲しい。雷覇の弟のお嫁さんの妊娠祝いに渡したいと書いた。
やり方さえわかればわたしでもできるかもしれない。
そうしたら、いつでも気に入った花を綺麗なまま飾って置ける。
花好きにはたまらないとっても素敵な技術だった。
よく考えたら…。これってビジネスにピッタリじゃない?
女性に贈る贈り物として見栄えもいいだろうし、お祝い事にも向いている。
よし!それで話を進めてみよう。まだ誰もやっていない技術なら先手を打っておいた方が良い。
その事も冬條殿に相談してみよう!うん。うん。わたしは手紙にその事を付けたした。
この前から沢山いいことがあるわね~。怖いくらい上手くいっているわ!
ラカンに頼んでおいた秋唐国の地酒とおつまみもあ1と週間後には届く。
雷覇が作った密偵網が大変役に立っている。
これなら、叔母上様達がいつきてもおもてなしできるわ!
あとは、秋唐国へ帰る準備だけね!
これはほとんどリンリンが進めてくれているから、わたしがやる事は最終確認くらいだ。
あと…わたしがやるべきことと言ったら、誕生祭に着ていく衣装を決めることだ。
マダムベリーから貰ったデザイン画を机の上に並べてどれにするか考える。
どれも首と足元が詰まっているタイプで、所々方の形や首周りの装飾などが違っていた。
見てるだけでも楽しい…。実際にきてみた時を想像しながら一つ一つ丁寧に確認していく。
男性のデザインもどれも形が綺麗で雷覇によく似合いそうなものばかりだった。
これなら…。雷覇の体格によく合いそう。
わたしの衣装は沢山、デザインを提案してもらった中で一番動きやすそうなものを選んだ。
後で帰ってきたら、雷覇にも見てもらおっと!
「あとは…あれよね…」
わたしは戸棚に隠しておいた、マダムベリーのお土産を取り出した。
実は、お店に行ったあの日すぐに開封して中身を確認したのだが
とても雷覇の前で着れるような代物ではなかったため
慌てて隠しておいたのだ。今のわたし達には無理!いったんどんな気持ちで送ってきたの?
箱に入っていたのは、女性ものの下着だった。
しかも…。生地が全部透けていて付けているのが意味ある?っていうくらい布面積少ない。
ぐっふぅ!!!こんなの…着れない!!!わたしは思わず机の上に突っ伏してしまった。
リンリンに聞いたら普段から身に着ける物ではなく、マンネリ化してきたときに使用することが多いそうだ。
マダムベリーの新製品っていうから、てっきり服だと思っていたのに…。
「やっぱり…これは隠しておこう…」
わたしは箱に下着を入れてまた戸棚の奥に隠した。
雷覇の前で着るなんて!恥ずかしすぎる…。
いっそうのこと、スバルにでもあげよう!わたしが持っていても無駄になるし…。
雷覇に見つかったら、それはそれで面倒だ。
絶対に来て欲しいとか言われそうだもん!!ごめんなさい!!マダムベリー。
これを着る勇気はわたしにはありません!!心の中で最大限のお詫びをした。
明日、スバルの所へ下調べしに行くからちょうどいいわ。
ついでに持って行って、有効活用して頂こうじゃないか!
「もう…やることってこれくらいだったかしら?」
わたしは自分で書き留めて置いた、スケジュールを見ながら確認をした。
ふと自分の右手の薬指にある指がきらりと光った。
雷覇から婚約指輪としてもらったものだ。ふふふ。
最近はこれを見るだけで幸せな気持ちになってニヤニヤしてしまう。
やっぱりお揃いの物を身に着けているっていいな。
ネックレスをあげたときも思っていたけど、雷覇と一緒にいるような気がして
幸せな気持ちでいっぱいになる。
手元にある指輪を見るたび、ネックレスを鏡で見るたびに雷覇の顔が浮かぶ。
彼のことを思うだけでこんなにも満たされた気持ちになる。
傍にいなくても傍にいるような感覚さえしてくる。
「よし!元気が湧いてきたぞ~」
わたしはまた書類に目を通して、リョクチャ事業の計画を確認した。
これも黒綾殿が生地をそろえてくれれば販売できるところまでこぎつけた。
お店は怜秋にお願いして押さえてあるし、販売に関してはマーリンがアドバイスしてくれている。
ユノミはザガクが素敵な品を沢山確保してくれた。これも秋唐国へ送ってある。
茶葉は雷覇がスムーズに流通できるように既に手配してくれいる。
ああ!楽しみだわ~。美味しいリョクチャを秋唐国の人達に知ってもらえる。
きっとみんな喜んでくれるに違いない。
わたしは販売している日を想像しながら、作業を進めた。
「お嬢様。そろそろ雷覇様が戻ってこられます」
「あら…もうそんな時間なの?」
窓の外を見るともうすっかり日も傾き太陽が沈んでいる所だった。
沢山やることがあったから時間のたつのも忘れていた。
わたしは書いていたものを取りまとめて机の引き出しにしまった。
書斎を出たら、すでに雷覇が仕事から戻ってきていた。
「雷覇!お帰りなさい」
「ただいま。怜彬」
わたしは小走りで雷覇に駆け寄った。おぉっと…。いけない。いけない。
思わず抱き着いてしまう所だった。すんでの所で立ち止まって雷覇の前に立つ。
今日はお互いにやる事が多かったため朝会ったきりだった。
「今日も早かったのね」
「ああ。特に大きな問題もなく一日が終わったよ…」
「良かったわ。今日はね冬條殿から手紙が届いていたの」
「そうか。冬條殿は元気そうだったか?」
「ええ。それに素敵な贈り物のくれたのよ!」
「ほう…。冬條殿が…」
「後で雷覇も見てね」
「わかった。それにしてもずいぶん、積極的になったのだな。冬條殿は」
「そうね!マーリンとも仲良くしているみたいだし」
二人で話しているうちに夕食の支度が整った。
さすがリンリン!何も言わなくても、欲しいものを欲しいタイミングで出してくれる。
雷覇と席について夕食をとりながら今日あった出来事を話した。
水覇殿が物凄く機嫌がいいらしい。だが、水蓮殿の心配するあまり
たびたび仕事を抜け出しては様子をうかがいに行っているそうだ。
時々、作業が止まって困っているよと苦笑いしながら雷覇が話してくれた。
「あ…雷覇!衣装ができあがったら二人で写真を撮らない?」
「いいな。せっかくだしマダムベリーに頼んで、プロに頼に撮ってもらおう」
「やった!さっき思ったの。二人で写真撮ったことないな~って」
「そうだな。言われてみればないな…」
「写真があればいつでも持ち運びできるでしょ?素敵よね」
「そうだな。仕事中にも怜彬の顔が見れるしな…」
そう言って頬に手を添えて口づけされた。あったかくて柔らかい…。
毎回…雷覇と口づけするたびに思う。
どんどん肌がなじんでる感じがすると…。恥ずかしくて本人には言ってないけど。
こうして毎日を二人で重ねていって、他人から恋人…恋人から家族になっていくのね…。
まだ結婚はしていないけど、雷覇とは家族になったような気持だった。
距離感もそうだし二人の関係性もそうだ。何も知らない者どうしがお互いを知り
触れあい一緒に過ごすことで絆が生まれていく…。
わたしは、そんなつながりを感じながら雷覇と唇と重ねるのだった。
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