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【番外】ラカンとリヨウの建国祭デート

やっと投稿できました!遅くなって申し訳ありません。( ;∀;)

引き続き楽しんでもらえると嬉しいです。

鏡の前に立ちながら私は何度も自分の姿を確認する。昨日の晩からずっとこんな感じだった。


「ねぇスバル!本当に変じゃない?」


「変じゃないよ。可愛いわ!何度言ったらわかるの?」


「だって…だって…。初めてラカン様とデートするのよ!おかしなところがあったら大変だわ」


衣装は怜彬れいりん様が用意してくれた綺麗なデザインの物があるし

肌や髪の毛の手入れも念入りにした。香水もこの日に合わせて完璧な配合をした。

それでもやっぱり何か足りないのではと思ってしまう…。


「大丈夫!リヨウはかわいいし、その衣装も髪型もよく似合ってるよ」


「本当?スバル…」


「本当だって。私の言う事が信じれないの?」


呆れたようにスバルに言われてしまった。スバルの事は誰よりも信頼している。

私のたった一人の姉妹。私を一番よく理解してくれる人。

小さい頃から同じように育てられ、どこに行くにも何をするにもいつも一緒。

今となってはスバルが何を言いたのか、言わなくても分かるまでになっている。


「スバルが言うのなら信じる…ごめんなさい」


「よし!それじゃあ、にっこり笑って!笑顔が大切よ」


「うん…。ありがとうスバル…」


「せっかくのチャンスでしょ?楽しんできなさい!」


「ええ。そうするわ!」


そう言って私はスバルに手を振って部屋を出た。

待ち合わせはお城の庭園の前。ラカン様は迎えに来てくれると言ったけど

緊張しすぎて落ち着かないから、外で待ち合わせしてもらうことにした。

はぁ…。ドキドキする…。心臓が飛び出しそう。

ぎゅっと手を握って、心臓が飛び出ないように押さえる。飛び出したりしないけど

本当にさっきからそれくらいドキドキしてる。こんなの初めてだわ…。

そう思いながら、私は小走りで庭園へ向かう。自然と歩くスピードが速くなってしまっていた。


すると目の前に金色に輝く髪をした男性の姿が目に飛び込んできた。

綺麗…。

思わず立ち止まって、私は見とれてしまった。


太陽の光を浴びてキラキラ輝いている金色の髪。いつもの従者の服装と違い

今日は夏陽国かようこくでよく着られてる式典用の衣装を身にまっとたラカンの姿は

絵本から出てきた王子様の様に見えた。

スラっとした長い手足に、体のラインピッタリそって作られた、漆黒の衣装はラカンのスタイルの良さをよく引き出している。


素敵だわ…。本当にかっこいい…。


「リヨウ殿…」


立ち止まって見とれていた私に気が付いたラカン様が近寄ってくる。

穏やかに微笑んで目の前に立つラカン様は私の理想の男性そのものだった。


「ラカン様…。お待たせしてすみません」


「いえ。私も今来たところですから」


「そうですか…よかった…」


キャーキャー!かっこよすぎる。鼻血がでそうだわ!!


私は、必死になって平静を装う。そうでないとラカン様の前で昇天してしまいそうな勢いだった。



「今日のリヨウ様は一段とお綺麗ですね。衣装がとてもよくお似合いです」


「‥‥ッ!!あ…ありがとう…ございます」


「さぁ。行きましょうか」


「はい…」


もう…。死んでもいい…。

それくらい嬉しかった。綺麗だと褒めてもらえた。

たとえお世辞であったとしても嬉しかった。

そっと私の右側に立ち綺麗な動作でエスコートしてくれるラカン様。

今日はこんな素敵な人と一緒に過ごすことが出来るのね…。夢見心地な気分で建国祭の会場に向かった。



「凄い人の多さですね…」


会場に着いてラカン様はポツリと呟いた。会場での人の多さにびっくりしている様子だった。


「建国祭は夏陽国かようこくにとっては一大イベントですから!」


「なるほど。皆さん楽しみにされているイベントなんですね」


「はい!子供から大人まで、多くの人が参加します。とくに見ものは雷覇らいは様と水覇すいは様の模擬戦です!」


「それは…凄そうですね」


「毎年、どちらかが勝つか分からないので皆ワクワクしてますよ」


「そうですか!楽しみですね」


会場全体を見渡せる席を怜彬れいりん様が手配してくれたおかげで

ラカン様とゆっくり話をしながら建国祭に参加することが出来た。

少し上の方の席では怜彬れいりん様と雷覇らいは様が楽しそうに会話している姿があった。

雷覇らいは様ったら…。怜彬れいりん様にくっついて、うっとりした表情で話していた。

ふふふ。本当に好きなのね。怜彬れいりん様の事。周りの視線はお構いなしに

怜彬れいりんに触れたり、見つめたりしている雷覇らいは様。

幼い頃から彼を知るものとしては、今の状態はかなり凄い状態だった。

みているこっちが恥ずかしくなるわ…。そう思って私は視線を逸らした。


「気になりますか?雷覇らいは様の事」


「え?」


「さっきから気にしているようでしたので…」


「いえ…。どちらかというとびっくりしてたんです」


雷覇らいは様の様子がですか?」


「はい。雷覇らいは様は昔はもっとクールな方でしたから」


「そうですか。今の雷覇らいは様は怜彬れいりん様一筋って感じですね」


「ええ。それが嬉しくて…。雷覇らいは様は兄のように慕ってましたから」



雷覇らいは様は変わった。本当に…。別人かのように…。

誰も寄せ付けることなくずっと一人で戦いに明け暮れていた雷覇らいは様。

サイガもほとほと手を焼いていると、ムツリ伝いで耳にした事があった。

とても心配だった。己を顧みず戦ってばかりの雷覇らいは様が…。

もっと自分を大切にして欲しい。スバルと一緒になってお願いしてみたけど聞き届けられなかった。


雷覇らいは様とは以前からお知り合いなんですね」


「はい。小さい頃から交流がありました!」


「そうでしたか」


「ラカン様と怜彬れいりん様も長いお付き合いって聞いてます」


「ええ。怜彬れいりん様が2歳の頃からお仕えしてきました」


「そうなんですか!きっと可愛らしい女の子でしたでしょうね」


「とても愛くるしい方ですよ…。今も変わらず」


ラカン様も眩しい笑顔で怜彬れいりん様を見つめる。きっととっても大切に想ってるんだわ。

怜彬れいりん様に仕えているラカン様の姿は、慈愛に満ち溢れていた。

そんな彼の姿はとても凛々しく眩しく見える。

素敵な関係だわ…。怜彬れいりん様とラカン様。

血は繋がっていないけどそれ以上の絆が二人の間にはあると感じた。


「あっ!そろそろ始まりますよ」


「いよいよですね!」


ちょうど大きな鐘の音がなった。建国祭を開幕する合図だった。

私とラカン様は一旦話を止めてパレードを見ることにした。

食い入るようにパレードを見つめるラカン様。ああ…。横顔も素敵だわ。

綺麗な蒼い瞳が宝石のように輝いている。

今日は本当に勇気を出してお誘いして良かった…。

私はラカン様の横顔を見つめながらそう考えていた。


怜彬れいりん様に後でお礼を言わないと。

衣装もとても綺麗な生地とデザインの物をプレゼントしてくれた。

費用は雷覇らいは様が持ったらしいが…。

自分の衣装を見ながらホクホクとした気持ちになる。あのマダムベリーの手掛ける衣装を着れたのだ。

女子なら喜ばないはずがない。誰もが憧れる夏陽国かようこく一番の仕立て屋さん。

普通なら私のような一般人には手が出ないような代物だった。

ラカン様も褒めてくれたし、今日はとっても素敵な日になったわ。


パレードが終わり次はいよいよ雷覇らいは様達の模擬戦だった。

会場がシーン…と静まり返る。緊張感がピリピリと肌を通して伝わってくる。

毎年の事だが今年はいつになく空気が張り詰めているような気がした。

ラカン様も黙って見守っていた。

今年の雷覇らいは様は気合の入り方が違うだろうな~。

何と言っても、愛おしい怜彬れいりん様が見守る中での模擬戦だ。

城内の噂では、雷覇らいは様は毎日稽古に励んでいたと聞いた。

怜彬れいりん様…。ブローチはちゃんと渡せたかしら?

スバルに習って一生懸命、慣れない刺繍をしていた。たしか…、桃の花を刺繍していたわね。


「引き分けー!!引き分け!!歩兵戦は引き分けー!!」


あれこれ考えているうちに、歩兵戦が終わってしまっていた。

大きな声で集計に回っていた人たちが一斉に声を出しなら馬に乗って走り出す。

広場に歓声がまが巻き起こった。



「いやーすごいですね!とても見ごたえがありました」


「ふふふ。そうでしょう!夏陽国かようこく自慢の歩兵の方達ですから」


ラカン様が褒めてくれると誇らしい気持ちになった。

私達、夏陽国かようこくの国民にとってはとっても身近なものだけれど

ラカン様にとっては珍しいようだった。秋唐国しゅうとうこくでは馴染みのないものかしら?

五神国ごしんこくはそれぞれの国の個性が強い。秋唐国しゅうとうこくは宝石の国と呼ばれるほど

綺麗な宝石が沢山採れると聞く。だから…ラカン様も、怜彬れいりん様も綺麗なのかしら?


「次は雷覇らいは様たちが出てきますよ!」


「楽しみですね!」


また二人で前を見て模擬戦を観戦した。


バーン!!!


再び大きな鐘の音が鳴り響く。


雷覇らいは様と水覇《水覇》様が激しく打ち合う。キンキンと金属音がぶつかり合う音が会場内に響き渡った。

私はラカン様と一緒になって二人を応援する。雷覇らいは様も、水覇すいは様もどちらも昔からの付き合いがある。

どちらも頑張ってほしかった。ラカン様はどちらかというと雷覇らいは様を応援していた。

やっぱり、怜彬れいりん様が応援してるからそうなるのかしら?

そんな事を考えていたら、模擬戦もあっという間に決着がついた。

勝者は雷覇らいは様。見事な戦いぶりだった。二人ともとても満足そうな顔をしていた。


雷覇らいは様すごかったですね!」


「はい!感動しました。模擬戦とはとても素晴らしいですね!」


興奮した様子で語りだすラカン様。無邪気に笑っている顔がとっても可愛く見えた。

普段は冷静で表情があまり表に出ないことが多いけど、今日は色んな表情が見れたわ…。

それだけで、胸が高鳴り今にも倒れそうなくらい眩暈がした。

もっとラカン様の事知りたい…。もっと話をしてみたい…。

そんな欲がどんどん自分の中から湧き上がってくる。

こんなに誰かに対して強い想いを抱いたのは初めてだった。


決して今まで好きな人がいなかったわけではなかった。

それなりにお付き合いもしてきたし、男の子友達もたくさんいる…。

でもその中の誰一人、こんな気持ちになる人はない。ラカン様だけ…。

ラカン様といる時だけ、こんなにも息が苦しくて嬉しくて泣きそうになる…。

思わず泣きそうになって、わたしは俯いてしまった。


「リヨウ殿…。どうしたんですか?」


「いえ…何も…」


さすが有能な従者だと思った。仕事柄ちょっとした表情の変化や仕草に敏感なのだろう。

私が咄嗟に下を向いたことにすぐさまラカン様は反応した。


「気分でも悪いんですか?何か飲み物でも…」


「ちょっと…。興奮しただけす!大丈夫です」


「そうですか?」


心配そうに顔を覗き込まれて、思わず後ろに下がってしまった。

近い…。真正面から間近でラカン様の顔を見るとますます動悸が激しくなり

全身の血が沸騰するような気がした。どうしよう…。絶対顔が真っ赤だわ…。


「ラカン様…。本当に大丈夫なので…」


「そうですか…。何かあったらすぐに仰ってくださいね」


「はい…」


わたしはそう返事をするだけで精一杯だった。はぁ…。緊張した~。

いきなりアップは反則だわ!あんな綺麗な顔で見つめられたらどうしたらいいか分からなくなるもの…。

どうしよう…。好きすぎて顔が見れないなんて…。

自分のこの気持ちはどうしたらいいのか?初めての体験だった。


「リヨウ殿。雷覇らいは様たちにお祝いを言いにいきませんか?」


「そ…そうですね。そうしましょう!」


戸惑っている私を気遣ってくれたのか、ラカン様は一緒に雷覇らいは様の元へ行く事を提案してくれた。

さりげなく話題を変えてくれるところも素敵…。

ううう。好きになる要素しかない!!

さっきと同じようにエスコートされて、わたしは雷覇らいは様の元へ向かった。

そこには嬉しそうに怜彬れいりん様と抱き合っている二人がいた。

雷覇らいは様…幸せそう。


無邪気に子供のような笑顔で雷覇らいは様が怜彬れいりん様を持ち上げて笑い合っている。

怜彬れいりん様も泣きながら笑っていた。

きっと模擬戦で感動したのね…。私はしばらくの間二人を少し離れたところで見守ることにした。


「ラカン様。怜彬れいりん様が幸せそうでよかったですね」


「そうですね…。あんな笑顔の怜彬れいりん様は久しぶりです…」


「そうですか…」


ラカン様の話によると、ほんのちょっと前まで怜彬れいりん様は笑う事もせず

ただただ毎日仕事をこなすだけの日々だったと聞いた。

大切な人を亡くしたショックがあまりにも大きく、心に開いた穴が塞がらなかったそうだ。

それが雷覇らいは様と会って一緒に過ごすようになって、どんどん笑顔になる回数が増えたと

泣きそうで辛そうな顔になりながら語っていたラカン様。


今の怜彬れいりん様の様子は本当に喜ばしい事なのだろう。

きっと…ラカン様も同じように辛かったのだわ。大切な人が傷ついている姿を見るものほど辛いことはない。

私もスバルがそんな状態だったらきっと辛い…。

そう思うと私は無意識のうちにラカン様の手を握り締めていた。

それに気が付いて、何も言わずに握り締め返してくれるラカン様。

この人と一緒に居たい…。何があっても支えていきたいと感じた。



雷覇らいは様!おめでとうございます!」


「ありがとう。リヨウ」


怜彬れいりん様も良かったですね~」


「ええ。とっても感動したわ!」


それから少しだけ雷覇らいは様達と言葉を交わして、私とラカン様は会場を後にした。

怜彬れいりん様達もこの後二人で、屋台をめぐって夜まで過ごすそうだった。

二人の仲のいい姿を見送りながら、私とラカン様は何も言わずに見つめ合って微笑んだ。

きっと同じ事を考えてると思う…。

雷覇らいは様と怜彬れいりん様が幸せそうで良かったと。


大切な人が笑顔で毎日を過ごしている。それはとても幸福な事だ。

私は怜彬れいりん様もだけど…。ラカン様にも幸せになってほしいな…。

自分よりも他人の幸せを望む彼だから幸せになってほしいと強く思った。

そんな事を考えながら、私はその後もラカン様と一緒に建国祭を楽しんだのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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