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127.これまでとこれから

今回はちょっと長めです(*^▽^*)

楽しんでいただけると嬉しいです!

「じゃあ…兄さん気を付けて帰ってね」


黒綾こくりょう殿が、黒爛こくらん殿に別れを告げる。

今日は黒爛こくらん殿が黒秦国こくしんこくへ帰る日だった。

わたし達は、黒爛こくらん殿を見送る為、外に出てきていた。

少し曇っていて薄暗い。もう少しで雨が降りそうな天気だった。


「ありがとう。黒綾こくりょうも風邪ひかないように気を付けるんだよ」


「分かってるよ。もう子供じゃないんだから」


照れた様子で黒爛こくらん殿と話す。黒綾こくりょう殿。

ふふ。ほんとうに仲良しね。わたしと怜秋れいしゅうみたいだわ!


「それでは、皆さん本当にありがとうございました。またぜひ黒秦国こくしんこくにも遊びに来てください」


「ありがとう!黒爛こくらん殿。またぜひお伺いするわ」


にこやかな笑顔で去っていく黒爛こくらん殿。最後まで優雅で気品あふれる人だった。

黒爛こくらん殿が言っていたように、いつか黒秦国こくしんこくにも行ってみたいな…。

そう思いながらわたしは黒爛こくらん殿を見送った。


少し寂しそうに馬車を見送る黒綾こくりょう殿。

でもすぐに切り替えて、仕事モードになっていた。


「それでは、僕はこのまま水覇すいは殿の所へ行きます」


「ああ。また執務室でな」


「はい。失礼いたします」


さっと一礼してその場を立ち去っていく黒綾こくりょう殿。

日に日に彼は凛々しい男性になっている気がする。怜秋れいしゅうも大人になったらあんな感じかしら?

きっと綺麗系なイケメンになるでしょうね~。わたしは数年後の成長した怜秋れいしゅうの姿を思い浮かべる。

サラッとした綺麗な黒髪に、ラピスラズリ色の切れ長で艶やかな瞳…。

う~ん。我が弟ながら凄いことになりそうね…。

そんなことを考えていると雷覇らいはに呼び止められた。


「どうしたの?雷覇らいは


「今日から別邸の庭作りが始っているだろう?後で一緒に見行かないか?」


「そうだったわ!行きたい!」


「じゃあまた、お昼に別邸に行くよ。一緒に昼食も取ろう」


「わかった。お仕事頑張ってね!」


「ああ。行ってくるよ」


そう言っておでこに口づけして雷覇らいはが去っていく。雷覇らいはの手首には

昨日あげたフィタが結び付けられていた。それを見た瞬間…昨日の事を思い出す。

ぐふっ!!…。急に生々しい唇の感触が蘇りその場で悶絶しそうになる。

あー!!ほんとうに…。ほんとうに、ああいう事を世間一般の恋人達はしているの?

聞きたい!聞きたいけど恥ずかしい!こんな時…お母さんでもいればな~。

無いものをねだっても仕方ないのは分かっているが、こういう話は中々他の人には話し辛い。

マーリンに言うのもな~…。彼女なら詳しんだろうけど…。

手紙で聞くのも恥ずかしい!そもそも文章にすること自体が自虐でしかない気がする…。


半分泣きそうな気持になりながら、わたしはリンリンと一緒に別邸に戻る。

リンリンに聞いてみる?いやいや…。彼女もわたしと恋愛スキルは大差ないきがする…。

それじゃあ…。ラカン?いや!無理!いくら小さい頃からわたしのことを知っているからと言って

恋人同士の口づけってどんなの?とか聞けない!

ううう…。やっぱり、雷覇らいはに教わるしかないのかしら…。

それはそれで…、実践しよう!とか言って大変なことになりそうだし。ちょっと怖い。


昨日のあの感触は衝撃だった。自分の体内に他人の体の一部が入ってくる…。

そんな感覚だった。いつも以上に雷覇らいはとの一体感が増す。

そう思うだけで全身の毛が逆立って鳥肌が立つ…。だけど不思議と嫌な感覚ではない。

緊張と羞恥と高揚…いろんな感情がまざって複雑だった。


でも…。結婚して子供を作るってなったらもっとすごいのよね…。

最低限の知識として知って入るものの、実際に体験した事ないわたしにとって未知との遭遇だ。

まぁ…。誰にでも初めてはあるのだし…。わたしだけじゃないだろうし。

はぁ…。考えても仕方ない。そう言えばマーリンには、雷覇らいはに任せて

わたしは何もしなくてもいいみたいなアドバイス貰ったっけ?

知らないのなら、知っている人に身を委ねた方が良い。雷覇らいはの事だ。

わたしが嫌がるようなことはしない。昨日もあれからは普通に接してくれている。

よし!切り替えてお庭作りの事を考えよう!


そう思ったところでいつの間にか別邸に戻ってきていた。

今日からいよいよお庭作りが本格的にスタートする。わーい!!わたしは心の中で万歳した。

こちらが指定した場所に様々な植物が植えられて形になっていく…。

とっても楽しみだった。植えたい木も決まっている。おおまかな作業は専門の庭師に任せて

細かな作業は雷覇らいはと二人で行う事になっている。

ちょうどわたしの足の怪我も治っているしいいタイミングだった。

ちょうど怪我が治っていてよかったな!雷覇らいはと一緒に作業できるのは嬉しい。

そう言えば、もうすぐ再会して1年になるのか…。そんなに時間経ったっけ?と思うけど

随分月日が経過していた。はぁ~。いろんなことがあったな~。

わたしは暖炉のソファに座って出会った頃を振り返っていた。

リンリンがそっとお茶を出してくれる。わたしをそれを受け取ってゆっくり飲み始める。


最初は凄く憂鬱だった。どうやったら彼から逃れることが出来るのか?

そんな事ばかり考えていた毎日だった。男装までしてお城を抜け出したりして逃げてたっけ…。

今思うと突拍子もない事をしたものだと自分でも思う。

抜け出している間に、沢山の贈り物を送ってきた雷覇らいは。今でも秋唐国しゅうとうこくには

数々の贈り物が残っている。特に植物が多かったな…。わたしが好きなものを知っていて

送ってきてくれてたな。あの頃の雷覇らいはは熱量が凄すぎて内容が全然伝わってこない感じで

対応するのに困っていた。おまけに怜秋れいしゅうには怒られるし二人で話す時間は減るしで

踏んだり蹴ったりな気持ちだった。


それと同時に怖かった。雷覇らいは炎覇えんはにそっくりで一緒にいるだけで

見ているだけで炎覇えんはの事が頭の端でよぎる。蓋をしていた記憶が徐々にあふれ出してくる。

思い出す記憶はどれもキラキラしてて眩しい…幸せなものばかり…。

だから余計に辛い。今の現実とあまりにも差があり過ぎるからだった。

なるべく考えないように、なるべく見ないようにそう言って自分の気持ちから逃げていた。

不思議と雷覇らいはといるとそんな気持ちはどこかにいっていて考える余裕がなかった。

次から次へと新しいことが起こり、目まぐるしく毎日が過ぎていく。

秋唐国しゅうとうこくを飛び出していろんな国へ行き沢山の人に会い多くを体験した。


夏陽国かようこくではマダムベリーと雷覇らいはに色んな服を着せられて

怜秋れいしゅうに凄く焼きもちを焼いていた。

春魏国しゅうぎこくではマーリンに会いお祭りに参加して雷覇らいはと喧嘩した。

その後誘拐されて冬羽国とううこくへ行き、冬條とうじょう殿との一緒に過ごした。

その頃から雷覇らいはを好きだと意識する。

雷覇らいはに向き合うと言ってから彼にどんどん惹かれて行った。

そこから何度も告白しようとしたよのよね…。全然タイミング合わなくてできなかったけど。

少ししてから怜秋れいしゅうが風邪をひいて雷覇らいはに内緒で帰国。

雷覇らいはと会えない期間が続いて五神国ごしんこく会議が始まった。

その頃にはもう炎覇えんはに対する想いを留めておくことが出来なくて

ぶつけるように雷覇らいはに心情を吐露した。今まで貯め込んでいた気持ちがいっきに

噴出してお互い感情的になってしまった。でもその時に初めて気が付いた。

過去を否定することは炎覇えんはを否定すること。彼がくれたものを否定することだと気が付いた。

そこでようやく前に進もうと思えるようになったんだわ…。


ふぅ。一息ついてお茶のお代わりを飲む。

前に進もう。雷覇らいはにちゃんと気持ちを伝えようとした矢先に雷覇らいはが災害で大怪我をする。

あの時は本当につらかった。雷覇らいはが死んでしまったらどうしよう。

もう目を覚まさなかったら?ずっと声も聞けないようになってしまったら…。

その時の感情を思い出すだけで、今でも泣きそうになる。

毎日眠れない日々を過ごして、ようやく雷覇らいはが目を覚ます。

ほんとうに嬉しかった。雷覇らいはがこちらを見て大丈夫と言ったことは今でも覚えてる。

それから雷覇らいはのお世話をして黒綾こくりょう殿に出会う。

お兄さんに暗殺されかけて命からがら逃げてきたところだった。


雷覇らいはも、黒綾こくりょう殿と仲良くなっていて兄弟のようだった。

夏陽国かようこくに戻って一緒に仕事をするようになって雷覇らいはと沢山の時間を共有する。

ちょうどそのころに虹珠こうじゅ殿達に会ったのだっけ…。

最初に会った時のインパクトは今でも忘れられない。

彼女たちはわたしに伝えてくれた。炎覇えんはを看取ってくれてありがとう。と…。

すごく嬉しかった。過去が報われた気がした。それに虹珠こうじゅ殿達はわたしのことを

とても可愛がってくれた。一緒に温泉も入ったのよね~。気持ちよかったな!

また時間を作って雷覇らいはと一緒に行きたいな…。


戻ってきてからも忙しい毎日だった。リョクチャ事業をみんなで相談しながら進めて

マダムベリーにザガクを紹介してもらったのだっけ。

でもその前に大事件が起きる。雷覇らいはが皆の前で口づけしたのだ。

あれには本当に腹がたった。人生で初めて誰かに対して怒った気がする。

思いっきり泣いて怒ってマーリンと黒綾こくりょう殿に慰められて

雷覇らいはと仲直りした。でもそのおかげでお互いに足りないものがあることに気が付いた。

その時から雷覇らいはが少しずつ変化しだした。

前よりも沢山わたしの話を聞いてくれるようになり、過剰だったスキンシップも緩やかになった。

こんなに穏やかな毎日が続けばいいのにと思っていた矢先に黒綾こくりょう殿に告白される。

最悪な事にその現場を雷覇らいはに見られてしまい、彼は激怒し黒綾こくりょう殿を殴った。

あの時の雷覇らいはは怖かった…。戦場の雷覇らいははきっとあれくらい怖いのだろうと感じた瞬間だった。

なんとか二人を止めないとと思ってわたしが怪我してしまって雷覇らいはの暴走は止まる。

あの時ほど勇気を振り絞って行動したことはない。今でも思い出すと嫌な汗が背中を伝う。

もうあんな思いはしたくなかった。雷覇らいはにもその事は伝えた。もう人を殴ったりしないでと。

わたしが怪我したことでより雷覇らいはと一緒にいる時間が濃密になり距離が縮まっていった。

でも、雷覇らいはの怪我が治ったタイミングで告白しようとヤキモキしてた時期でもあった。


ふふふ。今思ったら本当に恥ずかしいだけだったわね。

些細なことで告白を先送りにしていた。その間雷覇らいははずっと待っていてくれた。

ずっとわたしを好きだと言い続けてくれていた。その熱意が嬉しかった。

変わらない雷覇らいはの気持ち。ずっとこの人の傍にいたい。大切にしたいという気持ちが日に日に大きくなっていった。

その後、桐生きりゅうおじ様が婚約に反対して大変だったけどお孫さんが生まれた為あっさり解決。

今となっては雷覇らいはの事を認めてくれて気に入ってくれている。

その後建国祭があって、ようやく雷覇らいはに告白して今に至る…。

うーん…。我ながら濃い時間を過ごしていたものだ。しみじみそう感じた。

次から次へとまるでわたしと雷覇らいはを試すかのように色んな事件や出来事が起きた。

今となっては良い思い出だけどね!本に出したら売れるんじゃないかしら…。

いや…。もうとっくに売れている。わたしと雷覇らいはを題材にしたラブロマンス小説が

夏陽国かようこく秋唐国しゅうとうこくで大人気なのだから。


こらからも色んな事があるんだろうな…。でも…雷覇らいはと一緒なら大丈夫だわ。

彼の傍にいるだけで幸せで満たされた気持ちになる。時々涙が出そうなくらいだった。

そう考えていたところで雷覇らいはが戻ってきた。


怜彬れいりん!ただいま」


「お帰り雷覇らいは


ニコニコしながらわたしの傍に来て抱きしめてくれる。

今は二人で作った香水を付けている。リヨウとスバルの力作だ。

わたしも雷覇らいはもとても気に入っている。


怜彬れいりん…。昼食をとる前にちょっときてくれないか?」


「いいわよ。どこへ行くの?」


「それはついてからのお楽しみだ。目を閉じてくれ」


「いったい何?凄く気になるじゃない」


「いいから。目を閉じて。怜彬れいりん


そう言われてわたしは目を閉じた。

ドキドキした。雷覇らいは…。何をするのかしら。

するとふわっと体が宙に浮き雷覇らいはに、横抱きされているのだと思った。

どうやらどこかへ歩いて向かっているようだった。

扉の開く音がしてザクザクと土の上を歩いている音がする。

少ししたらそっとどこかに座らされた。緑のにおいがする。どうやら外にいるようだった。


怜彬れいりん…目を開けて」


「わかった…」


そっと目を開けると、目の前には見たことのない庭が広がっていた。

ここはどこだろう?距離からしてそんなに歩いていないはずだけど…。

キョロキョロ周りを見渡したら、庭の構図が雷覇らいはと一緒に考えていたものとよく似ていた。

もしかして…。


「ここ裏庭なの?」


「そうだ!俺と怜彬れいりんで考えた庭だよ」


「うそ!いつの間に‥‥」


「今朝から今までだ。びっくりした?」


「ええ…まったく気が付かなかったわ…」


朝起きて今まで全くその気配がなかった。今日から庭師の人たちが作業を始めるとしか聞いていなかった。

わたしが選んだ木や雷覇らいはが提案してくれた二人で腰掛ける椅子…。

打ち合わせした内容がそのまま反映された庭だった。


怜彬れいりん…。これを君と一緒に植えようと思って…」


そう言って雷覇らいはがわたしの前で片足を膝ついて小さな鉢植えをわたしに差し出した。

鉢植えの中には雷覇らいはの膝まである小さな木の苗木が植えられていた。


怜彬れいりん。君と出会ってもうすぐ一年だ…」


雷覇らいは…」


「色んな事があるかもしれないけど、こらからもずっと俺の傍にいて欲しい」


そう言って苗木を手渡された。思わず涙が出てきた。

嬉しい…。

雷覇らいはにもう一度プロポーズされた気がした。

わたしは苗木をそっと横に置いて雷覇らいはに抱き着いた。


「わたしも雷覇らいはの傍にいたい。ずっと…」


「ありがとう…怜彬れいりん…愛してるよ」


「わたしも愛してます。雷覇らいは…」


雷覇らいはがぎゅっと抱きしめてくれる。涙が止まらない。嬉しくて胸がつぶれそうだった。

ああ…。わたし…こんなに幸せでいいのかしら…。雷覇らいはの温もりを感じながらそう思った。

雷覇らいはがそっと体を離してわたしの涙を優しく拭ってくれる。

今日は忘れられない日になるだろう…。何年たっても…。ずっと覚えてる。


怜彬れいりん。君に会えて、君を好きになって俺は本当に幸せだ」


雷覇らいは…ぐす…」


感無量で言葉にできなかった。嬉しい時も言葉に詰まるのね…。そう思いながら雷覇らいはの口づけを受け入れた。

深く重なり蕩けるような口づけ…。わたしは何度も雷覇らいはと唇を重ね舌を絡ませながら雷覇らいはを抱きしめた。

幸せになろう。こんなにも彼が愛してくれてるのだ。幸せにならない方がおかしい…。

この先もずっと何があっても雷覇らいはを信じていこう。そう強く思った。


雷覇らいはがくれたのは金木犀きんもくせいの木だった。


花言葉は『初恋』。


出会って一年。今日は二人の恋が初めて実った日になった。



最後までお読みいただきありがとうございます( *´艸`)

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