129.ふたりの庭
ようやくお庭完成です☆(*^-^*)
好きな人と共有できるものがあるのっていいですよね~。
わたしも欲しい!!(笑)
「色んな事があるかもしれないけど、こらからもずっと俺の傍にいて欲しい」
そう言われて、手渡された金木犀の苗木。
今はまだ小さいけれど1年もすれば大きな木に育つだろう…。それだけ成長の早い木だった。
雷覇がまさかこんなサプライズを考えてくれていたなんて。
わたしは苗木を見つめながら物思いにふけっていた。
「怜彬…。落ち着いた?」
「うん…ありがとう」
雷覇がそっとハンカチを差し出してくれる。
さっきの事に驚いて、嬉しくて号泣してしまった。
そう言えば…。初めてかも…。
思えば最初から結婚する前提で雷覇が迫ってきていたので
正式なプロポーズを受けた記憶がない。
だから…。雷覇は伝えてくれたのかしら…。ぐす…。
そう考えるとまた嬉しくて涙が出てきた。しばらく泣き止む気配はない。
雷覇が優しく頭を撫でて肩を貸してくれている。
「どうして…金木犀の木にしようとしたの…」
「怜彬の本を見て決めたんだ。花言葉が良いなと思って選んだよ」
「そう…金木犀は初恋だったわね…ぐす…」
「ああ。俺が初めての恋した人は怜彬だったから、ちょうどいいと思って」
「いろいろ考えてくれて…ありがとう。とっても嬉しいわ…」
雷覇がここまで考えて何かしてくれている行為自体が嬉しかった。
もちろん苗木をくれたことも嬉しい。金木犀は花咲けばとてもいい香りのする木だ。
香りを嗅ぐたびに今日の事を思い出すんだろうな…。
「わたしもね。今日で一年たつなって考えていたの…」
「怜彬も?」
「ええ。それでさっきまでいろんなことを思い出してて…それもあったから‥‥うれしくて…」
言いながらまた泣いてしまった。これはきっと目が腫れてしまうやつだな…。
ハンカチで涙をぬぐいながらそんな事を考えていた。
「建国祭が終わったあたりから考えてたんだ。何か怜彬が喜ぶことはできないかなって」
「そうだったの…」
「プレゼントを渡そうとも思ったが、怜彬が喜ぶ気がしなくてな…それで庭を作って驚かせようと思ったんだ」
そう言ってくしゃっと笑う雷覇。わたしが好きな彼の表情…。
この笑顔をずっとそばて見ていられるのね…。そう思ったらまた胸が詰まって涙が出そうになる。
嬉しい。以外の言葉が見つからなかった。
「とっても嬉しい…今日は素敵な日になったわ」
「良かった…。実はさっきまで結構、緊張してたんだ」
「え?そうだったの‥‥?」
全然そんな風には見えなかった。いつも通りだったとしか思えない。
「怜彬に嫌だとか重いとか言われたらどうしようと考えてた」
「そんな…言わないわそんな事」
「そうだよな…。でも如何せん片想いの時期が長かったから自信が持てなくて」
「雷覇がしてくれるならどんな事でも嬉しいわ…わたし」
「ありがとう…怜彬」
嬉しそうに微笑んでまた雷覇に口づけされる。
するとさっきまで雨が降りそうなくらい曇っていたが、雲の切れ間から光がさして、太陽が出てきた。
庭中が光で溢れて、キラキラ輝いていた。
「雷覇!さっそくこの金木犀を植えましょう」
「よし!そうするか!」
そう言って立ち上がって二人で一緒に庭に木を植える。
雷覇がスコップで土を掘ってわたしがそこに苗木を置いた。
ゆっくり優しく土を掛けて如雨露で水を注いだ。
「後は周りにお花を植えたら完成ね!」
「ああ。お昼を食べたら一緒に植えよう」
せっかく庭ができたという事で外で昼食をとることにした。
まだテーブルはないけど、下に絨毯を敷いて二人で並んでご飯を食べた。
今日のお昼はサンドウィッチだった。卵にハムそれからたっぷりのお野菜に
ローストチキン。いろんな種類のサンドウィッチが用意されていた。
どれも小さく切られていて手に持ちやすく食べやすかった。
「このサンドウィッチ、とっても美味しいわ!」
「そうか!よかった。実は俺が作ったんだ」
「えっ!!雷覇が…」
それを聞いて思わず食べたサンドウィッチを吹き出しそうになった。
雷覇が料理をするなんて…。その気配にも全く気が付かなかった。
「実はラカンにこっそり教えて貰っていたんだ」
「そうだったの…全然知らなかった…」
「怜彬を驚かせようとおもってこれも黙ってた」
「ほんとうにびっくりしたわ。いつの間にラカンと仲良くなったの?」
「結構…前だな…」
照れくさそう頭を掻きながら話す雷覇。
最近、よくラカンといるなとは思っていたけど…。
「雷覇がラカンに聞いたの?サンドウィッチの作り方」
「ああ。何か手軽に外で食べれる物はないか聞いたら進められた」
「そう…。ラカンは料理できる人だからね」
「サンドウィッチなら簡単に作れるし、外で食べるにはちょうどいいと聞いてな。さっきまで作ってた」
「ほんとうに…今日は驚いてばっかりだわ!」
「せっかくの二人の記念日だ。特別なものにしたかったんだ」
わざわざ、料理を学んでまで準備をしてくれていた雷覇。
彼の細やかな気配りが嬉しかった。
それにしても…本当に美味しいわ!このサンドウィッチ。
ラカン直伝とはいえ作ったのは雷覇だ。料理も練習すればもっと上手になるかもね…。
「雷覇。本当に今日はありがとう!とっても嬉しい」
「怜彬が喜んでくれてよかった」
二人で微笑みあってお昼を楽しんだ。
雷覇が用意してくれたサンドウィッチは全部食べてしまった。
「はー!もうお腹いっぱい…」
「俺もだ」
雷覇と一緒にゴロンと絨毯の上に寝っ転がり空を見上げる。
うっすらと雲がかかっていて青空がのぞいている。風が優しく吹いて葉っぱがカサカサと揺れていた。
「たまには外でゆっくりするのもいいな…」
雷覇がわたしの頭の下に腕を伸ばして枕代わりにしながら言った。
わたしは横を向いて腕に頭を乗せて雷覇の顔を除いた。
「そうね!時々こうして、ピクニックしましょう」
「いいな…天気のいい日はそうしよう」
「うん。今度はわたしがお弁当作るわ」
「ああ。楽しみにしてる…」
ちゅっと軽く雷覇と口づけした。なんだか心がくすぐったい…。
ドキドキして、ソワソワして落ち着かない…。けど雷覇の傍は居心地がいい。
そんな変な感覚だった。今ここにはわたしと雷覇の二人だけ…。
木々に囲まれながら過ごす時間はとても穏やかで温かなものだった。
幸せ…。ずっとこのままならいいのに…。そんなことを思うとさらっと口から気持ちがこぼれ出る。
「雷覇…大好き」
「俺もだ…」
「んっ‥‥」
ぐっと体が近づいて雷覇が上にかぶさる形で口づけする。
今となっては自然な行為だった。好きだから触れていたい。近づきたい…。
これまでならびっくりして、すぐに離れようとしたけどそうしたくない自分がいた。
雷覇を見上げながら何度も唇を重ね、何度もお互いの舌を絡ませる。
心の中が温かいミルクみたいな柔らかな液体で満たされていくのを感じる。
雷覇も同じように思っているだろうか…。思ってくれたら嬉しい…。
わたしは雷覇を感じながらそんな事を考えていた。
「はぁ…幸せ過ぎて…死にそうだ…」
「ふふふ。雷覇が死んでしまうのは嫌よ…」
雷覇が口づけをとめて、わたしの胸に顔を埋めてきた。かわいい…。
わたしはそっと彼の髪をすくってなでた。綺麗な銀色の髪…。
雷覇がわたしと同じ気持ちでいてくれて嬉しい。
「俺は死なない…。少なくとも怜彬を置いて行ったりしないよ」
「うん…」
炎覇の事を言ってるんだろうな…。
愛する人が自分よりも先に死んでしまう経験はもうしたくない…。
でも、雷覇なら大丈夫。彼はわたしを置いていったりなんかしない。
これまで沢山の事を二人で乗り越えてきたのだ。きっと大丈夫…。
まだまだ結婚するまでに時間はかかるだろうが、彼といればその時間も楽しいものになる。
今を大切にしよう…。見えない何かを恐れるよりも今目の前にいる雷覇を大切にしたい。
わたしは雷覇を抱きしめながらそう考えていた。
「怜彬、この花はここでいいのか?」
「ええ!大丈夫よ。根っこが柔らかいから優しく植えてあげてね」
「わかった。優しくだな…」
おっかなびっくり苗木を植え替える雷覇。
髪が邪魔になると言って今は高く結い上げている。わたしも動きやすい格好に着替えて一緒に作業する。
こうしていると初めてラカンと一緒にお庭を作った日が懐かしい…。
父に誕生日プレゼントで庭を作ってもらい沢山の花や木々を植えた。
毎日泥だらけになりながら、繰り返し作業していた日々。あの頃は段取りが悪くてよく失敗して泣いてたっけ…。
その度にラカンに慰めてもらい、休憩してまた作業に戻るという事を繰り返していた。
その時だけは母の死を紛らわせることが出来ていた。
植えていた花も生前、母が好きだと言った花が多かった。数少ない記憶をたどり必死になって面影を追っていた。
植えた花を見るたびに母が傍にいてくれるような気がしていた…。
「怜彬、次はどれにする?」
顔を土で汚しながら雷覇がにこやかに尋ねてくる。
わたしは持っていたハンカチでその土を拭った。
「そうね…。次はその花にしようかしら。日陰の方がよく育つ花だから」
「これだな…。よし…」
だんだんコツを噛んできたのか、雷覇の作業のスピードが速くなってきた。
それに横目で見ている限りではとても楽しそうにしていた。
よかった…。雷覇も楽しんでくれている。
庭作りもきっかけは雷覇が教えて欲しいと言ってくれたからだ。
わたしが好きなものを、自分も知りたいと言ってくれた。本当に…素敵な彼氏を持ったわ。わたし…。
「ふぅ…!ひとまずこれで全部植えたわね」
「そうだな…。いいね。すごく綺麗な庭だな…」
「ええ。とっても綺麗だわ」
少し離れた場所に立って、庭全体を見渡した。赤や黄色、紫に青色。色とりどり花に沢山の種類の草木。
大きな木の下に置いてある二人掛けの白いベンチ。
大小さまざまな石でできた、別邸の入り口から裏庭に続く小道。
二人で相談しながら考えたものが、今目の前に形となって出来上がった。
「怜彬、この庭にはなんて名前を付ける?」
「名前?」
「そうだ。せっかく二人で作ったんだ。何か名前を付けよう!」
「そうね~。何がいいかしら?」
せっかくだから、二人にちなんだ名前が良いわよね…。うーん…。
「ロイヤルスウィートガーデンはどうだ?」
「え?ちょっと…ダサいわ…」
「そうか…」
思わず、ズバット言ってしまった。甘くて高貴な庭って…。どんな庭よ…。
「今すぐには思いつかないから、もうちょっと考えましょう」
「わかった!そうしよう」
雷覇とわたしのお庭…。どんな名前が良いかしら?
その日の夜、わたしは日記を書きながら、庭の名前の候補を書きだしたのだった。
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