134.バル爺の宝石店
いつもよりちょっと長めです(*^▽^*)
バル爺は書いててとってもほっこりしました( *´艸`)
楽しんで頂けると幸いです☆
今日は雷覇と一緒に、マダムベリーのお店に来ている。
秋唐国で行われる、誕生祭に着ていく衣装を作ってもらうためだ。
お店に着くとマダムベリーが外で待っていてくれた。
「まぁまぁ!お久しぶりでございます~。雷覇様!怜彬様!」
相変わらず物凄いエネルギー感で出迎えてくれるマダムベリー。
いつ見てもパワフルだわ…。
「元気そうでなによりだな、マダムベリー…また世話になるぞ」
「ご贔屓にしていただき感謝いたします」
「2週間後に秋唐国の誕生祭に出席する。その際に着ていく衣装を頼みたい」
「かしこまりました!腕によりをかけてお作り致しますわ~ホホホ」
マダムベリーに案内された部屋に行き早速、生地やデザインの打ち合わせを行った。
色とりどり生地や糸のサンプルが次々と目の前に陳列される。
お店のスタッフがせわしなく目の前を行き来している。それに皆どことなく緊張している様子だった。
国王が自らお店に来ているのだ。無理もなわね…。少しでも緊張が和らげばとわたしは努めて笑顔で対応するようにした。
「怜彬と揃いの衣装にしたいのだが…」
「まぁ!なんて素晴らしいんでしょう!では生地から選ばないといけませんね~」
「あの…できれば温かくて軽い生地にしていただけませんか?」
「かしこまりました!それでしたら…これと…こちらなんか如何でしょう?」
マダムベリーがニコニコしながら、生地をピックアップして目の前に並べてくれた。
どの生地も厚手で軽そうだったが、銀色や紫色が多く配色されている生地をチョイスしていた。
流石…マダムベリー。わたしと雷覇を意識した生地選びをしてくれているわ。
こちらの要望にすぐさま応えてくれるのはプロならではだった。
「こちらの生地は特にお勧めでございますよ~。黒秦国から新たに輸入した最新の生地です」
「黒秦国から?」
わたしはびっくりして聞き返してしまった。
もう、夏陽国に黒秦国の生地が流通しているなんて…。
黒爛殿の仕事の速さに感心してしまった。
マダムベリーが進めてくれた生地は薄紫の生地に銀色の糸で細かな花の刺繍が施されていた。
光の当たり方によって生地の色が薄くなったり濃くなったりしてる…。凄く綺麗だわ。
絹糸で編み込まれた生地は表面がなめらかな光沢があり手触りもとてもよかった。
「つい最近取引ができるようになりまして…。黒秦国の生地が沢山手に入るようになりましたの!」
「そうなんですか…」
「黒秦国とはこれから長い付き合いになるだろう。マダムベリー…良しなにしてやってくれ」
「仰せのままに。雷覇様」
「生地やデザインは怜彬の好きなものにすると良い」
「わかったわ。じゃあ…生地はマダムベリーがお勧めしてくれたものにします」
「ありがとうございます~。怜彬様」
嬉しそうにマダムベリーが生地を避けてデザインがまとめられた本を取り出してくれる。
マダムベリーが実際に手書きで書いたのだろうか?走り書きで様々なデザインが描かれていた。
「まだ、試作段階なのですが…新しいデザインですわ~」
「たくさんありますね!」
「思いついたらすぐに書き留めてますから~ホホホ」
「なるべく露出が少なくて保温性に特化したデザインがいいんですけど…」
「かしこまりました。秋唐国はこれからの時期は寒くなりますものね~」
「そうなんです…。隙間風が入ってこないようにして欲しいです。首元と足元はとくに」
「女性は冷えが大敵ですからね~。承知いたしました」
わたしが伝えた内容をデ元にザインに起こしてくれるマダムベリー。
こちらの意図をすぐさま理解して、何パターンかデザインしてくれた。
「こちらのデザインは首元と手元にに少しファーをあしらって上品な感じに」
「すごい…かわいらしいですね!」
「ホホホ。ありがとうございます。次は首元に別の生地でショールを巻いて足元は丈を長くしてみました」
「これもシックで素敵ですね…」
天才ってこんな人なのかしら…。
次から次へとアイディアが浮かぶのか、マダムベリーは思いつくまま沢山のデザインを起こしてくれた。
あっという間に10枚のデザインを提案して見せてくれた。
どのデザインも男女で対になっているようなデザインで、お揃いというのがよく分かるものだった。
ううう。どれも素敵過ぎて決められない…。
「怜彬。悩むようなら一度持ち帰って相談して決めないか?」
「ええ…そうね。そうしましょう!」
「でしたらすぐにお持ち帰りの準備を致しますね~ホホホ」
わたしはすぐには決めれなかったのでそこから10枚のうち半分に絞って持ち帰り3日後に返事すると伝えた。
「また、デザインが決まったらご連絡しますね!」
「楽しみにお待ちしております~。怜彬様」
「では、宜しく頼む」
「かしこまりました。雷覇様。必ずやお二人にお似合いの衣装をつくってみせます」
「お願いします」
そう言って雷覇と一緒にお店を出た。
どのデザインにしようかしら…。どのデザインもとても素敵だったな~。
「怜彬様。よかったこちら新製品ですの。お使いくださいな!」
「わぁ!いいんですか!」
「勿論でございますわ~。ホホホ」
お店を出る際にマダムベリーに商品を手渡された。
何が入ってるのかしら?開けるのが楽しみね…。
「ありがとうございます!マダムベリー」
「ぜひ!今日帰ったら着てみてくださいまし」
「わかったわ!感想はデザインが決まっときにお伝えするわね」
「はい~。楽しみにしております!ホホホ」
ひらひらとにこやかに手を振りながらお見送りをされて、マダムベリーのお店を後にした。
こういう所がマダムベリーが商売上手なところだった。
新製品を無料で提供することで、わたしからの感想を聞き出し宣伝にでも使うのだろう。
やっぱり…抜かりがないわ!マダムベリー!
このやり方はぜひ、リョクチャ事業でも使わせてもらおう!!
「じゃあ次は、指輪を見に行くか!」
「ええ。わかったわ」
雷覇と二人馬車で揺られながら、宝石店を目指した。
王室ご用達のお店で、昔からよく通っているお店だそうだった。
わたしが付けている雷覇から貰った髪飾りも、そのお店で購入したと言っていた。
「それにしても…黒秦国の生地が輸入されてるなんて知らなかったわ」
「黙っていてすまない…。隠すつもりはなかったんだが…」
「怒ってるわけじゃないの。雷覇もわざとではないんだろうし」
「黒秦国とは昔から取引があるから、当たり前のように話を進めてしまっていた」
「そうなのね。元々、軍服ようの生地を輸入してたのでしょう?」
「ああ。黒秦国の機織り技術は素晴らしいからな」
「そんなに凄いの?」
「ああ。暑さ寒さに強く軽いのに丈夫なんだ」
「まぁ…それは凄い生地ね…」
黒秦国の生地がそこまですごいとは…。今まで様々なサンプルを見ていたけど気が付かなかった。
でも…軍服になるくらいだものね…。半端な生地では作れないだろうし…。それだけ凄い技術があるのね!
黒秦国とは、黒綾殿の養護をきっかけにまた貿易が盛んになったそうだ。
今までは軍事用だけだったが、一般人にも取り扱いができるようにしたため
マダムベリーのお店のような、洋服を取り扱うお店でも流通するようになったのだ。
黒秦国にとっても夏陽国にとってもメリットがあって良かったわ。
マダムベリーのお店を出て30分ほど走ったところに目的の宝石店があった。
こじんまりとした佇まいで、ザガクと雰囲気の似た店主が一人と助手であろう女性が一人のお店だった。
「ようこそ…お出で下さいました…雷覇ぼっちゃま…」
うやうやしくお辞儀をして出迎えてくれたお店の店主。
丸い銀製の眼鏡を掛け、白髪交じり髪を小さく後ろで束ねていた。
とても品のよさそうのなご老人だった。少し腰を曲げて杖を突き
きちんとアイロンがけされたシャツを着て茶色のベストを着こなしていた。
「今日も世話になる。バル爺」
「いつもご贔屓にしていただき…ありがとうございます」
「今日は、我が婚約者に贈る指輪を見繕ってほしんだ」
「それは…それは…また、お綺麗な婚約者様ですな…」
「あ…。初めまして、秋唐国の第一王女の怜彬と申します」
ゆったりと話すバル爺と呼ばれていた老人に挨拶をした。丸い眼鏡の奥には、慈愛に満ちた瞳があった。
雷覇が昔から懇意にしていると言っていたからきっと、おじいさんのような人なのね…。
「お初に…お目にかかります。バルドと申します」
「バル爺は俺の小さい頃からの知り合いでな。父もよく世話になっていたんだ」
「そうだったのね。よろしくおねがいします。バルド」
「よろしくお願いいたします…怜彬様」
挨拶を交わしたところで助手の女性が、別室へ案内してくれた。
そこにはすでに指輪が沢山並んでおり、お茶も用意されていた。
店内には邪魔にならない程度に音楽がながれており、とても居心地が良かった。
バルドの趣味なのかしら…。店内を見渡すと、壁一面に時計や肖像画が飾ってあった。
一見では宝石店には見えなかった。
「怜彬様には…お珍しいですかな…」
「あ…すみません。キョロキョロしてしまって」
「どうぞ見てやってください…。妻の趣味で集めたものなので…喜びます」
「ありがとうございます」
わたしは立ち上がって、部屋をゆっくり見渡した。
大きな立て掛けるタイプの時計や、小さな女の子の肖像画。
ほんとに沢山の時計と肖像があるのね~。よっぽどバルドの奥様は好きなのね。
珍しいものばかりで見ていてとても楽しかった。
ふとみると、バルドと女性が並んで写っている写真が目に留まった。
眼鏡はそのままでバルドが今よりかなり若い。結婚した時の写真かしら?
綺麗な奥様…。幸せそうにこちらをみて微笑んでいる女性。
黒髪の長い髪を編み上げて、シンプルなウエディングドレスを着ていた。
「綺麗な方ですね。この写真に写っているのが奥様ですか?」
「ほっほ…。結婚した時に…撮った写真ですね…懐かしい」
「奥様は今日はいらっしゃらないんですか?」
「妻は…10年前に亡くなりましてな…」
「そうだったんですか…すみません…」
「いやいや…今となってはもう慣れました…娘もこうして…手伝ってくれてますしの」
隣に立っていた女性と目が合った。ペコリとお辞儀をされた。
娘さんだったのね…。どことなく写真の女性と似ている…。目元がとくにそっくりだわ。
奥様の事を話す時も穏やかでゆったりとした口調のバルド。
当時は辛かったそうだが10年経つと、気持ちも落ち着き今では娘さんご夫婦と楽しく過ごしているそうだ。
「さっそくだがバル爺。婚約指輪を見立ててもらいたい」
「雷覇ぼっちゃまも…もうそんな年齢になったのですね…」
「もう今年で25だ。ぼっちゃまという年でもないぞ…」
「私にとってはいつまでも…ぼっちゃまですよ。ほっほ…」
なんだかほっこりするな~。雷覇も砕けた感じで話をしている。
バルドは雷覇の事を息子の様に思っているのでしょうね…。
聞けば、炎覇が結婚した時の指輪やわたしの簪はバルドのお店で用意されたものだった。
「バル爺が見立ててくれるものに間違いはないからな。信頼している」
「大変ありがたきお言葉…。爺は幸せです…」
ニコニコしながら、バルドは3種類の指輪を提案してくれた。
どれもシンプルなデザインで日常使いには支障がでなさそうだった。
「こちらは…特におすすめですな…ほっほ…」
「そうか…。怜彬はどう思う?」
「どれもシンプルで洗練されたデザインだわ!迷っちゃうな~」
「俺はどれでもいいから。怜彬が好きなものを選んだらいい」
「だめよ!雷覇も着けるんだから、ちゃんと考えてくれないと」
「ほっほ…大変…仲がよろしいようですな…」
用意されたお茶を飲みながら、温かくわたしと雷覇のやり取りを見守ってくれているバルド。
雷覇ってば、どれでもいいだなんて…。せっかく二人でお揃いの物にするんだから
一緒に悩んでくれてもいいじゃない…。
「怜彬…。俺にはどれも同じに見えて違いが分からないんだ…」
困ったような顔で話しかけ来る雷覇。
ふーんだ!いいわよ…。わたしが一人で選ぶから!
「バルド。丈夫なもので剣術の時に邪魔にならないものはどれかしら?」
「ふむ…そうですな…」
どれでもいい訳ないじゃない…。毎日使うんだからちゃんとこちらの状況を伝えないと…。プンプン!
わたしは気を取り直して少し考えていると、バルドが条件にあう指輪を提案してくれた。
「これなら…頑丈で傷になりにくく…邪魔にならないでしょう」
「ありがとう!じゃあ、これにするわ」
「では…サイズを試してみましょう…」
バルドが選んでくれた指輪は純プラチナでできたもので、強度も強く
水にぬれても錆びにくいという事だった。
雷覇がわたしの手を取ってそっと右手の薬指にはめてくれる。
サイズは驚いたことにぴったりだった。
いつ…知ったのかしら?チラリとバルドに目をやると、にっこりと微笑まれてしまった。
なんでもお見通しって感じね…。さすが!王室御用達のお店だわ。
私の指輪はリング全体に小さな金色の宝石がいくつも埋め込まれているのもので
雷覇の指輪は、小さな紫色の宝石が真ん中に一つ埋め込まれているシンプルなものだった。
宝石の色もわたしと雷覇の瞳の色をを意識したものなんだろうな…。
金色の宝石と紫色の宝石…。それぞれの瞳の色をあしらった綺麗な指輪だった。
「怜彬にピッタリ合うな!」
「ではさっそく…お包みしましょう…」
そう言うとバルドの娘さんがそっと手を伸ばして、指輪を持って行った。
あっという間に決まってしまった。
やっぱりずっと通っているとこちらの趣味趣向を熟知してくれているから
とってもスムーズね…。雷覇や炎覇が気に入って通うはずだわ。
こちらの趣味や好みを伝えたうえで選んでもらわないといけない。
初めて行くお店ならこうはいかないだろう。
「雷覇ぼっちゃまが…こうして素敵な女性と来られるとは…」
感慨深げにバル爺が呟いた。
「爺はいつ死んでも…悔いはこざいません…」
「大げさだぞ。バル爺」
「ほっほ…もういい歳ですからな…いつお迎えがきてもおかしくありません…」
「まだまだ、長生きして盛らないと困る!今度は結婚指輪を買いに来るからな」
「そうですか…そうですか…楽しみですな…」
うん。うん。と頷きながら楽しそうに雷覇と話すバルド。
バルドは本当に雷覇の事を大切に想っているのね…。
二人が話している内容を聞いてそんなことを思った。
「バルド。素敵な指輪をどうもありがとう」
「怜彬様…またいつでも…起こし下さいませ…」
丁寧にお辞儀をされてバルドのお店を後にした。とっても素敵な方だったな~。
温かくて愛情深いバルド。今度、宝石を買うときはバルドのお店に行こう!
そう思いながらわたしは雷覇と一緒にお城に戻って行った。
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