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133.キーサ帝国

「キーサ帝国との貿易は上手くいきそうか?」


水覇すいは殿からもらった資料に目を通していると後ろから雷覇らいはに声を掛けられた。

今日も仕事が早く終わった為、夕方には別邸に戻ってきていた。

わたしは夕食を待つ間、書斎で資料を読んでいた。


「ええ。多分、大丈夫だと思うわ」


「そうか…。何かあったらいつでも言ってくれ」


「ありがとう。水覇すいは殿が細かな資料をくれたから対策も立てやすかったわ」


「そうか。でも相手は侵略国家だ。絶対に油断してはいけない相手だ」


「そうね…。十分気を付けて対応するわ」


水覇すいは殿から貰った資料にはアシュラ王子とシャチー王女の人となりや性格が克明に記されていた。

アシュラ王子は歳の離れたシャチー王女をとても大切にしていて、彼女を守る為だけに王位に着こうとしているきらいがる。

シャチー王女もまた、アシュラ王子をとても慕っている。誰にも心を開かずアシュラ王子だけに

頼っているような状態だった。どんな背景があの二人にあるかはあって話を聞いてみないと分からないけど

兄妹で仲がいいんだもの…。きっと悪い人達ではないのだろうと思う。


戦のきっかけも彼らの父王が仕掛けたことだった。年々、食料の収穫が困難になっていき国民も他国へ流出し

働き手がなく、飢えや貧困が悪化の一途をたどっていて悪循環だった。

それを打開するために手っ取り早く、他国の資源を奪い取ろうという考えに至ったそうだ。

短絡的で目先の事しか見えていない、全くもってその場しのぎの考え方だ。一時は奪った資源でなんとかなるだろうけど

いつまでも続かない…。そもそも働き手も減っているのだから国は発展しないだろう…。

国が滅んでしまうのも時間の問題だ。

それと同時に後継ぎ問題…。国が一致団結しなければならない時にその問題は由々しき事態だった。

そう思うと五神国ごしんこくはほんとに恵まれた国だった。

他国同士でいがみ合わず憎しみ合わず手を取り合って助け合って成り立っている。

キーサ帝国にも見習ってもらいたいものだった。


「アシュラ王子と会うときは俺も必ず同席する」


「そうしてくれると心強いわ」


怜彬れいりんは何があっても俺が守るよ…」


「ありがとう。雷覇らいは


雷覇らいはと話しているうちに夕食の準備が整ったとリンリンが知らせに来てくれた。

ダイニングに行き、雷覇らいはと話をしながら食事をとった。

メニューはサラダに鶏肉を蒸したもおのとスープと軽めの料理だった。

朝と昼に結構なボリュームの料理を食べるため、比較的夜は軽く済ませることが多い。

雷覇らいはは体つくりの為に鶏肉をたくさん食べていた。


最近では仕事が早く終わり一緒に食事をとる時間が増えている。

黒綾こくりょう殿が上手にスケジュール調整してくれているからだと

雷覇らいはから聞いた。一時はどうなるかと思った二人の関係性も良好だ。

最近では、雷覇らいはに対して意見して改善するように促したり事前に下調べして

丁寧に資料をまとめたりと手腕を発揮しているそうだった。

雷覇らいはの口からも黒綾こくりょう殿の話が出てくることが多くなった。

黒綾こくりょう殿の能力が素晴らしい事、よく周りを見て采配を振ることが出来る事。

雷覇らいはがとても信頼していることが伝わってきて嬉しい…。

水覇すいは殿から貰った資料も分かりやすくまとめられていて、字も凄く丁寧でみやすい。

これからの夏陽国かようこくを支えていく人物として申し分ない働きぶりだった。


「そろそ、秋唐国しゅうとうこくへ行く準備をしないとな!」


「そうね!久しぶりに雷覇らいはと一緒だから楽しみだわ」



「俺も楽しみだ。最初に行ったきりだからな…」


「そう言われてみれば…そうね…」


そんな他愛のない会話をしながら食事を終えて、リビングでへ行き二人でお茶をんで過ごす。

雷覇らいは秋唐国しゅうとうこくへ来るのは、1年前に雷覇らいはが突然訪問してきて以来だった。

あの時は結婚することが嫌だったけど、今度は結婚をお願いしに行くなんて…。

過去と今では現状が180度違っていることに思わず驚いてしまった。


それから…。怜秋れいしゅう珀樹はくじゅ殿になにかお土産でも買っていこう!

どんなものがいいかしら?甘いお菓子でもいいし…。実用的なものでもいいよね…。

水蓮すいれん殿の妊娠祝いに、虹珠こうじゅ殿を迎える準備。

それに秋唐国しゅうとうこくへ帰国する準備を同時で行っていかないといけない。

またせわしなくなるわね~。きちんとスケジュール立ててやろうっと!


怜彬れいりん秋唐国しゅうとうこくの誕生祭に参加するなら、また新しく衣装を準備しよう!」


「えっ?また新調するの?」


「ああ!せっかく二人で参加することが出来るんだ、揃いの衣装で参加しよう」


「そう?わざわざそこまでしなくても…」


「いいや!怜彬れいりんが俺と結婚間近という事もアピールしたいんだ。揃えよう」


「でも…。どうしてそんなにお揃いにこだわるの?」


いつになく強引な口調で進めてくる雷覇らいは。何か意図でもあるのかしら…?

気合の入り方も建国祭の時よりも凄い気がする…。

そこまでして、結婚間近ということをアピールしないといけないのかな?

まぁ…。わたしは悪い気はしないけど…。


「そりゃあ勿論、怜彬れいりんは俺のモノだとアピールするためだ」


「そんなアピール…誰にするのよ…」


「キーサ帝国のアシュラ王子だ」


「アシュラ王子に?」


「ああ。今回の秋唐国しゅうとうこくとの貿易は怜彬れいりんと会うためだと俺は睨んでる」


「まさか!わざわざそんなことしなくても…」


「いいや。間違いない。水覇すいはとも話していたが、彼らの本命は怜彬れいりんだよ」


「そんな…」


わたしと会ってどんなメリットがあると言うのだろうか?

政治の権限もほとんどない、ただの第一王女のわたしに…。


「だから、怜彬れいりんが俺と婚約していて仲が良い事をアピールすれば、牽制になると思うんだ」


「わかったわ。でもあんまり露出の多い衣装は嫌よ!」


「ハハハ!そうだな、季節柄あまり生地の薄い衣装にはならないと思うぞ」


「おへそとか出すデザインは控えてね!秋唐国しゅうとうこくではあまり印象が良くないと思うわ」


「なるほど…。それじゃあ、マダムベリーにも露出を少なくするように依頼しよう」


「お願いね!約束よ!」


「ああ。わかった!約束する」


よし!言質取ったからね!そんな意図があるなら仕方がない!お揃いも良しとしよう。

季節は夏から秋に移行しようとしている。だんだん肌寒く感じる頻度も増えてきた。

夏陽国かようこくは比較的、気候が暑いから普段から薄着でいることが多いけど

秋唐国しゅうとうこくは山岳地帯で、強い風が吹くためとても寒い。

誕生祭をやるころには、冬服の準備が必要な時期にもなってくる頃だった。

マダムベリーには気候の事もきちんと伝えてそれに見合った衣装にしてもらおう…。


でも…。雷覇らいはとお揃いか…楽しみだわ!

今まではどちらかと言うとわたしに合う衣装を!という傾向が強かったため

雷覇らいはの衣装と合わせるという事は少なかった。色合いとかは合わせたりしてたけど。

生地やデザインを統一したものを着るのはとても嬉しかった。


雷覇らいは…お揃いの衣装にするなら…もう一つお揃いにしたい物があるんだけど…」


「いいよ。何をお揃いにする?」


「あの…ね。お揃いのブレスレットととか、ピアスとか身に着けるもので一緒がいいなって…」


「わかった。怜彬れいりんが望むならそうしよう」


ううう。言ってて恥ずかしい…。けど、普段から一緒に身に着ける物も欲しいと思ったのも本音だった。

ネックレスは一緒だけどそれ以外でも一緒でもいいよね?

雷覇らいはは嬉しそうに顔を近づけて頬に口づけする。


怜彬れいりん。どうせなら…指輪にしないか?」


「指輪?」


「ああ。婚約指輪として俺からお揃いの物を贈るよ」


「いいの?そんな…高価なもの」


「クス…。俺を誰だと思ってるんだ?」


夏陽国かようこくの国王です‥‥」


「そうだ!手に入らないものはないよ」


「ありがとう!じゃあ…指輪にする!」


確かに、指輪なら普段から身につけられるし、雷覇らいはとお揃いならなお嬉しい。

婚約指輪かぁ…。そんな発想なかったな~。

そもそも、秋唐国しゅうとうこくの女性はあまり着飾ることをしないのだ。

わたしが前まで付けていた簪も派手だと言われるくらい、質素な格好を重んじる風潮だった。

着飾るのはどちらかといと男性の方で、女性は男性よりも目立ってはいけないのだ。

でも、今回は雷覇らいはの婚約者として参加するんだから…。ちょっとくらい派手になってもいいよね?


その後、わたしはワクワクしながらでもちょっぴり悪い事をしているような気分になりながら

雷覇らいはとどんなデザインの指輪をするか一緒になって話しをした。

キーサ帝国のことは気になるけど、雷覇らいはが一緒だし大丈夫よね!


最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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