11.甘々生活スタート~突然の訪問者~
やっとこの場面をかけました!!(^O^)/
楽しんでもらえると嬉しいです☆
雷覇殿が滞在する期間も残り一週間となった今日。突然来訪者が訪れた。
それは雷覇殿もびっくりする相手で、珍しく動揺しているようだった。
「なんで、お前がここにいる…。水覇」
水覇殿は夏陽国のもう一人の最大党首であり、雷覇殿の双子の弟だった。
双子というだけあって、見た目は雷覇殿そのものだ。一目では区別がつかない。
唯一違うとすれば瞳の色。水覇殿は綺麗な翠色の瞳だった。ちなみに水覇殿の異名は翠龍。
どんな相手でも地の果てまで追いかけて必ず仕留める。というとことから来ているらしい…・。
兄弟そろって怖いな!!!
「何って兄さんが勝手なことして周りに迷惑をかけているって連絡をもらってね。連れ戻しに来たんだ」
夏陽国は、ほかの国とは違い変わった王政を取っている。それは国王が二人いることだった。
その理由としては、夏陽国の王族は双子が生まれる可能性が極めて高いこと。
広大な土地のため、二人で半分ずつ国を治めていること。通常、王族で双子の男子は不吉とされる風潮が多いが
夏陽国は二人の王をたてることで、統制を取っているため、後継ぎ争いがない。それぞれが与えられた領土を治める。
万が一、兄弟のうちどちらかが居なくなったとしても、兄弟のうちどちらかが治めることができるからだ。必然的に後継ぎ問題は起きない。
雷覇殿がこれほど長く、国を空けることができたのも弟の存在があったからだろう。
応接室に通された水覇殿は、深々と謝罪した。
「この度は我が兄が迷惑をかけて、本当に申し訳ない」
「いえ。とんでもない。突然来られたことには驚きましたが、それ以外は有益な時間でした」
淡々とした表情で怜秋が対応する。どうやら、水覇殿を呼んだのは、怜秋ということだった。
いつの間に!!!全然知らなかったわ。でも、水覇殿を呼ぶなんてすごい!!ってか兄弟そろってフットワーク軽いな!!
そんなほいほい王族…、しかも王様が来ちゃって大丈夫?夏陽国は??
「来るなら、来るで連絡くらいしてもよかっただろう?」
「前もって連絡なんかしたら、兄さんは居なくなるか、居留守を使うでしょ?」
「うっ…。そんなことはしない…」
どうやら、雷覇殿は水覇殿に頭が上がらないらしい。すごい!!
雷覇殿がタジタジしているところ初めて見たかも!!!
「怜彬殿も、ご迷惑をおかけして申し訳ない。さぞかし心労がたまっていることでしょう?」
「あっ?いいえ。そこまでは…」
「兄は小さい頃からこんな感じなんです。一度決め込むと何があっても突き通す。誰が止めてもお構いなしに実行するんです…。しかも周りを巻き込んで」
やれやれといった感じで、水覇殿が話し出す。相当苦労されたのね…。なんかすごく共感できるわ!!!
「特に大変だったのは僕たちが10歳になるころで…」
「お前は昔話をしにわざわざここまで来たのか?」
めっちゃ不機嫌な雷覇殿が話に割って入ってきた。こんなに不機嫌な彼を見たのは初めてかも!!今日は初めて尽くめね!!
「そんな筈ないでしょう?僕がわざわざここまで来ないといけない理由を作ったのは誰かな?」
「俺だな。だがちゃんと手紙は書いただろう?」
「時間差で送られてきて、事後報告の手紙が?あんなので納得するとでも思ってるの?普通は実行する前に相談するんじゃない?」
「相談したらお前は反対するに決まっているだろう?」
「反対するだろうね。一国の姫に熱をあげて相手の迷惑も考えずいきなり訪問。おまけに勝手に長期滞在。反対しない理由があったら教えてほしいな!兄さん!」
うーわー。黒い!!水覇さん、ドス黒いよ!!めっちゃいい笑顔だけど、負のオーラがハンパない!!怖い!!
「…。ない…」
「兄さんが無能じゃ無くて安心したよ!」
「さぁ話を戻そう。僕が来た理由は兄を連れ戻すためと、雷覇殿と怜彬殿の婚約を結ぶためだよ」
「えっ???コンヤク…?」
わたしは一瞬、変な話し方をしてしまった。あれ~?水覇殿は私の味方じゃなかったのか??
「僕は最初からそのことで水覇殿に連絡したんだ。このままでは収集がつかないからね」
怜秋も話を合わせてきた。二人はあらかじめ話をつけていたようだ。
「そんな話、俺は聞いていない。承諾できるはずがないだろう?」
「冷静に考えてよ兄さん。一か月も国を空けた挙句なんの成果もなしに帰ってきて、どう皆に示しをつけるのさ?腹でも切るの?できないよね!」
「それとも、もうすぐ一か月経つけど成果は上げれそうなの?それなら何の文句もないよ」
冷静に淡々と雷覇殿をにこやかな笑顔で論破していく。
水覇殿は怜秋と似ているかもしれない。
うーん。怒らせて怖いの水覇殿だわ!きっと!!
「それは…」
思わず、雷覇殿は言葉を詰まらせる。
なんか責められてて申し訳ない気持ちになるけど、はじめからわたしは無理って言いましたからね!!!
うん。うん。わたしは悪くない。
「その様子じゃ、成果は上げてないよね?だったら戦法変えるのが戦略の基礎中の基礎じゃないかな。兄さんはいったい25年間何を学んできたのかな?
それでも軍事国家当主なの?」
「…・・」
おっふぅ!!!完全に撃沈してしまった。恐るべし翠龍。追い詰め方がハンパない!!
しかも綺麗な顔立ちだけに威圧感が凄い!!!
「サイガ。お前も後でお仕置きだよ?兄さんの暴走を止めるのがお前の役目だろう?」
「…!!?申し訳ございません!!!」
ガバっと思いっきりサイガが土下座する。お仕置きって何されるんだろ…。
想像しただけで震える。水覇殿のことだ。
きっと容赦はしないのだろう…。ひぇ~。
「さて。話を戻そうか。僕と怜秋殿は二人の婚約に既に同意している。あとは二人の同意次第だ。ただ現状このまま兄が国を留守にしたままにするのはまずい。
ひとまずは婚約を結び、それ以降は話し合いをするってことでいいかな?」
「わたしはそれでかまいません」
ほっと胸をなでおろした。思ったよりも早く事態が収拾しそうだった。正に鶴の一声!!
水覇殿ありがとう!!雷覇殿はずっと無言だけど、大丈夫かしら…?
「わかった。わたしもそれでかまわない…」
「じゃあ!!さっさと婚約状にサインしてこの話は終わりだ!!今後どうするか話を詰めないとね!!」
キラキラ眩しい笑顔で話を進めていく水覇殿に対して、明らかにどんどん暗くなっていく雷覇殿。この二人の力関係は明らかに水覇殿が上のようだった。
話し合いで決まった内容は二つ。
1:婚約期間は1年間
2:婚約期間はお互いの理解に努め、できるだけ交流すること
まぁ。無難な内容で安心した。期間が決まっていることもありがたい。
だってずっとはお互い良くないもんね!!
お互いの理解を深め交流するって言うのが
どんなことをするのかわからないけど、水覇殿にあれだけこっぴどく怒られた後だ。
この国に長期滞在する展開はないだろう。
ついでにリョクチャの商売が本格的に取り組むことに決まった!!
やった~。今から色々かんがえないとな~。ふふ。楽しみ。
雷覇殿と水覇殿は明日、国へ帰るそうだ。
まぁ、そうりゃそうだよね。
約一か月近く滞在してたんだもの。水覇殿もこちらへきているのであれば
早く帰った方がいいと思う。
やっと久しぶりに怜秋と過ごせる。この数週間はあっという間だったな。
わたしは部屋へ飾る花を摘みに、温室へ向かった。
「うーん。怜秋の部屋にはこれを飾って…。これと組み合わせて…」
ぶつぶつ言いながら花をハサミで切っていく。
雷覇殿からもらった花も植え替えたけどどれも元気に咲いていた。
ふふふ。やっぱり花は癒されるなぁ。怜秋の次に!思わず顔がにやけてしまう。
「怜彬殿。何がそんなに嬉しいんだ?」
振り向くと雷覇殿が立っていた。
全然気が付かなかった!!独り言聞かれたかな??恥ずかしい!!
「ふふ。そんなに嬉しそうな顔をしてました?」
「花を見ているときはいつも幸せそうな顔をしてる」
「そうですね、花を見るのはとても好き。でも誰にどの花をあげようとか、どんな花なら喜んでくれるだろうとかそういう事を考えている時が一番楽しい」
「そうか。怜彬殿らしいな…」
「なんか…。今日は元気ないですね?大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない。明日から怜彬殿に会えないと思うと…。堪らないよ」
少し泣きそうな顔で雷覇殿が笑う。いつもより子供っぽく見えた。
この人って落ち込んでると犬みたいに見えるのなんでだろ?
でも、ちょっと罪悪感…。
いつもの勢いもないし、よっぽど水覇殿に強制送還されるのが堪えたらしい。
甘々攻撃も今日はまだなかった。
「そのうちすぐに忘れますよ!わたしのことは!」
「どうやって?どうしたらそうできる?」
ますます、雷覇殿の顔が曇る。わたしは気づかない振りをして明るく答える。
「うーん?何か趣味をするとか、仕事に打ち込むとか?」
「趣味のことをしていても、仕事をしていてもずっと頭から離れない。そんな時はどうしたらいい?」
「それは…」
寝たらいいじゃない?って言おうとして、雷覇殿の手が伸びてきてぎゅっと抱きしめられてしまった。ふわっと雷覇殿がいつも付けている、シトラス系の香水の匂いがした。
「…。」
びっくりして声が出なかった。雷覇殿の胸に顔を押し付けている形になっているから彼の顔は見えない。
離れようと腕に力を入れるけど、びくともしなかった。
「雷覇殿…。離して…」
「嫌だと言ったら?」
「もう二度と会わないわ」
「……。そうか…。だったら最後に一つだけ教えてくれ」
そういいながら雷覇殿が手を緩める。下から彼の顔を除く形で見上げた。
右手で頬を撫でられる。あの苦手な金色の瞳に見つめられる。
ドクン。ドクン。自分の心臓の音が大きくなるのがわかる。
「なんで、あいつから貰った簪を今でもつけてるんだ?」
「っ…!!!」
息が詰まりそうになった。雷覇殿から離れようにも左手で腰を抱かれているから動けない。
思わず顔をそらしながら言った。
「気に入っているから…。つけてるだけよ…」
「本当にそれだけか?」
「そうよっ!それ以外に何があるの?もう…。離して…」
「怜彬も4年経った今でもあいつのことを忘れていない!だからずっとその簪を大切に持ってるんだろう?」
彼の顔を見て、思わず泣きそうなった。何か言ったような気がするけど覚えていない。
雷覇殿の手が離れたと同時にわたしはその場から逃げ出した。
お読みいただきありがとうございました( *´艸`)
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